431 / 469
竜の恩讐編
代価 その1
しおりを挟む
「くぅ!」
千春に掴まれたリズベルの手は、今にも骨が折れそうなくらいに締め上げられた。
「やめろ!」
手の骨が砕かれようとする直前、媛寿が声を張り上げて制止させた。
「言っとくけど、止める権利なんて媛寿には無いからね。もちろん―――小林結城にも」
媛寿と結城に対して、千春は不敵な笑みを浮かべた。
それに対して、リズベルは痛む手を押さえながら、蒼白な表情のまま戦慄していた。
「っ!? お前! リズベルに何した!?」
その様子で何かを察した媛寿は、怒声でもって千春を糺す。
「何って―――」
千春はリズベルの肩を抱き寄せると、ゆっくりと結城を指差した。
「―――小林結城を始末するための代価をこの娘からもらったんだから、あたしがどうしようと勝手でしょ?」
千春の言葉の意味を、媛寿と結城は理解できなかったが、抱き寄せられているリズベルは目を見開いたまま震えていた。
「どういうことですか!? 僕への復讐のために、何でリズベルさんが―――」
「『依頼を受けて』、『代価をもらって』、『標的を葬り去る』。至極当然の取り引きをしたまでだけど?」
感情的になっている結城とは対照的に、千春は余裕と冷静さを保ったままだった。
「ただし、あたしたちは金銭で動くとは限らない。例えば『肉体の一部』だったり、『今後の人生における制限』だったり、依頼者にとって重要なものを差し出させてる。あたしたちの方から代価を指定することもあるけど」
千春はリズベルの首筋に指を這わせ、最後に顎を指でわずかに持ち上げた。
「この娘は元々の依頼、『小林結城の始末』から、二回ほど依頼内容を変えてる。だから計三回、代価を支払ったことになる」
震えているリズベルの頬を、千春はむしろ恐怖を煽るように舐め上げた。
「話してあげてもいいけど?」
千春が向けてくる目は、明らかな挑発と嗜虐心に満ち満ちていた。
先に話していた『依頼の代価』の例は、どれも碌なものではないと結城たちは理解していた。
その上でリズベルが支払った代価を明かすことは、リズベルへの恥辱となるのは確実だった。
リズベルの反応を見ても、そうなることは予想がつく。
結城と媛寿がそれ以上踏み込むことを躊躇していると、
「しょ~がないな~」
二人の心境を見越してか、千春はわざとらしく困り顔を作った。
「特別に話してあげる。この娘が復讐のためにどんなものを犠牲にしちゃったのか」
「っ!」
千春の宣言に、リズベルの表情はより青ざめた。
「ちょっ! ちょっと待―――」
結城の声を、千春は右手を翳して制止させた。
「さっきも言った通り、拒否権なんて無いから」
右手の向こうから結城を見据えてくる千春の眼は、最初に会った時と同様、恐ろしい殺気を湛えた『鬼』の眼だった。
千春に掴まれたリズベルの手は、今にも骨が折れそうなくらいに締め上げられた。
「やめろ!」
手の骨が砕かれようとする直前、媛寿が声を張り上げて制止させた。
「言っとくけど、止める権利なんて媛寿には無いからね。もちろん―――小林結城にも」
媛寿と結城に対して、千春は不敵な笑みを浮かべた。
それに対して、リズベルは痛む手を押さえながら、蒼白な表情のまま戦慄していた。
「っ!? お前! リズベルに何した!?」
その様子で何かを察した媛寿は、怒声でもって千春を糺す。
「何って―――」
千春はリズベルの肩を抱き寄せると、ゆっくりと結城を指差した。
「―――小林結城を始末するための代価をこの娘からもらったんだから、あたしがどうしようと勝手でしょ?」
千春の言葉の意味を、媛寿と結城は理解できなかったが、抱き寄せられているリズベルは目を見開いたまま震えていた。
「どういうことですか!? 僕への復讐のために、何でリズベルさんが―――」
「『依頼を受けて』、『代価をもらって』、『標的を葬り去る』。至極当然の取り引きをしたまでだけど?」
感情的になっている結城とは対照的に、千春は余裕と冷静さを保ったままだった。
「ただし、あたしたちは金銭で動くとは限らない。例えば『肉体の一部』だったり、『今後の人生における制限』だったり、依頼者にとって重要なものを差し出させてる。あたしたちの方から代価を指定することもあるけど」
千春はリズベルの首筋に指を這わせ、最後に顎を指でわずかに持ち上げた。
「この娘は元々の依頼、『小林結城の始末』から、二回ほど依頼内容を変えてる。だから計三回、代価を支払ったことになる」
震えているリズベルの頬を、千春はむしろ恐怖を煽るように舐め上げた。
「話してあげてもいいけど?」
千春が向けてくる目は、明らかな挑発と嗜虐心に満ち満ちていた。
先に話していた『依頼の代価』の例は、どれも碌なものではないと結城たちは理解していた。
その上でリズベルが支払った代価を明かすことは、リズベルへの恥辱となるのは確実だった。
リズベルの反応を見ても、そうなることは予想がつく。
結城と媛寿がそれ以上踏み込むことを躊躇していると、
「しょ~がないな~」
二人の心境を見越してか、千春はわざとらしく困り顔を作った。
「特別に話してあげる。この娘が復讐のためにどんなものを犠牲にしちゃったのか」
「っ!」
千春の宣言に、リズベルの表情はより青ざめた。
「ちょっ! ちょっと待―――」
結城の声を、千春は右手を翳して制止させた。
「さっきも言った通り、拒否権なんて無いから」
右手の向こうから結城を見据えてくる千春の眼は、最初に会った時と同様、恐ろしい殺気を湛えた『鬼』の眼だった。
0
あなたにおすすめの小説
建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~
ヒロノF
ファンタジー
死後に転生した魔界にて突然無敵の身体を与えられた地野改(ちの かい)。
その身体は物理的な攻撃に対して金属音がするほど硬く、マグマや高電圧、零度以下の寒さ、猛毒や強酸、腐食ガスにも耐え得る超高スペックの肉体。
その上で与えられたのはイメージ次第で命以外は何でも作り出せるという『創成魔法』という特異な能力。しかし、『イメージ次第で作り出せる』というのが落とし穴! それはイメージ出来なければ作れないのと同義! 生前職人や技師というわけでもなかった彼女には機械など生活を豊かにするものは作ることができない! 中々に持て余す能力だったが、周囲の協力を得つつその力を上手く使って魔界を住み心地良くしようと画策する。
近隣の村を拠点と定め、光の無かった世界に疑似太陽を作り、川を作り、生活基盤を整え、家を建て、魔道具による害獣対策や収穫方法を考案。
更には他国の手を借りて、水道を整備し、銀行・通貨制度を作り、発電施設を作り、村は町へと徐々に発展、ついには大国に国として認められることに!?
何でもできるけど何度も失敗する。
成り行きで居ついてしまったケルベロス、レッドドラゴン、クラーケン、歩く大根もどき、元・書物の自動人形らと共に送る失敗と試行錯誤だらけの魔界ライフ。
様々な物を創り出しては実験実験また実験。果たして住み心地は改善できるのか?
誤字脱字衍字の指摘、矛盾の指摘大歓迎です! 見つけたらご報告ください!
2024/05/02改題しました。旧タイトル
『魔界の天使 (?)アルトラの国造り奮闘譚』
2023/07/22改題しました。旧々タイトル
『天使転生?~でも転生場所は魔界だったから、授けられた強靭な肉体と便利スキル『創成魔法』でシメて住み心地よくしてやります!~』
この作品は以下の投稿サイトにも掲載しています。
『小説家になろう(https://ncode.syosetu.com/n4480hc/)』
『ノベルバ(https://novelba.com/indies/works/929419)』
『アルファポリス(https://www.alphapolis.co.jp/novel/64078938/329538044)』
『カクヨム(https://kakuyomu.jp/works/16818093076594693131)』
ダンジョン学園サブカル同好会の日常
くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。
まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。
しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。
一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。
それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。
彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。
シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。
すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。
同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。
※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます
内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」
――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。
カクヨムにて先行連載中です!
(https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)
異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。
残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。
一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。
そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。
そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。
異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。
やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。
さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。
そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる