僕の幼馴染との時間

ranran22

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第1話

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桜の季節になるといつも億劫だった。
新しい生活の始まりだから。


ひらひらと舞う桜を手で払いながら、通い慣れた道を歩く。

今日から高校2年か…。


思わずため息を漏らしながら歩いていると、後ろから声を掛けられた。

「あっ、有崎くんおはよう。」


頬を赤らめながら、そう言って僕を見つめる。

…何度この顔を見ただろうか。



「確か…鈴木さんだよね?おはよう。」


自分がそう言うと、驚いた様子で目を見開いた。

「え?私のこと分かるの?」
「うん、前に委員会の集まりで見かけたから。」

彼女は嬉しそうにはにかんで小走りで去っていった。


昔からいつもこうだ。


周りからはいつも容姿だけ注目され、自分の努力もすべて容姿で片付けられる。

周りから勝手なイメージも付けられ、いつもそのイメージを崩さないように接してしまう日々に嫌気が差していた。


「どいつもこいつも容姿ばかり…」


思わず出てしまいそうになった舌打ちを抑えて、重い足取りで学校へ向かった。







新しいクラスのドアを開けると、ざわざわしていたクラスが一瞬静まり返る。

「有崎くんじゃん!めっちゃカッコいい!」
「本当イケメンだよなー」
「頭も良くてスポーツも出来るって完璧すぎ」


クラスメイトがヒソヒソと話す言葉を無視しながら、自分の席に座った途端クラスメイトが席を取り囲む。


また始まった…なんて思いながら、クラスメイトに愛想を振り撒いていると担任が入って来た。

タイミングよく入って来てくれた先生に感謝しながら、ふと窓に目をやると満開の桜が目に入る。
やっぱり桜は嫌だな…。


僕はまた、ため息を漏らした。





時刻は12時半。

入学式やHRを終え教室を足早に出ると、聞き慣れた声に振り向く。

「春人ー!」
「おおっ、翔太!
丁度一緒に帰ろうって言おうとしてたんだ。」


翔太は幼稚園の頃からの幼馴染で、何をするにもずっと一緒だった。

唯一普通に接してくれる翔太といる時だけはありのままの自分でいれる。

「新しいクラスはどうだった?相変わらず?笑」
「相変わらずだなー、マジで疲れるよ…。」
「春人って本当はやばい奴なのに皆んな分かってないんだな、可哀想に…。」
「おい!何だよそれ!笑」

翔太の肩を掴み笑い合っていると、翔太が口を開いた。


「なあ!帰りにお昼食いに行かない?
春人が好きなハンバーガー屋!」
「おおー!いいじゃん!俺奢るよ。」
「マジ!?じゃあ高いの頼みまくろうかなー笑」


嬉しそうに笑う翔太に思わず笑みが溢れる。


きっと自分のことを気にして提案してくれたんだろうなぁ。
本当優しいよな翔太は。


もう翔太が居てくれるならどうでもいいや。


そんな事を思いながら、僕は翔太の横顔をただ見つめていた。
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