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22章
142.ダンジョンでの出会い
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透明ローブを着て、いざ魔族の巣窟へ――とは言ったものの、できる限り魔族の巣窟に入らずダンジョンへと近づく予定だ。
なので結構な遠回りになる。
気を引き締めていかないと。
モッカと出会ったあのワープポイントからぐるりと回り込み、最短距離で行ける場所までひたすらに歩く。
魔族には合わなかったが、途中魔物と遭遇した。匂いで私達が近くにいることは理解していたようだが、見えなかったからか襲われることはなかった。素材集めのためにも倒しておきたかったが、万が一戦っている最中、魔族に見つかっても困るので静かに前進。
なんの弊害もなく進んでいると喜んでいたが、突然上から魔族が2人。
1人はモッカ。もう1人は確かモッカに連れられて焚き火の場所に来ていた魔族だ。
「透明ローブか~。賢いね。ま、俺らには効かないんだけど」
風を起こし、私達のフードを脱がす。
「もしかして魔族全員、透明ローブは効かないの?」
「そんなことはない。でも、幹部クラスになるとその程度の小細工じゃ無意味ってだけ」
「貴方は幹部クラスの魔族だったんだね」
「皆信じてなさそ~な顔してんなぁ。ま、いいけど。ほら、ビラドゥ。救世主に顔を覚えてもらおうぜ」
隣で静かに私の顔を見つめていた魔族。突然名前を呼ばれ、モッカに背中を押されて慌てた様子だ。
「べ、別に自己紹介なんて、必要ないだろ!?」
ビラドゥは青紫の髪色を持ち、結構ツンツンとしたヘアスタイルをしている。目つきが悪く、小さい子供は泣いてしまいそうな雰囲気だ。
私がじっとビラドゥを見ていたからか、ビラドゥは顔を隠し「ミナイデクダサイ」と片言で小さめの声でそう言った。
強面だが、意外と照れ屋なのかもしれない。
その様子を見て笑っていたモッカは、分岐している道の1つを指差した。
「この道を辿ればダンジョンなんてすぐそこだ。あと、こっちなら誰かと会うことも少ない。頑張ってくれよ~」
顔を隠してしまったビラドゥを引っ張りながらモッカは長居することなく、別方向へと飛んでいってしまった。
その様子を黙って見ていたロクは、姿が見えなくなったところで首を傾げた。
「なんだったんだ?」
「こちらに有利な情報を渡して去っていったな」
「俺達舐められすぎじゃないです? そんなに弱く見えるんですかね?」
イナトは貰った情報を元に、見える範囲で地図を辿る。罠ではなかったようだが、不審な表情を浮かている。
ルーパルドは舐められているのだと改めて自覚し、力無く笑っている。呆れているのだろう。
「こっちにデメリットないなら別にいいんじゃない?」
「……それもそうですね。救世主様に好意を寄せるのはいただけませんが」
イナトは含みのある笑顔でそう言ったのだった。
◇
無事ダンジョンに到着。
「塔みたいな形だね」
「そうですね。タワーダンジョンというものですね」
このダンジョンの最上階に魔王弱体可能なアイテムが置いてあるのだと。3つのうち1つが魔王の弱体化。今来ているダンジョンがそうだ。
残り2つのダンジョンに何があるのかは知らないが、モッカが魔族の弱体化を推奨していた。そのことから、魔族の弱体ができるものだと思われる。
すべてのダンジョンを攻略するかまだ決めていない。だが、戦闘を楽にしたいのならやっておいて損はないだろう。
……ダンジョンがどの程度の攻略難易度なのか知らないのだけれど。
早速中に入ると、人影が立っている。
熊の毛皮を羽織っており、パンダのように色をつけているそれ。おそらく勇者オジーだろう。
「オジー?」
「お? 意外と早かったな。……いや、俺が迷わなければもう攻略終わってたか」
私達と雪原で出会い、きっとダンジョン攻略を目指すだろうと踏んでいたらしいオジー。
オジーはさっさと攻略して報酬だけ私にくれる予定だったらしい。それは大変ありがたいのだが、前もって教えてくれても良かったのに。
「せっかく来たんだし、俺と攻略しに行く?」
「そうさせていだきましょうか。宜しくお願いします、オジー様」
イナトは丁寧にお辞儀をし、オジーに柔らかく微笑んだ。すごく他所行きの笑顔だ……
そんなイナトの様子を見て、オジーは苦笑い。
「様やめて~。堅苦しいの苦手だから俺のことはオジーでいいし、敬語もいいから」
「わかった。よろしくなオジー」
「お前……少しは躊躇えよ」
ロクは思考することもなく頷き、オジーの言う通り敬称も敬語もなし。すかさずルーパルドが突っ込むが、オジーは「いいよいいよ」と笑顔だ。むしろ喜んでいるようにも見える。
……そもそもロクは言われてなくても敬称も敬語も使わないだろう。言われても拒否しそうだ。それを私の表情で察したのか、真顔のまま言う。
「俺は使えと言われれば使うぞ」
「本当? じゃあ、やってみてよ」
「主人様のリクエストとあれば、使ってみせましょう」
「わぁ、かなり棒読み」
確かに敬称はついているし、敬語ではあるけれど。これを良しとする主はいるのだろうか。
需要はある……かもしれない。
なので結構な遠回りになる。
気を引き締めていかないと。
モッカと出会ったあのワープポイントからぐるりと回り込み、最短距離で行ける場所までひたすらに歩く。
魔族には合わなかったが、途中魔物と遭遇した。匂いで私達が近くにいることは理解していたようだが、見えなかったからか襲われることはなかった。素材集めのためにも倒しておきたかったが、万が一戦っている最中、魔族に見つかっても困るので静かに前進。
なんの弊害もなく進んでいると喜んでいたが、突然上から魔族が2人。
1人はモッカ。もう1人は確かモッカに連れられて焚き火の場所に来ていた魔族だ。
「透明ローブか~。賢いね。ま、俺らには効かないんだけど」
風を起こし、私達のフードを脱がす。
「もしかして魔族全員、透明ローブは効かないの?」
「そんなことはない。でも、幹部クラスになるとその程度の小細工じゃ無意味ってだけ」
「貴方は幹部クラスの魔族だったんだね」
「皆信じてなさそ~な顔してんなぁ。ま、いいけど。ほら、ビラドゥ。救世主に顔を覚えてもらおうぜ」
隣で静かに私の顔を見つめていた魔族。突然名前を呼ばれ、モッカに背中を押されて慌てた様子だ。
「べ、別に自己紹介なんて、必要ないだろ!?」
ビラドゥは青紫の髪色を持ち、結構ツンツンとしたヘアスタイルをしている。目つきが悪く、小さい子供は泣いてしまいそうな雰囲気だ。
私がじっとビラドゥを見ていたからか、ビラドゥは顔を隠し「ミナイデクダサイ」と片言で小さめの声でそう言った。
強面だが、意外と照れ屋なのかもしれない。
その様子を見て笑っていたモッカは、分岐している道の1つを指差した。
「この道を辿ればダンジョンなんてすぐそこだ。あと、こっちなら誰かと会うことも少ない。頑張ってくれよ~」
顔を隠してしまったビラドゥを引っ張りながらモッカは長居することなく、別方向へと飛んでいってしまった。
その様子を黙って見ていたロクは、姿が見えなくなったところで首を傾げた。
「なんだったんだ?」
「こちらに有利な情報を渡して去っていったな」
「俺達舐められすぎじゃないです? そんなに弱く見えるんですかね?」
イナトは貰った情報を元に、見える範囲で地図を辿る。罠ではなかったようだが、不審な表情を浮かている。
ルーパルドは舐められているのだと改めて自覚し、力無く笑っている。呆れているのだろう。
「こっちにデメリットないなら別にいいんじゃない?」
「……それもそうですね。救世主様に好意を寄せるのはいただけませんが」
イナトは含みのある笑顔でそう言ったのだった。
◇
無事ダンジョンに到着。
「塔みたいな形だね」
「そうですね。タワーダンジョンというものですね」
このダンジョンの最上階に魔王弱体可能なアイテムが置いてあるのだと。3つのうち1つが魔王の弱体化。今来ているダンジョンがそうだ。
残り2つのダンジョンに何があるのかは知らないが、モッカが魔族の弱体化を推奨していた。そのことから、魔族の弱体ができるものだと思われる。
すべてのダンジョンを攻略するかまだ決めていない。だが、戦闘を楽にしたいのならやっておいて損はないだろう。
……ダンジョンがどの程度の攻略難易度なのか知らないのだけれど。
早速中に入ると、人影が立っている。
熊の毛皮を羽織っており、パンダのように色をつけているそれ。おそらく勇者オジーだろう。
「オジー?」
「お? 意外と早かったな。……いや、俺が迷わなければもう攻略終わってたか」
私達と雪原で出会い、きっとダンジョン攻略を目指すだろうと踏んでいたらしいオジー。
オジーはさっさと攻略して報酬だけ私にくれる予定だったらしい。それは大変ありがたいのだが、前もって教えてくれても良かったのに。
「せっかく来たんだし、俺と攻略しに行く?」
「そうさせていだきましょうか。宜しくお願いします、オジー様」
イナトは丁寧にお辞儀をし、オジーに柔らかく微笑んだ。すごく他所行きの笑顔だ……
そんなイナトの様子を見て、オジーは苦笑い。
「様やめて~。堅苦しいの苦手だから俺のことはオジーでいいし、敬語もいいから」
「わかった。よろしくなオジー」
「お前……少しは躊躇えよ」
ロクは思考することもなく頷き、オジーの言う通り敬称も敬語もなし。すかさずルーパルドが突っ込むが、オジーは「いいよいいよ」と笑顔だ。むしろ喜んでいるようにも見える。
……そもそもロクは言われてなくても敬称も敬語も使わないだろう。言われても拒否しそうだ。それを私の表情で察したのか、真顔のまま言う。
「俺は使えと言われれば使うぞ」
「本当? じゃあ、やってみてよ」
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「わぁ、かなり棒読み」
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需要はある……かもしれない。
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