162 / 196
25章
161.クリア後のやり込み
しおりを挟む
箱のリビングで遅い夕飯をいただきながら、私は3人にこれまでの出来事をすべて話した。
「……ということで、ほとんどが召使――もといマラカイトのせいだったと」
「何が"ということで"ですか! 恐ろしいことをさらっと流さないでください!」
ルーパルドの盛大なツッコミに、私は苦笑い。
イナトは私の話を聞いてから、ほとんど箸が進んでいない。顔色も悪いが、それは疲労のせいか、私の話のせいか……いや、両方かもしれない。イナトって繊細だなぁ。
対して、食欲旺盛なロクはおかわりをよそって席に戻り、何かを思い出したようにこちらを見た。
「なあ、救世主じゃなくなるのは、いつなんだ?」
「さあ? なんで?」
「もし救世主じゃなくなったら、お前の"死に戻り"はどうなる?」
「普通に考えたら、なくなりそうだよね」
死に戻りが消えれば、当たり前だけど"1度きりの人生"になる。
死んで戻ればいいや。なんて、もう通じない。
そもそも、マラカイトの話が本当なら、死に戻りを繰り返すことで前の記憶を思い出したり、逆に今回の記憶を失ったりするリスクがある。
そう考えると、救世主であっても“死に戻り”は避けた方がいいのかもしれない。
「言い忘れてたことあったわ!」
「わっ、神様!?」
突然、どこからともなく現れたのは、相変わらず発光している人型の神。
どうやら、私たちの会話を一部聞いていたらしく、それで何か思い出したらしい。
「救世主じゃなくなるのは、次に救世主が来たとき。でも、今は魔王もいないし、君は死ぬまで救世主だよ」
「つまり……死に戻りは、私の寿命が尽きない限り一生続く?」
「うん。ちなみに"記憶障害"はマラカイトのせいなんだ」
本来なら“帰れない”というだけのデメリットだったのに、マラカイトが神の力でいじっていたらしい。
言われてみれば、マラカイトにしか得がなかった。後付け設定って言われたら納得する。
「それは俺が解除しといたから、"死に戻り"はいくらやってくれても構わないよ。……でも、君にまだ帰りたい気持ちが残っているのなら、死に戻りは控えた方がいい」
死に戻りの蓄積は次第に減っていくらしいが、それでもかなり死んでいるため私には"盛大に死んでOK"とは言えないようだ。
すると、ロクが無表情のまま頷いた。
「リンは帰らないって決めたから、問題ないな」
「いや、だからってリンに“死に戻り”させるような事態にすんなよ?」
「……君ら、本当にこの子のこと好きなんだね」
“当然だろ”と言わんばかりに得意げなルーパルドとロク。
嬉しいけど、あまりにも堂々としていて、私のほうが恥ずかしくなってくる。
「ぼ、僕だって好きですよ……リンのこと」
ぽつりと漏らしたイナトは、顔を真っ赤にしながらも私の名前を呼んだ。
救世主呼びは卒業するつもりなのだろう。このまま敬語も取れてくるといいな。
「あと、言っておくことがある。これ救世主である君にしかできないことだ」
「これって、魔王討伐で完結じゃなかったんですか?」
「それはゲーム本編での完結ね。ほら、よくあるでしょ? クリア後のやり込み要素」
……こんなに長々やって、さらにやり込みがあるのか。
やっぱりちょっと帰ってゲームクリアしてまたこの世界に戻れないだろうか。
「今何かイヤな予感がしたのですが」
「えっ、な、何でもないよ!? まだ皆で旅に行けるの嬉しいなぁ~!」
イナトは眉をひそめて、完全に信用していない様子。……そんなに顔に出てたかな。今後は気をつけないと。
「やる気があるようで何より。今度はね、魔王を助けてほしいんだ」
「やっとの思いで封印した魔王を? 本気で言ってます!?」
ルーパルドは思わず立ち上がって驚きの声を上げたが、神は動じず、大きく頷いた。
「本気だよ。まず、魔物が生み出される瘴気を潰してもらう必要がある」
「それで何が変わるんですか?」
「すべて取り払えば、瘴気を生み出さない魔王が誕生する」
この世界における“魔王”とは、瘴気をまき散らして世界征服を企む悪者のこと。
瘴気を生まない魔王……つまり、ただの魔族になるらしい。
元々はただの魔族だった男が、瘴気にあてられて“魔王”になってしまったのだとか。
魔王になりたかったわけでも、瘴気を出したかったわけでもなく、本人にも苦悩があるらしい。
……なんでこんなに複雑な設定にしたんだろう。
でも、もし魔王も“攻略対象”にしてたとしたら、そうでもしないと恋愛展開に持ち込むのは難しかったかもな。
できるとすれば、救世主が囚われの身になって魔王と心を通わせるとか、好きになっちゃいけない相手を好きになってしまったとか。だろう。
私がそんな妄想をしているとは、思いもよらないだろう。……今度ミマさんにネタとして提供してみよう。
「瘴気はどうやって払う? そこにいる魔物を全滅させればいいのか」
まだまだ戦えると知って、やる気に満ちているロク。神はその様子にクスッと笑い、ロクの頭を撫でた。
「瘴気の中心にいるボスを倒せばいい」
発光体に撫でられて、ロクはちょっと混乱。自分の頭を触りながら、神を見た。
「神って触れるのか」
「うん。中身ちゃんとあるし」
「そうなのか」
「え、こわっ……! 俺は退散するね、じゃ!」
ロクの興味津々な様子に神はたじろぎ、慌ててその場を退散していった。
「……ということで、ほとんどが召使――もといマラカイトのせいだったと」
「何が"ということで"ですか! 恐ろしいことをさらっと流さないでください!」
ルーパルドの盛大なツッコミに、私は苦笑い。
イナトは私の話を聞いてから、ほとんど箸が進んでいない。顔色も悪いが、それは疲労のせいか、私の話のせいか……いや、両方かもしれない。イナトって繊細だなぁ。
対して、食欲旺盛なロクはおかわりをよそって席に戻り、何かを思い出したようにこちらを見た。
「なあ、救世主じゃなくなるのは、いつなんだ?」
「さあ? なんで?」
「もし救世主じゃなくなったら、お前の"死に戻り"はどうなる?」
「普通に考えたら、なくなりそうだよね」
死に戻りが消えれば、当たり前だけど"1度きりの人生"になる。
死んで戻ればいいや。なんて、もう通じない。
そもそも、マラカイトの話が本当なら、死に戻りを繰り返すことで前の記憶を思い出したり、逆に今回の記憶を失ったりするリスクがある。
そう考えると、救世主であっても“死に戻り”は避けた方がいいのかもしれない。
「言い忘れてたことあったわ!」
「わっ、神様!?」
突然、どこからともなく現れたのは、相変わらず発光している人型の神。
どうやら、私たちの会話を一部聞いていたらしく、それで何か思い出したらしい。
「救世主じゃなくなるのは、次に救世主が来たとき。でも、今は魔王もいないし、君は死ぬまで救世主だよ」
「つまり……死に戻りは、私の寿命が尽きない限り一生続く?」
「うん。ちなみに"記憶障害"はマラカイトのせいなんだ」
本来なら“帰れない”というだけのデメリットだったのに、マラカイトが神の力でいじっていたらしい。
言われてみれば、マラカイトにしか得がなかった。後付け設定って言われたら納得する。
「それは俺が解除しといたから、"死に戻り"はいくらやってくれても構わないよ。……でも、君にまだ帰りたい気持ちが残っているのなら、死に戻りは控えた方がいい」
死に戻りの蓄積は次第に減っていくらしいが、それでもかなり死んでいるため私には"盛大に死んでOK"とは言えないようだ。
すると、ロクが無表情のまま頷いた。
「リンは帰らないって決めたから、問題ないな」
「いや、だからってリンに“死に戻り”させるような事態にすんなよ?」
「……君ら、本当にこの子のこと好きなんだね」
“当然だろ”と言わんばかりに得意げなルーパルドとロク。
嬉しいけど、あまりにも堂々としていて、私のほうが恥ずかしくなってくる。
「ぼ、僕だって好きですよ……リンのこと」
ぽつりと漏らしたイナトは、顔を真っ赤にしながらも私の名前を呼んだ。
救世主呼びは卒業するつもりなのだろう。このまま敬語も取れてくるといいな。
「あと、言っておくことがある。これ救世主である君にしかできないことだ」
「これって、魔王討伐で完結じゃなかったんですか?」
「それはゲーム本編での完結ね。ほら、よくあるでしょ? クリア後のやり込み要素」
……こんなに長々やって、さらにやり込みがあるのか。
やっぱりちょっと帰ってゲームクリアしてまたこの世界に戻れないだろうか。
「今何かイヤな予感がしたのですが」
「えっ、な、何でもないよ!? まだ皆で旅に行けるの嬉しいなぁ~!」
イナトは眉をひそめて、完全に信用していない様子。……そんなに顔に出てたかな。今後は気をつけないと。
「やる気があるようで何より。今度はね、魔王を助けてほしいんだ」
「やっとの思いで封印した魔王を? 本気で言ってます!?」
ルーパルドは思わず立ち上がって驚きの声を上げたが、神は動じず、大きく頷いた。
「本気だよ。まず、魔物が生み出される瘴気を潰してもらう必要がある」
「それで何が変わるんですか?」
「すべて取り払えば、瘴気を生み出さない魔王が誕生する」
この世界における“魔王”とは、瘴気をまき散らして世界征服を企む悪者のこと。
瘴気を生まない魔王……つまり、ただの魔族になるらしい。
元々はただの魔族だった男が、瘴気にあてられて“魔王”になってしまったのだとか。
魔王になりたかったわけでも、瘴気を出したかったわけでもなく、本人にも苦悩があるらしい。
……なんでこんなに複雑な設定にしたんだろう。
でも、もし魔王も“攻略対象”にしてたとしたら、そうでもしないと恋愛展開に持ち込むのは難しかったかもな。
できるとすれば、救世主が囚われの身になって魔王と心を通わせるとか、好きになっちゃいけない相手を好きになってしまったとか。だろう。
私がそんな妄想をしているとは、思いもよらないだろう。……今度ミマさんにネタとして提供してみよう。
「瘴気はどうやって払う? そこにいる魔物を全滅させればいいのか」
まだまだ戦えると知って、やる気に満ちているロク。神はその様子にクスッと笑い、ロクの頭を撫でた。
「瘴気の中心にいるボスを倒せばいい」
発光体に撫でられて、ロクはちょっと混乱。自分の頭を触りながら、神を見た。
「神って触れるのか」
「うん。中身ちゃんとあるし」
「そうなのか」
「え、こわっ……! 俺は退散するね、じゃ!」
ロクの興味津々な様子に神はたじろぎ、慌ててその場を退散していった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】甘やかな聖獣たちは、聖女様がとろけるようにキスをする
楠結衣
恋愛
女子大生の花恋は、いつものように大学に向かう途中、季節外れの鯉のぼりと共に異世界に聖女として召喚される。
ところが花恋を召喚した王様や黒ローブの集団に偽聖女と言われて知らない森に放り出されてしまう。
涙がこぼれてしまうと鯉のぼりがなぜか執事の格好をした三人組みの聖獣に変わり、元の世界に戻るために、一日三回のキスが必要だと言いだして……。
女子大生の花恋と甘やかな聖獣たちが、いちゃいちゃほのぼの逆ハーレムをしながら元の世界に戻るためにちょこっと冒険するおはなし。
◇表紙イラスト/知さま
◇鯉のぼりについては諸説あります。
◇小説家になろうさまでも連載しています。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーレムです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
面倒くさがりやの異世界人〜微妙な美醜逆転世界で〜
蝋梅
恋愛
仕事帰り電車で寝ていた雅は、目が覚めたら満天の夜空が広がる場所にいた。目の前には、やたら美形な青年が騒いでいる。どうしたもんか。面倒くさいが口癖の主人公の異世界生活。
短編ではありませんが短めです。
別視点あり
残念女子高生、実は伝説の白猫族でした。
具なっしー
恋愛
高校2年生!葉山空が一妻多夫制の男女比が20:1の世界に召喚される話。そしてなんやかんやあって自分が伝説の存在だったことが判明して…て!そんなことしるかぁ!残念女子高生がイケメンに甘やかされながらマイペースにだらだら生きてついでに世界を救っちゃう話。シリアス嫌いです。
※表紙はAI画像です
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
【完結】身分を隠して恋文相談屋をしていたら、子犬系騎士様が毎日通ってくるんですが?
エス
恋愛
前世で日本の文房具好き書店員だった記憶を持つ伯爵令嬢ミリアンヌは、父との約束で、絶対に身分を明かさないことを条件に、変装してオリジナル文具を扱うお店《ことのは堂》を開店することに。
文具の販売はもちろん、手紙の代筆や添削を通して、ささやかながら誰かの想いを届ける手助けをしていた。
そんなある日、イケメン騎士レイが突然来店し、ミリアンヌにいきなり愛の告白!? 聞けば、以前ミリアンヌが代筆したラブレターに感動し、本当の筆者である彼女を探して、告白しに来たのだとか。
もちろんキッパリ断りましたが、それ以来、彼は毎日ミリアンヌ宛ての恋文を抱えてやって来るようになりまして。
「あなた宛の恋文の、添削お願いします!」
......って言われましても、ねぇ?
レイの一途なアプローチに振り回されつつも、大好きな文房具に囲まれ、店主としての仕事を楽しむ日々。
お客様の相談にのったり、前世の知識を活かして、この世界にはない文房具を開発したり。
気づけば店は、騎士達から、果ては王城の使者までが買いに来る人気店に。お願いだから、身バレだけは勘弁してほしい!!
しかしついに、ミリアンヌの正体を知る者が、店にやって来て......!?
恋文から始まる、秘密だらけの恋とお仕事。果たしてその結末は!?
※ほかサイトで投稿していたものを、少し修正して投稿しています。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる