乙女要素のある死にゲーに転移してしまった件〜帰還エンドのはずが、様子がおかしい〜

勿夏七

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25章

161.クリア後のやり込み

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 箱のリビングで遅い夕飯をいただきながら、私は3人にこれまでの出来事をすべて話した。

「……ということで、ほとんどが召使――もといマラカイトのせいだったと」
「何が"ということで"ですか! 恐ろしいことをさらっと流さないでください!」

 ルーパルドの盛大なツッコミに、私は苦笑い。
 イナトは私の話を聞いてから、ほとんど箸が進んでいない。顔色も悪いが、それは疲労のせいか、私の話のせいか……いや、両方かもしれない。イナトって繊細だなぁ。

 対して、食欲旺盛なロクはおかわりをよそって席に戻り、何かを思い出したようにこちらを見た。

「なあ、救世主じゃなくなるのは、いつなんだ?」
「さあ? なんで?」
「もし救世主じゃなくなったら、お前の"死に戻り"はどうなる?」
「普通に考えたら、なくなりそうだよね」

 死に戻りが消えれば、当たり前だけど"1度きりの人生"になる。
 死んで戻ればいいや。なんて、もう通じない。
 そもそも、マラカイトの話が本当なら、死に戻りを繰り返すことで前の記憶を思い出したり、逆に今回の記憶を失ったりするリスクがある。
 そう考えると、救世主であっても“死に戻り”は避けた方がいいのかもしれない。

「言い忘れてたことあったわ!」
「わっ、神様!?」

 突然、どこからともなく現れたのは、相変わらず発光している人型の神。
 どうやら、私たちの会話を一部聞いていたらしく、それで何か思い出したらしい。

「救世主じゃなくなるのは、次に救世主が来たとき。でも、今は魔王もいないし、君は死ぬまで救世主だよ」
「つまり……死に戻りは、私の寿命が尽きない限り一生続く?」
「うん。ちなみに"記憶障害"はマラカイトのせいなんだ」

 本来なら“帰れない”というだけのデメリットだったのに、マラカイトが神の力でいじっていたらしい。
 言われてみれば、マラカイトにしか得がなかった。後付け設定って言われたら納得する。
 
「それは俺が解除しといたから、"死に戻り"はいくらやってくれても構わないよ。……でも、君にまだ帰りたい気持ちが残っているのなら、死に戻りは控えた方がいい」

 死に戻りの蓄積は次第に減っていくらしいが、それでもかなり死んでいるため私には"盛大に死んでOK"とは言えないようだ。
 すると、ロクが無表情のまま頷いた。
 
「リンは帰らないって決めたから、問題ないな」
「いや、だからってリンに“死に戻り”させるような事態にすんなよ?」
「……君ら、本当にこの子のこと好きなんだね」

 “当然だろ”と言わんばかりに得意げなルーパルドとロク。
 嬉しいけど、あまりにも堂々としていて、私のほうが恥ずかしくなってくる。

「ぼ、僕だって好きですよ……リンのこと」

 ぽつりと漏らしたイナトは、顔を真っ赤にしながらも私の名前を呼んだ。
 救世主呼びは卒業するつもりなのだろう。このまま敬語も取れてくるといいな。

「あと、言っておくことがある。これ救世主である君にしかできないことだ」
「これって、魔王討伐で完結じゃなかったんですか?」
「それはゲーム本編での完結ね。ほら、よくあるでしょ? クリア後のやり込み要素」

 ……こんなに長々やって、さらにやり込みがあるのか。
 やっぱりちょっと帰ってゲームクリアしてまたこの世界に戻れないだろうか。
 
「今何かイヤな予感がしたのですが」
「えっ、な、何でもないよ!? まだ皆で旅に行けるの嬉しいなぁ~!」

 イナトは眉をひそめて、完全に信用していない様子。……そんなに顔に出てたかな。今後は気をつけないと。

「やる気があるようで何より。今度はね、魔王を助けてほしいんだ」
「やっとの思いで封印した魔王を? 本気で言ってます!?」

 ルーパルドは思わず立ち上がって驚きの声を上げたが、神は動じず、大きく頷いた。

「本気だよ。まず、魔物が生み出される瘴気を潰してもらう必要がある」
「それで何が変わるんですか?」
「すべて取り払えば、瘴気を生み出さない魔王が誕生する」

 この世界における“魔王”とは、瘴気をまき散らして世界征服を企む悪者のこと。
 瘴気を生まない魔王……つまり、ただの魔族になるらしい。
 
 元々はただの魔族だった男が、瘴気にあてられて“魔王”になってしまったのだとか。
 魔王になりたかったわけでも、瘴気を出したかったわけでもなく、本人にも苦悩があるらしい。
 
 ……なんでこんなに複雑な設定にしたんだろう。
 でも、もし魔王も“攻略対象”にしてたとしたら、そうでもしないと恋愛展開に持ち込むのは難しかったかもな。
 できるとすれば、救世主が囚われの身になって魔王と心を通わせるとか、好きになっちゃいけない相手を好きになってしまったとか。だろう。
 私がそんな妄想をしているとは、思いもよらないだろう。……今度ミマさんにネタとして提供してみよう。
 
「瘴気はどうやって払う? そこにいる魔物を全滅させればいいのか」

 まだまだ戦えると知って、やる気に満ちているロク。神はその様子にクスッと笑い、ロクの頭を撫でた。

「瘴気の中心にいるボスを倒せばいい」

 発光体に撫でられて、ロクはちょっと混乱。自分の頭を触りながら、神を見た。

「神って触れるのか」
「うん。中身ちゃんとあるし」
「そうなのか」
「え、こわっ……! 俺は退散するね、じゃ!」

 ロクの興味津々な様子に神はたじろぎ、慌ててその場を退散していった。
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