乙女要素のある死にゲーに転移してしまった件〜帰還エンドのはずが、様子がおかしい〜

勿夏七

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18章

109.変態

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 あまりアデルに近付いて欲しくはないと言っていたが、血を抜くのはそれ専用の注射器が必要だとイナトは言う。なお、指を切るなり刺すなりして溜めればいいだろうと言ったが、イナトが許してくれなかった。
 
 注射器は持ってはいないし、普通の店では売っていないらしい。
 また、血を抜くのはそんなに簡単なことではない。まず血管を見つける必要があるしちゃんとその血の流れている部分に刺さないといけない。
 そんなこと自身でできるわけはないし、このパーティー内でできる者がいるとも思えない。もしかしたら器用なイナトならできるかもしれないが、流石に初めての人に刺されるのは怖いから却下だ。

「解呪できなかったのは、量の問題? それとも救世主の力じゃ無理だったのかな」
「それはわかりませんね。アデルは足りなかったと主張はしていますが……。事実なのかも怪しい」

 イナトとしてはアデルは私に会いたくてそう言っているのだと解釈しているようだ。確かにミマの小説で呪われているのならその可能性は十分にある。だが、どのような内容なのかは見ていないのでわからない。もうイナトとルーパルドは小説の中身も見ているのだろうか。
 
「2人はもう中身読んだ?」
「まあ、僕は序盤のみ」
「俺はダメだって言われました」

 つまらなさそうにルーパルドはイナトが持っている冊子を眺めている。
 イナトはそれを紙袋に入れ私へまた自身の部屋に置いておくよう頼み、私は言われるがまま箱に入れた。

「アデルだけが採血してるわけじゃないかもしれないし、ジュ村に行くだけ行ってみる?」
「そうするのが1番なんでしょうね。ただ、決してアデルに見つからないようしてください」
「難しい注文するなぁ。イナトが私かアデルを見張ってたらいいんじゃない?」
「そうしましょうか……」

 ジュ村に行く理由ができてしまい、クロノダには野暮用があると話して少し早めに切り上げてもらった。
 俺も行こうか? と言ってくれたが、これ以上拗れても困るとして箱から自分の部屋へとさっさと帰ってもらったのだった――
 
 
 ジュ村へと到着後、ルーパルドとロクをアデルの家へと行かせた。
 
 その後、私達は実験用具を両手で抱えていた女性を捕まえた。
 血を使った実験はするものの、注射器は使わず指に針を刺し目分量で事を進めるのが常だと言う。女性が言うにはほとんどの人がそのやり方で、かなり細かく量るのはアデルくらいだと教えてくれた。

「積んでるね」
「ああもう、どうしていつも上手くいかないんですか!」

 イナトは伝書紙をアデルの方向へと飛ばす。きっとルーパルドとロクへ伝えるためだろう。
 返事が来るまでその場で待つことになった私達。
 その間ジュ村の人々を観察する。皆なぜか黒いローブを纏っており、あまり顔を見せたがらない。アデルは白衣のようなものを着ていたが、何の違いがあるのだろう。
 イナトに聞いてみると、イナトは汚れさえも研究するためだと聞いたと話す。
 よくわからない。

 疑問をそのまま置いておいて、村の様子を観察する。家の前に花が育っていたりするが、どれも毒持ちだったり見た目が派手すぎるものだったりと観賞用ではないことは一目瞭然だ。
 家にこだわりはないようで、大体同じ外装をしている。

「ルーパルドから返事が来ました。アデルはいつも通りに見える。ただ、救世主様の名前を出すと少し落ち着きがなくなる、と」
「しっかりミマさんの呪いが効いてそうな感じだね」
「そうですね。とりあえず行きましょうか。アデルならルーパルド1人でも止められるでしょう」

 そう言いつつ、やはり行きたくなさそうな雰囲気を出しているイナト。私だって何をされるのかわからないのだから、行きたくはない。だが、そのまま放置しておくのもよくない。
 私達は重い足取りでアデルの家へと足を運んだ。


 小さな一軒家にたどり着き、イナトが扉を叩く。すぐに扉が開き、アデルが出て来た。

「遅かったじゃないか」

 アデルはいつもより上機嫌で私達を迎え入れた。
 だが、赤面したり触れようとしてこないアデルに驚きを隠せない。ルーパルドもイナトも触れたいと言う気持ちが湧いてくると言っていたからだ。アデルは呪いに耐性があると言っていたし、2人よりも症状は軽いのかもしれない。

「血の効果についてはもうサンプルがしっかりと取れているからな。唾液で試したい」

 この男、自分が呪われているのにウキウキである。

「また口に水を含んだものでいいんですか」
「いや、それじゃダメだ。もっと濃いやつを」

 恥ずかしげもなく言い放つアデル。言われている側としては誰か助けてくれと言いたいくらいだ。

「やり方はどちらでもいい。ワタシとキスをするか、このコップに唾液を溜めるか選べ」
「アデル、血でいいなら血でどうにかしようとは思わないのか?」
「それでは実験にならないだろう。さあ、リン選べ」

 イナトの問いにアデルは話にならないとでも言いたげに言葉を投げ捨て私へと向き直る。
 ハアハアとよく漫画とかで変態がするときの呼吸のようなアデル。まあ、今の姿を見れば誰もが変態だと言うだろう。
 きっとルーパルドがアデルを足止めしていなければ、今頃壁に追い込まれていたところだ。アデルは今も早く決めろとメモリの書いてあるコップを持ち急かしてくる。

「ど、どっちも嫌だ……」

 無意識にイナトの後ろに隠れた私。そんな姿を見てちょっと嬉しそうにするのはやめてほしい。

「呪われてもそこまで支障なさそうですし、放っておいても良いのでは?」
「俺もそう思う。リンが可哀想だ」
「どう見ても今のワタシは可哀想だろう。これではお預けを食らっている犬のようだ」

 ギラギラと興奮を抑えられない犬……。言い得て妙だ。

「イナト、あれって小説内の設定でああなってるの? それともあれが普通なの?」
「……さあ、どうでしょうね」

 イナトはただ失笑するだけだった。
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