誰も映画を観てくれないので、殺人鬼を幼女化してノベライズする

因幡雄介

文字の大きさ
39 / 47
スレンダーマン

女子寮に侵入した

しおりを挟む
*内容をさらにわかりやすくした『映画チャットノベライズ(笑)』のブログもよろしくお願いします。


映画ノベライズブログ(https://inaba20151011.hatenablog.jp/entry/2019/12/26/163339)


 美雪は3階の講義室を歩き回っていた。

 リアナが行方不明になった。

 あれから1週間はたつ。

 講義室には、門平と言左衛門がいた。

 門平はイスに座ったまま、机に顔を伏せ、



「ゆゆしき事態だ。紅一点がいなくなっては、俺は何を楽しみに生きればいいんだ!?」

「紅一点なら、私がいるわよ?」

「ちくしょう! どうなってるんだ! こんなオスばかりの部屋にいたら、息がつまっちまう!」

「すでに呼吸困難起こして幻覚見てるわよ」



 私はツッコみつつも、冷静に考えた。



「……あの動画っ!? 何!?」



 動画の内容を思い出したとき、窓ガラスにヒビが入った。

 廊下に誰か立っている。

 おかげで何を思い出したのか、内容が抜けた。



「お前らだな!? リアナが行方不明になった原因は!」



 男性の声がして、再びガラスに固い物がぶつかる。

 金属バットのようだ。

 次々と窓ガラスをたたき割っていく。

 言左衛門が腰から刀を抜き、



「誰でござるか!?」

「リアナのお父さん!? 待って! 私たちのせいじゃないわよ!」



 私は必死でなだめようと声をかけた。

 しかし男性の攻撃は止まらない。



「ぼくのリアナたんを返せ!」

「ぜってーお父さんじゃないぞ、あれ!」



 門平は机の下に避難する。

 私は講義室の出入り口のドアを開けた。

 男が驚き、私に金属バットを振り下ろす。

 それを片手で受け止め、男をビンタ。

 脳振とうを起こし、男は廊下に倒れる。

 私は男に馬乗りになり、



「正気に戻って! お父さん!」

「ぶっ! ぶひっ! ぶひいっ! やめでっ!」



 情けようしゃなく拳で頬をぶんなぐる。

 男の口や鼻から血が飛び散るなか、門平が私を止め、



「もうやめとけって! そいつ死ぬだろ!」



 羽交い絞めされてしまった。

 男は陸に打ち上げられた魚のように、体をビクつかせる。

 私は立ち上がり、壁に手を置くと、



「怖かった……殺されるかと思った……」

「どういう精神状態!? お前が怖いわ! 逆に!」



 門平に言われてしまった。



 警察を呼ぶと、男は本当にリアナのお父さんではなく、赤の他人だったらしく、殺しても特に問題はなさそうだった。

 くわしく話を聞くと、大学からの帰り道にあらわれないので、私たちが恋人である自分からリアナを引き離したと思ったようだ。

 リアナの所在を知らない彼にはもう用はなく、私たちを殺そうとした殺人未遂の罪を加えて、無期懲役にでもしてもらうことにした。



 深夜。私たちはリアナがどこにいったのか探ろうと思い、彼女が借りている女子寮に潜入することにした。

 さすがお嬢さまだけあって、セキュリティーが頑丈で、侵入するのは難しい。

 しかたがないので、言左衛門にパーティー用の馬のマスクをかぶせて、刀で寮長をおどしてもらい、リアナの部屋の鍵をゲットする。

 あとは好きにしていいわよと、言左衛門に言い残すと、彼は年増な女性の寮長に、馬のマスクをかぶせて、ボディーブローで気絶させていた。

 門平君は終始、何かにおびえているようだった。

 女性寮長が気絶する寸前に言った、「おこめさん!!」という謎の単語が頭から離れない。



 緊張したまま、リアナの部屋に入り、机の引き出しにあった財布から、1万円を抜き取ろうとすると、そっと門平に止められる。

 電気はつけられないので、タンスから下着を盗もうとしたとき、言左衛門がノートパソコンを見つける。

 そんなものに興味はないと首を振ったが、門平がどうしてもタンスをブロックしてきたので、しかたなくノートパソコンの電源を入れた。



「うっ……何、これ……」



 ノートパソコンのデスクトップには、大学の論文のファイルが張られていた。

 電子メモには、レポート提出日が書かれている。

 1つ、電子ファイルを開いてみると、そこにはズラリと図や英語の文章が書かれていた。



「なんてマジメなの……狂ってるわ」

「お前がな」



 門平が驚きもせず、私にツッコんでくる。

 リアナの暗黒部分がまったく見られないので、私はすでにしらけていた。



「うん? 誰かとチャットしてたみたいでござるな?」



 宮本君がチャットルームを開いた。

 そこには、『クランプ』と書かれた人物がいた。



「まさか、大統領!?」

「違うだろ。大統領はそんなに暇じゃないだろ」

「探ってみる必要がありそうね」



 門平を押しのけて、私はクランプと名乗る人物と、チャットすることにした。

 名前はリアナにしておいたほうが、やつも油断するだろう。



リアナ『北の国はいつヤルの?』

クランプ『いつかヤルさ』



 返事はすぐにきた。



「モノホンだわ!」

「絶対違うって」

「じゃあ、移民はいつヤルのって聞くわ!」

「やめときなさいって。国際問題でしょ。それ」



 門平がしぶい顔をする。



クランプ『君はリアナではないな?』



 見抜かれた。

 正直に答えるしかない。

 情報を引き出すためだ。



リアナ『よくわかったわね。そうよ。私はリアナの下着を盗みにきただけ』

クランプ『ごまかすな。彼女がどこに行ったのか、知りたいんだろう?』

リアナ『いいえ。私は彼女のお金と下着に興味がある』

クランプ『いいだろう。彼女を連れ去った者を教えよう』



 クランプが私の網にかかった。



「バカね! 引っかかりやがったわ!」

「うそだろおい! なんで引っかかるの!?」



 門平が私のすごさに驚く。



「静かにするでござる。周りが起きてしまうでござろう」



 リアナのブラジャーをかぶった言左衛門が、真剣な表情で私をしかる。

 うふふ。クマちゃんみたい。

 言左衛門の頭から盛り上がった、下着の胸の形を見て、門平が口を引きつらせていた。



クランプ『やつの名前は萌美』



 クランプが延々とチャットで何かを語っていたが、私と門平は言左衛門にくぎ付けだった。


*内容をさらにわかりやすくした『映画チャットノベライズ(笑)』のブログもよろしくお願いします。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

処理中です...