ひ弱な竜人 ~周りより弱い身体に転生して、たまに面倒くさい事にも出会うけど家族・仲間・植物に囲まれて二度目の人生を楽しんでます~

白黒 キリン

文字の大きさ
132 / 318

青の村にて 異常な内部と取引

しおりを挟む
 大髭おおひげ様の口の中を進んでるわけなんだけど広い。たぶん一軒家を通り抜けるくらい歩いてるのに、まだ口の中だ。大髭おおひげ様は口を大きく開けてガボッと丸呑みにする種類の魚みたいだから、これくらい口が大きくなるのも当たり前なのかな?

 おっ、ようやく口の中を歩ききって喉の入り口に着いた。それでその喉の入り口から食道を覗き込んでも出口である胃は見えない。魚ってそこまで食道が長くないと思ってたんだけど、大髭おおひげ様くらい身体が大きかったら喉と食道はちょっとした洞窟みたいだ。とりあえずこの喉や食道を通らないと目的地の胃まで行けないから進もう。

 ……やっぱり身体の中って色んな音がするんだな。心臓の鼓動に、血液が流れるザーっていう音、呼吸音、明らかに弱ってても生きてる命の音がする。前世の僕の死ぬ間際の僕の命の音はどんな音だったんだろう? 今の僕の命の音はどうだろう? 今は生きてるって思えるから、きっと良い音になってるって思いたい。



 そんな事を考えながら大髭おおひげ様の食道を進んでいると狭くなってきた。どうやら食道の出口、または胃の入口に着いたみたいだね。ここは本来なら胃に入った食べ物が逆流しないよう防ぐ弁みたいに閉じているけど、今は僕の鎮める青リリーブブルーで緩んでて胃の中まで素通りできる。……それにしても、ここまで来るのにとにかく長かくて大神林だいしんりんの中を散歩してるより長く思えた。

「これはひどいというか異常としか言えないな……」

 僕は胃の中を一目見て思わずつぶやいてしまった。いや、僕じゃなくても大髭おおひげ様の胃の中の見た人は僕と同じように感じると思う。なぜなら大髭おおひげ様の胃の中が、どう考えても消化できない岩石と鉱物で埋め尽くされているからだ。何で大髭おおひげ様は、こんなものを食べたのかっていう疑問もあるけど、沈んでた理由は納得できる。

「ここまで岩石とか鉱物を溜め込んでたら、いくら身体の大きな大髭おおひげ様でも重さで動けなくなるはずだよね。大髭おおひげ様は肺魚だから水面に出れないと呼吸もできないし本当に水中から引き上げて良かった」

 それで大量の岩石と鉱物でパンパンになっている胃の状態はといえば、血の匂いがするから同調で確認するまでもなく胃壁全体に傷が無数にできているみたい。でも同調で詳しく確認しても破れてる部分がないのは不幸中の幸いだ。ただ、この大量の岩石と鉱物を除去しないと胃壁の治療ができない事は問題だね。それに大量の岩石と鉱物でパンパンに膨らんだ胃のせいで他の内臓の圧迫してるみたいだし、まずは運び出しからか。

強化魔法パワーダ

 僕は身体を魔力で強化して近くにあった手頃な大きさの岩石を抱えた。樹根触腕ルートハンドを発動させれば一気に運べるけど、さすがに大髭おおひげ様の体内に植物を植えたくない。まずは外のみんなに胃の中がどういう状況になってるか説明するために一個運び出そう。



 僕が大髭おおひげ様の口の中から出ると、……たぶんラカムタさんとヌイジュかな? 二人が音にするとシュバババババババババッていう感じで高速で動いていた。速くてよく見えないけど、二人は近づいたり離れたりしてるから殴る蹴るの打撃で戦ってるみたいだね。

「ヤート、大髭おおひげ様の治療は終わったのか?」
「え?」

 ラカムタさんがいつのまにか僕の隣に立っていて、ヌイジュの方を見たら直前まで戦っていたラカムタさんがいなくなったせいで右手を突き出そうとした中途半端な体勢で固まっていた。

「ヤート?」
「あ、うん、まだ治療はできてない」
「なんでだ?」
「今、僕が持ってるみたいな岩石や鉱物が大髭おおひげ様の胃の中に詰まってて取り除かないと胃壁の治療ができない」

 僕が言うと広場にいたみんながサーッと青ざめた雰囲気になってる中、ハインネルフさんが近づいてくる。

「ヤート殿が抱えてるものを見せてもらいたい」
「はい」

 僕がハインネルフさんに持っていた岩石を渡すとハインネルフさんは岩石をじっと見た後、僕に聞いてきた。

「……これは大霊湖だいれいこの底の方のものだな。このようなものを大髭おおひげ様が? いや、後だ。この胃の中に詰まってる奴を運び出せば良いのだろうか?」
「そう、全部外に出せれば胃壁の治療もできるし他の内臓への圧迫もなくなるよ」
「わかった。皆のもの聞いていたな!! 静かに素早く大髭おおひげ様の胃の中の岩石と鉱物を運び出せ!!」
「「「「「おう!!」」」」」
「僕の鎮める青リリーブブルーで身体の中に入られる負担を減らしてるだけで全く無いわけじゃないから、できるだけ静かにお願い」

 青の大人達が僕にうなずいて次々と大髭おおひげ様の中に入っていく。イーリリスさんはイリュキンといっしょに大髭おおひげ様の表面を水で潤す役目に専念するみたい。……あれ? 僕は大髭おおひげ様を見たまま動かないヌイジュに近寄って話しかけた。

「手伝ってくれないの?」
「なぜ俺が貴様に力を貸す必要がある!?」
大髭おおひげ様を水中から引き上げる時には手伝ってくれてたから、これも手伝ってくれるかなって思った」
「なっ!! それは……」
「うーん……条件をつけたら手伝ってくれる?」
「条件だと?」
大髭おおひげ様の治療が終わったら僕の事をお前の好きにして良いよ。だから手伝って」
「ヤート!! 変な事を言うんじゃねえ!!」

 僕とヌイジュのやり取りを見ていた兄さんが叫んだ。僕としては一人でも多くの運び手がほしいし真っ当な取引だと思うんだけど変な事かな?
 
「……どういうつもりだ?」
「今の僕にとっては大髭おおひげ様を治す事が最優先だから僕の命を含めて他の事はどうでも良いって言ったよね?」
「…………やはり貴様は異常者だ」
「そうかもね。それで手伝ってくれるの?」
「……チッ」

 ヌイジュは舌打ちした後に大髭おおひげ様の方に走っていく。僕も三体に万が一、大髭おおひげ様が動いた時に少しでも抑え込めれるように警戒をお願いして、また大髭おおひげ様の中に戻った。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
 最後まで読んでいただきありがとうございます。

 注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。

 感想や評価もお待ちしています。
しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】それはダメなやつと笑われましたが、どうやら最高級だったみたいです。

まりぃべる
ファンタジー
「あなたの石、屑石じゃないの!?魔力、入ってらっしゃるの?」 ええよく言われますわ…。 でもこんな見た目でも、よく働いてくれるのですわよ。 この国では、13歳になると学校へ入学する。 そして1年生は聖なる山へ登り、石場で自分にだけ煌めいたように見える石を一つ選ぶ。その石に魔力を使ってもらって生活に役立てるのだ。 ☆この国での世界観です。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

処理中です...