168 / 318
青の村にて 声と声
しおりを挟む
……ここに来るのは久しぶりだな。一応の確認のために界気化した魔力を周りに放ってみると、いつもと得られる情報が違うから現実世界じゃないとわかる。
現実世界だと物質としての情報・その物質がたどった記憶・物質に宿っている魔力の情報なんかがあるのに、この世界だと魔力のみの情報しかない。要は僕を含めて魔力だけでで構成された夢みたいな世界って事だね。
僕が現実世界にいない事はわかった。問題は、どの方向を見ても地平線の向こうまで白い大地が続いてるだけで、特に目立つものが何も無い事だ。動いてるのは僕以外だと夜空の流れ星のみ。さて、どうしようかな。
…………まあ、久しぶりに来れたわけだし、滅多に見れない流星群を楽しむか。僕は白い大地に座って夜空を見上げる。
そうして、しばらく流星群を見ていたら微かにキィーンという音が聞こえ、世界がブレていく。その後ブレが落ち着くとほんの少し世界が変わった気がした。
『ヤートよ。久方ぶりだな』
「前に話したのは大神林の奥で魔石を倒した後なので、本当にお久しぶりです」
『よくぞ大霊湖に潜んでいた魔石を滅してくれた。礼を言う』
「僕一人だけで倒したわけじゃないので気にしないでください」
『本来ならば世界に仇なす存在を滅するのは我の役目にも関わらず、ヤートに負担を強いている事が、自由に動けぬ我が身が歯がゆいのだ……』
「適材適所です。それに魔石との戦いは面倒くさいものでしたが、辛くはないので大丈夫です」
『……すまんな』
声は僕の事を真剣に考えてくれていた。確かに魔石を倒すのは大変だったけど、なかなかできない長旅とか大霊湖が見れたとかの良い事もあったから、本当に気にしなくて良いのにな。……うーん、なんかこのままだと、声はもっと気分が沈みそうだから、聞きたい事を聞いて気をそらそう。
「一つ聞いても良いですか?」
『なんだ?』
「前に話した時は大神林の奥で魔石を倒した直後だったのに、なんで今回はそれなりに時間があいたんですか?」
『理由は二つある。一つはヤートが大霊湖の源泉に浸かり治療に集中せねばならない危険な状態だったためだ』
「……僕はそこまで危なかったんですね」
『家族や仲間に心配をかけぬようにな』
「えーと……善処します。それで二つ目はなんですか?」
『莫大な魔力を発する大霊湖は、こちらから干渉するのは難しく相応の備えを必要とする場所なのだ』
「それじゃあ僕が世界樹の杖を触ってこの世界に来た事や、この世界がブレてからあなたの声が聞こえたのは……」
『わしが世界樹の杖を通じてヤートをこの世界に呼んだためと、この世界に呼んだ後でも大霊湖の発する莫大な魔力の影響を最小限に抑えるために調整する必要があったからだ。その世界樹の杖は良いものゆえ大切にすると良いだろう』
「もちろんです。世界樹の杖がなかったら、もしかしたら僕は今ここにいなかったかもしれませんからね」
『それでは直接その言葉を伝えてやれ』
声がそう言うと僕のすぐ目の前がピカッと緑色に光り、光がおさまると現実世界の若木状態じゃない杖の形の世界樹の杖が浮いていた。現れた世界樹の杖は僕の方へと浮かんだまま近づいてくるので、僕は現実世界と同じように手を伸ばして世界樹の杖に触れる。
『ヤット、カエッテキタ』
世界樹の杖の声はディグリに似ていて、ディグリを幼くした感じだ。魔力の気配が似てるんだから当たり前と言えば当たり前だね。いろいろ聞きたい事はあるけど、まずは精一杯の感謝を言おう。
「魔石との戦いで魔法の手助けしてくれてありがとう。あの規模の魔法は僕だけじゃ絶対に無理だったから本当に助かったよ」
『ハジメテダッタケド、ウマクデキテタ?』
「うん、大丈夫だったよ」
『デモ……倒レタ』
「それは僕の身体の方の問題で、お前のせいじゃない」
『ソンナコト……ナイ』
世界樹の杖は僕が倒れた事を気にしていた。やっぱり世界樹の杖も優しい奴だ。欠色の自分を卑下するわけじゃないけど、僕の頭には瑞々しい若木の状態になった世界樹の杖の姿が浮かんでいる。
「……もしかしたら欠色の僕だと、これ以上お前の力を引き出せないかもしれない。それにお前は元々は世界樹の一部だから植物の姿でいるのが正しいのかもしれない。できればこれからも力を貸してもらいたいから、いっしょに来てほしいけど、もし杖じゃなくて樹木に戻りたいなら『イッショニイク』……良いの?」
『ウン、イッショニイタイ』
「……ありがとう」
僕がお礼を言うと世界樹の杖は緑色の光を放ち杖の先端から蛇のように動き僕の腰に巻きついていく。……世界樹の杖が成長してるから前よりも重いけど、それでも腰に重みを感じるいつもの状態になったからしっくりくる。
せっかくいっしょに来てくれるんだ。世界樹の杖の使い手として恥じないように、これからも成長していこう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
現実世界だと物質としての情報・その物質がたどった記憶・物質に宿っている魔力の情報なんかがあるのに、この世界だと魔力のみの情報しかない。要は僕を含めて魔力だけでで構成された夢みたいな世界って事だね。
僕が現実世界にいない事はわかった。問題は、どの方向を見ても地平線の向こうまで白い大地が続いてるだけで、特に目立つものが何も無い事だ。動いてるのは僕以外だと夜空の流れ星のみ。さて、どうしようかな。
…………まあ、久しぶりに来れたわけだし、滅多に見れない流星群を楽しむか。僕は白い大地に座って夜空を見上げる。
そうして、しばらく流星群を見ていたら微かにキィーンという音が聞こえ、世界がブレていく。その後ブレが落ち着くとほんの少し世界が変わった気がした。
『ヤートよ。久方ぶりだな』
「前に話したのは大神林の奥で魔石を倒した後なので、本当にお久しぶりです」
『よくぞ大霊湖に潜んでいた魔石を滅してくれた。礼を言う』
「僕一人だけで倒したわけじゃないので気にしないでください」
『本来ならば世界に仇なす存在を滅するのは我の役目にも関わらず、ヤートに負担を強いている事が、自由に動けぬ我が身が歯がゆいのだ……』
「適材適所です。それに魔石との戦いは面倒くさいものでしたが、辛くはないので大丈夫です」
『……すまんな』
声は僕の事を真剣に考えてくれていた。確かに魔石を倒すのは大変だったけど、なかなかできない長旅とか大霊湖が見れたとかの良い事もあったから、本当に気にしなくて良いのにな。……うーん、なんかこのままだと、声はもっと気分が沈みそうだから、聞きたい事を聞いて気をそらそう。
「一つ聞いても良いですか?」
『なんだ?』
「前に話した時は大神林の奥で魔石を倒した直後だったのに、なんで今回はそれなりに時間があいたんですか?」
『理由は二つある。一つはヤートが大霊湖の源泉に浸かり治療に集中せねばならない危険な状態だったためだ』
「……僕はそこまで危なかったんですね」
『家族や仲間に心配をかけぬようにな』
「えーと……善処します。それで二つ目はなんですか?」
『莫大な魔力を発する大霊湖は、こちらから干渉するのは難しく相応の備えを必要とする場所なのだ』
「それじゃあ僕が世界樹の杖を触ってこの世界に来た事や、この世界がブレてからあなたの声が聞こえたのは……」
『わしが世界樹の杖を通じてヤートをこの世界に呼んだためと、この世界に呼んだ後でも大霊湖の発する莫大な魔力の影響を最小限に抑えるために調整する必要があったからだ。その世界樹の杖は良いものゆえ大切にすると良いだろう』
「もちろんです。世界樹の杖がなかったら、もしかしたら僕は今ここにいなかったかもしれませんからね」
『それでは直接その言葉を伝えてやれ』
声がそう言うと僕のすぐ目の前がピカッと緑色に光り、光がおさまると現実世界の若木状態じゃない杖の形の世界樹の杖が浮いていた。現れた世界樹の杖は僕の方へと浮かんだまま近づいてくるので、僕は現実世界と同じように手を伸ばして世界樹の杖に触れる。
『ヤット、カエッテキタ』
世界樹の杖の声はディグリに似ていて、ディグリを幼くした感じだ。魔力の気配が似てるんだから当たり前と言えば当たり前だね。いろいろ聞きたい事はあるけど、まずは精一杯の感謝を言おう。
「魔石との戦いで魔法の手助けしてくれてありがとう。あの規模の魔法は僕だけじゃ絶対に無理だったから本当に助かったよ」
『ハジメテダッタケド、ウマクデキテタ?』
「うん、大丈夫だったよ」
『デモ……倒レタ』
「それは僕の身体の方の問題で、お前のせいじゃない」
『ソンナコト……ナイ』
世界樹の杖は僕が倒れた事を気にしていた。やっぱり世界樹の杖も優しい奴だ。欠色の自分を卑下するわけじゃないけど、僕の頭には瑞々しい若木の状態になった世界樹の杖の姿が浮かんでいる。
「……もしかしたら欠色の僕だと、これ以上お前の力を引き出せないかもしれない。それにお前は元々は世界樹の一部だから植物の姿でいるのが正しいのかもしれない。できればこれからも力を貸してもらいたいから、いっしょに来てほしいけど、もし杖じゃなくて樹木に戻りたいなら『イッショニイク』……良いの?」
『ウン、イッショニイタイ』
「……ありがとう」
僕がお礼を言うと世界樹の杖は緑色の光を放ち杖の先端から蛇のように動き僕の腰に巻きついていく。……世界樹の杖が成長してるから前よりも重いけど、それでも腰に重みを感じるいつもの状態になったからしっくりくる。
せっかくいっしょに来てくれるんだ。世界樹の杖の使い手として恥じないように、これからも成長していこう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
36
あなたにおすすめの小説
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【完結】それはダメなやつと笑われましたが、どうやら最高級だったみたいです。
まりぃべる
ファンタジー
「あなたの石、屑石じゃないの!?魔力、入ってらっしゃるの?」
ええよく言われますわ…。
でもこんな見た目でも、よく働いてくれるのですわよ。
この国では、13歳になると学校へ入学する。
そして1年生は聖なる山へ登り、石場で自分にだけ煌めいたように見える石を一つ選ぶ。その石に魔力を使ってもらって生活に役立てるのだ。
☆この国での世界観です。
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!
犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。
そして夢をみた。
日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。
その顔を見て目が覚めた。
なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。
数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。
幼少期、最初はツラい状況が続きます。
作者都合のゆるふわご都合設定です。
日曜日以外、1日1話更新目指してます。
エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。
お楽しみ頂けたら幸いです。
***************
2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます!
100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!!
2024年9月9日 お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます!
200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!
2025年1月6日 お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております!
ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします!
2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております!
こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!!
2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?!
なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!!
こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。
どうしよう、欲が出て来た?
…ショートショートとか書いてみようかな?
2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?!
欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい…
2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?!
どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる