ひ弱な竜人 ~周りより弱い身体に転生して、たまに面倒くさい事にも出会うけど家族・仲間・植物に囲まれて二度目の人生を楽しんでます~

白黒 キリン

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青の村にて 立ち会いの申し出と弱点

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 さて、小休憩もできたし僕も兄さん達に置いていかれないよう頑張ろう。僕は界気化かいきかした魔力を全身から放ちつつラカムタさんの顔を見る。

「ラカムタさん」
「ヤート、どうし……お?」

 ラカムタさんは僕の頭から手を離す前に、いつのまにか僕が一歩退がっていた事に気付きポカンとした顔になった。

「だいぶ界気化かいきかした魔力を放つのに慣れてきたよ」
「今のはヤート殿に呼びかけられた事で、ラカムタ殿の意識が手から逸れた時を界気化かいきかした魔力で感知したのですね」
「そして、ヤート殿はその瞬間を逃さず一歩後ろに退がったわけですな」
「イーリリスさんとタキタさんの言う通り。僕の動きはどうだった? ラカムタさん」
「…………大したもんだ」

 ラカムタさんは自分の手と僕を見てから苦笑した後に褒めてくれた。

「ありがとう。まあ、これは今のラカムタさん相手だからできたんだけどね」
「俺は昨日のハインネルフ殿達との手合わせで、それだけ消耗して鈍ってるってわけだな」
「そういう事。だから、ゆっくり休んで。ハインネルフさん達もだよ」
「わかった。ゆっくりさせてもらおう」
「うむ、了解だ」
「うふふ、わかりました」
「ホッホッホ、承知しましたぞ。ヤート殿」
「それじゃあ僕は、また手合わせをしてくるね」

 ラカムタさん達に頭を下げてから、手合わせで盛り上がっている広場の中央に歩いていく。でも、僕はすぐに立ち止まる。なぜなら……。

「僕に何か用? 青のヌイジュ」
「…………」

 僕を嫌っているはずの青のヌイジュが、僕の進行方向に立って僕をジッと見ているからだ。

「要件は何?」
「…………」

 ヌイジュは何も答えてくれないけど、この場合はどうするべきなんだろ? ……表情は少し眉間にシワが寄ってるくらいで、界気化かいきかした魔力を放ってみても害意は感知できない。…………考えてもわからないから割り切るか。僕は再び歩き出しヌイジュに近づいていく。

「ヤート‼︎」

 ラカムタさんが大声を出した事で、周りのみんなも僕とヌイジュに気付き空気が張り詰める。そしてヌイジュを見る兄さん達の気配が刺々しいものになった時に、僕はヌイジュから三歩離れたところにいた。……何も起こらない。

 二歩まで近づく。……何も起こらない。

 さらにヌイジュへと一歩近づく。ラカムタさん達がいつでも動けるように構えたけど何も起こらない。

 とうとう僕はヌイジュの右横を通り抜けた。……やっぱり何も起こらない。僕を見てただけで特に用はなかったのかな?

「…………待て」

 どうやら僕を見てただけじゃなくて、本当に用があったらしい。僕はヌイジュの方を向き改めて聞いてみた。

「僕に何か用?」
「…………俺と立ち会え」

 ヌイジュの言葉を聞いて三体も警戒心を表に出し始める。今までの事があるとはいえ、ここまでみんなに反応されるのはある意味すごいな。それはそれとしてヌイジュは、どういうつもりなんだろ?

「ずいぶんいきなりだけど、なんで僕がヌイジュと立ち会う必要があるの?」
「……お前は鍛錬のために手合わせの数を重ねる事を望んでいるはず。ならば俺とも立ち会え」
「なるほど……確かにそれはそうだね」
「決まった相手とだけで手合わせしたいならば断れ」

 僕がヌイジュにどう答えようか考えながら周りを見ると、兄さん達やラカムタさんが小さく断れっていう感じの動きを手でしていた。ラカムタさん達は反対か。でも、ヌイジュの言ってる事にも筋が通ってる。それなら……。

「わかった。立ち会いをしよう」
「始めるぞ。構えろ」
「スー……、ハー……。いつでも良いよ」
「「ヤート‼︎」」
「「ヤート君‼︎」」
「「「ヤート殿‼︎」」」

 兄さん達は僕とヌイジュの間に割って入ろうとしたのは、僕がヌイジュの申し出を受けた後だった。

 立ち会いの始まりはヌイジュからで、界気化かいきかした魔力を放ちながら構えた僕の顔へと速く鋭い右突きを繰り出してくるのを感知する。僕はヌイジュの右突きを避けて懐に入り込むつもりだったけど、すでに左突きが僕を狙っていたため、懐へ入るのをやめてヌイジュから離れた。

 ヌイジュはそんな僕を見て淡々と事実を積み重ねるように話し出す。

「お前が界気化かいきかを使えるのは知っている。そして界気化かいきかを使い、相手の奥底まで読めるようになっている事もな」
「……」
界気化かいきかは相手の思考を事前に知れるという意味で強力だ。しかし、相手の速さが圧倒的に勝っている場合、先読みしていてもいずれ追いつかれる。つまり一瞬で相手を制圧できないなら無意味。次にいくぞ」

 界気化かいきかした魔力でヌイジュが僕に蹴りを放つのを感知できたため、僕は素早く蹴りの当たらない位置に移動した。でも……。

「ウッ、……なんで?」

 僕はヌイジュに蹴られた。押すような蹴りだったから痛くはなかったけど、問題はそこじゃない。界気化かいきかした魔力でヌイジュの動きを確認したのに、どうして蹴りが当たったんだ? ヌイジュがため息を吐く。

「……はあ。それなりの実力を持つものならば、考えた事と違う動きをする事も、逆に動かない事も可能。未熟な界気化かいきかに頼る愚を知れ」
「僕は誘導された……?」
「読み取った相手の行動の真偽を判断できる経験がない。読み取れたとしても生かすだけの速さも技術もない。それが今のお前が、界気化かいきかを使いこなせてない理由だ」

 ぐうの音も出ないっていうのは、この事だな。改めて言われると、精神的にガツンとくるものがある。

「他の奴らはお前に優しく甘いゆえ、手合わせの範囲で済ませているが俺は違う。例えお前が接近戦や界気化かいきかの鍛錬をし始めたばかりの格下だとしても、俺は立ち会いでお前の弱点を攻める。覚悟して俺との立ち会いに挑め」

 ヌイジュから重い言葉と意思が伝わってくる。……もしかしたら僕にとって、とても重要な一戦になるかもしれないね。



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◎後書き
 最後まで読んでいただきありがとうございます。

 注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。

 感想や評価もお待ちしています。
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