ひ弱な竜人 ~周りより弱い身体に転生して、たまに面倒くさい事にも出会うけど家族・仲間・植物に囲まれて二度目の人生を楽しんでます~

白黒 キリン

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黒の村にて 帰還と異常のない異常事態

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 青の村からの帰りの旅は、兄さんが大河から出てきた獲物を仕留めてまた溺れたり、僕の魔法をきっかけにして大河の近くに生まれた林の規模が倍ぐらいに拡がっていた以外に目立った事はなく、青の村まで行く時の半分程度の日数で大神林だいしんりんが遠目に見えるところまで順調に戻って来れた。

 でも、今の僕達の間には、帰ってきたという安心感とは真逆の張り詰めた空気が流れている。原因はラカムタさんが大神林だいしんりんの方から微かに聞こえてきた破壊音を耳にしたためで、すぐに僕達を待機させラカムタさん自身は強化魔法パワーダを発動しながら大神林だいしんりんに向かって聞き耳をたてた。

「ラカムタさん、その破壊音は、何を壊してる音かわかる? それと音は連続で出てる?」
「……さすがに離れていてはっきりとはわからんが、この音の感じは地面を打撃で破壊する音のはずだ。それと破壊音の間隔は不規則だな」
「不規則な破壊音……、もしかして誰かが戦っているんでしょうか?」
「黒の村の辺りに好戦的な魔獣はいないはずよ。ヤート、同調か界気化かいきか大神林だいしんりんの様子をわからないかしら?」
「……それじゃあ植物達に聞いてみるね」

 僕は鬼熊オーガベアの背から降りて近くの樹に触れ同調する。そして大神林だいしんりんで何が起きているか教えてと伝えた。



 少しして樹から返ってきた答えは、かなり深刻な内容で思わず大神林だいしんりんの方を見てしまう。ラカムタさん達は、そんな僕の行動と雰囲気から察したのか集まってくる。

「植物はなんて言っていたんだ?」
「…………」
「ヤート?」
「黒の村の広場で村のみんなが戦ってるみたい……」
「村に何か侵入したのか?」
「戦ってるのは村のみんなだけ」
「それは……」
「……本当なんだな?」
「この樹が教えてくれたのは、村の周りの樹々や村の建物に使われてる建材の樹から伝えられた事だから間違いないよ」

 僕の発言に場の空気が重くなり、一つの考えが僕達の頭に思い浮かぶ。

「マタ魔石デスカ……」
大神林だいしんりんは広いから第二の魔石がいたとしても不思議じゃないが、……狙いは何だ?」
「ガル君とマイネさんの時は、魔石自身を大霊湖だいれいこの湖底から掘り出すためでした。村の中で同士討ちさせる理由……」
「理由なんてどうでも良いだろ‼︎ 村に入って魔石を見つけて消し飛ばすだけだ‼︎」
「ガルの言う通りね。魔石は敵よ。絶対に一欠片も残さず滅ぼすわ」
「ガア‼︎」
「ブオ‼︎」
「それなら静かに素早く村に行き、ヤートが魔石を界気化かいきかで見つけしだい全力で排除するぞ」

 確かに兄さんと姉さんの言う通りだね。魔石は絶対に消滅させる。僕達はラカムタさんの号令のもと村へ向かって走り出した。



 できるだけ音を立てずに進んでいた僕達の目に黒の村の門が見えてくる。

「クソ‼︎ こんな明るい時間に門番が誰もいないとかありえないぞ‼︎」
「ラカムタさん、このまま三体もいっしょに村の広場まで行くで良い?」
「……下手に分散するよりは、その方が良さそうだな。ヤート、一応聞くが、魔石を感知できてるか?」
大神林だいしんりんに入った時から界気化かいきかした魔力を周りに広げてるけど、まだ気配も感知できてない」
「……このまま一気に広場の様子が見れるところまで進んで、ヤートを囲む陣形を取る。ヤート、陣形ができたら全力で探れ‼︎ ガル達も三体も良いな⁉︎」
「わかった」
「わかったぜ‼︎」
「わかったわ」
「わかりました」
「ガア‼︎」
「ブオ‼︎」
「了解デス」

 僕達は門から村の中へ入り広場沿いの建物の影までやってきた。そして打ち合わせ通り僕を兄さん達と三体が囲む陣形を取った後、ラカムタさんは建物の角から少しだけ顔を出して広場の様子を伺う。

 ……ここに来るまでに誰とも合わなかったから、やっぱり村のみんなは魔石に操られてるみたいだな。僕は最悪の事態を考えながら界気化かいきかした魔力を最大限放つと、僕の頭に大量の情報が流れ込んできたので、そしてその中から村のみんなの情報を優先する。

「…………え? あれ?」
「ヤート、どうした? まさか、魔石が近くにいないのか⁉︎」
「まず、村のみんなの状態を確かめたんだけど……」
「ど、どんな状態だ?」
「正気なんだ……」
「正気? 何がだ?」
「今、広場で戦ってるみんなは正気で、誰もあの時の兄さんと姉さんみたいに操られてない」
「「「「は?」」」」

 僕が言うとラカムタさん達と三体はポカンとした。正直僕も同じ気持ちだよ。でも、広場にいるみんなの精神を奥底まで探っても、どこにも異常がない。

「……それなら何で、みんな戦ってるんだ?」
「ヤート、確か界気化かいきかした魔力で記憶も見れたって言ってたよな? 今できるか?」
「やってみ「あら? あなた達、帰ってきてたのね。でも、こんなところで何やってるの?」」

 声が聞こえて振り返ると母さんが不思議そうな顔で僕達を見ていた。とっさに母さんに界気化かいきかした魔力を集中して状態を確かめたんだけど、やっぱり心身共に異常のない、いつもの母さんだった。…………いったい何がどうなってるんだ?



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
 最後まで読んでいただきありがとうございます。

 注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。

 感想や評価もお待ちしています。
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