婚約破棄された候爵令嬢は曲者聖職者に気に入られ公私を共にする深い仲になる

白黒 キリン

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第5話

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「「…………」」

 王城へと走る馬車の中、お父様は対面に座っている私をジッと見ながら何か考えているようで屋敷を出発した時から、ずっと黙っている。

 私は、何か聞かれてもいつでも応えれるようにお父様を視界の端におさめつつ、馬車の窓から見える風景を黙って見ていた。

 なぜ名指しされた私も黙っているかというと、お父様は期待をしてない私にも必要だと判断したら必ず言ってくれる人とわかっているので、そんなお父様が私に何も言わないとすれば、おそらく手紙には私が王城へ来るようにとしか書かれてなかったのだろうと納得しているからだ。

 でも、お父様の隣に座っていたエンリエッタは違った。

「ねえ、お父様、先ほどの手紙には何が書かれていたのですか?」

 馬車の中の沈黙に耐えられなかったのかお父様に質問する。

 いやいや、考えてる当主を邪魔してどうするのよ。

 というか、あんたは王城から指名されてないのに殿下に会いたいって言って無理やり馬車に乗ってる立場なんだから静かにしてるべきでしょ。

「…………」
「お父様?」
「…………リリスを王城へ向かわせるようにとしか書いていなかった」
「そうなのですか? リリス、あなた何をしたのよ?」

 思い当たるとしたら昨日の事だけど、言っても良いのかわからないのでごまかす事にした。

「私にもわからないわ」
「……本当に?」
「そうよ」
「ふーん……」

 明らかに怪しんでるわね。

 こういう感が良いというか鼻が利くところは、エンリエッタの厄介なところの一つだわ。

「エンリエッタ、もうすぐ王城に着くから静かにしていろ」
「はーい」

 お父様に返事はするものの、エンリエッタは私をじっとりとした目で見てくるのをやめない。

 …………本当に厄介ね。


◆◆◆◆◆


 王城に到着すると、お父様と私は謁見の間へ通される。

 ここでもエンリエッタが私達に着いてこようとしたけど、さすがにお父様から止められて渋々客間へ入っていった。

 エンリエッタ……、私達を案内してくれた女官が呆れた目で見てたわよ。

 せめてお母様がいたら違ったと思うけど王城での言動には気をつけてほしいわ。

「お父様、王城でエンリエッタのあの言動は……」
「これから王に謁見するのだ。黙っていろ」
「……はい」

 お父様とお母様は、エンリエッタがこのままで良いと思ってるのかしら?

 まあ、私には家中で発言権がないのと、エンリエッタ本人の問題と考えるしかない、か……。

 私の思考は謁見の間で王様とお妃様に並んでいるグレスオリオ様を見て完全に止まった。

 …………グレスオリオ様は明らかに私へ微笑みかけてるわね。

 どうしてかしら、ものすごく帰りたくなってきたわ。

「やあ、リリスリエッタ、昨日ぶりだね。元気そうで何よりだよ」
「グレスオリオ様も、ご健勝そうで何よりです」

 お父様のどういう事だという疑問、王様と王妃様の不安を感じながら、私はグレスオリオ様へ返礼をする。

 本当に帰りたいわ。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
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