╂AVALON-ROAD╂【地の章】

ガンガルガン

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第4幕【誕生:レダの騎士】

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腹の虫がなったお陰で場は和み、俺は改めて聞いてみる

「この国に来る途中、東には広大な土地が手付かずとなっておりますが如何致したのでしょうか?」

王は顔を曇らせてこう言った

「あの土地は夜になると魔物が出やすく、そのためか土地も毒に侵されておる。何度か試みたが駄目であったのだ。

何人もの民が犠牲になっておる」

王の目は悲しみに暮れ目を細めながら遠くを見つめた


「ここに来る途中、同じような村を見たことがあります。しかしその村は豊かに農耕をし、農民は笑みを絶やさず暮らしております。」

「ほう、その方法とは?」
王は身を乗り出した

「私の見る限り、あの土地の外れに魔物が身を潜めやすい森がございます。まずその森を切り開き、魔物が嫌がるリーテの木を植えるとよいでしょう」

しかし、王は問う

「だが土地は毒に侵され荒れ果てておるではないか?」

「その土地を歩いてきましたが、獲物を探し禿鷲が上空を舞っておりました。完全に侵されていればそういうことはないでしょう。
切り開いた森の一角に礼拝堂を建て、神官が祈りを捧げていれば、やがて浄化されると思います」

「なる程…」

「また荒れ果てた土地に水を引きましょう。北の丘から水路を引けばおのずと潤い、良い農地になると思います」

「それはいつまでに終わると申すか?」

「リーテの葉が黄色に染まるまでには」

「それが可能か?」

「御意」


王はすっくと立ち上がった
慌てて2人の神官が彼を支える


そして、ゆっくと近寄ってきた


2人の神官に付き添われ、王はゆっくりと歩み寄る

「そなた、名を何と申す?」

「エステリオス・レム・ダイクン・ローヴェス・エルトワ」

「なんと!エルトワとな!?
そなたはエルトワ国の生き残りか?
そなたの親は?」

王は驚きに満ちていた


「私が産まれる日、私を護るため絶命したと聞いております」

「そうであったか…

だがその名は口にするでない、よいか」

えっ?と顔を上げる

王は言う

「大法魔国家エルトワ……
不死の呪文や魔界錬金術を使い繁栄を誇ったといわれるが、それも2000年以上も前の事だと伝えられておる

その宝典を探し、そなたを付け狙うヤカラもいるかもしれん…よいな」

「はい…」


「ではエステリオスよ。レダの民の力となれ」

そう言うと耳元でまた小さく囁いた
「実は、わしも市場の女将には世話になっておってのう」

俺はすぐに全てを理解した

あの女将は俺の身を案じ、今回の一件をいち早く王に伝えに来ていたのだ

ハッとして王を見る

王は満面の笑みを浮かべている

俺はこの国の全てが気に入ってしまったようだ…


「仰せながら申し上げます」

「何なりと申すがよい」

「隣国の不穏な動きが本当であれば、それもまた必要なこと。
こちらから戦わずとしても、民を守るため監視の目は必要かと存じ上げます。それにつきましては、彼が適任かと」

そう言って後ろを見ると、ジークはきょとんとした目で俺を見た


「ハァハッハッハ!

益々そなたが気に入った。エステリオスよ、そこになおるがよい」

両手を広げると神官達は後ろに下がりながら剣を差し出す

王は剣を抜き俺の肩にそっと置く


俺は深々とこうべをたれた

「エステリオスに東部土地開拓長を命ず。また南部に於いて、監視用砦の建設を許可する」

「ジークよ。エステリオスの元、知恵を搾るがよい」

「ははっ!」
ジークの声が響く


「そしてエステリオスよ…この宝剣と我が守護神ゼムレットの御前にて、そなたに騎士の位を授けよう。
これからも【レダの騎士】として、民のために力を貸してはくれぬか。
わしからも頼む」

剣を通じその思いをひしひしと感じる

「この命にかけましても」
俺は身の引き締まる思いがした





「お~っと、忘れるところであった」

王は振り向きながら言う

「まずは食事が最優先であったな。
すぐに用意させよう」

そういうと、レダの王はまた笑った


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