╂AVALON-ROAD╂【地の章】

ガンガルガン

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第5幕【がんばれ:ローヴェス卿】

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-東部開発地域-


あれから俺は一生懸命働いた

森を切り開き、リーテの木を植え、今は用水路の工事に取りかかっている
―リーテの木は主に魔法の杖などに使われ、破魔効果がある―


青の月が1つ流れ、ますます暑くなるところだ
―この世界には月が2つあり、上下に並ぶとひと月、重なると1年となる―

時には魔物も襲ってくるがすぐに追っ払う

参加している民たちも安心して仕事が出来ることに感謝しているようだ


「ローヴェス卿!」
子どもたちも気さくに手を振る子や、勢いよく抱きついてくる子もいる

やっとレダに馴染んできたようだ

今まで、1人で各国を放浪してきただけに、人のふれあいは忘れていた何かを思い出させてくれる

また、この地域には珍しく切り開いた森にイムダムの実がなっており、それをマーガスの爪と一緒に煎じれば、心の臓の薬となる

ここの神官は知らないのであろう
イムダムの実は本来毒ではあるが、きちんと処方すればれっきとした薬となる


薬の効き目で王も最近は気分がいいようだ


あの男?

ジークは謁見の間以来、俺に一目置くようになった

あれから王の気まぐれで3回ほど試合もしたが3戦3勝
双剣使いの俺が負ける訳がない

俺は実践で鍛えたマイスタークラスだからな

ジークも相変わらず民からは嫌われてはいるが、徐々に心を開いているようだ

彼もまた砦の建設中にとりかかっており、わからないことは色々と聞いてくる

まともに話しをするのも俺ぐらいだが、酒が入ると情にもろい所もある

奴に関しては、結構好きなタイプだ


あれから女将のところにも寄ってみた

あとから聞いた話しだが、あの女将は若い頃城内の侍女として働いていたようだ
その頃から王が世話になっているということは…

まあ、これ以上の詮索はよそう

王の名誉のためだ

今の女将の姿には昔の面影はない


そんなこんなで1日が終わると死んだように寝る毎日

それがなにげに心地よい






月日も2つ流れ、今日も作業を行っている

用水路もだいぶ終わり、森の方でも礼拝堂の建築の準備が着々と進んでいた

森に向かう途中、こちらに向かう一行が目に入る

白い馬4頭に引かれる白い馬車

馬の足並みは規則正しく、その馬車にはなにかしらの装飾が施されている

明らかに使者のような雰囲気であり、それはまっすぐに城の方へと向かっていく

どうしたんだろう‥
「みんな、ここを頼む」

おう
という言葉に押され、俺は足ばやに城へと戻った


―城内―

 足早に城前に着くと、門兵が目も虚ろに座り込んでいる

「おい!どうしたんだ!?」

何度聞いてもヘラヘラと笑いうわの空だ

「これは、一体‥」
俺は慌てて城内に駆け込んだ



中庭でも警護兵や貴族の者も顔つきがとろんとしており意識が全くない状態だ

(何があったというのだ?)

Σはっ!?
このままでは王が危ない!
急いで階段を駆け上がる


―謁見の間―

 やっとのことでたどり着いてはみたものの、俺の心配とは裏腹にその場はいつもと変わりない状況であった

王を始め側近達はじっと1人の女性を見つめている

その28の目はその使者一点に注がれていた

すでに口上は始まっている

口上が始まれば如何なる者も口を挟むことは出来ない

俺は速やかに列に並んだ


その使者のまとう服は、白いドレスの縁に金の刺繍をしており、頭から白いレースをかぶっている

肌は色白でレースの合間から見える瞳は、マグリット海よりも深き緑色で、見つめられると深みに飲まれてしまいそうだ


「たしかにこの世の者とは思えぬ美しさ」
誰もがそう思うだろう

だが、何か変だ!?

側近たちも王もどことなく目がうつろだ
この静寂さに異様な違和感がある

そういえば、ここを根城にしている『月呼鳥』の姿がない

使者の口上は更に続く

俺は彼女を視た
その心の真意を探るために‥



それに気づいたのかその使者は、俺の目を見つめ赤き唇は何かを唱え微笑んだ

◆ドゥン!

「うっ!頭がクラクラする‥」
頭をかかえて腰を落とした

頭の中が優しく歌う天使でいっぱいになり彼女をいつまでも見ていたい気分だ


◆ズキッ!
しかし俺はその痛みに我に帰った

無意識に匕首を抜き、尻に刺していたのだ

まずい
これはチャームの魔法かっ!?
意識を取り戻した俺は剣の柄を握る

しかし、体は前に動かない
添えている右手は柄に張り付いているかのように全く抜くこともできなかった

それを見た使者は笑みを浮かべながら王の方を向き、何もなかったかのように口上を続ける

「では、美しき使者の言われる通りとしよう。まずはゆっくりされるがよい」

聞き終えた王は速やかにその場をあとにした


声をかけたいがそれすら出来ない
額から汗がしたたり落ちる


謎の使者が軽くお辞儀をし付きの者と共に部屋から出ると、やっとその呪縛は解かれた

「ふぅ~」

俺は大きくため息をついた
手が汗でびちょひちょだ

神官たちも何事もなかったかのように、いつもの職務についている

取りあえず部屋に戻ることにした




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