╂AVALON-ROAD╂【地の章】

ガンガルガン

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第6幕【妖艶:麗しき使者】

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「さて、どうするべきか‥」

その夜、俺は部屋で考えていた

どちらにしても真意を探らねばならない

「‥どちらが先に動くか…か」
俺は酒を一口飲み、そのグラスを回した

◆トントン
すると、扉を叩く音がするのでドア越しに耳をすます

「誰だい?こんな遅くに」




「ローヴェス様…
わたくしは昼間お会いした者でございます。折り入ってお話ししたいことがあり、こうしてお伺い致しました…」

扉の向こうから妖艶な声がする

(‥攻めて来たか)
いい機会だ
どういう話しが聞けるのか楽しみだ

◆ガ‥チャ
俺はゆっくりと…扉を開けた

「これはこれは使者殿。如何されたかな?」

「入ってもよろしいかしら?」

俺は軽くお辞儀をしながら胸に手を当て部屋の中へ招き入れた



女は部屋に入り
ロウソクの炎に照らされる…

その姿はディープエメラルドのドレスに肩をあらわにし、谷間のある胸元にはダイヤのネックレスが輝いていた

灯りに照らされる髪には金糸を編み込んでいるのか、揺れる度にきらきらときらめき…

紅き唇は男を待つかのように憂(ウレ)い…

頬はほんのりと赤く染まる…


それにしてもなんとも香しきいいニオイがする


弁解ではないが、普通の男ならイチコロだろう

こんないい女はめったにいない

琥珀色のグラス越しに見とれてしまう自分に気づき、思わず酒を飲み干した…


ゴホン…

間の保たぬ俺は咳払いをし、こう切り出した

「なに用にレダの王に会いにきたのですかな?」


女はゆっくりと口を開ける

「わたくしは、リグドラ国からまいりましたライアと申す者…」

「ほ~。リグドラといえばレダの隣国であり正に戦争を行わんが為、不穏な動きがあると聞いているが、その布告を告げに来たのなら私がお相手致すが」

◆トクトクトクトク
2つのグラスに酒を注ぎその1つを女に手渡した


「滅相もございません。ローヴェス様…
わたくしはその誤解を解くために、使者として参りました」

その目は訴えるかのごとく涙に憂いでいる

「たしかに内部には、心よく思わぬ者もおります。しかしそれはレダの貴族にもおられるはず…
まずは双方のいがみ合いをなくし友好国として同盟を組めば、両国の心は通い合い自ずと助け合うことこそが神が願う道かと…」
そう言って唇を酒で濡らす

ふぅ~
俺は深く息をはいた

確かにこの女が言わんとすることは、神が願いたもう意志とすることと分かっていた
だれもが戦うことより平和を愛する気持ちは同じだ

しかし、どうしてもふにおちぬ事がある‥

「何故ゆえに魔法をかけたのだ?チャームの魔法を」

女は少し戸惑いながらこう言った

「わたくしは魔法を使っておりません。わたくしの守護神はラーミアン…
わたくしを護るため、いつもオーラを発しているのです。それがチャームの魔法と取られてもしかたありませんが…」

女は涙を浮かべ更に続けて言った
「でもわたくしに遠慮もなく、色目も使わず対等にお話しをする殿方はあなた様が初めてです…」


そう言って、俺の胸元に顔をうずめてきた…

「わたくしはあなた様のお力をお借りしたいのです…
どうか、一緒にリグドラに行って頂けませんか?両国の為にも…」


女は立ち上がり…
ドレスに手をかける

その美しき曲線美をするりと滑り落ちると、柔らかき素肌があらわに俺を誘う
胸元に輝いていたダイヤは彼女を意識するかのごとく主張するが、今となってはくすんでみえるようだ

「この熱い気持ちは酔い?それとも‥」

女は髪をほどきそのまま頭を肩に預けた

鼻の中を悩ましい香りが駆け巡り、煌めく髪は悪戯に俺を誘う
悩ましい顔で俺を見つめ、ゆっくりと目を閉じた

ん~っっ
このまま抱きしめてしまいたい

理性と性欲が頭の中で入り乱れている頃、主人を失った両手はその肩に優しく触れた
















「えっ!?」


女は驚いている…

俺も驚いている…



俺の意志とは裏腹に女を突き放したのだ!


◆ユラユラユラユラ
ロウソクの炎がゆれる音が分かる程、部屋は静まり返った…



女はゆっくりと立ち上がり
「…わかりました。せっかくの生きる道を示したというのに、あなた様は今夜のことをいずれ後悔なさるでしょう…」

そう言って振り返り部屋を後にした

残された部屋には、美しき使者がいたという甘い香りだけが漂う…

なんてことをしたのか…


俺は自分自身を恨んだ

しかし、俺の本能が悪い予感を感じたのだろうか…


その後悔を忘れるがごとく朝方まで酒をあび、意識がもうろうとする中深い眠りについた…




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