╂AVALON-ROAD╂【地の章】

ガンガルガン

文字の大きさ
14 / 20

第12幕【万物早世:ことわりのはじまり】

しおりを挟む

◆バターン
トリスが勢いよくドアを開ける

「エステリオス!起きろ!早朝稽古だ!」

「えーっ」

それから3人はいつも一緒だった
特訓や食事すべてに共に過ごした

山に狩りに行く
トリスが合図する
シャムが魔物をおびき寄せる
俺が勢いよく飛び出し、魔物を切り裂く
トドメにトリスが喉を貫く

毎日が充実していた

3人は無二の親友となっていた


―ある日のこと―

「エステリオス、入るぞ!」

◆ズ・ズズズズ…
「うわっ!?
なんだ、この婆さん!!」

「そう驚かんでもよかろうに‥」
老婆はまた茶をすすり庭を眺めた

俺は爆笑した!
「くっくく
まあ詳しくは追々話すよ。アル婆さんだ」
「あ、アル婆さん‥!?」

「エステリオスから聞いておるぞ。よろしく頼むぞよ、トリス」

「‥あぁ、よろしく」

「で、何のようだいトリスさん?」

「あぁ、明日は用事があってな、魔物狩りには行けそうにないから明日は中止だ」

「そのことじゃ、今話しておったのは‥」

「!?」

「ただ単に魔物を狩っても自分を超えることは出来ん‥」

「何故ワシがここに導いたか‥
それはここ独特の磁場によるものじゃ」

「トリスよ‥おぬしは何故ここの地域のみ人が動物になるのか考えた事があるかえ?」


「いや、オレはここで産まれ‥今まで考えた事はなかった。
変身するのは当たり前だったからな。
ここから出たいとも思わなかった。多分、みな同じ気持ちだろう‥」

「そこぢゃよ!大切な事を今いいおった。分かるかの?」

「…いや、どういうことだ?」

「まぁ、ここに座りなされトリス」
老婆は椅子を叩き言った

座って老婆を見ると初めて盲目なのに気づく
「えっ!?アル婆さん!見えるのかっ!?」

老婆は笑う
「目がなくとも心の眼があるからのぅ
庭の景色も風が教えてくれるのじゃ」

「…心眼か」

「その通りじゃ!
元々目に映るものはまやかしと思えば、もはや必要あるまいて」 

◆ズ・ズズ‥ズ
「ここの茶はほんに美味いのう。水が美味いんじゃろ」
老婆は美味そうに飲みながら庭を眺め、沈黙が流れた... 

「‥」

「‥‥」

「‥‥…」

「で、なんじゃったかのぅ?」

ズコっ!?
2人でずっこける

「アル婆さん、人が動物に変わるという話しだよ」
エステリオスは思わず吹き出した

「そうじゃった、そうぢゃった」
老婆は笑いながら続けて語る

「まだ人が産まれる前の話しじゃ
霞みの里は遥か昔‥最初の生き物が産まれた発祥の地と呼ばれておる…

それだけ神聖な土地なのじゃよ」
「ここがか‥」
「そうぢゃ」

「文献に載ってたのかい?」
エステリオスは空になったグラスにお茶を注ぐ

「文献なんぞない遥か昔の事じゃ。わしが産まれる遥か前のことじゃよ

わしが時の門番であるが故に、全ての理(コトワリ)が分かるのじゃ」

「へぇ~」

「つまりは‥ここの土地や水や命あるものが、それらを全て受け継いでいるからこそ‥
祖先の血‥
尊い血がそうさせるのじゃ!!

トリスよ‥
それは素晴らしい事じゃよ」

「そうなのか‥」
トリスは初めて知る真実を改めて深く噛みしめた

「そして、エステリオスよ‥
おぬしも同じじゃ…

あの魔導師に全く歯が立たなかった事は忘れてはおるまい」

「はい‥」

「いつもランバール殿が助けてくれると思うでない!!」

「でもどうやったら?」

「おぬしには闇と戦うすべがない。肝心な時に切り札がなければ闇を滅するにはままならん!

何故、風が吹くのか‥
何故、水は流れるのか‥
何故、生命は産まれるのか‥
万物に問うてみよ!
その1つ1つの息吹がそれぞれの記憶を持っておる‥

そして‥その心理が分かった時、エルトワの血に語りかけてみるがよい
我が主の声が聞こえるじゃろう…て」
「おぬしの師はいつも心の中におる‥
それを忘れるではないぞ」

「そ‥」
エステリオスが答える前にトリスが土下座し叫んだ!

◆ガバッ!!
「今の身言葉に心を洗われた!!!
アル婆さん!オレを弟子にしてくれーっ!!」

あのプライドの高いトリスが頭を下げるとは‥正直驚いた

「ふぇふぇふぇふぇ
出来の悪い弟子はエステリオスで充分じゃ。
しかし、トリスよ‥
分からぬ壁にぶち当たったら、まず己の心に聞いてみなされ。さすれば霞みの祖先が応えてくれるであろうぞ」

「御指南、真にありがとうございます!
そのお言葉、常に我が心にっ!!」
トリスは深々と頭を下げた

「うむ‥」
老婆はにこっと笑った
◆バターン!!

「エステリオスさんいるかニャ~?
外いかな‥?
わっ!?!?誰ニャ、このお婆さん!?
に゙ゃーっ!?
なんでトリスさん、土下座してるのニャ!?
初めて見たニ゙ャッ!!」

「ほんに騒がしいのぅ」

◆ズ・ズズ…ズ
「ふぅ‥」

お茶をすすり、老婆は庭を眺めていた



―夕方―

俺は正直悩んでいた

昼間アル婆さんから言われたことだ

ただ闇雲に突っ込んでいっても結果は伴わない‥

考えながら、霞みの里で一番いい景色が見える丘に行ってみることにした

丘まで来ると先客がいた
シャムが座っている

後ろから覗きこむとシャムは絵を描いていた

「うまいなー」
それにびっくりしたシャムは絵にかぶさった

俺は横に座り
「見せてごらん、うまいんだから」
シャムは恥ずかしそうに差し出した

その絵の出来に思わず唸った
「シャム、すごいな~。こんなに絵がうまいなんて」

「そうかニャー
でも誉められると嬉しいニャ」

シャムは暇があると絵を描いているらしい
それがなかなかうまい

シャムは言う
「いつ死ぬか分からないから、この美しい風景を書き留めておくニャ」

シャムの目は輝いていた
そう聞くと考え深いものがある
この絵はシャムにとって宝であり、生きている証なのだろう

「どうしたらそんなにうまく書けるんだい?」
シャムに聞いてみた

「どう‥って、目をつぶって体で感じてみるニャ。すると心の中に絵が浮かぶニャ
まるで自然が語りかけてくる感じかニャ」

「…なる程、体で感じる‥か」

!?
ちょっと待てよ!
アル婆さんが言ったことと同じじゃないか!?

それに逆らわず、自然に身を任せる
それはまさしく

『無の境地!!』

分かったぞ!分かったぞ!
こんな女の子から教わるなんて‥

流石は霞みの里の子‥

シャムはいつも自然に話しかけているのだろう
焦っていた俺には心のゆとりなんてなかったために気がつきもしなかった!
それに気付かされるなんて‥

「シャム、ありがとう!!」
「な・何がニャ!?」

「はっははは!!
なんでもいいさ!
ありがとう!!」

俺はシャムの手を取って喜んだ
シャムは訳が分からず一緒に喜んでくれた

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

古書館に眠る手記

猫戸針子
歴史・時代
革命前夜、帝室図書館の地下で、一人の官僚は“禁書”を守ろうとしていた。 十九世紀オーストリア、静寂を破ったのは一冊の古手記。 そこに記されたのは、遠い宮廷と一人の王女の物語。 寓話のように綴られたその記録は、やがて現実の思想へとつながってゆく。 “読む者の想像が物語を完成させる”記録文学。

偽夫婦お家騒動始末記

紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】 故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。 紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。 隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。 江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。 そして、拾った陰間、紫音の正体は。 活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。

金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語

紗々置 遼嘉
ファンタジー
アルシャインは真面目な聖女だった。 しかし、神聖力が枯渇して〝偽聖女〟と罵られて国を追い出された。 郊外に館を貰ったアルシャインは、護衛騎士を付けられた。  そして、そこが酒場兼宿屋だと分かると、復活させようと決意した。 そこには戦争孤児もいて、アルシャインはその子達を養うと決める。 アルシャインの食事処兼、宿屋経営の夢がどんどん形になっていく。 そして、孤児達の成長と日常、たまに恋愛がある物語である。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

別れし夫婦の御定書(おさだめがき)

佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★ 嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。 離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。 月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。 おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。 されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて—— ※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...