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プロローグ
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しおりを挟む色とりどりのネオン光る都市の中心部から最も離れた「第13区」の中でも特段貧困な地域、その一角にゴミを集めて作り上げた、少年の隠れ家もやはり雨に打たれていた。
隠れ家の主はその中で仰向けになり、ついこの前ストリートで拾ったばかりの知恵の輪をいじって寝るまでの退屈な時間を凌いでいた。
だが、近づく足音に気づくと即座手を止め、隙間から外を伺った。
見知らぬ中年の男。
少年の縄張りに何食わぬ様子で入り込んできた。
彼らにとって、縄張りを侵されたらやることは一つ。
少年は腰のあたりに寝かせてあった鉄パイプにそっと手を伸ばした。
どうやら男はへべれけのようだ。
それに、艶の良いスーツを着て、金のネックレスを首に掛けている。
狼だと思っていた物は、丸々太った羊だったのだと少年は思った。
男は千鳥足で壁の近くまでやって来ると、おもむろにズボンのチャックを下げた。
隙ができた。
ーー今だ。
少年は勢いよく飛び出し、男のうなじを狙ってパイプを振るった。
次の瞬間、少年はアスファルトの地面に叩きつけられ、うつ伏せの体制で押さえつけられていた。
「だめだよ、小便しようとしている人を襲っちゃ」
少年は激しくもがいたが、びくともしない。
「あ、でもあれか。君の家だったんか、なら俺が悪くなっちゃうのか」
男は何か回らない呂律でぶつぶつ話していたが、そんな物は少年にとってはどうでもよかった。
ーー騙された!!
少年の中には悔しさと死の恐怖と憤怒とが綯い交ぜになって渦巻いていた。
男はまるで酔っ払った様に振る舞って少年を騙し、引っかかった所を仕留める気だったのだ。
少年がそう分析した時、やはり全身に重い物がのしかかってきた。
だがその一撃は想定外にゆっくりで、柔らかで、無害だった。
耳元でいびきが聞こえはじめ、酒の臭いが少年の鼻をくすぐった。
男は、寝てしまった。
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