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プロローグ
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男は寝た。
でも、今度は寝たふりで少年を騙そうとしているのかもしれない。
安心して寝てしまった少年の寝首を掻くつもりなのかもしれない。
そう思うと少年は眠れず、向き合って朝まで男を見張っていた。
「いてて」
男が頭を抑えながら目覚める。
少年ははっとして、すぐにパイプを構えた。
「ああ、待て待て」
男は手で少年を制止すると、よろけながらゆっくりと立ち上がった。
「まず第一に、俺は敵じゃない。間違えて君の庭に入ってしまったが、君を傷つける意志は微塵もない」
「お前はおれのなわばりに入った。だからてきだ」
「俺も本当に酔っていたから、わからなかったんだ。まあ、なんというか、すまなかった」
男はそう言うと、真っ赤になって隈のある少年の顔を指さした。
「君、風邪ひいたろう。俺も二日酔いの薬を買いたいんだ。ついて来なよ」
少年は変わらず警戒していたが、気になって男の後を追った。
角を曲がって少し進んだ所に、真っ白でつるつるした外壁の建物があった。
男は大きさの違う二本の白い筒を持っていて、内一つは蓋が開いていた。
「おい、来なよ」
呼ばれた少年は恐る恐る近づいた。
男は無開封な方の筒を地面に置くと、ゆっくり後ずさった。
「上についている赤いボタン押せ、そうしたら開くから、そのまま飲むと良い」
少年が言われたとおりにすると、ポンッという軽快な音と共に蓋が開き、中に緑色の液体が見えた。
少年は少し舐めてみた。
人工的に作られた青りんごの甘い味が食欲を刺激した。
とうとう、少年はこの生まれてはじめての味を一気に飲み干した。
「美味いだろう。もう少ししたら効果が現れてきて、風邪もマシになるはずさ」
男は少年の側まで歩いてきた。
少年の警戒心は甘味一つで和らいでいたので、それは容易だった。
得意げに笑いながら、男が言う。
「腹減っていないか? 飯食いに行こうぜ」
ホットドッグ屋のカウンターに二人並んで座り、同じホットドッグを頬張る。
「名前、なんていうんだ?」
少年は口いっぱいに食べ物を含んだまま答えた。
「ソウだよ」
「ソウか、いい名前じゃないか。歳はいくつ?」
「多分、13さい」
「へえ、それにしては立派じゃないか」
「ねえ、おっさん」
ソウは最後の一口を飲み込むと、今度は彼の方から質問した。
「なんだい?」
「おっさんは何ていうの?」
男は答えた。
「俺はロキ」
その瞬間、周囲の客たちの視線が確かにロキに集まった。
だがソウ少年は気にせず続ける。
「ロキのおっさんはとしはいくつ?」
「31歳。君と逆の数字だよ」
ソウは首を傾げた。
「どういうこと?」
「いや、いい。忘れてくれ」
「おっさんはなんでおれのなわばりに入ってきたの? なんでよっぱらっていたの?」
「はあ」
ロキは一つため息をつくと、店主に挨拶して代金の200レイを払い、少年の肩を優しく引き寄せながら店を出ていった。
でも、今度は寝たふりで少年を騙そうとしているのかもしれない。
安心して寝てしまった少年の寝首を掻くつもりなのかもしれない。
そう思うと少年は眠れず、向き合って朝まで男を見張っていた。
「いてて」
男が頭を抑えながら目覚める。
少年ははっとして、すぐにパイプを構えた。
「ああ、待て待て」
男は手で少年を制止すると、よろけながらゆっくりと立ち上がった。
「まず第一に、俺は敵じゃない。間違えて君の庭に入ってしまったが、君を傷つける意志は微塵もない」
「お前はおれのなわばりに入った。だからてきだ」
「俺も本当に酔っていたから、わからなかったんだ。まあ、なんというか、すまなかった」
男はそう言うと、真っ赤になって隈のある少年の顔を指さした。
「君、風邪ひいたろう。俺も二日酔いの薬を買いたいんだ。ついて来なよ」
少年は変わらず警戒していたが、気になって男の後を追った。
角を曲がって少し進んだ所に、真っ白でつるつるした外壁の建物があった。
男は大きさの違う二本の白い筒を持っていて、内一つは蓋が開いていた。
「おい、来なよ」
呼ばれた少年は恐る恐る近づいた。
男は無開封な方の筒を地面に置くと、ゆっくり後ずさった。
「上についている赤いボタン押せ、そうしたら開くから、そのまま飲むと良い」
少年が言われたとおりにすると、ポンッという軽快な音と共に蓋が開き、中に緑色の液体が見えた。
少年は少し舐めてみた。
人工的に作られた青りんごの甘い味が食欲を刺激した。
とうとう、少年はこの生まれてはじめての味を一気に飲み干した。
「美味いだろう。もう少ししたら効果が現れてきて、風邪もマシになるはずさ」
男は少年の側まで歩いてきた。
少年の警戒心は甘味一つで和らいでいたので、それは容易だった。
得意げに笑いながら、男が言う。
「腹減っていないか? 飯食いに行こうぜ」
ホットドッグ屋のカウンターに二人並んで座り、同じホットドッグを頬張る。
「名前、なんていうんだ?」
少年は口いっぱいに食べ物を含んだまま答えた。
「ソウだよ」
「ソウか、いい名前じゃないか。歳はいくつ?」
「多分、13さい」
「へえ、それにしては立派じゃないか」
「ねえ、おっさん」
ソウは最後の一口を飲み込むと、今度は彼の方から質問した。
「なんだい?」
「おっさんは何ていうの?」
男は答えた。
「俺はロキ」
その瞬間、周囲の客たちの視線が確かにロキに集まった。
だがソウ少年は気にせず続ける。
「ロキのおっさんはとしはいくつ?」
「31歳。君と逆の数字だよ」
ソウは首を傾げた。
「どういうこと?」
「いや、いい。忘れてくれ」
「おっさんはなんでおれのなわばりに入ってきたの? なんでよっぱらっていたの?」
「はあ」
ロキは一つため息をつくと、店主に挨拶して代金の200レイを払い、少年の肩を優しく引き寄せながら店を出ていった。
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