グラディア(旧作)

壱元

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第一章

01-14「数的優位」

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 ーー少し時間を巻き戻す。

レインの感情が強くなり、それに呼応して刃の色が濃くなる。

「さあ、行くぞ」

レインは一気に接近する。

ジュカイはその速度に対応が遅れた。

レインは容赦なく両腕を振り上げ、思い切り交差させて切り裂いた。

 クロス・ファング・モンスター。

「くっ」

慌ててジュカイが後方にとび跳ねて避けると、レインは両腕を脱力させながら急接近する。そして、上半身を力強く回転させる。

脱力した腕は胴体に振り回され、持ち上がり、高速で風と共に敵を切り裂く。

 スピニング・アンブレラ。

しかし、敵はこれも逆さに立てた刃で受け止める。

(僕の動きは見切られている。だが、今のところこいつのファイトスタイルは完全に封じ切れているぞ)

隙を与えぬ怒涛の猛攻によって、ジュカイの敏捷性は完全に封じられ、今の所優勢だ。

「どうだ!」

レインは意気揚々と、さらに素早く斬撃を見舞う。

ジュカイは地面を蹴って後退して回避し、その後も何度も地面を蹴って大きく離れた。

(まずい、クナイが来る!)

レインは敵の得意の攻撃手段を潰すために直ちに接近しようとしたが、その瞳を機敏に動かして敵の動作がそれとはまた違っているのを感知すると、不審感から静止した。

「やっぱり良い勘だよ、レイン。あそこで落としてしまったのが惜しいな」

敵は両手を胸の前で合わせ、素早く印を結ぶ。

にんっ!」

どろん!

前方に白煙が上がり、一瞬レインの視界は塞がれた。

煙の向こうには、衝撃的な光景が広がっていた。

「おいおい…こんなのありかよ…!」

そこには、三人のジュカイが佇んでいた。

 スリー・オブ・ア・カインド!

真ん中のジュカイが口を開く。

「単純な撃ち合いではお前に勝てないんでな。ちょっと『術』を使わせてもらう」

「ジュカイ達」は同時に走り出し、左右及び正面からカタナを構えて襲来する。

(考えろ、レイン。お前の優秀な頭脳を完全稼働すれば、簡単に突破口は開けるはずだ)

レインの脳内を、一筋の「違和感」が駆け抜ける。

(何故、あいつはあの状況でクナイや手裏剣ではなく近接攻撃を選んだ? 三人で同時に投げたら確実に避けきれないし、ダメージも十分だ。この数的優位を使えば僕を殺れるのはわかっていたはずだ。もしかして出来ないのか? だとしたら…)

レインは両手の剣を構えた。

そして下半身と上半身とを逆方向に捻って立つ。

三つの刃が向けられる。

その瞬間、上半身を脱力させて高速で回転させる。

両腕は「スピニング・アンブレラ」を上回る速度で振られて「前方」と「左方」の持つ二本を遠くに弾き飛ばし、勢いのままその「左」の首を掻っ切って消失させる。

 ザ・ディストーション。

だが攻撃後に生じた一瞬の隙に右に居たジュカイに斬りかかられる。

レインは危機感を覚えたが、焦燥などその心には生まれなかった。

やはり、その攻撃は不正確で、首を狙える好機でありながらその刃を肩に当ててきた。

 レイン、バリア:合計64%を喪失。

「やっぱりな」

レインが簡単に真っ赤になった手で握った武器で右の分身の腹部を掻っ捌いて消失させ、正面のジュカイを鋭い眼で見据えながら言う。

「お前の分身は不完全だ。特に精密性がお粗末だ。だから手裏剣を投げるとか器用なことはできない」

ジュカイは額に脂汗を浮かべながら笑っていた。

「参ったな、これが決まれば勝ちだったんだが。お前、強くなりすぎだろう?」

レインは首を大きく横に振った。

「僕が強いんじゃない、お前が弱すぎるんだよ。敏捷性を封じられたらしょぼい小技を使うことしか出来ない…それがお前の本来の実力だ。あの時僕を踏み台にしたから成り上がれただけだ」

「いや、お前は強くなっているよ、確実にな。今のお前相手だったら、俺には蹴落としを試みることさえ出来ない」

そう言うと、ジュカイは素早くクナイを抜き、レインに投げつけた。

レインは素早く剣を動かし、撃ち落としながら迫る。

すると、ジュカイはさらなるクナイを取ってまた投擲する。

そして同時に距離を取っていく。

レインは距離を離されるまいと、防御は継続しつつ遂には全力で走り出した。

ジュカイは突然横に大きく跳び、弾かれたカタナを拾って地面を転がった。

(逃さねえよ。ここでけりを付けるんだ!)

レインは一気に距離を詰める。

すると、敵はなんと片膝をついた状態から忍者刀を投げつけた。

意表を突かれたレインはカタナに右胸を刺された。

 レイン、バリア:97%消失。

「はっ!」

敵は更に両手を用いて左右から手裏剣を投げる。

手裏剣には追跡ホーミング機能がある。

(当たったら負けだ、よく見ろ!)

レインは剣を巧みに使い、苦しげだが何とか2つとも迎撃した。

ジュカイはいつの間にか立ち上がり、レインの周りを疾走しながら残り少ないクナイや手裏剣を飛ばしてくる。

レインは死にもの狂いで武器を振り回し、全てを防ぎ切る。

しかし、いつの間にか敵は背後に走り込み、クナイを構えていた。

振り返った時、敵の手に握られたクナイはレインの腹の前に突き出した。

(分身で仕切り無しになったことで、俺の疾さを活かす機会が生まれた!俺のペースだ!)

「終わりだ!」

刺突は凄まじい速度で無防備なレインの腹部に放たれた。

刹那、全身の力を抜き、レインは地面にへにゃっと倒れた。

 リリースド・パペット。

寝たまま足を絡ませてジュカイを地面に引き倒す。

そして剣を振りあげる。

血管が浮き出た頬、力強く食いしばられた歯、飛び散る汗…

ジュカイには全て止まったように見えていた。

(レインよ、すまない。理由があっても、俺のしてしまったことが道を外れた行いなのは、わかっているさ…。今度会ったら、詳しく話をしたいものだな…)

「死ね」

頭に振り下ろされた「ヘイト・ブレイド」はジュカイのバリアを完全に破壊した。

 ジュカイ、敗北。


 ミナーヴァは思い切り弦を引き、そして矢を放つ。

矢はもう弱り切ったマークの、最後のバリアを粉砕した。

マーク、リタイア。

あれ以上にバリアを失うこと無く、完璧に勝利できた。

だが、彼女はそれ以上に心配の方が大きかった。

(ソウ、ソウはどうなったの!?)

ミナーヴァがソウの方に目を向ける。

 

 「ふう」

レインは床に両手を付き、足を伸ばして座っていた。

「終わったよ、サンデイちゃん」

長年の目標だった、ジュカイへの復讐が、今終わった。

そう脳内で言語化した時、凄まじい喜びが押し寄せた。

レインは思わずこのまま叫びたくなった。

だが、その寸前で踏みとどまって我に返った。

(ソウ君は?)

レインは立ち上がり、ソウの方を見た。


 ソウは後ろ向きに走りながら弓を引き、

人差し指と中指に力を込めた。

敵はどんどん近づく。

6m、4m、3m…

その時、思い切り矢を放つ。

矢は敵に向かって真っすぐ飛んでいく。

敵は反応して右の短剣を動かしたが、それもソウの予想通り。

矢は途中で大きく軌道を曲げ、ダンテの左胸に突き刺さった。

 ダンテ、バリア計13%消失。

「素晴らしいですね」

攻撃を受けて、ダンテは嬉しそうに笑った。

映像資料、攻撃を受けた後コブラに見せた表情と全く同じ。

(あの時も「素晴らしいですね」って言ってたのかな、ならここから何かしてくるよね…)

「その戦略、その冷静さ、『上』に行くのに相応しい『格』をお持ちですね。私も負けてはいられません」

そう言うと、ダンテは武器を上に放り投げた。

(なんだ、今撃てるじゃん)

ソウは弓を引き、ダンテを即時射撃した。

だが全て見通していたかのように身体を逸らして躱す。

「物事を成し遂げる秘訣は行動すること。行き止まりに出会ったら、すぐに考えたことをなしてみるのが私の生き方です」

紫色だった服が、試合開始時の赤色に変わっていく。

同時に短剣は融合して変形し、真っ赤な大槌が生まれる。


アサシン⇒ブロウラー


 地獄⇒煉獄


「さあ、参りましょう」

ダンテはハンマーを両手で振り上げた。

すると、両腕に赤橙色の細長い光が巻き付く。

それらは蛇のように滑らかに腕の上を這い回ってハンマーの中に入り込む。

今度はハンマーが発光する。

ソウは牽制の意味合いも込めて、再び攻撃することにした。

素早く矢をつがえ、放つ。

その瞬間、ダンテはハンマーを振り下ろして地面に叩きつける。

突如、地面から業火が大きく吹き出し、勢いよく広がり、ソウの方に迫ってくる。

 フオーコ・デル・プルガトーリオ。

矢は炎に消え、ソウは慌てて距離を取る。

「それじゃ駄目よ、横に走りなさい!」

後ろから声が聞こえた。

ソウはミナーヴァの方をちらっと見て頷き、助言通り右手側に走った。

ソウが先程居た所はすぐに炎に覆われた。でも、ソウは回避に成功した。

ミナーヴァが隣にやって来る。

「ここからは、あたしも加わってあげる。だから、絶対勝つわよ」

炎の向こう、ダンテは静かに佇み、相変わらずの笑みを浮かべながらこちらを見ていた。

そのさらに奥を、一つの影が機敏に動く。

両腕の刃を大きく振り上げ、素早く敵に斬りかかる。

「ほう」

ダンテは振り返りざまにハンマーを振り回す。

レインは驚き、命中寸前で地面を蹴り、紙一重で回避を試みた。

しかし攻撃は速く、辛うじて武器で受けるので精一杯だ。

右手に持っていた「ヘイト・ブレイド」を弾き飛ばされた。

ちょうど彼が着地した時、ソウ達の方面で燃えていた火が自然消滅。

同時に左の「ヘイト・ブレイド」がボロボロと崩れ、使い物にならなくなる。

「くっ」

「驚きました。ジュカイさんに勝つ能力は伊達では無いようですね」

レインも加わって、これで三対一。

数的優位に立っても、カローラの三人はむしろ自分達の方が圧倒的に不利であると感じていた。

 はっきり言って、この状況にぴったり嵌る作戦シナリオはない。

ダンテがこの試合で武器を丸っ切り新調し、さらに想定以上に強大になっているという現状は、誰にも予想できず、抗うことも出来なかったのだ。

(未来は誰にも分からない。だから、予期せぬものに出会ったらこうしてきた…)

「じゃあ即興アドリブ、行くわよ」

その一言で、レインとソウもこれから自分達が始めることを悟った。

「はい」

「うん」

ここから先は誰にも予想できない。

圧倒的強者を相手どって開幕する、即興大舞台アドリブ劇

ミナーヴァとソウは同時に矢をつがえ、レインは弾かれた「ヘイト・ブレイド」を拾い上げた。

(あたしがこの中で一番優秀なの。この状況を打開するなら、私が導かないと…)

ミナーヴァはそんな事を考えていた。

だが、真横の同僚が考えているのはまた少し違う事だった。

(ミナーヴァはチーム全体の指揮が今までうまく出来ていない。ミナーヴァに任せていたら、「勝負」にも負けるし、試合にも負けるじゃん。俺が全部やらないと…)

感情が交錯する。

ダンテとの決戦、そしてソウとミナーヴァとの勝負は最終局面クライマックスへ。




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