魔王メーカー

壱元

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第二章 後編

第三十五話 前編

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    二人は二階層下のどこかにある廊下に辿り着くと、一旦落ち着いた。

「さて、作戦を考えましょう」

「はい!」

威勢よく応答したグレアが、今度は顔を歪める。

「どうしたのですか?」

ラーラが近付くと、グレアは背中に大きく走る鮮やかな色の切り傷を見せた。

「先程の金の剣にやられてしまいました」

「そんな…液体魔力が切れてしまったのですか?」

だが「腕輪」の水晶部には十分な量の液体が残っていた。

彼女を傷つけたのは死角からの攻撃だったが、結界の展開が間に合わなかったバセリア最期の一撃のように、速度が突出している訳でない事はわかっていた。

「結界の破壊に特化した特性…」

「もしくは『腕輪』や結界に直接干渉することが出来る、という事が考えられます。どちらにせよ、結界は頼りにならないでしょう」

それだけ言うと、グレアは再び苦痛に悶えた。

ラーラは慌ててローブを脱ぎ、魔法で裁断して傷に当てた。

「これで応急処置とします。すみません、貴女には『太陽センズム』があるので、つい忘れていました」

「構いません。そんな事より、作戦会議を始めましょう」

「そうでした」

   二人は次の手について議論した。その際に周辺警戒を怠ることはなかった。

されども、魔力探知の範囲は精々発動者の周囲10m前後に限られる為、再戦までの猶予は長めに見積もられた。

だが、その予想に反する撤退後10分程で、彼女ら側の魔力探知にその姿は捉えられた。

敵は上の階、ちょうど二人の真上で立ち止まった。

そして次の瞬間、なんと天井を突き破って「殺光レミク」が降り注いだ。

二人は地面を蹴って前後に別れ、回避した。

光線が二人の間の床にも風穴を開ける。

しかしまだ悪夢は終わらない。グレア目掛けてさらに数発放たれる。

「きっつ…」

グレアは苦しみながらも「雲歩」して全て回避する。

「こいつ…あの人ばっかり…!」

憤慨したラーラが、掌にあった全魔力を解き放つ。

ゼゼゾームを天井ごと巻き込んで、「闇」で出来た百合の大華輪が開く。

「キリカナム教団」魔法、「闇」属性最高火力、「黒百合バラリーレス」である。

天井が大きく崩落し、大量の瓦礫と埃の中に、グレアは敵の影を見た。

躊躇いなくその胸部に「光槍グシャルボーレアス」を見舞う。

一瞬の煌めきの後、放ったばかりの光線にその身を掘削されたのは、グレアの方であった。

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