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第三章
第二十六話
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敵が追い掛けてくる。
今までと同じように「駿馬」を使いながら逃げているが、傷薬を塗ったとはいえ片足に痛手を負っていることで速度は下がっている。
走り出してわずか数分で追い付かれた。
先程やったのと同様に方向転換してみるが、今度は敵がそれに合わせて前足を振り回してきた。
前足からは白い棘のようなものが大きく飛び出している。
スパイクウルフの背中から生えていたのと同じものだ。
私は剣でそれを受けるが、斬撃は直撃せずとも、腕力によって大きく弾き飛ばされ、そのまま近くの木に背中から突っ込んでいった。
咄嗟に「風射」を後方に出して衝撃を緩和すると、この状況を利用し、後方への「風射」連発で空中を飛び、敵の真上に到達した。
背中にあるいくつもの眼球がこちらを監視している。
私が左手に魔力を溜め始めると、背中からバレットマウスが分離し、背中の上を素早く走って助走をつけ、そのまま私の方へ飛んできた。
私は空中で剣を振って撃ち落としたが、潜り抜けてきた一匹が腰から脇腹を切り裂いていった。
かなりの激痛。しかし、痛みで目的を忘れてはいけない。
急いで「光槍」を真下に放った…つもりだったが、鼠に対応している間に想定以上に移動してしまっていたようで、脇腹を掠めただけに終わった。
それでも敵は苦し気に唸り、他の部位の生き物たちで埋め合わせて傷を「修復」する為、一瞬動きを止めた。
私は「風射」によって安全に着地し、敵の動き出すタイミングに合わせて足元に「凍棘」を出現させ、突き刺して拘束した後、関節に「穹砲」を三発お見舞いした。
関節は折れ、千切れ、敵はバランスを崩して地面に倒れた。
さらに地面から「深淵刀」を数本出現させ、敵の身体をバラバラに寸断した。
直後、攻撃に夢中になっていた私の足に再度激痛が走る。
「ぐあっ…」
私は立っていられなくなり、膝から崩れた。
両足の足首やふくらはぎ、脛に合計十数匹のバレットマウスが突き刺さっていた。
だがこれで最後だ。踏ん張れ。
私は頭上に魔力を込めた。
大きな火球が形成されていく。
「これでも…喰らえ」
私が手を振り下ろすと、「大火球」が敵に飛んでいき、その身体を焼き尽くす。
爆風が辺りの木々を震わせた。
「ふう」
一呼吸おいて見ると、敵はもはや跡形もなく、引火した雑草が静かに燃えていた。
そのうち炎は広がっていき、いずれこの森を燃やすかもしれない。
もしそうなれば、それは犠牲になった全ての野生生物たちとトロールたちに捧げる炎だ。
「グレ・セーズ」
「亜人語」でそう告げた後、黙祷を捧げた。
あれから、足の鼠を引き抜き、「のこぎりの草」の傷薬で応急処置をしたものの、やはり満足に歩くことは出来ず、ほとんど這う様にしてデザ村まで戻ってきた。
壊れた家屋にもたれかかり、一息つく。
「はあ」
思い返せば、キアは死んでしまったのだ。それに、他の私に良くしてくれたトロールの人たちも。
視界が滲む。
落ち着いてようやく現実が受け止められてきた。
ひとしきり泣いた後、私は眠くなり、家屋の影で仮眠を取ることにした。
しかし、目の前で物音がして目が覚めた。
その瞬間、私は絶望で吐きそうになった。
あの「大きな狼」が私を面白そうに見下ろしていた。
口が大きく開き、唾液が顔面に滴る。
私は死を覚悟し、目をつむった。
その時、敵は木々をなぎ倒しながら大きく吹き飛び、地面に倒れた。
その腹からは煙が立ち上っていた。
「もう大丈夫だ」
夜明けの空を背景に四人の戦士が舞い降りた。
今までと同じように「駿馬」を使いながら逃げているが、傷薬を塗ったとはいえ片足に痛手を負っていることで速度は下がっている。
走り出してわずか数分で追い付かれた。
先程やったのと同様に方向転換してみるが、今度は敵がそれに合わせて前足を振り回してきた。
前足からは白い棘のようなものが大きく飛び出している。
スパイクウルフの背中から生えていたのと同じものだ。
私は剣でそれを受けるが、斬撃は直撃せずとも、腕力によって大きく弾き飛ばされ、そのまま近くの木に背中から突っ込んでいった。
咄嗟に「風射」を後方に出して衝撃を緩和すると、この状況を利用し、後方への「風射」連発で空中を飛び、敵の真上に到達した。
背中にあるいくつもの眼球がこちらを監視している。
私が左手に魔力を溜め始めると、背中からバレットマウスが分離し、背中の上を素早く走って助走をつけ、そのまま私の方へ飛んできた。
私は空中で剣を振って撃ち落としたが、潜り抜けてきた一匹が腰から脇腹を切り裂いていった。
かなりの激痛。しかし、痛みで目的を忘れてはいけない。
急いで「光槍」を真下に放った…つもりだったが、鼠に対応している間に想定以上に移動してしまっていたようで、脇腹を掠めただけに終わった。
それでも敵は苦し気に唸り、他の部位の生き物たちで埋め合わせて傷を「修復」する為、一瞬動きを止めた。
私は「風射」によって安全に着地し、敵の動き出すタイミングに合わせて足元に「凍棘」を出現させ、突き刺して拘束した後、関節に「穹砲」を三発お見舞いした。
関節は折れ、千切れ、敵はバランスを崩して地面に倒れた。
さらに地面から「深淵刀」を数本出現させ、敵の身体をバラバラに寸断した。
直後、攻撃に夢中になっていた私の足に再度激痛が走る。
「ぐあっ…」
私は立っていられなくなり、膝から崩れた。
両足の足首やふくらはぎ、脛に合計十数匹のバレットマウスが突き刺さっていた。
だがこれで最後だ。踏ん張れ。
私は頭上に魔力を込めた。
大きな火球が形成されていく。
「これでも…喰らえ」
私が手を振り下ろすと、「大火球」が敵に飛んでいき、その身体を焼き尽くす。
爆風が辺りの木々を震わせた。
「ふう」
一呼吸おいて見ると、敵はもはや跡形もなく、引火した雑草が静かに燃えていた。
そのうち炎は広がっていき、いずれこの森を燃やすかもしれない。
もしそうなれば、それは犠牲になった全ての野生生物たちとトロールたちに捧げる炎だ。
「グレ・セーズ」
「亜人語」でそう告げた後、黙祷を捧げた。
あれから、足の鼠を引き抜き、「のこぎりの草」の傷薬で応急処置をしたものの、やはり満足に歩くことは出来ず、ほとんど這う様にしてデザ村まで戻ってきた。
壊れた家屋にもたれかかり、一息つく。
「はあ」
思い返せば、キアは死んでしまったのだ。それに、他の私に良くしてくれたトロールの人たちも。
視界が滲む。
落ち着いてようやく現実が受け止められてきた。
ひとしきり泣いた後、私は眠くなり、家屋の影で仮眠を取ることにした。
しかし、目の前で物音がして目が覚めた。
その瞬間、私は絶望で吐きそうになった。
あの「大きな狼」が私を面白そうに見下ろしていた。
口が大きく開き、唾液が顔面に滴る。
私は死を覚悟し、目をつむった。
その時、敵は木々をなぎ倒しながら大きく吹き飛び、地面に倒れた。
その腹からは煙が立ち上っていた。
「もう大丈夫だ」
夜明けの空を背景に四人の戦士が舞い降りた。
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