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第四章
第一話 前編
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目が覚めた時、私は馬車の荷台に居るようだった。
「お。起きたぞ」
赤髪に橙色の瞳の釣り目の少女が私を見てそう言い、誰かに手招きした。黒いローブに黒髪、三白眼が特徴的な少年がこちらにやって来る。
「目が覚めたか」
「…ここは?」
私が訊くと、彼は一呼吸おいてから穏やかな調子で話し始めた。
「驚かせてしまったならすまない。まず自己紹介をしよう、僕たちは金級冒険者パーティの『夜明けの旅団』で、僕はそのリーダーのマギクという。君はグレア、だよね?」
「はい」
何となく事態が分かってきた。
「…いいかい」
私の答えの後、数秒の沈黙を挟んでから、マギクが諭すように言う。
「僕たちは君を拘束した。何故だか分かるかい?」
「…謀反、ですよね」
「…そんな言葉、よく知ってるな。…そう、君は王から任命されてその地位に就いた、ジャサー辺境伯を殺したね。だから国への『謀反』人として指名手配され、賞金首になっていた。それが一つだ」
「…まだ他にあるんですか?」
ここまで来ると意識もそれなりにはっきりしてきた。明瞭になった思考をあれこれ巡らす。
一つ心当たりがある。
「横の”彼女”」
マギクが私の右を指差す。
何気なく首を横に動かした時、私は思わず目を見開いた。
私の隣でラーラが静かに寝息を立てていたのだ。
「ああ! あああ!!」
私は胸がいっぱいになり、思わずラーラを抱き締めようとした。だが全身に力が入らず、私はバランスを崩して転んだ。
麻痺がまだ残っている。
その時、両肩が優しくつかまれ、身体が持ち上げられた。
先程マギクを呼んだ、あの赤髪の子が私をラーラと接するように座らせてくれる。
「本当にこの子のことが大事なんだな」
彼女は優しげに微笑んだ。
「貴方の名前は?」
「あたしはリレラだ」
「ありがとうございます。リレラ様」
彼女らは一応敵ということになるのだろうか、でも自然と心が暖かくなっていくのを感じる。
改めてマギクに向き直る。
「君の相方、ラーラさんかな? 彼女の持ち物からこんなものが見つかった」
見せられたのは見覚えのある短刀とネックレス。先程の予感は的中した。
「僕の大事な仲間、キリカの持ち物だ。僕たちは色々な情報、そしてこの遺品を彼女が持っていたことを何よりの証拠として、君たちがキリカの仇だと確信している」
「…仲間の仇を許せなんて、無理な話です」
「話が早くて助かる。君たちは”国の賞金首”。依頼で飯を食っている立場である以上、僕たちは依頼主の意向を無視して勝手にやる訳にはいかない。この場合、依頼主は国だから、原則として僕らは君たちを国に引き渡すつもりだ。そして君たちをどうするかも国が決めるだろう。もしかしたら裁判になるかもしれない。その判決は僕たちには全くわからない。無罪になる可能性もある。…だが、もし僕らや他の人に危害を加えたり、妙なことをしたら、僕らは君たちを殺すつもりだ。仲間を殺されている以上、僕たちだって思うところがあるからね」
「…分かりました」
金級パーティ相手に抵抗しようなんて無謀だろう。もっとも、全身に麻痺と疑似「回生」の反動が残っていて、攻撃はおろか、動くことすらままならないのだが。
馬車は進み、日は沈み、夜になって野営することになった。
「お。起きたぞ」
赤髪に橙色の瞳の釣り目の少女が私を見てそう言い、誰かに手招きした。黒いローブに黒髪、三白眼が特徴的な少年がこちらにやって来る。
「目が覚めたか」
「…ここは?」
私が訊くと、彼は一呼吸おいてから穏やかな調子で話し始めた。
「驚かせてしまったならすまない。まず自己紹介をしよう、僕たちは金級冒険者パーティの『夜明けの旅団』で、僕はそのリーダーのマギクという。君はグレア、だよね?」
「はい」
何となく事態が分かってきた。
「…いいかい」
私の答えの後、数秒の沈黙を挟んでから、マギクが諭すように言う。
「僕たちは君を拘束した。何故だか分かるかい?」
「…謀反、ですよね」
「…そんな言葉、よく知ってるな。…そう、君は王から任命されてその地位に就いた、ジャサー辺境伯を殺したね。だから国への『謀反』人として指名手配され、賞金首になっていた。それが一つだ」
「…まだ他にあるんですか?」
ここまで来ると意識もそれなりにはっきりしてきた。明瞭になった思考をあれこれ巡らす。
一つ心当たりがある。
「横の”彼女”」
マギクが私の右を指差す。
何気なく首を横に動かした時、私は思わず目を見開いた。
私の隣でラーラが静かに寝息を立てていたのだ。
「ああ! あああ!!」
私は胸がいっぱいになり、思わずラーラを抱き締めようとした。だが全身に力が入らず、私はバランスを崩して転んだ。
麻痺がまだ残っている。
その時、両肩が優しくつかまれ、身体が持ち上げられた。
先程マギクを呼んだ、あの赤髪の子が私をラーラと接するように座らせてくれる。
「本当にこの子のことが大事なんだな」
彼女は優しげに微笑んだ。
「貴方の名前は?」
「あたしはリレラだ」
「ありがとうございます。リレラ様」
彼女らは一応敵ということになるのだろうか、でも自然と心が暖かくなっていくのを感じる。
改めてマギクに向き直る。
「君の相方、ラーラさんかな? 彼女の持ち物からこんなものが見つかった」
見せられたのは見覚えのある短刀とネックレス。先程の予感は的中した。
「僕の大事な仲間、キリカの持ち物だ。僕たちは色々な情報、そしてこの遺品を彼女が持っていたことを何よりの証拠として、君たちがキリカの仇だと確信している」
「…仲間の仇を許せなんて、無理な話です」
「話が早くて助かる。君たちは”国の賞金首”。依頼で飯を食っている立場である以上、僕たちは依頼主の意向を無視して勝手にやる訳にはいかない。この場合、依頼主は国だから、原則として僕らは君たちを国に引き渡すつもりだ。そして君たちをどうするかも国が決めるだろう。もしかしたら裁判になるかもしれない。その判決は僕たちには全くわからない。無罪になる可能性もある。…だが、もし僕らや他の人に危害を加えたり、妙なことをしたら、僕らは君たちを殺すつもりだ。仲間を殺されている以上、僕たちだって思うところがあるからね」
「…分かりました」
金級パーティ相手に抵抗しようなんて無謀だろう。もっとも、全身に麻痺と疑似「回生」の反動が残っていて、攻撃はおろか、動くことすらままならないのだが。
馬車は進み、日は沈み、夜になって野営することになった。
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