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第三章
最終話
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黒い影が森から飛び出し、目にも止まらぬパドラマドラに襲い掛かる。
パドラマドラの頭部目掛けて鋭い飛び蹴りが繰り出され、彼女は上半身を反らして紙一重で回避する。
外れた蹴り足は崖を砕き、「襲撃者」はそれで出来た凹みに足を掛けて一瞬バランスを取ると、崖を蹴って再びパドラマドラに接近し、空中から二連続の回し蹴りを見舞う。
パドラマドラは一撃目は回避したが、二発目は間に合わず右腕で防御する。しかし衝撃を殺しきれず横に吹き飛んでいく。
彼女は吹き飛ぶ勢いを利用して一回転し、ふわりと着地する。だがその余裕気な振る舞いと異なり、右腕は腫れ上がり、表情は必死だった。
「キミは何者…? 『遊び』の邪魔をするなんて許されないんだけど?」
「グルルルル…」
「襲撃者」は静かに佇み、両腕に力を込めながら唸り声を上げていた。
その姿を見ているうちに私はハッとした。
全身に生えた紫色の体毛、長い尻尾、手足に生えた鋭い爪、狼に似た顔立ち…
角がなく、身体の大きさが私達とあまり変わらないところ以外、まさに本で読んだ「魔王」の容貌そのものだったのだ。
「小さな魔王」はひとしきり睨みつけた後、地面を力強く蹴って走り出した。
パドラマドラは瞬時に迎撃体勢を取り、両者による至近距離での超高速徒手格闘戦が展開された。
拳と拳、足と足が幾度となく交差し、その中でパドラマドラは「魔王」の放った爪による斬撃をもう使い物にならないかと思われた右腕で受けると、そのまま「氷面流し」で流して無効化した。それが起点となり、全体重と魔力を乗せたパドラマドラの渾身の横蹴りが「魔王」のみぞおちにクリーンヒットする。
「魔王」は吹き飛んで背中から木に直撃し、苦し気に吐血した。
その様子を見ていて、何故だか少し胸が苦しくなった。正体は定かではないが、私の代わりに敵に立ち向かう「魔王」を、無意識の内に応援していたのかもしれない。
「はあ…はあ…」
荒い息をしながらも「小さな魔王」は立ち上がる。
「…ずっと休んでればいいのに。こっちだって疲れてるから、キミとは本気でやりたくないの」
パドラマドラは何かしらの魔法発動の準備をしながら言った。
だがそんなことも意に介さず、「魔王」は再度敵に近づき、目を狙って引っ搔いた。
その刹那、絶妙なタイミングで地面が盛り上がり、攻撃は空を切る。
さらにそのまま地面が両足を取り込み、不安定な姿勢のままで「魔王」を拘束する。
「これで終わり」
パドラマドラは「魔王」の顎を肘で撃ち抜いた。
嚙み切られた舌先が血液と共に地面に落ちる。
「魔王」は遂に沈黙した。
地面が元の形に戻され、「魔王」は力なく地面に倒れた。
パドラマドラは骨折した右腕を気にしながら私の方に近付いて来る。
「さて、よく分からない邪魔も入ったけど、そろそろクリムビークも来る。一緒に楽しみましょ」
その時、パドラマドラの脇腹が大きく斬れ、血潮が吹き出す。
見ると、「魔王」の目が閉じられ、左腕が力なく落ちる。
パドラマドラは傷を抑えて膝をつき、激しく狼狽した。
「ヤバい! 死ぬ! 死ぬ!」
そのうち地面が大きく揺れ、風が強く吹いたかと思うと、先程の巨大な「赤い鷹」が地面に降り立った。
「クリム! 早く飛んで!」
敵は慌ててその背中に乗り、私を拷問して遊ぶことなど忘れて飛び去っていってしまった。
意識が遠くなっていくーー
「これは中々ヤベー麻痺毒だ。薬を使って一時的に良くはなるが、完治には時間がかかるぜ」
誰かが私を見下ろしながら言っているのが聞こえた。
私がその姿を見ようと首を回すと、彼は目を丸くした
「おいマギク! このガキんちょ、『伯爵殺し』じゃねえか!?」
「何だって?」
もう二人がやって来る。
黒ローブを被った方が何やら取り出して確認し、「間違いない」と呟いた。
「帯刀、魔力の痕跡、そしてこの顔と髪色…」
「どうする、首を刎ねちまうか」
「いや…」
黒ローブは首を横に振った。
「それを決定するのは王であって僕らではないからね。それにもし万が一、人違いだったら洒落にならない。…『伯爵殺し』グレア、僕たち『夜明けの旅団』は君を拘束する」
パドラマドラの頭部目掛けて鋭い飛び蹴りが繰り出され、彼女は上半身を反らして紙一重で回避する。
外れた蹴り足は崖を砕き、「襲撃者」はそれで出来た凹みに足を掛けて一瞬バランスを取ると、崖を蹴って再びパドラマドラに接近し、空中から二連続の回し蹴りを見舞う。
パドラマドラは一撃目は回避したが、二発目は間に合わず右腕で防御する。しかし衝撃を殺しきれず横に吹き飛んでいく。
彼女は吹き飛ぶ勢いを利用して一回転し、ふわりと着地する。だがその余裕気な振る舞いと異なり、右腕は腫れ上がり、表情は必死だった。
「キミは何者…? 『遊び』の邪魔をするなんて許されないんだけど?」
「グルルルル…」
「襲撃者」は静かに佇み、両腕に力を込めながら唸り声を上げていた。
その姿を見ているうちに私はハッとした。
全身に生えた紫色の体毛、長い尻尾、手足に生えた鋭い爪、狼に似た顔立ち…
角がなく、身体の大きさが私達とあまり変わらないところ以外、まさに本で読んだ「魔王」の容貌そのものだったのだ。
「小さな魔王」はひとしきり睨みつけた後、地面を力強く蹴って走り出した。
パドラマドラは瞬時に迎撃体勢を取り、両者による至近距離での超高速徒手格闘戦が展開された。
拳と拳、足と足が幾度となく交差し、その中でパドラマドラは「魔王」の放った爪による斬撃をもう使い物にならないかと思われた右腕で受けると、そのまま「氷面流し」で流して無効化した。それが起点となり、全体重と魔力を乗せたパドラマドラの渾身の横蹴りが「魔王」のみぞおちにクリーンヒットする。
「魔王」は吹き飛んで背中から木に直撃し、苦し気に吐血した。
その様子を見ていて、何故だか少し胸が苦しくなった。正体は定かではないが、私の代わりに敵に立ち向かう「魔王」を、無意識の内に応援していたのかもしれない。
「はあ…はあ…」
荒い息をしながらも「小さな魔王」は立ち上がる。
「…ずっと休んでればいいのに。こっちだって疲れてるから、キミとは本気でやりたくないの」
パドラマドラは何かしらの魔法発動の準備をしながら言った。
だがそんなことも意に介さず、「魔王」は再度敵に近づき、目を狙って引っ搔いた。
その刹那、絶妙なタイミングで地面が盛り上がり、攻撃は空を切る。
さらにそのまま地面が両足を取り込み、不安定な姿勢のままで「魔王」を拘束する。
「これで終わり」
パドラマドラは「魔王」の顎を肘で撃ち抜いた。
嚙み切られた舌先が血液と共に地面に落ちる。
「魔王」は遂に沈黙した。
地面が元の形に戻され、「魔王」は力なく地面に倒れた。
パドラマドラは骨折した右腕を気にしながら私の方に近付いて来る。
「さて、よく分からない邪魔も入ったけど、そろそろクリムビークも来る。一緒に楽しみましょ」
その時、パドラマドラの脇腹が大きく斬れ、血潮が吹き出す。
見ると、「魔王」の目が閉じられ、左腕が力なく落ちる。
パドラマドラは傷を抑えて膝をつき、激しく狼狽した。
「ヤバい! 死ぬ! 死ぬ!」
そのうち地面が大きく揺れ、風が強く吹いたかと思うと、先程の巨大な「赤い鷹」が地面に降り立った。
「クリム! 早く飛んで!」
敵は慌ててその背中に乗り、私を拷問して遊ぶことなど忘れて飛び去っていってしまった。
意識が遠くなっていくーー
「これは中々ヤベー麻痺毒だ。薬を使って一時的に良くはなるが、完治には時間がかかるぜ」
誰かが私を見下ろしながら言っているのが聞こえた。
私がその姿を見ようと首を回すと、彼は目を丸くした
「おいマギク! このガキんちょ、『伯爵殺し』じゃねえか!?」
「何だって?」
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「帯刀、魔力の痕跡、そしてこの顔と髪色…」
「どうする、首を刎ねちまうか」
「いや…」
黒ローブは首を横に振った。
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