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第三章
第三十話 後編
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全身の筋肉が唸る。
私は力任せに色々な方向から剣を振り回し続けた。
相手は後ろに下がって攻撃を避けながらケラケラと笑い、「当たりっこないよ」と私を挑発した。
一瞬の合間を縫って足の裏を使った鋭い蹴りが飛び出す。私はそれに刃を合わせる。
相手は裸足だ。刃とぶつかって真っ二つになる、という痛々しい未来は簡単に想像できるだろう。
案の定蹴りは途中で向きを変え、威力も弱まった。
私はひるまず剣を振り回し続け、敵を後方へ追いやり続けた。
遂にその時はやってくる。
「あれ?」
敵の背中が崖に触れる。
周辺は樹に囲まれ、もしさっきの魔法を使おうとすれば隙が生まれ、使わなければバリケードとして牙をむく。
これ以上後方に逃げることも出来ない。
とうとう追い詰めた。
同じように「回生」を使っていても、素の筋力次第では攻撃力に差が生まれる。
私は一度後ろ回し蹴りを受け、単純な力比べなら勝てると確信した。
ここなら逃げようがない。さあ打ち合いの時間だ。
私が剣を大きく振りかぶった時、敵の掌に一瞬にして魔力が込められる。
次の瞬間、崖のちょうどパドラマドラのシルエット分が抜け、攻撃が避けられる。
「え?」
困惑したのも束の間、今度は足元の地面が盛り上がり、私が軽く上空に突き飛ばされる。
その間に敵は体勢を整え、「乱風の仮翼」を発動し始める。
「今のは危なかったな。普段から『これ』使ってて慣れてたから間に合った」
敵はそう零しながらも羽ばたき、近距離で風の斬撃を飛ばしてくる。
それを辛うじて回避しながら、私は魔法の発動を試みた。
しかし刹那、突然全身から力が抜け、地面に倒れ込む。
呼吸も苦しい。
「『魂を蝕む霧』」
羽ばたくのを止め、私を見下ろしながら敵は言った。
「『乱風の仮翼(ゲルムフォールン)』に乗せて飛ばしてみたんだ。我ながら天才だと思うんだけど。…ねえ、このまま放っておくだけでもキミは死ぬけど、とっておきの方法を思い付いたんだ。『クリムビーク』を呼ぶね」
敵はそう言うと嬉しげに角笛を吹いた。
耳を劈くような、甲高く大きな音が森全体に何度もこだまする。
「ふふ、キミはこれからあたしの相棒、クリムビークのおやつになるんだよ。これだけあたしを困らせたんだし、ゆっくり味わって食べてもらおう! ねね、まずはどこから噛んで欲しい? 腕? 足? 頭は無しね、面白くなくなっちゃうからーー」
その時、真っ黒な影が森の中から飛び出してきた。
私は力任せに色々な方向から剣を振り回し続けた。
相手は後ろに下がって攻撃を避けながらケラケラと笑い、「当たりっこないよ」と私を挑発した。
一瞬の合間を縫って足の裏を使った鋭い蹴りが飛び出す。私はそれに刃を合わせる。
相手は裸足だ。刃とぶつかって真っ二つになる、という痛々しい未来は簡単に想像できるだろう。
案の定蹴りは途中で向きを変え、威力も弱まった。
私はひるまず剣を振り回し続け、敵を後方へ追いやり続けた。
遂にその時はやってくる。
「あれ?」
敵の背中が崖に触れる。
周辺は樹に囲まれ、もしさっきの魔法を使おうとすれば隙が生まれ、使わなければバリケードとして牙をむく。
これ以上後方に逃げることも出来ない。
とうとう追い詰めた。
同じように「回生」を使っていても、素の筋力次第では攻撃力に差が生まれる。
私は一度後ろ回し蹴りを受け、単純な力比べなら勝てると確信した。
ここなら逃げようがない。さあ打ち合いの時間だ。
私が剣を大きく振りかぶった時、敵の掌に一瞬にして魔力が込められる。
次の瞬間、崖のちょうどパドラマドラのシルエット分が抜け、攻撃が避けられる。
「え?」
困惑したのも束の間、今度は足元の地面が盛り上がり、私が軽く上空に突き飛ばされる。
その間に敵は体勢を整え、「乱風の仮翼」を発動し始める。
「今のは危なかったな。普段から『これ』使ってて慣れてたから間に合った」
敵はそう零しながらも羽ばたき、近距離で風の斬撃を飛ばしてくる。
それを辛うじて回避しながら、私は魔法の発動を試みた。
しかし刹那、突然全身から力が抜け、地面に倒れ込む。
呼吸も苦しい。
「『魂を蝕む霧』」
羽ばたくのを止め、私を見下ろしながら敵は言った。
「『乱風の仮翼(ゲルムフォールン)』に乗せて飛ばしてみたんだ。我ながら天才だと思うんだけど。…ねえ、このまま放っておくだけでもキミは死ぬけど、とっておきの方法を思い付いたんだ。『クリムビーク』を呼ぶね」
敵はそう言うと嬉しげに角笛を吹いた。
耳を劈くような、甲高く大きな音が森全体に何度もこだまする。
「ふふ、キミはこれからあたしの相棒、クリムビークのおやつになるんだよ。これだけあたしを困らせたんだし、ゆっくり味わって食べてもらおう! ねね、まずはどこから噛んで欲しい? 腕? 足? 頭は無しね、面白くなくなっちゃうからーー」
その時、真っ黒な影が森の中から飛び出してきた。
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