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32話 ロリ魔王、災禍の魔王と成る。

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勇者が覚醒し厄災の竜を討ち滅ぼし
勇者パーティーが結成されたかと思えたのだが
しかし………



喫茶店のドアが突然勢いよく開いた。

「わーーーーはっはっはっ!!!!!! 
お前達!わたしは!帰ってきたぞーー!!」


「帰ってきました~!疲れたので寝てきます~。」

そう言いティナは二階の寝室へ駆け出した。


「キャッ!?シャルロットっ!…とティナちゃん
もう帰ってきたのっ!」

「二週間ぶりだけど相変わらずお姉ちゃんは元気だね~」

「あの勇者の子はどうしたのよーー!?」

「ああ、勇者ちゃんとは別れてきたぞ。」

「別れたのっ!?もう!?」





「そりゃ、あの勇者は私達の助けが必要が無くなる程の目覚ましい成長を遂げたからね。
それに彼女とは絆の勇者の力でパスが繋がってるから
なにかあってもすぐに分かるようになってるから
もうここに戻ってきても良いと私が判断した。

魔界でまだやり残してることもあるし。
だから帰ってきた、それだけのことよ。」


「もう……シャルロットが学園から居なくなった
一ヶ月の間誤魔化すの大変だったんだからねー! 」


「へえ…どんな感じだったんだ?
一応、私の分身を登校させてたはずだけど?」


「ファンクラブの皆が些細な違和感に気づいて
私にアレコレ聞いてきたのよ。
誤魔化すのに苦労したわ………。」

「行動は大体寝てるか昼食を食べる為に起きるかの
いつもの行動を命じてたけどそんなに違和感あったかなー? 」


「普通は気づかないと思うわよ
現に違和感に気づいたのはファンクラブの子だけ。
ファンクラブ達の目が鋭かっただけよ。」

「へえー。」

「あと、最近あのファンクラブで凄い噂を耳にしたのよ。」

「なになに?どんな噂じゃー?」

「学園に数年前からある噂らしいんだけど
都市伝説のようなものね。
ファンクラブの塔の何処かに隠し部屋があって
そこに魔皇の一人が出入りしていて
その部屋からは奇声が聞こえるとはどうとかって」

「ほう…それは面白そうではないか~!
さっそく行くぞーーー!」


「えっ!今から!?ちょっ待ちなさいよ~!」


そして、わたしとモルちゃんは魔皇がいると言う噂が立っている。
シャルロット・レガリア様ファンクラブのキマシの塔にやってきた。





扉を開けて中に入るとそこには
シャルロット・レガリアの
ファンクラブが製作したであろう
ぬいぐるみ、壁紙、肖像画、タペストリー等の
推しのグッズに囲まれた部屋で
ペンライトのような光っている棒状の魔道具を
一心不乱に振り回しながら
奇声のように私の名前を連呼しながら
摩訶不思議な舞を踊っている
渋い声色をしている一人の老人の魔族がいた。

「うぴょおおおおおおおおーーーーー!!!」

「シャルロット様!シャルロット様!シャルロット様!」

「我が魔王は最高に!可愛らしい!究極の美少女だっふぉーーー!!!!!」

「イエエーーーーーーーイ!!!」






「なにこれ?」


「あはは………ルロウス……二千年ぶりぐらい久しぶりだな?」


「ウヒョーーーーーッッッ!!!……えっ!?!?
ま…魔王様っ!?何故この儂の秘密の部屋にっ!?」


「いや、ここの塔に貴様が出入りしている噂を耳にしてな。
まさか本当にいるとは……思わなかったぜ。」



そして、ルロウスが落ち着くまで暫しの時が流れ



「それで、魔王様…この儂に一体何用でございましょうか?」



「そうだな、単刀直入に聞くが
ルロウス、貴様だけか?正気を保っている魔皇は?」


「はい、私以外の魔皇は貴女様を魔王とは認識せずに
オメガなどという不届き者を魔王と信じております。」


「うむ、一方的に聞いてばかりですまないが
どうしてルロウス…貴様だけは洗脳を逃れられたのだ?」

「それは…わたし達、魔皇は数年前、突如現れた
オメガという男に不覚にも敗北してしまいました。
そして、彼を我が主と認識を曲げられ
従順な配下に変貌させられていきましたが

儂だけはオメガの支配から逃れ、なんとか生還し
ずっとこの塔の奥底に潜み、隠れておりました。
いつか蘇った魔王様があの男を倒してくれると信じて。」



「そうか、今までご苦労様……って言った方がいいかな?
隠居の割に随分と楽しそうにしてるように見えたけど?」


「こ…これは………見なかったことにしてください。
わたしを匿ってくれてた生徒達の会話を聞いていたら
彼女達に感化されていきましたといいますか………。」


「まあ、私は全然気にしないからさ。
恥ずかしがらずに存分に推していけば?」

「あ…ありがとうございますぅぅぅぅっ!」



そして、シャルロットは塔を後にした。


「さてと、それじゃあ始めますか。」

「地獄の底から蘇れ、我が下僕。」


シャルロットが指先から魔力を飛ばすと
地面に禍々しい魔法陣が展開され
デッドキング・ネクロ・ネクロムノームの骸の体が構築されていく。


「こ……ここはいったい…?……わたしは……?」


「よっ!おはようさん。目は覚めたか?ネクロム
お前さんは、私が誰かもちろん分かるよな?」

「お、おおぉぉぉっ!
その底が見えぬ無尽蔵の魔力!間違うはずがございませぬっ!
貴女様は…我らの創造主である魔王様でございますなっ!」


「そうだ。我は二千年の時を超えて、再び魔界へ戻ってきた。」


「蘇って早々悪いが貴様に命令だ。
数日後に全ての魔皇を闘技場へ集めろ。
貴様以外の魔皇は洗脳した主亡き今も尚
精神を汚染され洗脳されているままだからな。
我は魔皇共を一掃し正気に戻らせる。
そして魔界中の魔族達に知らせろ。
本物の始祖の魔王が帰ってきたとな。」


「はっ!了解しました。我が王よ…。」


そうしてネクロムは転移の魔法を行使し何処かへ消えた。


「お姉ちゃ~ん」

「どうしたの?シャルロット」

「はいこれ」

私はとある紙をモルドレッドの手の平に落とす。

「なによこれ?」

「数日後に魔王が帰還するってことになってるから
お姉ちゃんには魔王役をやってもらおうかと思いまして…
あはは…お姉ちゃんならいいよね?」

「は…はあっ!なによそれーーー!?
それに急過ぎるわよっ!」

「だってついさっき決めたことだもの。」

「シャルロットの……おバカーーーー!!!」

モルドレッドの絶叫が魔界に木霊したのであった。











死んだと思われたネクロムが生きていることや
魔界中から集められた全ての魔皇が結集している光景
そして、この状況から偽物が現れるはずのないであろう
正真正銘本物の始祖の帰還の知らせ。
生徒達が今までにない程ざわついている。


「やっぱりあのネクロム様がやられたわけないよなっ!」

「やっぱりネクロム様敗北の噂はデマだったんだーー!」

「オイオイオイオイ!マジかよマジかよマジかよーーーーーー!?!!!!???」

「魔皇様達が……全員いるなんて……夢でも見ているのかしら?」

「やっべーーー!!俺、ドキドキし過ぎて眠れなかったわっ!」

「わたしもーーー……。」

「うおおおおおおおおおおおおーーー!!」





アリスとジャンヌが私の耳元で小声で聞いてきた。


「ねえ、どうゆうこと?ネクロム様は倒したんじゃ?」


「ああ、昨日ちょっと奴に用事があったから蘇らせた。」

「そんな軽いノリで蘇らせたのっ!?」

「うんそうだが?」

「……………凄い。」

「さてと、そろそろ私の出番か。」





そして、闘技場にはネクロムを含めた6人の魔皇がいる。




踊り子のような衣装を身に纏って
幼い外見をしている双子の姉妹がいる。

桃色の髪の毛の活発で元気そうな方が
獄炎の魔剣の使い手、フレイ・インフィ。

水色の髪の毛の大人しそうな方が
獄氷の魔剣の使い手、アイス・インフィ 。 
二人で一人の魔皇である。



そして、いかにも魔法使いのような
紫と黒のローブとトンガリ帽子を身につけている
長髪で痩せ細った男性のような魔族がいる。
男の名はエンプティカ・ロリーロス


そして、アースカイザードラゴンという巨竜が人型に変化している魔皇
凄まじく巨大な竜王の大剣
剛魔竜王剣を背負っている大柄な漢
竜人の魔皇 ガイア・ザー・ドラバスターがいる。



そして、魔界最強の魔皇と言われているらしい
一際強い魔力を感じる高齢の魔族
ルロウス・ヘルロードヘヴン・エクリプ





そして、ここは闘技場に続く石畳の長い通路
モルドレッドはそこをゆっくりと歩いていた。


「シャルロット…」

「やっほーお姉ちゃん緊張してるか~?」

「にゃわああああああああっ!?
シャルロット急に背後に転移してこないでよ!」

「すまんすまん。」

「それじゃ、お姉ちゃん。
覚悟の準備は出来てるね?」


「と…とうぜんよ。」


「それじゃ、いくよ。」


「い…いつでもいいけど何をするのよ?」

「あの融合魔法陣を使って
私とお姉ちゃんの心と体を混ぜ合わせる。」

「ま……また…混ざりあうのっ!?」

だ…ダメよシャルロット…
私達は血の繋がってる姉妹なわけで…
そういうことをするのはまだ早いと思うわ……

ゴニョゴニョ……姉妹で結婚って出来るのかしら…ゴニョゴニョ…



「おーーーいお姉ちゃ~ん妄想の世界から戻ってこ~い」


モルちゃんの顔が真っ赤になり小さな声でなにやら呟いている。
お姉ちゃんは意外とムッツリスケベだからなあ 
変な妄想でもしているのであろう。


「ハッ!」

「おお、戻ってきた。」

「か…覚悟は出来てるわよっ!さあ好きにしなさいっ!」

「えいやっ!」

まだ妄想の世界から帰ってきてないらしい姉を横目に
私は高等魔術である融合魔法を行使する。

二人の周りに魔力の放流により赤雷と黒雷が発生し
禍々しく赤黒い光柱と神々しく青白い光柱が二人の体を包み込む。

禍々しい闇と神々しい光が合わさり球体となった
モルドレッドは魔界の上空へと飛び立つ。


そして、魔界の空をこの世の終わりのような
赤黒く染め上げながら空を覆い尽くしている赤黒い魔法陣から
漆黒の太陽のような球体が闘技場に落とされた。


そして、獄炎の火の粉を撒き散らしながら
その少女は姿を現した。

瞳は破壊神と創世神の神眼が顕現したオッドアイ
金髪のツインテールには混沌と破滅を示す黒十字のアクセサリー
頭部には混ざり合っている二人の意識を同調させる役割をしている
二本の角のような装飾が追加されている。


魔王と神の力が混ざり合って最上位の魔力装甲へ変化した
魔王神装を身に纏っており


美しい顔立ちをしているが
悪戯好きの子供のような生意気な表情をしており

なにより、背丈は変わらず低身長でありながら
二人には僅かな膨らみしか無かったはずの胸板には
大きな膨らみがあり、ロリ巨乳となっている。


シャルロットでもなければモルドレッドでもない
別人のような姿をしている
モルドレッド・レガリアが現れた


禍々しい影のような魔王剣をその手に持ち
魔力を解放しその余波だけで魔界全土の大気を震わせる。



融合した彼女達の精神世界では
真っ暗な空間に二人は一糸纏わぬ姿で玉座に座り
自分達の様子を第三者視点で見ていた。

現在、肉体の主導権を握っているのはモルドレッドであることを示すように
モルドレッドの玉座の背面には魔法陣が浮かんでいる。


(…………お姉ちゃん、どさくさにまぎれて
巨乳になるとか変な願いを叶えてるの………
足元見えないし動かす前から
すっげー動きづらい気がするんだけど)

(へ…変なんかじゃないわよっ!)


(というか虚しくならない?
融合を解除すれば消えちゃうデカ乳なんて…)

(そ…そんなことないわよ!これからはこの姿のまま過ごせば)

(無理だよ~流石にずっとこの姿は~
あと72時間ぐらいしかこの姿は維持出来ないよ?)

(ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ……………!!)


(まあ、わたしは貧乳でも巨乳でも
お姉ちゃんのこと好きだからあんまり気にしないでね?)

(シャルロット………しょうがないわね……)

モルドレッドは主導権をシャルロットに譲ると

災禍の魔王の姿が大きく変わり
衣服を何も身につけておらず
動きやすさのみを極限まで求めた姿となり
神銃神剣に破壊神の力が混じり赤黒く禍々しく変貌し
闇色に妖しく煌めく魔王剣、二対の神と魔王の剣を握った
シャルロットの姿となり現れたのは
獣人のような幼い少女の姿だった。






意識だけをモルドレッドに戻していく。


「・・・わたしの名はモルドレッド・レガリア
そして、シャルロット・レガリアでもあるわ。

ワタシたちがあんたたち魔族達の始祖よっ。

ワタシは転生しその名を変えたわ。
ティアナ・オメガ・なんたらといった名前は捨てたからっ!
これからはみんな、わたしのことは 
災禍の魔王 モルドレッド・レガリアと呼びなさい!
い……いいわねっ!」

「そして、アンタ達、魔皇達をわたしが倒したら
みんな、私を魔王だと認めなさいっ!いいわね!」



「それじゃあ、はじめるわよ~っ!」


学院の使い魔のフクロウが試合開始の合図をする。




エンプティカ・ロリーロスが

様々な属性の魔法を多重魔法陣を展開し


フレイとアイスの息の合ったコンビネーションで
その魔術の弾幕を避けながら私に接近してきて
攻撃を仕掛けてくるが

私はそれをシャルロットの動体視力と
身体能力のお陰で難なく避けられたわ。




魔王剣を大鎌の形に変えて
空間を切り裂いてブラックホールを発生させて
魔法弾幕を全て吸い込ませ、転移魔法で
エンプティカの背後に現れる。

「な……今のは…まさか転移魔法かっグボァッッ!?」

魔力の流れを読み取り奇襲に反応出来た所までは良かったが
大鎌の刃で切り裂かれて気を失ってしまった。



「次は……私達だよっ!」


魔剣使いの姉妹が壁を蹴って凄まじい速さで襲ってきた。


私は妹の力を使って無数の魔剣を創造し
フレイに向けて魔剣を投擲する。



フレイが獄炎の魔剣で
それを切り払うと、瞬く間に投擲した全ての魔剣は灰と化した。




 

続いて魔剣を召喚。そして、再び魔剣をフレイへ投げる。


肉体の主導権をシャルロットに渡すと
シャルロットは即座にアイスに向けて走り出した。


次々と魔剣を創造しては、フレイへ投げつけていく。



「戦場で周りを見ず一点しか見ておらぬとは
愚か者の所業だぞっ!魔王ッッッ!」


音もなく、私の背後に回り込んでいた
ガイアが、剛魔竜王剣を振り上げていた。



「うまく避けるのだなっ、ひよっこっっっ!!」


私達を簡単に押し潰せるぐらい巨大な大剣が
凄まじい勢いで振り下ろされ
その巨大な刃先が、シャルロットの頭に直撃する。

剣圧で床に穴が空き、粉塵が激しく巻き上げられた。



「な………………」



息を飲むようなガイアの声が漏れる。

シャルロットは巨大な刃先を指一本で受け止めていた。

剛魔竜王剣はシャルロットの指と衝突したことで
刃先が粉々に砕けていたのだ。



「残念だったわね。」



「……なんだと……そんなことが……あり得るのか………。
大陸を一撃で両断するこの剛魔竜王剣が、なぜだ……?」


シャルロットが攻撃を受けた瞬間
意識が一瞬モルドレッドのモノに切り替わり
わたしは破壊の神眼でガイアを睨みつけた。
私の殺気に怯み、ガイアは咄嗟に後退する。


だが、奴はその瞬間、私の姿を見失っていた。


ワタシは彼の背後に回り込み
魔王剣を形を大鎌から長剣の形に象った。


ガイアの剛魔竜王剣と闇色の長剣がぶつかり合う
力強い一撃に思わず押し負けそうになるが
肉体の主導権や意識を再びシャルロットに交代する。

すると、巨漢のガイアの凄まじく巨大な剛剣を
シャルロットは片腕で軽く剣を振っただけで
ガイアを天高くまで吹き飛ばしてしまった。


「な………なにぃぃぃぃっ!?」

そして、墜落したガイアは気を失ってしまった。


「なかなかやるじゃないっ!」

「………次は…わたしたち……」




そして、次にフレイとアイスが
コンビネーション攻撃を仕掛けてくるが

シャルロットには一切掠りもしない。


双子の魔皇は息の合った動きを見せる、二人は別々に動き
フレイは獄炎の魔剣でワタシの頭部を
数瞬遅れて、アイスの獄氷の魔剣が胸部を狙っている。
かろうじて炎の魔剣をやりすごしたとしても、
体勢を崩れたところに氷の魔剣が襲いかかる。



必殺の二連撃に対して、シャルロットは魔剣で迎え撃った。



「…………そこか」

創世の鐘の音を響かせると

ガキッキィィンと
獄炎と獄氷の剣と闇色の剣が衝突する音が響く。


「う……うそでしょっ!?」

「…………そんな!?」


双子の魔皇は険しい表情を浮かべる。


ほぼ同時に迫った双つの剣を一本の剣で迎撃し
シャルロットは二人の魔剣を同時に受け止めると
魔剣を横薙ぎに振るう。

双子の魔皇を壁際まで吹き飛ばすと

「はあ……はあ……本気出しちゃうんだから!」

「………いくよ……ここからが…全力……。」


再びフレイとアイスが魔剣を振るう。

剣戟の音が鳴り響き、シャルロットはそれを容易く打ち払っていた。



ガキッ、キィィンッと剣と剣の衝突音が響く。

「まだまだ……いくわよっ!アイスっ!」

「うん……お姉ちゃん……わたしに合わせて……!」



フレイとアイスは剣を振るう度に速さを徐々に増していき
魔剣を振るう速度が倍に加速し、次の瞬間、更にその倍を超えた。

闘技場を縦横無尽に駆け回り
双子の姿が見えぬほどの高速で無数の連撃を
シャルロットは悉く打ち払う。
双子の斬撃は千万を超える炎と氷の斬撃の嵐となるが
それでもなお、ワタシ達は無傷である。

シャルロットは意識を私に交代した。
この双子との戦いをここで終わらせるつもりらしい。

「わかったわ…シャルロット」

私は瞳に宿った創世の神と破壊の神の力を解き放つ。

すると二人の魔剣が纏っていた炎と氷が砕け散るように霧散したのだ。

二つの魔剣がぽっきりと折れ、刃先がくるくると回転しながら宙を舞う。



そして、地面に突き刺さった。

「うそ………でしょ……?」

「……私達の……剣が…………折れ…………た…………」


二人は戦意喪失してしまい動けないようだ。

そして、ワタシは創世の力を解き放ち
魔皇達に植え付けられていたオメガの洗脳を解除させる。 





最後に残ったのネクロムとルロウスの二人だけだ。


ネクロムは影に潜み私の背後から奇襲を仕掛けて
死霊の大鎌と骨骸の大剣を振り下ろすが


ここでシャルロットは私に交代して
破壊の神眼を発動させて武器を破壊し
闇色の魔王剣を横薙ぎに振るい、赤黒い斬撃を飛ばし
ネクロムは壁際までぶっ飛ばされ気絶した。




「フォッフォッフォッ流石は魔王様
相変わらず凄まじい強さにございますなあ!」


ルロウスは漆黒の王杖から
禍々しい灰色の魔力を放出しその軌道を自在に操る。

わたしは破壊の神眼で睨みつけるけど
その灰色の魔力にはあらゆるモノを断絶させる力があるらしく
その勢いが落ちることはなく私に直撃する

魔法障壁を展開し完全な直撃は避けられたが
魔法障壁を一撃で破壊されてしまった。



「フォッフォッフォッ…まだまだ行きますぞっ!」

ルロウスは無数の魔法陣を展開し
二百発の灰色の魔法弾が放たれる

私は魔王剣を振るい魔法弾を全て切り刻む。

「フォッーーーその魔剣の力っ!実に厄介でございますなあっ!」

ルロウスは百の白い扉を開き、中から濁流のように
凄まじい量の灰色の魔力の塊を放出した。



しかし、魔王剣は握っているだけで効力を発揮し
そもそも刃を振るう必要さえなく
その世界の全てを滅ぼせる魔剣なのである。

闇色の魔剣から禍々しい赤黒い闇が溢れると
濁流のように流れ込んだルロウスの魔力は
魔剣によって切り裂かれ消滅した。


「フォッフォッフォッ……こうなることは分かっておりましたが
相変わらず、とんでもないお方だ。
儂の魔力はもうすっからかんですぞ。」


「しょ…勝者は…なんと…なんと
モルドレッド・レガリアだああああああっ!?」

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


「すっげえええええええええーーっ!?」

「本当に魔皇全員に勝っちまいやがったっ!?」

闘技場は生徒達の驚愕の声やら歓声で騒がしくなる。



そして、災禍の魔王は
シャルロットとモルドレッドの姿に戻った。








「それにしても、運動したらお腹が空いたわね」


「さてと、今日の授業も全部終わったことだし
教室抜け出して早めに家に戻ろうお姉ちゃん?」



「た…大丈夫かしら ?」



「大丈夫、こそっと行けば問題なしっ!」



「わかったわ。こそっと…ね」


そんな会話をしながら
私とシャルロットは生徒たちがざわついている
教室を抜け出して家へ戻ってきた。






家に入ろうとする寸前
シャルロットが私を呼び止めた。



「ねえ、お姉ちゃん…
またあの状態で来てほしい所があるんだけど………
付いてきてくれるよね?」


「当たり前じゃない。」


「それじゃあ、いくよー。」


私達は転移の魔法でとある教会に来ていた。



「ここって……たしか…一度だけ来たことがあるわね…」


「懐かしいね。」

わたしの過酷な運命を告げられた因縁の場所でもある教会だ。

「あの時、シャルロットがおかしな事を言って
みんなをドン引きさせたのを今でも思い出すわ」


「あはは…やっぱりあの時ってみんな引いてたか~」

「それで……なにをするつもりなの?」

「まあ、見ていて、ちょっとしたお片付けみたいなものだから。」

シャルロットは祭壇に向けて歩きだした。

そして、シャルロットはわたしに手招きした。

わたしはシャルロットの隣にくると
シャルロットはわたしの手を繋いできた。

そして、再び災禍の魔王と成った私達は突然飛び立っていき
教会の遥か上空まで加速しながら跳躍すると亜空間に突入した。





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