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33話 ロリ魔王、暴壊の化身を打ち倒す。

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時空の壁を超えて融合が解けた
私達は真っ白な空間に到達した。


神界にある禁忌の間
この世界のあらゆる摂理を管理されている場所だ。


シャルロットは空中を指で撫でるような操作をすると


無数の歯車のような物体が集まって
見覚えのあるモノへと姿を変えていく。 
無数の歯車が合わさり噛み合い光となっていく。
神族何十体分にもというほど神々しい魔力が
その光から発せられて
この世界を支配している神が姿を現した。


機械仕掛けの神…デウス・エクス・マキナだ。


シャルロット達のデウス・エクス・マキナと
違う点を上げるなら
どの機神よりも機械的で中心部が扉ではなく歯車になっている。


「ほら…お姉ちゃん…見える…?あの赤い歯車」

「ええ…見えるけど…あれはなんなの?」

「あのデウス・エクス・マキナは
この世界の理や摂理を司るシステムのようなモノ
マザーコンピューター…って言っても分からないか…

この機神は意志無き機械人形のような
この世界の摂理の化身である神々の母…のようなモノ
とにかく…アレの核となる部分の歯車は
本来は虹色で綺麗な歯車だった……。」

「でも…今の歯車は…錆びついてるみたいね。」


「いいや、これもオメガの仕業だろう。」

「元々の歯車を破壊しこの錆びついた赤黒い歯車を嵌め込んだ。
この世界の創造主であるバーミストが狂ったのも
この歯車が原因だと…思ってる。」



「ど…どうすればいいの?」

「簡単なことだよ、あの歯車を破壊して
予め創造しておいたこの虹色の歯車を嵌め込む。」

「そ…それだけでいいのね。」


「うん、それじゃ、行ってくる。」


シャルロットがデウス・エクス・マキナに近づくと

突如、獄炎の鎖が飛び出してきて
シャルロットを拘束した。

「シャルロット!?…大丈夫?」

「ちょっと痛い…けど…大丈夫だよ。」


「ここに来ると思っていたぞ……アルビオン」

渋い声色をした男性がこちらに歩いてくる…。
そこにはこの間倒したはずである男、ジリオンである。
そして、何故か奴から創造主バーミストの気配も感じる


「お前…なかなかしぶといやつだな。」

「あ…あんた…どうして…私達が倒したはずなのに」

「何度も言っているだろう?
俺を幾ら倒そうとも意味はない。
俺は無限に存在するオメガ様の懐刀だ。
そして、俺はこの世界の創造主の男の残滓を取り込み
この肉体は創造主…すなわち世界そのものとなった!

オメガ様亡き今もなお、俺はあの方の意志を継いで
アルビオン…貴様を討ち滅ぼす……!!」


ジリオンの右手から禍々しい光が溢れる。 
すると、拘束されているシャルロットの体が
徐々に石に変わっていく。 

「ぐっ………あ……ああああああああああああ!?」

「シャルロットッッッ!!」

全身に激痛が走り、命の灯火が消えようとしている。
死ぬ時に幾度も味わった感覚が襲ってくる。


「そのまま意志亡き神へ成り果て…朽ち果ててしまえ!!!」

「ああああああああああああッッッ!!!?」

「わ…わたしの大切な妹に……何してんのよっ!!!」

「死になさいっ!!!」

モルドレッドは怒りで魔力が暴走しかけ
破壊の神眼を開眼させてしまうがなんとか制御して
ジリオンを睨みつけて消滅させるが

幾ら万物万象を滅ぼす瞳でも
無限に肉体と魂のストックがあり終わりが存在しない
ジリオンは滅ぼしても次の瞬間には何度も復活してくる。


「無駄だ……貴様ごときでは俺を殺せはしない。」


「フッ……フフフ……アハハハハハハ!!! 」


突然、シャルロットが痙攣しながら笑いだした


「死の恐怖で気でも狂ったか?アルビオン」

「いやいやいやあ~…笑っちゃったよ
こんな下手な苦しんでる演技も見抜けない上に
この程度のことで私を殺せると思っちゃうような
お前のちっぽけな頭に驚きを通り越して
笑いが込み上げてきてしょうがないんだわ。」


シャルロットの琥珀色の瞳が
獲物を見つけた獣のように鋭く妖しく光る。



「なんだと…?」

「こんな拘束、最初から抜け出せるけど
瞬殺したら可哀想だから付き合ってやったんだよ」

「貴様……!俺を舐めるのも大概にしろよっ!」

獄炎の鎖と石化していたシャルロットの表面が
ヒビ割れ淡い光が漏れ出す。

そして、シャルロットは鎖を引き千切り石化が解かれた。

「シャルロット……もうっ!心配させないでよ!」

「あはは…また心配させてごめんね…お姉ちゃん」

「帰ったらいっぱい甘えさせるまで許さないんだからね!」

「わかった。帰っていっぱいよしよししてあげるね。」

「膝枕も忘れないでよ!」

「はいはい」






「ぐははは……これで勝ったと思っているのか?
矮小な異物がいくら集まったところで
運命という巨大な歯車は止まらない。
絶望がほんの僅か遠のいただけだ」



「だが……アルビオン……貴様の存在は…危険過ぎる…
今から……お前を………葬る………!!!!!」


ジリオンは飛び上がり体を大きく回しながら
跪くように片膝を折ると、握り拳を天に掲げる。

禍々しい赤黒い魔法陣が展開され

真っ白な空間が崩壊し宇宙空間のように書き換えられる。

そして、無数の星々とデウス・エクス・マキナを吸収すると
ジリオンはオメガのような姿に変貌する。






私はシャルロットの手を取り、体を重ねて
融合の魔法を発動させる。
二人の薬指の指輪から黒と白の光が溢れ出し
禍々しい闇と神々しい光が二人を包み込む。
そして、黒き闇と白き光が爆ぜると
災禍の魔王となった少女が降臨する。




そして、理の外側に存在する創世神シャルロットと
わたしと融合しているシャルロットの精神だけが同化し 
私の隣にもう一人シャルロットが現れる。

そして、シャルロットは
神々しい純白の光で構築された魔法陣の鍵穴に
手を突っ込んで封印を解く。
その純白の魔法陣は無数の歯車となり神の姿を象っていき
創世神デウス・エクス・マキナが顕現する。

シャルロットが指を鳴らす
デウス・エクス・マキナから九つの方向に炎が噴き荒れ狂い
白い光の柱に包み込まれて
シャルロットは世界の創造主としての姿に変わる。

背後の空間が青白い光を走らせながら崩壊し
九つに枝分かれした白い尻尾
ジェネシスナインテールがマントのように装着されて
金色に輝いている創世神の瞳が開眼する。


二人の手には闇色の魔王剣と純白の神銃神剣が握られている。




「どれだけ貴様らの神の力が強かろうと、
運命という歯車の回転は止まらない。」



ジリオンはシャルロットの神剣を、その指先で鷲掴みにする。

そのまま、尋常ではない力で
シャルロットを振り回すようにして、後ろに放り投げた。



「汝はそれを思い知るだけだ。世界の異物よ」



吹き飛ばされたシャルロットの体が
私に迫ってくるが構わず魔剣の剣先を突き出した。


闇色に煌めく漆黒の刃が、シャルロットの体を貫こうとするが
シャルロットは空中に青白い足場を生成して空中を蹴って難なく避ける。 
強化魔術を施し刀身に纏わせ
数十倍威力が増している神剣を投げ飛ばし
私の横を通り抜けていく。

 
そして、投げ飛ばされた光の剣がジリオンの土手っ腹に直撃し
怯んだ隙に闇色の長剣は彼の肉体を切り刻む


だが、それでも奴にはなんの痛痒も与えられない。

幾ら魂や肉体を滅ぼしても無限に再生されてしまう。



「無駄だ……諦めろ………」



【断崩壊裂破滅神歯車滅亡神終焉断絶刃】


ジリオンは四方八方に禍々しい魔法陣を描く。

取り込んだデウス・エクス・マキナの力を行使し

赤黒い歯車が奴の全方位に射出された。

その歯車はシャルロットの破壊の力と同等の力を宿しているようで
歯車の軌道上の空間をガリガリと破壊し削りながら
私達に向かって飛んできている。


シャルロットは世界の時間の流れを支配し
高速移動しながら旋回してそれらを避けていく。

神銃神剣をレールガンに変形させ
青白い砲弾を発射し全ての歯車を撃ち落とした。 



私に向かってくる歯車を終焉の神眼で睨みつける。

だが、その歯車は止まらず直撃する寸前に魔剣で切り裂いた。


ジリオンは先程より巨大な赤い歯車を二つ射出し

二人を追跡するように追いかけてくる。

逃げている最中に二人は追い込まれ
同じ場所に逃げていき二人は歯車に挟まれる

背中合わせで歯車をなんとか受け止めているが
受け止めている剣は激しく火花を散らし
このままでは肉体まで削り取られてしまう。


「ほんっとぉぉぉぉにしぶといわねっ!」

「シャルロット…なんとかならないわけ?」

「……任せろ」

創世の鐘の音が鳴り響き
足元から無数の光の触手のようなモノが這い出て
歯車に絡み合っていき
時空を歪ませる程の爆発を引き起こす。

そして、歯車は発生した二つのブラックホールによって消滅した。



シャルロットはジリオンに向かって走り出し
切り裂こうとするが避けされ
飛び上がったジリオンは空中を歩行し

その足先を神剣の上に降り立ち剣を押さえつける。


「無駄だ…お前は俺には勝てない。」

シャルロットは凄まじい殴打を受け、蹴り飛ばされる。

「そうかな……やってみなきゃわからないでしょう…がっ!」


シャルロットは地面を拳で叩いて創世の力で純白の衝撃波を発生させて

剣を浮かび上がせ、その剣を掴む為に全力で駆け出す。

ジリオンの回り蹴りをスレスレで避け、剣を掴み
銃剣のトリガーを引いて赫色の弾丸を射出し反撃する。


「ぐぅおおおっあぁぁ……!!?」

彼の肉体は仰け反るが【アクセラレーション】によって
シャルロットに高速で接近してきた。 


シャルロットは全ての動きを見切って
確実に彼の攻撃を受け止めて反撃する。

シャルロットは黒炎を指先にまとわせて
彼の右胸の肉に貫手で貫き
彼の心臓を握り潰そうとするが、そこは空洞で
彼の体の中には臓器も何もなかった。
シャルロットはジリオンから腕を引き抜き、距離を取る。

反撃と言わんばかりに振るわれた彼の腕から
オーロラを発生し広範囲を爆発させるが

シャルロットは魔法障壁を展開しており無傷だ。



「はあ…はあ…やるな……アルビオン」

「だが………これを…受けられるかっっっ!!!!」


【フォビドゥン・ウロ・ボロス・オシリス】


ジリオンはデウス・エクス・マキナを顕現させ
中心部の核となる赫色の歯車を取り出した。

そして、その歯車はどんどん禍々しい魔力を帯びていき

神界どころかこの宇宙諸共破壊する
とんでもない威力であることを理解する。


私達は破壊の神眼と創世の力を使って
強引にその歯車を押さえつけていく。


回転する歯車を受け止めている
闇色と純白の剣は、激しい火花が散っていた。


純白の神剣の刀身に赫い歯車が食い込み粉々に砕ける。

「あっ………」

「シャルロットっ!離れなさいっ!」


言うや否や、私達の体は歯車に押され、地面へと落下していく。

二人の体から鮮血が散り、深く歯車が食い込んだ。



歯車に体を引き摺られるように私達は大地に足をつく。

シャルロットが全身のブースターから青白い炎を噴出し
その凄まじい推進力で押し返し
ジェネシスナインテールと両腕で強引に抑えつけて、ようやく歯車は止まった。



「ふう……やっと止まったか。」

「破壊の神眼で傷一つつかないなんて
この歯車なにでできてるのかしら……?」



「そういえば……奴は言っていたな
創造主の肉体を得たアイツは世界そのもの。
真実はどうあれ、少し厄介だが、手はある。」

「ど…どうするの?」

「アイツを完全に滅ぼす為には
世界を滅ぼす力でもないと倒せないだろうな。」



「今のわたしたちならできるかもしれないけど
そんなことしたら、アイツは倒せても世界が滅びるわ……」



「ほう……ようやく無駄だと理解したか」


ノイズ交じりの声が響く。

振り向けば、十数メートルの距離に、ジリオンが立っていた。



「俺を滅ぼせば、世界が終わる。
貴様ら異物に出来ることは、
創造主の肉体と世界の摂理を司る歯車を破壊し
自らの手でこの世界を滅ぼすか……
俺に潰されるまで時間をただ過ごすだけだ…
貴様らが辿る結末はバッドエンドだっっ!!!」




「………そうかしら?
私達にはハッピーエンドしか見えないわよ?」

「なんだと……?」


「だって……シャルロットがいるんだもの。
負けることなんか考えたことなんて一度もないわ。

今回だって…つまらない常識なんか
簡単にぶち壊してくれるんでしょ?」


「ああ、やってみせるさ。
大好きなお姉ちゃんにそこまで言われたら
頑張るしかないしなあ~」




「今から葬られるのはお前だ。ジリオン」


「いいや…貴様だアルビオン。」


両者は向き合って走り出した。

二人は拳を激しくぶつけ合い
ジリオンは拳に世界を破壊する禍々しい黒い光を宿し
その拳でシャルロットの装甲を次々と破壊していく

シャルロットは彼の蹴り上げた膝を踏み台にし跳躍
そして、空中で回転しながら彼の頭を蹴り抜く。

「ぐっぬぅおぉぉぉおおお!?」







そして、シャルロットはわたしに手を伸ばした。


「お姉ちゃんと一緒ならなんでも出来る気がする。」

「わたしも…シャルロットがいるなら
不可能なんて無いって思えてきちゃう。」


二人で魔剣の柄を掴み、手を繋ぐ。

お互いの指輪と魔力が共鳴し魔剣から混沌の闇が溢れる。







そして摂理や理、ありとあらゆる理屈を超越する
二人の理想を叶える為の架空の魔法を生み出す。

二人は息を合わせて全力で魔力を解き放つ。
魔剣の剣先に世界を滅ぼす程の魔力が収束し
白と黒のモノクロで混沌としている闇色の光は
極大の光線としてジリオンに向けて放出された。


ジリオンは破壊神の魔力を纏った拳で抵抗するが
拮抗すること無く彼の肉体は滅びていく。

「ば…バカな……あり得ない!?
世界を滅ぼす力でなければ
俺の肉体が滅びることはあり得ないはずだ!?」

そうして、彼に直撃した膨大な魔力は煌めき…爆発し
モノクロに輝く光の柱がジリオンを包み込んだ。

そして、立っていたのは
肉体を黒い粒子に変えられていくジリオンの姿だ。


「フッ……ムダだ……何度倒されようとも…
俺は……無限に存在する…その場しのぎにしか…ならない。
また時が経てば……俺は貴様らの前に…立ちはだかるぞ……!」


「アハハハ…お前に次はない…って言ったら
その言葉を…お前は信じるか?」

「アハハハ…それこそ…あり得ないな…
俺はオメガ様に造られた無限の戦士……
無限を滅ぼすことなど…不可能だ。」


「それじゃあ、さっきの一撃で
遥か未来の世界に存在するお前の本体を滅ぼした……
…と言ったら信じるか?」


その瞬間、余裕があった彼の顔は驚愕といった表情に変わる。 

「…なんだと?」

「わたしが気づいていないとでも思ったか?」


「無限に存在するお前の生体データはいわば
コピーされた複製体に過ぎない。

そして、無限の戦士のカラクリだが
貴様は未来世界で唯一、電脳粒子型人類でありながら
本物の肉体を持っていた本物の人間という
特異な存在だった…違うか?」

彼の顔は絶望といった表情を浮かべていた。

「生体データを滅ぼしても複製元の肉体のデータを
ロードして複製すれば記憶、人格、能力を引き継いで
未来の世界では己を個体として結び付ける魂であり
生命そのものである生体データを何度破損させても
お前はコピー可能なデータ元の肉体があるからいくらでも復活出来る。
なら、そのコピー元を削除すれば貴様は復活出来ぬはずだ。」


「ああ、そうさ俺は…遥か未来の世界で産まれた
電脳粒子の体でありながら遥か古代の時代の…………
貴様らのような古代人の肉体を持って産まれた異物だ。」


「そんな異端児である俺を拾って育ててくれたのが
オメガ様であった…………俺にとって希望のような方だったよ。

しかし、オメガ様は………………アルビオン……
貴様を失ってから、優しかったあの方は変わってしまった。」


「それに関しては……正直申し訳ないと思っているわ。
我ながら今更謝っても遅いと思っているけどね。」


「ああ、そうさ…俺は貴様を憎んでいる。
これから……も……恨み……つっ……づけ…てや……る……」


彼は黒い粒子となり完全に消滅した。

そして、残ったのは砕け散った錆びた歯車だけである。



「…………さあ、この世界でやり残した最後の仕上げだ。」


シャルロットはこの世界の摂理を司る核
デウス・エクス・マキナを再び呼び出し
空洞となっている部分に虹色の歯車を嵌め込んだ。


すると、デウス・エクス・マキナの歯車は稼働し
オメガが歪めたこの世界を正常に戻していく。



そして、世界は創世の力で作り変えられる。

眩い光が世界を包み込んだ。


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