59 / 115
新世界創世編 少女と新しい友達
しおりを挟む
朝、いつものように目を覚ますと
私達、姉妹の間で眠っている可愛らしい少女
ルクシアちゃんが私の指をしゃぶっていた。
まるで赤ちゃんのように可愛らしく愛おしいという感情を抱いてしまう。
私は、ルクシアの頭を優しく撫でているとルクシアも目を覚ます。
「……う?」
「おはよう。ルクシア」
私はルクシアちゃんを着替えさせる
「もう少しで……」
服から頭がなかなか出てこないが
やがてスポンっと可愛らしいお顔が飛び出した。
「うん。よくできました。」
頭を撫でるとルクシアは目を細めて嬉しそうな表情を見せる。
「かわいいなぁ」
ルクシアを見ていると自然と顔がニヤけてしまう。
「確かにかわいいわね…でもシャルロットだって
ルクシアに負けないぐらい可愛い…わよ。」
寝起きのお姉ちゃんは寝ぼけているのか
素直に褒めてくれて非常に可愛い。
そして、目を覚ましてお姉ちゃんは
毎回、私にデレデレしたり甘えまくった
恥ずかしい記憶を打ち消すようにツンデレを発動させて
騒がしく朝を迎えるのが、お約束のようになっていたのだが
ルクシアが来てからはその頻度が減ってしまい
ちょっとだけ寂しかったりする。
「いただきま~す!」
「……まーす。」
ルクシアも私達を真似をしながらご飯を食べている。
教えてないのに私達の使い方を一目見ただけで
箸の持ち方を覚えてしまった。
学習能力が高く賢い子なのかもしれない。
そして、そんなルクシアを横目に
私達はいつものように朝食を食べる。
タコさんウインナーに目玉焼きに卵子焼きといった
至って普通の朝食のおかずだ。
私は海苔の佃煮を塗ったトーストを齧る。
遠い昔の記憶だが、小さかった頃に
孫娘の私に優しかったおじいちゃんに
海苔の佃煮をトーストに塗ると
美味いことを教えてもらった記憶を思い出していた。
実際、食べてみたらかなり美味しかった。
それからこの海苔の佃煮トーストが好物となったのである。
「ごちそうさまでした~!」
「…した。」
私達の行動を真似て…本当に可愛いなこの子。
そして、朝食を食べ終えた私達は
のんびり過ごすことにした。
ルクシアが何やら雑誌を広げていた。
ルクシアは文字はまだあたり読めないようだが
大きな魚の絵に視線が集中しているのが分かる。
「……これ…なに?」
「これはねえ、お魚っていうんだよ~」
「……おさかな?」
「川とか海って所に沢山いるんだよ~」
「……うみ?」
「ひょっとして、海見たことないの?」
「……うん」
「そっか、それじゃあ、今度私達が連れて行ってあげるから楽しみにしててな。」
ルクシアの頭を撫でると嬉しそうに目を細めている。
「…わかった、うみ、たのしみ。」
ルクシアは気づいていないが
徐々に喋る頻度が増え始め、感情と表情も豊かになっていた。
彼女達との生活を通して、彼女に徐々に心が芽生えはじめている。
しかし、ルクシアに意志が宿り、希薄だった意志が強まることは
運命がルクシアから発せられる得体の知れない大きな力で
運命が無理矢理動かされる予兆でもある。
そして、運命が歪んだ結果。
私とお姉ちゃん以外誰も居ないこの日に限って
私達は二度寝してしまった、玄関の鍵を閉め忘れた状態のまま
それは、退屈していた少女に飛来した
海という強い興味に惹かれるモノを求める
好奇心が芽生えていたルクシアがこの家を抜け出すことは容易いことなのだ。
ルクシアは好奇心のままに、海に向かって走り出した。
しかし、場所も何も分からないのに辿り着けるわけはなく迷子になってしまった。
「…………どうしよう」
どうしようか、幼いながらもどうやって帰るか思考していると
曲がり角でルクシアは白髪の少女とぶつかってしまう。
「わっ!」
「あっ、ごめんね。大丈夫?怪我してない?」
白髪の少女はルクシアに手を差し伸べるが
「…ニャア」
ルクシアは猫のような四足歩行の体制になり警戒する。
「わあっ!すご~いネコちゃんみた~い!かわいい~!」
ルクシアは警戒していたが
少女の持っていた紙袋から漂う美味しそうな匂いが気になってしまい
あっさりと警戒を解いてしまった。
「…もしかして、これ食べたいの?ネコちゃん」
「……にゃあ」
ルクシアと白髪の少女は近くの公園のベンチに座り
白髪の少女が紙袋の中身を取り出す。
中から出てきたのは、美味しそうな鯛焼き。
少女は鯛焼きを半分に裂いてくれた。
「ネコちゃんは頭と尻尾どっちがいい?」
ルクシアは魚の形をしたお菓子をはじめた見て
目をキラキラと輝かせて鯛焼きを見つめていた。
「……こっち」
「頭の方たね、はいどうぞ。」
ルクシアは鯛焼きを食べると
その美味しさに目を更にキラキラと輝かせていた。
「私はチェリルっていうの。
ネコちゃんのお名前はなんていうの?」
「……………」
「えっと…ネコちゃんのおうちはどこにあるの?」
「………わからない。」
「分からないんだ……もしかして迷子?」
「………うん。」
「そうなんだ…私にまかせてネコちゃん!」
チェリルがルクシアの手を引いて向かった先は
犬のお巡りさんがいる交番だった。
「あれれ~?犬のお巡りさんがいないよ~?」
「困ったな~こういうときはどうすればいいんだろう。」
ルクシアがチェリルの手を引いて手招きする。
「そうだ!こういうときは大人の人に聞けばいいんだよ!」
チェリルは通りすがりの大人のお姉さんに駆け寄っていく。
「すみませーーん!」
「ネコちゃんが迷子でお家を探してるんですけど知りませんか?」
「ネコちゃん…?あの…ネコちゃんは何処に?」
「え…あれ?ネコちゃんどこいっちゃったの!?」
チェリルが回りを見渡すとルクシアは蝶々を追いかけていた。
「あっ!あんな所にいるっ!」
「待ってよ!ネコちゃ~んっ!」
蝶々を追いかけていたルクシアが急停止したことで
チェリルがぶつかってしまった。
「いたっ!…もうどうしちゃったのネコちゃん?」
ルクシアはケーキ屋さんをジーッと見つめていた。
「ここがネコちゃんのお家?」
「……違う、ここじゃない。」
「ここじゃない……ってことは
もしかしてネコちゃんのお家ってケーキ屋さんなの?」
「………そうかも。」
「わかった!ケーキ屋さんを探していけば
ネコちゃんのお家が見つかるかもしれないね!」
チェリルの明るく前向きな純真無垢な笑顔を見た
ルクシアの魂がドクンッと鼓動した気がした。
「……そうだね、いっしょにみつけよう。」
「ここ?」
「……違う。」
「ここかな?」
「…全然違う。」
「こっちかな?」
「……」
ルクシアはフルフルと首を振る。
ルクシアとチェリルは街中のケーキ屋さんを探したが
ルクシアのお家は見つからなかった。
探し回っている間に、空は夕焼けに染まり
「お家、なかなか見つからないね。」
「…………ニャアッ!」
[ネコちゃんどうしたの…!?]
ルクシアが周囲を警戒する。
ルクシアが鋭い視線を向けた先には、烏の群れ。
烏の群れがルクシアとチェリルを取り囲んだ。
「だ…大丈夫…怖く…ないよっ!」
チェリルが震えた声を
「……行こうネコちゃんっ!」
チェリルがルクシアの手を引いて駆け出した途端
烏が不気味な鳴き声をあげて
ルクシアの三日月の髪飾りを狙って襲いかかってきた。
「きゃー!」
チェリルとルクシアは追ってくる烏から逃げ
ルクシアは路地を通ってチェリルより先に逃げていく
「ネコちゃん待って~速いよ~!」
チェリルを引き離して走っていたが
烏に先回りされてしまい焦ったルクシアがこちらに引き返してきた。
チェリルの前まで戻ってきた所で転んでしまう。
「ネコちゃん大丈夫っ!?」
「……うん。」
「ネコちゃんこっち!急ごう! 」
チェリルはルクシアの手を引いて走り出した。
入り組んだ路地裏を駆け出し奥へ奥へと進んでいくが
烏達を撒くことが出来ず、袋小路に入ってしまい
逃げ場を無くしたチェリルとルクシアを取り囲むように
烏の大群が押し寄せてくる。
「そんな…!」
「どうしよう…!?」
一羽の烏がチェリルに襲い掛かってくる。
「きゃあああああああっ!?」
恐怖で目を瞑ってしまう。
「ニャアッ!」
「ネコちゃんっ!?」
ルクシアが烏に飛びかかって迎撃する。
ルクシアは猫のような四足歩行の体制を取り
烏達を何度も威嚇する。
「ニャアァァァッ!……ニャアッ!!」
何度も威嚇していると烏達がざわめき立ち
烏が一羽、また一羽と夕暮れの空へと飛び立っていく。
「た…助かった…」
「ネコちゃん。さっきは助けてくれてありがとう。」
「お礼になにか欲しいものはない?」
「…たいやき。」
「あはは、そんなに気に入ってくれたんだ?」
「それじゃあ鯛焼き屋さん見つけたら買ってあげ…」
「あっ」
二人が鯛焼き屋さんを見つけると
チェリルとルクシアは先程までいた近くの公園に戻っていた。
今度は鯛焼きを一匹まるごとチェリルから貰った。
鯛焼きを美味しそうに食べているルクシアを見ていると
チェリルが懐かしそうに語りだす。
「…私ね、この街に引っ越して来る前はね
お姉ちゃんがいたんだ。」
「お姉ちゃんはお婆ちゃんのお家にずっといた子でね
いつも私に大好きな鯛焼きを買ってくれて、いっしょに食べたり
小さい頃から、私といっぱい遊んでくれたんだ。」
「だけどね、お母さんとお父さんの仕事の都合で
この街に引っ越すってなったときに」
「私、お姉ちゃんと離れたくなくて、飛び出しちゃったんだ。」
『やだっ!いっしょじゃなきゃいやだあああっ!』
「家を飛び出して迷子になっちゃった
私のことをお姉ちゃんが探しに来てくれたの。」
『お婆ちゃん達が心配してるよ?一緒に帰ろう?チェリル』
『……うん。』
お姉ちゃんはその時、私の頭を優しく撫でてくれたっけ?
あの時のことを思い出していたら、涙が出てきてしまった。
泣いてしまった私を見ていたネコちゃんが
私の頬を伝う涙を舐めてくれた。
「…え?」
「…もしかして心配してくれたの?」
「…ありがとう、ネコちゃん」
「……ルクシア。」
「…ルクシア…?ネコちゃんの名前…ルクシアちゃんっていうの?」
「…そう…だよ、ちぇりる……ありがとう。」
「…!やっと話してくれたねっ!」
「ルクシアちゃん…その…私と友達になってくれる?」
「ともだち…?うん、いいよ。ちぇりるなら。」
「ルクシアちゃんありがとうっ!」
ルクシアにチェリルは嬉しさのあまり思わず抱きついてしまう。
その様子を見たルクシアは微笑んでチェリルの背中を撫でる。
「う~ん?どうすればルクシアちゃんのお家見つかるんだろう?」
「………あっ。」
「ルクシアちゃん、どうしたの?」
昔ながらの雰囲気がある駄菓子屋に置かれた
アイスボックスの前に見覚えのある少女
久遠零が抹茶味のアイスを買っている場面に遭遇した。
「…ルクシアか、こんな所で何をしていたの?」
「……にゃあっにゃあっにゃあ!」
「…なるほど、大体分かった。
海に行きたかったが迷子になって、その子に助けられたのか。」
「チェリル…だったか?
この子のことは私に任せてもいいか?」
「あっ、はい。
ルクシアちゃんのことよろしくおねがいしますね。」
「それと、この子と…友達になったのなら
これを渡しておこうと思う。」
零がチェリルにお店の住所や場所が書いてある小さな地図を渡す。
「わあっありがとうございますっ!」
チェリルは零にお辞儀をすると
ルクシアの手を掴む。
「これでルクシアちゃんといつでも会いに行けるよっ!」
「ほんとう?…えへへ…うれしい。」
「それじゃあ、また会おうね、ルクシアちゃん」
「うん、バイバイ、ちぇりる。」
「………はっ!眠っちゃった!」
「今、何時っ!?」
爆睡していた二人が目を覚ますと
時計の針は十七時を指していた。
「あれ、そういえばルクシアはどこにいるんだ?」
一階に降りると皆が集まっていた。
「ルクシアちゃん?」
「お店でも見かけなかったですよ?」
「ルクシアがいなくなったのか?」
「まさか、また迷子にでもなってるんじゃあ」
「大変っ!探しに行かないとっ!?」
「安心しろ、ルクシアならこの家にいるだろう。」
「えっ?」
慌ただしくしていたが久遠零の声で全員停止する。
「ルクシアー!あれ?部屋にいると思ったんだけどいない?」
「リビングかな?」
リビングの扉を開けるとシャルロットが急停止し
ドミノ倒しのように後続がぶつかる。
「もうっシャルロット急に止まらないでよ」
シャルロットをどかしてリビングを見ると
そこには、ルクシアがいた。
「あっ!ルクシア!」
「みんなの帰りを待っていたの?ありがとう。」
頭を撫でるとルクシアは目を細めて微笑む。
「……ん。」
「なんだ~!よかった~!」
「もう、シャルロットは慌て過ぎなのよ。」
「べ、別に慌ててないし~!
お姉ちゃんの方が慌ててたじゃんっ!」
「そ…そんなわけないじゃない!?」
わーぎゃーわーぎゃー賑やかな姉妹の喧騒が周囲に聞こえ
友達の帰還を見届けたチェリルも帰路に着くのであった。
「…またね、ルクシアちゃん」
私達、姉妹の間で眠っている可愛らしい少女
ルクシアちゃんが私の指をしゃぶっていた。
まるで赤ちゃんのように可愛らしく愛おしいという感情を抱いてしまう。
私は、ルクシアの頭を優しく撫でているとルクシアも目を覚ます。
「……う?」
「おはよう。ルクシア」
私はルクシアちゃんを着替えさせる
「もう少しで……」
服から頭がなかなか出てこないが
やがてスポンっと可愛らしいお顔が飛び出した。
「うん。よくできました。」
頭を撫でるとルクシアは目を細めて嬉しそうな表情を見せる。
「かわいいなぁ」
ルクシアを見ていると自然と顔がニヤけてしまう。
「確かにかわいいわね…でもシャルロットだって
ルクシアに負けないぐらい可愛い…わよ。」
寝起きのお姉ちゃんは寝ぼけているのか
素直に褒めてくれて非常に可愛い。
そして、目を覚ましてお姉ちゃんは
毎回、私にデレデレしたり甘えまくった
恥ずかしい記憶を打ち消すようにツンデレを発動させて
騒がしく朝を迎えるのが、お約束のようになっていたのだが
ルクシアが来てからはその頻度が減ってしまい
ちょっとだけ寂しかったりする。
「いただきま~す!」
「……まーす。」
ルクシアも私達を真似をしながらご飯を食べている。
教えてないのに私達の使い方を一目見ただけで
箸の持ち方を覚えてしまった。
学習能力が高く賢い子なのかもしれない。
そして、そんなルクシアを横目に
私達はいつものように朝食を食べる。
タコさんウインナーに目玉焼きに卵子焼きといった
至って普通の朝食のおかずだ。
私は海苔の佃煮を塗ったトーストを齧る。
遠い昔の記憶だが、小さかった頃に
孫娘の私に優しかったおじいちゃんに
海苔の佃煮をトーストに塗ると
美味いことを教えてもらった記憶を思い出していた。
実際、食べてみたらかなり美味しかった。
それからこの海苔の佃煮トーストが好物となったのである。
「ごちそうさまでした~!」
「…した。」
私達の行動を真似て…本当に可愛いなこの子。
そして、朝食を食べ終えた私達は
のんびり過ごすことにした。
ルクシアが何やら雑誌を広げていた。
ルクシアは文字はまだあたり読めないようだが
大きな魚の絵に視線が集中しているのが分かる。
「……これ…なに?」
「これはねえ、お魚っていうんだよ~」
「……おさかな?」
「川とか海って所に沢山いるんだよ~」
「……うみ?」
「ひょっとして、海見たことないの?」
「……うん」
「そっか、それじゃあ、今度私達が連れて行ってあげるから楽しみにしててな。」
ルクシアの頭を撫でると嬉しそうに目を細めている。
「…わかった、うみ、たのしみ。」
ルクシアは気づいていないが
徐々に喋る頻度が増え始め、感情と表情も豊かになっていた。
彼女達との生活を通して、彼女に徐々に心が芽生えはじめている。
しかし、ルクシアに意志が宿り、希薄だった意志が強まることは
運命がルクシアから発せられる得体の知れない大きな力で
運命が無理矢理動かされる予兆でもある。
そして、運命が歪んだ結果。
私とお姉ちゃん以外誰も居ないこの日に限って
私達は二度寝してしまった、玄関の鍵を閉め忘れた状態のまま
それは、退屈していた少女に飛来した
海という強い興味に惹かれるモノを求める
好奇心が芽生えていたルクシアがこの家を抜け出すことは容易いことなのだ。
ルクシアは好奇心のままに、海に向かって走り出した。
しかし、場所も何も分からないのに辿り着けるわけはなく迷子になってしまった。
「…………どうしよう」
どうしようか、幼いながらもどうやって帰るか思考していると
曲がり角でルクシアは白髪の少女とぶつかってしまう。
「わっ!」
「あっ、ごめんね。大丈夫?怪我してない?」
白髪の少女はルクシアに手を差し伸べるが
「…ニャア」
ルクシアは猫のような四足歩行の体制になり警戒する。
「わあっ!すご~いネコちゃんみた~い!かわいい~!」
ルクシアは警戒していたが
少女の持っていた紙袋から漂う美味しそうな匂いが気になってしまい
あっさりと警戒を解いてしまった。
「…もしかして、これ食べたいの?ネコちゃん」
「……にゃあ」
ルクシアと白髪の少女は近くの公園のベンチに座り
白髪の少女が紙袋の中身を取り出す。
中から出てきたのは、美味しそうな鯛焼き。
少女は鯛焼きを半分に裂いてくれた。
「ネコちゃんは頭と尻尾どっちがいい?」
ルクシアは魚の形をしたお菓子をはじめた見て
目をキラキラと輝かせて鯛焼きを見つめていた。
「……こっち」
「頭の方たね、はいどうぞ。」
ルクシアは鯛焼きを食べると
その美味しさに目を更にキラキラと輝かせていた。
「私はチェリルっていうの。
ネコちゃんのお名前はなんていうの?」
「……………」
「えっと…ネコちゃんのおうちはどこにあるの?」
「………わからない。」
「分からないんだ……もしかして迷子?」
「………うん。」
「そうなんだ…私にまかせてネコちゃん!」
チェリルがルクシアの手を引いて向かった先は
犬のお巡りさんがいる交番だった。
「あれれ~?犬のお巡りさんがいないよ~?」
「困ったな~こういうときはどうすればいいんだろう。」
ルクシアがチェリルの手を引いて手招きする。
「そうだ!こういうときは大人の人に聞けばいいんだよ!」
チェリルは通りすがりの大人のお姉さんに駆け寄っていく。
「すみませーーん!」
「ネコちゃんが迷子でお家を探してるんですけど知りませんか?」
「ネコちゃん…?あの…ネコちゃんは何処に?」
「え…あれ?ネコちゃんどこいっちゃったの!?」
チェリルが回りを見渡すとルクシアは蝶々を追いかけていた。
「あっ!あんな所にいるっ!」
「待ってよ!ネコちゃ~んっ!」
蝶々を追いかけていたルクシアが急停止したことで
チェリルがぶつかってしまった。
「いたっ!…もうどうしちゃったのネコちゃん?」
ルクシアはケーキ屋さんをジーッと見つめていた。
「ここがネコちゃんのお家?」
「……違う、ここじゃない。」
「ここじゃない……ってことは
もしかしてネコちゃんのお家ってケーキ屋さんなの?」
「………そうかも。」
「わかった!ケーキ屋さんを探していけば
ネコちゃんのお家が見つかるかもしれないね!」
チェリルの明るく前向きな純真無垢な笑顔を見た
ルクシアの魂がドクンッと鼓動した気がした。
「……そうだね、いっしょにみつけよう。」
「ここ?」
「……違う。」
「ここかな?」
「…全然違う。」
「こっちかな?」
「……」
ルクシアはフルフルと首を振る。
ルクシアとチェリルは街中のケーキ屋さんを探したが
ルクシアのお家は見つからなかった。
探し回っている間に、空は夕焼けに染まり
「お家、なかなか見つからないね。」
「…………ニャアッ!」
[ネコちゃんどうしたの…!?]
ルクシアが周囲を警戒する。
ルクシアが鋭い視線を向けた先には、烏の群れ。
烏の群れがルクシアとチェリルを取り囲んだ。
「だ…大丈夫…怖く…ないよっ!」
チェリルが震えた声を
「……行こうネコちゃんっ!」
チェリルがルクシアの手を引いて駆け出した途端
烏が不気味な鳴き声をあげて
ルクシアの三日月の髪飾りを狙って襲いかかってきた。
「きゃー!」
チェリルとルクシアは追ってくる烏から逃げ
ルクシアは路地を通ってチェリルより先に逃げていく
「ネコちゃん待って~速いよ~!」
チェリルを引き離して走っていたが
烏に先回りされてしまい焦ったルクシアがこちらに引き返してきた。
チェリルの前まで戻ってきた所で転んでしまう。
「ネコちゃん大丈夫っ!?」
「……うん。」
「ネコちゃんこっち!急ごう! 」
チェリルはルクシアの手を引いて走り出した。
入り組んだ路地裏を駆け出し奥へ奥へと進んでいくが
烏達を撒くことが出来ず、袋小路に入ってしまい
逃げ場を無くしたチェリルとルクシアを取り囲むように
烏の大群が押し寄せてくる。
「そんな…!」
「どうしよう…!?」
一羽の烏がチェリルに襲い掛かってくる。
「きゃあああああああっ!?」
恐怖で目を瞑ってしまう。
「ニャアッ!」
「ネコちゃんっ!?」
ルクシアが烏に飛びかかって迎撃する。
ルクシアは猫のような四足歩行の体制を取り
烏達を何度も威嚇する。
「ニャアァァァッ!……ニャアッ!!」
何度も威嚇していると烏達がざわめき立ち
烏が一羽、また一羽と夕暮れの空へと飛び立っていく。
「た…助かった…」
「ネコちゃん。さっきは助けてくれてありがとう。」
「お礼になにか欲しいものはない?」
「…たいやき。」
「あはは、そんなに気に入ってくれたんだ?」
「それじゃあ鯛焼き屋さん見つけたら買ってあげ…」
「あっ」
二人が鯛焼き屋さんを見つけると
チェリルとルクシアは先程までいた近くの公園に戻っていた。
今度は鯛焼きを一匹まるごとチェリルから貰った。
鯛焼きを美味しそうに食べているルクシアを見ていると
チェリルが懐かしそうに語りだす。
「…私ね、この街に引っ越して来る前はね
お姉ちゃんがいたんだ。」
「お姉ちゃんはお婆ちゃんのお家にずっといた子でね
いつも私に大好きな鯛焼きを買ってくれて、いっしょに食べたり
小さい頃から、私といっぱい遊んでくれたんだ。」
「だけどね、お母さんとお父さんの仕事の都合で
この街に引っ越すってなったときに」
「私、お姉ちゃんと離れたくなくて、飛び出しちゃったんだ。」
『やだっ!いっしょじゃなきゃいやだあああっ!』
「家を飛び出して迷子になっちゃった
私のことをお姉ちゃんが探しに来てくれたの。」
『お婆ちゃん達が心配してるよ?一緒に帰ろう?チェリル』
『……うん。』
お姉ちゃんはその時、私の頭を優しく撫でてくれたっけ?
あの時のことを思い出していたら、涙が出てきてしまった。
泣いてしまった私を見ていたネコちゃんが
私の頬を伝う涙を舐めてくれた。
「…え?」
「…もしかして心配してくれたの?」
「…ありがとう、ネコちゃん」
「……ルクシア。」
「…ルクシア…?ネコちゃんの名前…ルクシアちゃんっていうの?」
「…そう…だよ、ちぇりる……ありがとう。」
「…!やっと話してくれたねっ!」
「ルクシアちゃん…その…私と友達になってくれる?」
「ともだち…?うん、いいよ。ちぇりるなら。」
「ルクシアちゃんありがとうっ!」
ルクシアにチェリルは嬉しさのあまり思わず抱きついてしまう。
その様子を見たルクシアは微笑んでチェリルの背中を撫でる。
「う~ん?どうすればルクシアちゃんのお家見つかるんだろう?」
「………あっ。」
「ルクシアちゃん、どうしたの?」
昔ながらの雰囲気がある駄菓子屋に置かれた
アイスボックスの前に見覚えのある少女
久遠零が抹茶味のアイスを買っている場面に遭遇した。
「…ルクシアか、こんな所で何をしていたの?」
「……にゃあっにゃあっにゃあ!」
「…なるほど、大体分かった。
海に行きたかったが迷子になって、その子に助けられたのか。」
「チェリル…だったか?
この子のことは私に任せてもいいか?」
「あっ、はい。
ルクシアちゃんのことよろしくおねがいしますね。」
「それと、この子と…友達になったのなら
これを渡しておこうと思う。」
零がチェリルにお店の住所や場所が書いてある小さな地図を渡す。
「わあっありがとうございますっ!」
チェリルは零にお辞儀をすると
ルクシアの手を掴む。
「これでルクシアちゃんといつでも会いに行けるよっ!」
「ほんとう?…えへへ…うれしい。」
「それじゃあ、また会おうね、ルクシアちゃん」
「うん、バイバイ、ちぇりる。」
「………はっ!眠っちゃった!」
「今、何時っ!?」
爆睡していた二人が目を覚ますと
時計の針は十七時を指していた。
「あれ、そういえばルクシアはどこにいるんだ?」
一階に降りると皆が集まっていた。
「ルクシアちゃん?」
「お店でも見かけなかったですよ?」
「ルクシアがいなくなったのか?」
「まさか、また迷子にでもなってるんじゃあ」
「大変っ!探しに行かないとっ!?」
「安心しろ、ルクシアならこの家にいるだろう。」
「えっ?」
慌ただしくしていたが久遠零の声で全員停止する。
「ルクシアー!あれ?部屋にいると思ったんだけどいない?」
「リビングかな?」
リビングの扉を開けるとシャルロットが急停止し
ドミノ倒しのように後続がぶつかる。
「もうっシャルロット急に止まらないでよ」
シャルロットをどかしてリビングを見ると
そこには、ルクシアがいた。
「あっ!ルクシア!」
「みんなの帰りを待っていたの?ありがとう。」
頭を撫でるとルクシアは目を細めて微笑む。
「……ん。」
「なんだ~!よかった~!」
「もう、シャルロットは慌て過ぎなのよ。」
「べ、別に慌ててないし~!
お姉ちゃんの方が慌ててたじゃんっ!」
「そ…そんなわけないじゃない!?」
わーぎゃーわーぎゃー賑やかな姉妹の喧騒が周囲に聞こえ
友達の帰還を見届けたチェリルも帰路に着くのであった。
「…またね、ルクシアちゃん」
0
あなたにおすすめの小説
『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!
たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。
新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。
※※※※※
1億年の試練。
そして、神をもしのぐ力。
それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。
すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。
だが、もはや生きることに飽きていた。
『違う選択肢もあるぞ?』
創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、
その“策略”にまんまと引っかかる。
――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。
確かに神は嘘をついていない。
けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!!
そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、
神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。
記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。
それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。
だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。
くどいようだが、俺の望みはスローライフ。
……のはずだったのに。
呪いのような“女難の相”が炸裂し、
気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。
どうしてこうなった!?
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【リクエスト作品】邪神のしもべ 異世界での守護神に邪神を選びました…だって俺には凄く気高く綺麗に見えたから!
石のやっさん
ファンタジー
主人公の黒木瞳(男)は小さい頃に事故に遭い精神障害をおこす。
その障害は『美醜逆転』ではなく『美恐逆転』という物。
一般人から見て恐怖するものや、悍ましいものが美しく見え、美しいものが醜く見えるという物だった。
幼い頃には通院をしていたが、結局それは治らず…今では周りに言わずに、1人で抱えて生活していた。
そんな辛い日々の中教室が光り輝き、クラス全員が異世界転移に巻き込まれた。
白い空間に声が流れる。
『我が名はティオス…別世界に置いて創造神と呼ばれる存在である。お前達は、異世界ブリエールの者の召喚呪文によって呼ばれた者である』
話を聞けば、異世界に召喚された俺達に神々が祝福をくれると言う。
幾つもの神を見ていくなか、黒木は、誰もが近寄りさえしない女神に目がいった。
金髪の美しくまるで誰も彼女の魅力には敵わない。
そう言い切れるほど美しい存在…
彼女こそが邪神エグソーダス。
災いと不幸をもたらす女神だった。
今回の作品は『邪神』『美醜逆転』その二つのリクエストから書き始めました。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる