英雄の世紀

博元 裕央

文字の大きさ
22 / 31

・断章⑫【1971年、組織日本支部基地。マスクドラグーン誕生前夜】

しおりを挟む
「彼が新型生機幽合体サイバイオカルト・バイクカティディットの実験体?」
「その通りだ。同じ事を繰り返すくらいなら死んでしまえ。これまで以上の設計思想、これまでにない新たな生機幽合体サイバイオカルトとなるだろう」

 1971年。組織日本支部ソサエティジャパンブランチ基地。

 何処の国のものでもない飾り気の少ない軍服を着た引き締まった体つきの美女……作家・四島君緒にして組織日本支部長ソサエティジャパンブランチオーダーである生機幽合体サイバイオカルトバラセンガラスに対し、偏屈さと剽軽さとふてぶてしさが入り交じった灰汁の濃い顔をした、目と太陽と貌を象った呪具をじゃらじゃらと全身に付けた異教の大神官じみた装束の壮年男性……芸術家・岡元太郎おか・げんたろうにして芸術探究の過程で縄文呪術の才能に目覚めた大呪術師でもある日本支部大幹部ジャパンブランチサブオーダー、普段は外郭組織アウターユニット【まつろわぬもの】に出向している生機幽合体サイバイオカルトヒトデボンバーは頷いた。

「彼が……紅血党オンカー・ルージュ欧州支局ヨーロッパユニットの潜入戦力による作戦行動に遭遇し、交戦を?」

 内部に無数の自動手術機械を備えた透明な棺めいたカプセルベッド。そこに寝かせられた青年の姿を眺めながら、どこかときめきを感じさせる口調で四島はカプセルの滑らかな表面に指を這わせ彼がここに至った経緯を反芻する。

 日本支部ジャパンブランチが管轄する外郭組織アウターブランチだけでは無く、他支部の勢力も日本には入ってきている。紅血党オンカー・ルージュ欧州支局ヨーロッパユニットはそれぞれ支部ブランチの機密を持って東南アジアとヨーロッパから逃げてきたプラチナマスクとキジンダーを追って、彼女らが結果的に持ち逃げした技術を取り戻して自分達の支部ブランチの戦力を完全化し組織内において他支部ブランチに優越し覇を唱える事を目的としており、日本支部ジャパンブランチとしては先に日本人自体に対し敵対的だった黄禍論団体・黄滅の刃ゴブリンスラッシャーを正義の味方ジュエルセブンとあえて共闘して殲滅したように、同じ組織ソサエティと言っても時に争い合う中。

「全く驚くべき男や。正義感で咄嗟に飛び込む事ならありえる。やけど生機幽合体サイバイオカルトより技術的に劣るとはいえ、紅血党オンカー・ルージュの粗製巨大超人共が狩った怪獣細胞を移植し人間大の劣化怪獣と化した獣纏者トッカタ闇の怨霊ダークスペクター欧州支局ヨーロッパユニットが主力とする殺人に枷の無い重武装の非三原則械人アンチアシモフ兵器である破戒部隊デストラボットと戦って、襲われた者達を助け逃がしただけでなく、こうして命を留めて我々に回収されるとはの」

 そんな物々しく仰々しい戦力共と、この青年は生身で渡り合った。最終的には瀕死となった所を日本支部ジャパンブランチが介入、両陣営に戦闘を停止させ回収する事となったが、それでも尚巻き込まれた彼以外の民間人を守り逃がしてのけたのだと、第三の声がそれを肯定する。

 今は人間の姿の二人と違い、戦闘介入に参加した為生機幽合体サイバイオカルトとしての姿を露にしている。北米先住民を思わせる意匠を帯びた鋼鉄の外骨格を持つ蟻人間。外郭組織アウターユニット超人類帝国幹部を兼ねる日本支部大幹部ジャパンブランチサブオーダー、元々金属を食べ金属の肉体を持つという特性を持つ先天変異超人ミュータント日本イロコイ族鉄喰/IRON-KUIであったのを更に改造を受け生機幽合体サイバイオカルトアイアントとなった小杉右京。

 彼こそが戦闘によって混乱の中から実験体の青年を回収してきた人物でその為に今変身後の姿をしているわけだが、日本再興を大義とする四島とは方針を異にし、真に残るべきものを探求する為に破壊を厭わず、超能力での特殊障壁形成による【首都消失計画】、人工地震による【日本沈没計画】、細菌兵器により優秀な人類を選別する【復活の日計画】】を推進する危険人物だ。

 一歩間違えば己が再興せんとする日本を破壊するアイアント=小杉右京の行動を、しかし四島は是認している。その程度を御せず乗り越えられずして、何が日本征服・日本再興かと。四島は新左翼を世の危機感と不安を煽る尖兵として活用するように、日本破壊を目論む男もまた用いていた。

「武士だな。そして端正だ。イタリア旅行をした時に見たアンティノーの大理石像を思わせる」

 端的に最大限の賛辞を青年の精神と肉体に対して与え、カプセルの中で生命を維持される青年を四島は熱心に眺めた。

藤郷猛弘ふじさとたけひろ。確かに彼こそ、最新型生機幽合体サイバイオカルトバイクカティディットたるに相応しい。他の支部ブランチと戦う為に手を取り合えれば幸いだ。調べさせて聞けば若くして身寄りを無くすも城北大学で文武両道に長け、過激派学生の暴力から老教授を守った仁義の青年と好評との事……どんな時代になろうと、権力の最も深い実質は若者の筋肉兵士と戦力だ。故に、我々と共にその実質を担い、理想を遂げる戦友とならん事を祈るよ」

 調べさせたパーソナルデータを口ずさむ。勇士を好む故に、彼と轡を並べる可能性を夢見る。

 ……もしもそうならず彼が敵に回ったとしても、それはそれで日本に最高の正義の味方をもたらす事が出来る。それはそれで良い。己の勝利以外の手段でも日本が救済される可能性が増えるのであれば構わぬと、超然と四島は胸の内思いを巡らせた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

【戦国時代小説】 甲斐の虎•武田信玄と軍師•山本勘助

蔵屋
歴史・時代
 わたしは、以前、甲斐国を観光旅行したことがある。  何故、甲斐国なのか?  それは、日本を象徴する富士山があるからだ。     さて、今回のわたしが小説の題材にした『甲斐の虎•武田信玄と軍師•山本勘助』はこの甲斐国で殆どの戦国乱世の時代を生き抜いた。そして越後の雄•上杉謙信との死闘は武田信玄、山本勘助にとっては人生そのものであったことだろう。  そんな彼らにわたしはスポットライトを当て読者の皆さんに彼らの素顔を知って頂く為に物語として執筆したものである。  なお、この小説の執筆に当たり『甲陽軍鑑』を参考にしていることを申し述べておく。  それでは、わたしが執筆した小説を最後までお楽しみ下さい。  読者の皆さんの人生において、お役に立てれば幸いです。  

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-

半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

レオナルド先生創世記

ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

処理中です...