中心蔵

博元 裕央

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・エピローグ

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・エピローグ

 このように。それぞれの観点があり。それぞれの解釈があり。それぞれの解釈から生まれた幾つもの物語がありました。

 どれもそれぞれの視点からの自己中心的な解釈で。今この場で語られたそれぞれの心情もまた作者の勝手で自己中心的な解釈で。それぞれの解釈に、それぞれの批判も山程ありましたが。

 事実である赤穂事件もまた、互いの感情や世間の動きの一部を見てとった様々な人物の各自の観点からの自己判断による行動が複合した結果で。

 その事実をもとにした忠臣蔵という物語もまた、物語を作る人間、物語を求める人間、その人間達が立脚する時代・世相・文化、それぞれを中心とした観点から切り取られた結果にとして、様々な形がありました。

 この中心蔵は、忠臣蔵に類する物語と、その物語に関する感想や風刺や批判から生まれた、言わば物語と感想から生まれた更なる物語です。

 事実から物語が派生したように、それぞれが忠臣蔵に抱いたイメージから、また新しい物語が派生していくのです。

 忠臣蔵である物語も忠臣蔵でない物語も、それぞれに自己なりの中心を持って。

 そう、事実としての赤穂事件に関わった人々、赤穂事件に接した人々の思いから忠臣蔵が生まれたように。

 忠臣蔵を見た人々の思いからまた別の物語たちが生まれたように。

 そして、それならば、その様々な物語に対しての様々な読者の感想も、つまり今、この忠臣蔵から派生した物語から派生した物語を読んでいる貴方も。

 貴方も、貴方が忠臣蔵に抱いていた感想も。中心蔵に抱いた思いも。肯定にせよ否定にせよ、それもまた物語の連鎖の一部なのではないでしょうか。

 貴方の思いに近いのは、浅野内匠頭でしたでしょうか、吉良上野介でしたでしょうか、大石内蔵助でしょうか、民草でしたでしょうか。水戸光圀でしたでしょうか。徳川綱吉でしたでしょうか。阿久里でしたでしょうか。書き手達でしたでしょうか。それとも、全て違いましたでしょうか。無論、浅野の狂気、吉良の傲慢、大石の愚鈍、民草の無茶、何れも手放しで肯定できない要素もあり、光圀の感性、綱吉の責任感、阿久里の考え方、書き手の爆走、それと読者が完全に一致するものでもありませんが、それはあくまで物語であり、そして現実の一側面をカリカチュアしつつも切り取ったものであり、世に問われるべき要素の一側面は持っていると思うもので。

 貴方の思いもまた、様々な側面を持つ誰かに読まれる物語となるかもしれません。貴方とは違う中心を持つ誰かに。

 貴方の思いが助けとなりより良い物語を生む事もあれば、貴方の思いと逆の思いを抱いた人間が、貴方の思いと逆の物語を作る事もあるかもしれません。

 貴方の感想もまた、この後に続くこの物語の一部。逆に言えば、浅野に対する吉良のように、吉良に対する大石のように、そして民草のように、貴方の後に続く誰かが、貴方の物語に異を唱える物語を綴るかもしれません。

 故に、どうか物語というものに、可能な範囲で優しくしてあげてください。努々、貴方が貴方と言う物語に対して別の読者にしてほしくない読み方はしないよう。皆がそう思うために。貴方がそうされないためにも。物語同士お互いに、どうか優しくしてあげてください。

 そもそもの赤穂事件も、優しくしていれば起きなかった事かもしれませんし。
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感想 4

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みんなの感想(4件)

xyzxyz
2020.06.08 xyzxyz

なるほど、ちょっとずつちょっと書き足していくのって、素晴らしいですよね。少しずつ少しずつゴールを目指しているような気がします。しかし、続けて書き続けるのは難しい。いっつも何かに流されて、目的を見失う、やる気のなくなる人が、私を含めてなんて多いことか。なんか、そんなところからも、継続は力、だからやさしさは勇気と強さなんじゃないかなと感じました。

2020.06.09 博元 裕央

アイディアが沸いてきたのでいろいろ書き足しました。意欲が沸くあたり、いい題材だったと思います。
そして、優しくあり続ける為には勇気と強さが必要という意味で、正に「やさしさは勇気と強さ」だとも思います。本作品がそういうことを考える切っ掛けになったのであれば幸いです。

解除
xyzxyz
2020.05.07 xyzxyz

面白く拝読させていただきました。
特に、周りの傍観者たち。人が生死をかけた主張をしているのに、「娯楽」としてみているところ、強く現在のネットの、揚げ足取りばかりの悪意に満ちたカキコを連想させ、「そうか、これは現代ネット社会への暗喩だ」と思ってしまいました。
一方で『忠臣蔵』という作品は、日本人に「義理と人情」を教える大切な教育物語でもあるのですけどね。
「みんなにやさしく」というドグマは「みんな一致団結する」「みんなは一人のために」という忠臣蔵のドグマにも置き換えられますからね。

2020.05.07 博元 裕央

ええ、民草には正にそういう無責任の側面があり。時代遅れと言われる武士道にも確かに正しさが残っています。
とはいえ、全ては多面的であり、民草には物語を生む力がありこれが無ければそもそも話が伝わる事も無く、武士道にも大石がぼやいたように流れを強制するような要素もあり。
どれにも善悪様々の多面的な要素があるので、単純に浅野大石下げ吉良上げで済む問題ではない、多面的な諸々から、良い影響を見定め選んで受けていけたら、と思います。

解除
緋色刹那
2020.05.03 緋色刹那

「大石内蔵助」まで読みました。
忠臣蔵は全く知らないのですが、知らなくても人物の葛藤や感情が明確に伝わってきて、面白かったです。
全5話とのことで、続きも楽しみですね。

2020.05.03 博元 裕央

お読みいただきありがとうございます。
忠臣蔵ありきの作品と思っていましたが、知らない人にも葛藤や感情が読んでの面白さとしてちゃんと伝わるという事で、人間に関する文章が私はちゃんと書けているんだなと思い嬉しく思います。
よければあと二話、ここからまた意表をつく方向へ行こうと書きましたので、続きもよろしくお願いします。

解除

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