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最終第四章
・第九十四話「人の光は全て物語(中編)」
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・第九十四話「人の光は全て物語(中編)」
「ふ、ふっはっはっはっはっはっは……」
リアラ達が得た、【逆襲物語ネイキッド・ブレイド】という物語を愛する人間達の力。。それに対する八割様々な怒りの複雑極まりない感情で、『交雑』は哄笑した。炎上する前に生前の己が書いていた物語は瞬間最大においては自惚れではなく【逆襲物語ネイキッド・ブレイド】とは象と蟻程にも差のある巨大なファン人口を抱えていた事、炎上騒動でそれらが去った事、あくまでごくごく一部というにも少ない量とはいえ己の憎む地球からの愛を受けている事……様々な事柄へのもっと様々な感情が煮え滾る。
そして。それを許さないのは『全能』もまた同じだ。それは、己の掲げる救済である異世界転生とは違う形だ。存在を許す訳にはいかぬ。
「行けよ、救いが欲しいんだろ? ほら、冒険、しなくちゃ」
「「「「「う、うおおおおおお!!」」」」」
静かな怒気を込めた『全能』の言葉に、量産型取神行達が突貫した。雨の様にリアラとルルヤの【巨躯】に降りかかる閃光。緑樹達を狙ってもリアラの【真竜の世界】があるから無駄だと、『全能』がテレパシー的に欲能を使い命令した故だ。
「【GEOAAAAFAAAANNN!!】」
それを迎え撃ったのはルルヤの【咆哮】だ。【息吹】と同時発動し、ルルヤの【巨躯】の全身から黒紫の波動が迸る。それは、物語を通じて彼女を愛し応援する人々の心の力を【真竜の地脈】として得て、猛烈な威力増大を得ていた!
「「「「「うわぁああああっ!?」」」」」
海面が爆裂する。それは心を砕く威嚇と物理的に弾き飛ばす重力攻撃の二重奏。光弾と化した量産型取神行達は、肉体はそれで破壊される程柔ではないが、所詮促成栽培。本来の取神行ならばその強大な自我で【咆哮】の威圧に耐えただろうが、こいつら量産型は力だけでエゴは伴わない、本来取神行には【咆哮】は聞かないはずだろうという心理的盲点を飛び越えてのルルヤの怒号が、心身ともの衝撃で量産型どもを弾き飛ばす!
「【感謝する、緑樹! 歩未! 心の底から! 何を礼とすればいいか分からぬ程に! 愛している、友達よ!】」
竜は吼えた。友への感謝を。そこには邪悪を退ける作業に消耗する音色は無かった。それは現実を越えて高らかと響く勇気であった。
「【そして感謝する! 吟遊詩人としての緑樹と歩未が語る、私とリアラの物語に感じ入ってくれた人々よ! お陰で竜は今ここに存在できる! 私は戦えるぞ! 例え地球が信じずとも、お前達をこの騒ぎから守る為に! ああ、この私が、地球人に虐げられた世界から来た私が、地球人を守る為に戦えるぞ! この応援があれば、世界すらこの背に担えよう!】」
竜はその巨大な翼を羽ばたかせた。轟く風が、怯んだ量産型取神行達を更に吹き飛ばす。それは紛れもなく、生き生きと躍動する生命であった。物語を愛する者達の心が確かに現実に顕現させた絆の力が生んだ命の輝きであった。
「【そして、改めて言おう。私の愛するリアラを虐めた者達よ……お前達が立ちはだかるというのならば、私には願ったり叶ったりだ】」
竜は牙を剥き唸る。その鋭い牙の向こうから、準備運動めいてちらちら【息吹】が黒く揺れた。
「【かかってくるなら、我が愛する人の報仇が出来るというもの! さあ、この牙を、この爪を、恐れずかかってくるがいい! 出来るのならな!】」
牙を鳴らし、爪を剥いて、黒き竜は無数の光に対し宣言した。何者にも揺るがせにさせないという愛を。
それは、物語が、現実に敗れず、物語が生む絆を力として、この地球で生きて見せるという宣言であった。
「僕は別に、緑樹や歩未が無事なら、ああ、きっとこういう僕の態度が君達の癪に障ったんだろうけど……君達に敵意を抱く訳じゃない」
それだけ隙があればリアラが陽の【息吹】を操るには十二分過ぎる。両手に光。【陽の息吹よ狙い撃つ鏃となれ】だけではない。【陽の息吹よ守護の祝福たれ】も、更なる応用として【陽の息吹よ、灼き斬れ】と組み合わせられ手裏剣や戦輪めいて無数に周囲に浮かぶ。量産型取神行共である光球の数にもひけをとらぬ。
何よりリアラの心が、堂々と立ち上がっていた。
「けど、喧嘩がしたいのならするよ。君達がその姿を凶器として振り上げるんなら、僕も魔法という凶器を使う。お互い凶器を振り上げる以上……勿論死ぬ覚悟で喧嘩してるよね。僕は、してる」
敵に対してはあくまで静かに。復讐者であると同時に救う事を望む正義の味方であり、復讐者としても正義の味方としても不完全であるが、そのどちらでもあるが故にあくまでもしなやかに軽やかに。
「「「「「……ひ……!?」」」」」
しかし確かな決意に、量産型取神行共は震え上がった。『全能』から発射された光の弾丸めいて遠くから見えるにも関わらず、その背後まで皆が後退した。
「……」
無表情の『全能』が恐ろしい沈黙を湛えるのに量産型共が気づかぬ中、リアラは嵐の前の最後のメッセージを伝えた。
「緑樹さん、歩未……ありがとう。そして、皆……【逆襲物語ネイキッド・ブレイド】を呼んでくれている皆。愛してくれてありがとう……何とかする、絶対」
「……お兄ちゃんたちの事もよ、皆が愛してるのはね」
「それと勿論貴方もよ、新しい親友」
覚悟を決めた微笑が、相互を繋いだ。リアラが覚悟を決めた以上、読者全員、友も妹も、心も体も砕け散っても守る。物語と友情とが、地球にも負けない力をリアラに齎す。即ち、物語と友情は、地球人の魂をそこまで強く出来るのだと、リアラはその身でだらしない世界に歪み無く示し、世界に染まらぬその姿を以て読者を……己を愛してくれた人々を勇気づける。となれば歩未も緑樹も、ここに立ち続けるという決意を新たにする。
即ち、心理戦におけるリアラとルルヤの守りは固まった。敵はそれでも攻め立てるだろうが、跳ね除け、抗い、逆襲に繋げるだけだ。
「『交雑』、改めて言う。君の気持ちは分かる、けど」
「……はっ!」
リアラの言葉を『全能』の嘲笑が遮った。
「「「「「「ひぎゃ……!!!???」」」」」」
同時に『全能』の背後で、今のその姿の巨大さを思えば虫の鳴く声程に小さい幾つもの悲鳴が焦げ潰れて消えた。
「「「「っ……!」」」」
リアラもルルヤも、歩未も緑樹もそれを聞き逃さなかった。その人格を精神攻撃の手段として最早不要と見限られた量産型取神行共の、リアラの元クラスメート達やそれ以外の名も知らぬ何百人かの自我が、怯えて下がるならもう唯の弾丸になれ、後で救ってやるから今はいらぬと焼き潰されたのだ。『全能』が動く。死を引き連れて。
「リアラ! 下らん戯れ言は止めろ!」
そして『交雑』もまた。先のリアラの地球に関する論を認めぬと会話を打ち切って叫ぶ。もう後は戦うだけだと。
戦ろう。戦ろう。そういう事になった。
「行け」「食らえっ!!」
警戒感と不快感から『全能』と『交雑』はこの段階で互いへの攻撃を捨てリアラとルルヤへの攻撃を選択した。人格を焼き潰された量産型取神行達が光弾の嵐となって空を走り、『交雑』操るグレートシャマシュラーが全身から火器を乱射する。
ZDDDDDD!
「【陽の息吹よ】!」「【真竜の骨幹】よ!」
しかし最早リアラもルルヤも撃たれてはいない。拡げた羽から【真竜の翼鰭】の魔法力を発動させ、水面を衝撃波で跳ね散らかしながら高速飛行!
リアラは飛来する量産型取神行の光弾に、【陽の息吹よ狙い撃つ鏃となれ】と、手裏剣状にして【陽の息吹よ、灼き斬れ】と複合した【陽の息吹よ守護の祝福たれ】を、嵐を吹き付けるようにしてぶつける。
ルルヤはグレートシャマシュラーの段幕を、最低限度の被弾で済むように掻い潜り、被弾には【月影天盾】を体表に張り巡らせて防ぐ。
(これほど全方位でなければ掻い潜れるのだがな!)
既に中華ソヴィエト軍の投入させた戦力は無効化した。地球らしい打算と保身と不安が皮肉にも追加戦力の投入を一旦打ち止めとした為でもある。歩未と緑樹は大丈夫だ、リアラの【真竜の世界】が街と同じ様に守っている。であるならば、最早機動力を前回にする事を阻むものは何も無し。
そのリアラを守る為に戦うルルヤは、リアラへ飛びうる攻撃の射線を遮る以上リアラを守るが故に【真竜の世界】の対象となれないが……ルルヤはそれについてリアラに【真竜の宝珠】を使った通信でこう答えた。
「私の身がリアラの為に傷つく事が出来ないのであれば、私の心が傷つく。私がリアラの為に死ねないのであれば、私の心が死ぬ。何、勝つさ。故に実際に死にはしない。だから気にするな」
と。それを、リアラは是とした。言葉では語りつくせない絆と共に。故に二人は共に戦う。その防御と機動の竜術は、【逆襲物語ネイキッド・ブレイド】を愛する人々の応援で、【巨躯】となってからの最高潮を更新し続けている。
だがそんな全開の機動力を以てしても尚完全回避をさせないのは、グレートシャマシュラーの強さと限界を『交雑』自身が共に弁えているからに他ならぬ。
『交雑』は欲能で会得した様々な超能力により未来予知と人間の反射神経の限界を遥かに越えた領域での動作で操縦をしている。だが、それは【眼光】により相手の魔力や意思を読み、【宝珠】で思考速度を加速するリアラやルルヤも同じ事。
そしてそれは無数の欲能の嵐そのものである『全能』もだが、一人『交雑』にだけは一拍の遅れが存在する。即ち、リアラもルルヤも『全能』も自分の巨大化した肉体を直に動かしているが、『交雑』のみは機体を操縦している。肉体から機械への一瞬の伝達時間は、この極限領域では自分の肉体でないが故に痛覚や衝撃に惑わされる事は無いという利点もあるが不利要素だ。
故に無数の火器を、ルルヤを狙って、ルルヤの未来位置を狙って、それに反応してのルルヤの回避機動を狙ってと、全方位を事実上塗り潰すように分散させて放たなければならない。それは必然面積単位の火力の低下をもたらす。絶対零度領域とテラフレイムを同時に打ち込む事による一人合体攻撃・矛盾領域等を使う余裕は無い。そして、それでも尚テラフレイムや〈木のマルドラブル〉のプラズマブレイクサンダー等はそもそも『全能』クラスの怪物でもなければ単発で十分必殺の威力を有するが、複数の星王機神の合体であるグレートシャマシュラーは当然合体した機体の各種武装は合体した機体のその部分から放たれる。
つまりリアラから知識を得ているルルヤからすれば、当たってもある程度耐えられる攻撃と当たれば危険な攻撃がそれぞれ相手が塗り潰す全方位においてどこからどこまでを担当しているのかを見分けられる。そうなれば当たってもある程度耐えられる攻撃の方向へ逃げる事で、事実上相手の火力を一番低い武器のレベルに限定できる。
故にルルヤは耐えながら、反撃の手を織り上げる。
ZGDOOOONN!
同時にリアラの【息吹】の嵐が量産型取神行を蹴散らした。今やサイズが違うとはいえ一体一体が取神行である事に代わりはない。それをこうも蹴散らかすとは、明らかなパワーアップだ。皆の応援による【真竜の地脈】の効果もあるだろうが、それに加え魔法力の威力への変換の規模が明らかにより強大に変化していた。
「地球世界の宇宙の力を使うか!」
「愛する妹のアイディアでもあるし、崖っぷちも二重三重の意味で歩未も僕も承知の上さ! 元より正義の味方と復讐者、二つの崖の間の淵をそれでも歩くと決めたんだ、僕は!」
その理由を瞬時に『全能』は見切り口撃を加え、リアラはそれを跳ね返す。そう、この強化はリアラの【真竜の息吹】に対する発想の転換。それもリアラではなく妹の歩未が思い付き伝えた、緑樹との合体技である光の鏃に込められた術式。
そもそも、リアラは陽の【息吹】を事実上光属性として扱ってきていた。光を操る事で様々な応用を使いこなしていたが、それは光と熱という太陽の力の前者によるものであり、そして何より、それは〈泡の世界の内側をめぐる光の塊〉である混珠の太陽の範囲内の力だ。
リアラの魂である正透の生まれたこの地球のある世界の太陽、煮え滾る核融合の炎の力ではない。
歩未は、その地球がある世界の太陽の力も使えるのではないかと試した。
そしてそれに成功した。核の力を弄ぶのではなく、太陽の力で戦う地球の物語の正義のヒーローの必殺技を象る形とする事で周囲への被害負担を極限した、敵の体内に太陽の熱をぶちこむという形で!
それは物語の力で戦う戦士としては極めて際どい境地である事は、発案者の歩未もリアラも承知の上であった。リアラは無意識にそれを警戒していたからこそ、この極限の状況までその方向に目覚める事は無かった。
だが今、それを遂に解禁する。それが崖っぷちである事を承知の上で。その崖っぷちと対峙する事が今自分達の物語に必要だと感じながら、それでも尚踏み留まり警戒しながら、重なる善と悪、守護と殺害、罪と罰。その境界線を探る。
共産主義時代のソ連のジョークであるアネクドートで、資本主義者は崖っぷちにいると批判する共産主義者が我々は資本主義者より一歩先へ進んでいると言うが、それはつまり共産主義者は崖から落ちているのでは? というものがある。逆に言えば一歩進んで崖に落ちた奴を他人事と思うべきではない。それを見る奴もまた崖にいる事に代わりはない。足元が崩れたら死ぬのだ。
リアラは思う。自分達もこの物語も同じだ。崖っぷちを認識しなければならない。落ちないように……それは誰でも同じ様に、心がけねばならない事だけど。混珠の人間も、地球の人間も……この混珠と地球の物語を何処かで読む誰かにも、忘れてほしくない事だけど。
極限の集中と思考加速の中で奇妙な境地に至りながら、リアラは状況の変化を認識分析し続ける。
量産型取神行が、たった今まで自我を持っていた者達が、火花を噴く人形となって空中で崩れ落ち爆発していく。その内幾つかは、歩未と緑樹の攻撃によるものだ。彼女達にそれをさせてしまった。彼女達が望んだとはいえ。しかしそれは、紛れもなく戦況に一定の効果を齎した……その分リアラの攻撃が数発量産型取神行以外を狙う余裕を得た。『全能』を掠めるように牽制しながら空中を旋回、『交雑』と戦うルルヤの後ろから、その攻撃を助け『交雑』の防御を共に抉じ開けにかかる!
「【GEOAAAAAAAFAAAAAANN!!】」
分厚い翼で重力を打ち宙に抗い飛翔するルルヤの【巨躯】が【咆哮】し【息吹】を放つ。東京湾に水柱をあげながら黒い【息吹】がグレートシャマシュラーのバリアに激突する中、ルルヤは【骨幹】の効果で【巨躯】の姿を一部変化させた。
【息吹】と共に練り上げられ、鉄合金の極限どころかその限界をすら越え行く硬度の金属骨格がめりめりと形成され、その体を更に武装させる。頭に、剣か槍の穂先か、鋭い一本角。右手首から先は三日月を思わせる鎌となり、左手首から先は巨大鉄球となる。ハイパーマンアルファが戦った怪獣兵器、処刑改獣ヘロデラスを思わせるゴテゴテの攻撃的異形。だがそれよりもそれは更に洗練されていた。
ZDGAM! ZDGAM!
両腕から発射音! 腕と繋がる鎖を引いて鎌と鉄球と化した両手首射出!
ラトゥルハの機械化されていた肉体と組み合わせて得た発想。だがそれは発想元よりも更に能力を巧妙に組み合わせていた。鎌と鉄球が黒く燃え上がる。ルルヤの重力の【息吹】の付与。鎌は三日月、鉄球は満月。月を象ったそれは月の【息吹】の効率を跳ね上げ、読者達の思いと【巨躯】の体重と飛翔の速度を乗せ絶大破壊力をもってグレートシャマシュラーを攻撃!
DOBAAAAAAAAAANN!
「ぬううっ!! !!」
短距離テレポートで鎌をかわしたグレートシャマシュラーだったが、テレポート完了の隙を絶妙に突いて鉄球が激突!
【息吹】とバリアーが競り合って相殺するが、勢いのついた鉄球は止まらず相殺して消えたバリアーの奥の機体に直撃、胸部装甲がひしゃげ、その部分に合体していた〈火のネルガリオン〉の武装が使用不能となる!
「小癪なっ!」
大威力兵器を一つ、一時的に失った。だが、一時的にだ。〈日のシャマシュラー〉が、そしてその発展系であるグレートシャマシュラーが最強の一角とされる所以は次元接続システムによる無限のエネルギーと、それによる無限の自己再生だ。この程度の損傷は短期間で回復する。
「激震砕拳ッ!」
『交雑』は即座に機体に食い込んだ棘付鉄球と鎖に〈土のニヌルタン〉で構成された腕を叩きつけてその能力を発動。振動波を叩き込む。共振を解析し、狙いすました波動を打ち込み……
「ちいっ!!」
DOBAAAAAANN!!
共振現象による破壊を起こす狙いだったが、鉄を含んだ合金を理論上最高値の頑丈さとなるよう最適化して複雑にミルフィーユ状に重ね、【真竜の鱗棘】や混珠のその他魔法金属まで複雑に鍛造しカーボンナノチューブ構造まで入ったそれは極めて複雑な重積層構造体、共振周波数を取得し完全破壊する前に先にかわした鎌が打ち振れて追撃で〈土のニヌルタン〉で構成された腕に叩き込まれ絡み付く!
「この程度、何でもないわぁっ!!」
〈土のニヌルタン〉で構成された腕を破壊されながらも強引に鎌と鉄球も破壊!
「ならば追撃だっ!!」
「それならお返しだっ!!」
頭部に生やした角刃を更に射出しつつ突貫するルルヤ! 〈金のイシュタール〉の超展性金属触手でそれを絡めとり投げ返す『交雑』!
(それは、読んでいた!)
だがそれは相手の手を一手潰す為の牽制。ルルヤの狙い通りだ。
投げ返されてきた角刃を口で咥えてそのまま白兵距離の間合いに激突! 口に咥えた刃から物語への応援による【真竜の地脈】で威力を増大させた【息吹】の付与を刃そのものを使い捨てに砕く程爆発的に増大させ、曲芸じみた斬撃!
PIGAAAAAAA!!
グレートシャマシュラーの頭が切飛ばされた。無表情なアイカメラが消灯する。
「【GEOAAAAFAAANN!!】」
「止まれ、ケダモノがっ!!」
だがグレートシャマシュラーの腕が動く。飛びかける頭を捕まえ、兜を被る様に強引に首を据え直す。次元接続システムが作動し、首が繋がる。
故に【咆哮】と共に飛びかかるルルヤの【巨躯】を迎撃する、グレートシャマシュラーから放たれる氷結と雷。そして再構築され城壁めいて激突しエネルギー奔流で焼きに掛かるバリアーを、ルルヤも【月影天盾】の全身への付与で耐える……!
「ッ……!!」
DOON!!
動きを止めさせたルルヤに振り上げた〈月のシンナンナル〉で構成された健在な方の腕の〈月の爪〉が爆発四散! リアラが量産型取神行を撃墜する時に残して軌道を曲げた攻撃による支援! 核融合までもその効果範囲に収めつつも光を操る力も健在、レーザーによる攻撃を行う腕をそのレーザーの制御を奪い取り吹き飛ばす!
「【OOOOONN!!】」
ZDDDM!
その機を活かし氷を踏み潰し雷を握り砕きながら着水してのルルヤの【巨躯】の尾撃! 重厚なグレートシャマシュラーの腰がひしゃげ皹入り、機体を構成する〈水のエンキナー〉の部分にダメージ!
(このまま押し通す……いや!)
「そぉれぇがぁっ! どぉおおしたぁああああっ!!」
だが既に〈火のネルガリオン〉の部分が回復している! テラフレイム!
「【GAAAAANN!?】」
若干修復途中で照準が甘かったが、それでも絶大な威力を持つそれは、回避したが取り残され遅れたルルヤの尾を途中から吹き飛ばし引き千切る! ルルヤとて【血潮】で傷は癒えていくが……
「【千日手だな……!】」
幻肢痛めいた尾の痛みに耐えるルルヤ。分かっていた事だが凄まじい再生速度だ。リアラは策があると言う。だが、そのリアラも『全能』に苦戦を強いられている。
「一つ良い事を教えてやろう。お前は私がスカウトした量産型取神行を全滅させる事が私の戦力を削る事になると思っていたのかもしれないが……それは間違いだ」
TYDDDDDDDDDDDDDD!
「あああああああああああああっ!?!?」
「正透!?」「お兄ちゃんっ!!」
光。全て埋め尽くす光。
身も蓋もなく例えれば弾幕シューティングゲームを絶対クリア不可能にする自機の当たり判定よりも隙間が狭い弾幕とでも言うべき、『全能』から放たれる無量大数めいた光弾がリアラの【巨躯】を打ち倒した。
仮に【巨躯】を解除しても尚避けようもなく、そうなれば人の体では耐えきれず消し飛ばされるだろう弾幕。【真竜の世界】は辛うじて維持されているが、リアラは吹き飛ばされ叩きつけられ崩れ落ちのたうち回り、緑樹と歩未が悲鳴を上げる。
「あれは単なる嫌がらせで、別段お前が嫌がらせが聞かない非情の鉄面皮であるというのならば、最早不要だ。同等の攻撃は幾らでも出来る」
『全能』は嘲りつつ不動。悠然と両腕を掲げ、全身から一発一発が量産型取神行単体が有する全エネルギー量にも匹敵する威力を持つ光弾の嵐を放ち、冷ややかに宣告する。
「後はお前が死んで、この物語をバッドエンドで打ち切るだけだな」
「ッ……!!」
リアラは戦いの呼吸を止めない。非情の鉄面皮。そうであったら苦労はしない。だがそうでないとも言い切れない。あれは敵だ、と戦えてしまう人間だ。それでも、己がそうである事を受け止める。緑樹と歩未に手を汚させた事も。彼女達が自分で選んだ事であり、それがルルヤを助ける一手になった、その両面の事実をどちらも受け止める。戦いは果てしなく走り続けている。掴みきれなくなれば勝機を手中から失う。何処までいく? どうなる? 果てしない物語の果てしなき流れの果てまで流されそうな感覚を覚えながらそれでも考えを巡らせ物語を掴み続ける。
「リアラ!……勝ち筋は、まだ掴んでいるな!?」
それに加え、リアラの心に、ルルヤの声が活力を与えた。ハッ、と、黄金色の目が見開かれる。
「ッ、はい……!」
誓い立ち上がる。ざあと滝めいて【巨躯】から海水と血が流れ落ちた。それ程の大傷もルルヤより得意な【血潮】の効果で既に塞がっているが、『増大の欲能』に殴り飛ばされ粉々になりかけ海に突っ込んだ時位に死が一瞬近づいたかもしれない。
臨死したせいか、一瞬、また混珠の魂達と呼応した。向こうの戦いが見えた。
《王神鎧》の攻撃で起きる大爆発。吹き飛ばされる船と人。
ギデドスが《王神鎧》によじ登り、そのコックピットを『切断の欲能』を込めた魔法剣で切り裂く。
中にいる生体コンロトーラーと化した『機操の欲能』を倒そうと剣を振り上げるギデドスを、背後から『永遠』〈紅なるもの〉が魔剣『災禍を呼ぶ者』で貫いた。
ルマが悲痛の絶叫を上げる。兄ギデドスは竜術を以てしても致命傷だ。だが自分が背後から刺される事も覚悟の上で、『機操』は装甲を開けてしまえば最早他の者にも倒せると、自分の腹越しに切腹めいて背後の〈紅なるもの〉を貫いたのだ。
ルマに視線を向けた後〈紅なるもの〉諸共落下するギデドス。ルマが兄に代わり【真竜の翼鰭】で飛び上がる、『機操』を討ち、《王神鎧》を奪還するが……!
ギリ、と、吐血と歯を噛み鳴らすリアラ。世界二つ分の全てが圧し掛かる重圧で、奥歯を噛み砕きそうになる。
「無駄だよ。何度6面ダイスを振ろうと、7の出目は出ない」
だが、そう挑発する『全能』に、最早リアラは心を譲らない。反論しながら、リアラは勝負に出る。
「出るさ。ダイスを両断し3と4の出目が両方上を向いた状態にすればいい」
見えてきた、と、リアラは判断する。量産型取神行の撃墜、M10クレインクインPと『星なるかな知恵の天道』の撃墜。グレートシャマシュラーの自己再生システムは原作通り機体とパイロットには及ぶが、原作に存在しなかったパイロットが直接操縦する無人機や機動攻撃端末には及ばなかった。グレートシャマシュラーの自己再生と攻撃をリアラの【真竜の眼光】で見る事ができた。そして、現状の『全能』の攻撃方法も。そして一連の攻防をルルヤが体験し体得した。
「屁理屈を」
少なくとも最初にルルヤに請け負った通り『交雑』を倒す手筈は整えられた筈だ。リアラの言葉に反発する『全能』に対しては……まだ分からない。対抗する手は整えたが、だがそれは現状において対抗できる程度の手だ。倒すには、まだ足りないが……犠牲は積み上がっていく。戦いながら突っ切るしかない。
「頓知と言ってもらいたいね。出せばいいのさ……それを遊戯に使えば唯の反則だけど、人の心を傷つける言葉を挫く為に使えば叡知になると僕は信じる」
思考を回しながら、言葉も続ける。欲能が自我の歪みの度合いに、魔法力が心の強さに直結している以上言葉での戦いにも負ける訳にはいかないからだ。言葉での戦いに負ければ、それで敗北も決まってしまう。
「大体、君達と私達、何が違う。何処が違う。私は異世界転生という物語で地球人類を救っているんだよ? 『交雑』は自分の物語で自分を救おうとしているんだよ? その為に殺す。それが正しいと信じている。何が違う。何処が違う。ああ、はっきりと言うよ。神永正透。お前は物語を愛している。つまり、現実を嫌っている。命を嫌っている。理不尽で不条理で残酷で儚く有限なこの世界を地球を嫌っている。……この手の物語で地球を救う少年少女なんてのは、結局の所、ただただ自分の目指す目の前しか見ないバカか、この儚く醜い世界を一瞬の輝きこそが美しいと盲信し現状維持を肯定する肉屋を支持する家畜かだ。お前はどちらにもなれない。お前に世界は救えんよ、お前は私に勝てないよ!」
ああ、そうだ、と、それをリアラは内心一部肯定する。僕は命を嫌っている。人界の理を嫌い、物語を肯定している。けれど同時に、誰かの神様にならなきゃ生きていけない訳でも誰かに神様になってほしい訳でもない。物語が人を救うのではなく物語を愛する事で人は自分を救う事が出来るんだと、僕達という物語を通じて皆に述べ伝えているだけだと、それに抗う。それが難しい事なのは分かっている。自分が中途半端な事も。けど、世界を救う少年少女を貶める言葉は、物語を愛する者として認められない。たとえ自分が王道の少年少女主人公のような真っ直ぐではないとしても……
(【ルルヤさん、緑樹さん、歩未。それでも、勝ちにいく為に。頼む事がある】)
【真竜の宝珠】で皆を繋ぐ。それでも、尚。助けられる人を助けたいと。
「ふ、ふっはっはっはっはっはっは……」
リアラ達が得た、【逆襲物語ネイキッド・ブレイド】という物語を愛する人間達の力。。それに対する八割様々な怒りの複雑極まりない感情で、『交雑』は哄笑した。炎上する前に生前の己が書いていた物語は瞬間最大においては自惚れではなく【逆襲物語ネイキッド・ブレイド】とは象と蟻程にも差のある巨大なファン人口を抱えていた事、炎上騒動でそれらが去った事、あくまでごくごく一部というにも少ない量とはいえ己の憎む地球からの愛を受けている事……様々な事柄へのもっと様々な感情が煮え滾る。
そして。それを許さないのは『全能』もまた同じだ。それは、己の掲げる救済である異世界転生とは違う形だ。存在を許す訳にはいかぬ。
「行けよ、救いが欲しいんだろ? ほら、冒険、しなくちゃ」
「「「「「う、うおおおおおお!!」」」」」
静かな怒気を込めた『全能』の言葉に、量産型取神行達が突貫した。雨の様にリアラとルルヤの【巨躯】に降りかかる閃光。緑樹達を狙ってもリアラの【真竜の世界】があるから無駄だと、『全能』がテレパシー的に欲能を使い命令した故だ。
「【GEOAAAAFAAAANNN!!】」
それを迎え撃ったのはルルヤの【咆哮】だ。【息吹】と同時発動し、ルルヤの【巨躯】の全身から黒紫の波動が迸る。それは、物語を通じて彼女を愛し応援する人々の心の力を【真竜の地脈】として得て、猛烈な威力増大を得ていた!
「「「「「うわぁああああっ!?」」」」」
海面が爆裂する。それは心を砕く威嚇と物理的に弾き飛ばす重力攻撃の二重奏。光弾と化した量産型取神行達は、肉体はそれで破壊される程柔ではないが、所詮促成栽培。本来の取神行ならばその強大な自我で【咆哮】の威圧に耐えただろうが、こいつら量産型は力だけでエゴは伴わない、本来取神行には【咆哮】は聞かないはずだろうという心理的盲点を飛び越えてのルルヤの怒号が、心身ともの衝撃で量産型どもを弾き飛ばす!
「【感謝する、緑樹! 歩未! 心の底から! 何を礼とすればいいか分からぬ程に! 愛している、友達よ!】」
竜は吼えた。友への感謝を。そこには邪悪を退ける作業に消耗する音色は無かった。それは現実を越えて高らかと響く勇気であった。
「【そして感謝する! 吟遊詩人としての緑樹と歩未が語る、私とリアラの物語に感じ入ってくれた人々よ! お陰で竜は今ここに存在できる! 私は戦えるぞ! 例え地球が信じずとも、お前達をこの騒ぎから守る為に! ああ、この私が、地球人に虐げられた世界から来た私が、地球人を守る為に戦えるぞ! この応援があれば、世界すらこの背に担えよう!】」
竜はその巨大な翼を羽ばたかせた。轟く風が、怯んだ量産型取神行達を更に吹き飛ばす。それは紛れもなく、生き生きと躍動する生命であった。物語を愛する者達の心が確かに現実に顕現させた絆の力が生んだ命の輝きであった。
「【そして、改めて言おう。私の愛するリアラを虐めた者達よ……お前達が立ちはだかるというのならば、私には願ったり叶ったりだ】」
竜は牙を剥き唸る。その鋭い牙の向こうから、準備運動めいてちらちら【息吹】が黒く揺れた。
「【かかってくるなら、我が愛する人の報仇が出来るというもの! さあ、この牙を、この爪を、恐れずかかってくるがいい! 出来るのならな!】」
牙を鳴らし、爪を剥いて、黒き竜は無数の光に対し宣言した。何者にも揺るがせにさせないという愛を。
それは、物語が、現実に敗れず、物語が生む絆を力として、この地球で生きて見せるという宣言であった。
「僕は別に、緑樹や歩未が無事なら、ああ、きっとこういう僕の態度が君達の癪に障ったんだろうけど……君達に敵意を抱く訳じゃない」
それだけ隙があればリアラが陽の【息吹】を操るには十二分過ぎる。両手に光。【陽の息吹よ狙い撃つ鏃となれ】だけではない。【陽の息吹よ守護の祝福たれ】も、更なる応用として【陽の息吹よ、灼き斬れ】と組み合わせられ手裏剣や戦輪めいて無数に周囲に浮かぶ。量産型取神行共である光球の数にもひけをとらぬ。
何よりリアラの心が、堂々と立ち上がっていた。
「けど、喧嘩がしたいのならするよ。君達がその姿を凶器として振り上げるんなら、僕も魔法という凶器を使う。お互い凶器を振り上げる以上……勿論死ぬ覚悟で喧嘩してるよね。僕は、してる」
敵に対してはあくまで静かに。復讐者であると同時に救う事を望む正義の味方であり、復讐者としても正義の味方としても不完全であるが、そのどちらでもあるが故にあくまでもしなやかに軽やかに。
「「「「「……ひ……!?」」」」」
しかし確かな決意に、量産型取神行共は震え上がった。『全能』から発射された光の弾丸めいて遠くから見えるにも関わらず、その背後まで皆が後退した。
「……」
無表情の『全能』が恐ろしい沈黙を湛えるのに量産型共が気づかぬ中、リアラは嵐の前の最後のメッセージを伝えた。
「緑樹さん、歩未……ありがとう。そして、皆……【逆襲物語ネイキッド・ブレイド】を呼んでくれている皆。愛してくれてありがとう……何とかする、絶対」
「……お兄ちゃんたちの事もよ、皆が愛してるのはね」
「それと勿論貴方もよ、新しい親友」
覚悟を決めた微笑が、相互を繋いだ。リアラが覚悟を決めた以上、読者全員、友も妹も、心も体も砕け散っても守る。物語と友情とが、地球にも負けない力をリアラに齎す。即ち、物語と友情は、地球人の魂をそこまで強く出来るのだと、リアラはその身でだらしない世界に歪み無く示し、世界に染まらぬその姿を以て読者を……己を愛してくれた人々を勇気づける。となれば歩未も緑樹も、ここに立ち続けるという決意を新たにする。
即ち、心理戦におけるリアラとルルヤの守りは固まった。敵はそれでも攻め立てるだろうが、跳ね除け、抗い、逆襲に繋げるだけだ。
「『交雑』、改めて言う。君の気持ちは分かる、けど」
「……はっ!」
リアラの言葉を『全能』の嘲笑が遮った。
「「「「「「ひぎゃ……!!!???」」」」」」
同時に『全能』の背後で、今のその姿の巨大さを思えば虫の鳴く声程に小さい幾つもの悲鳴が焦げ潰れて消えた。
「「「「っ……!」」」」
リアラもルルヤも、歩未も緑樹もそれを聞き逃さなかった。その人格を精神攻撃の手段として最早不要と見限られた量産型取神行共の、リアラの元クラスメート達やそれ以外の名も知らぬ何百人かの自我が、怯えて下がるならもう唯の弾丸になれ、後で救ってやるから今はいらぬと焼き潰されたのだ。『全能』が動く。死を引き連れて。
「リアラ! 下らん戯れ言は止めろ!」
そして『交雑』もまた。先のリアラの地球に関する論を認めぬと会話を打ち切って叫ぶ。もう後は戦うだけだと。
戦ろう。戦ろう。そういう事になった。
「行け」「食らえっ!!」
警戒感と不快感から『全能』と『交雑』はこの段階で互いへの攻撃を捨てリアラとルルヤへの攻撃を選択した。人格を焼き潰された量産型取神行達が光弾の嵐となって空を走り、『交雑』操るグレートシャマシュラーが全身から火器を乱射する。
ZDDDDDD!
「【陽の息吹よ】!」「【真竜の骨幹】よ!」
しかし最早リアラもルルヤも撃たれてはいない。拡げた羽から【真竜の翼鰭】の魔法力を発動させ、水面を衝撃波で跳ね散らかしながら高速飛行!
リアラは飛来する量産型取神行の光弾に、【陽の息吹よ狙い撃つ鏃となれ】と、手裏剣状にして【陽の息吹よ、灼き斬れ】と複合した【陽の息吹よ守護の祝福たれ】を、嵐を吹き付けるようにしてぶつける。
ルルヤはグレートシャマシュラーの段幕を、最低限度の被弾で済むように掻い潜り、被弾には【月影天盾】を体表に張り巡らせて防ぐ。
(これほど全方位でなければ掻い潜れるのだがな!)
既に中華ソヴィエト軍の投入させた戦力は無効化した。地球らしい打算と保身と不安が皮肉にも追加戦力の投入を一旦打ち止めとした為でもある。歩未と緑樹は大丈夫だ、リアラの【真竜の世界】が街と同じ様に守っている。であるならば、最早機動力を前回にする事を阻むものは何も無し。
そのリアラを守る為に戦うルルヤは、リアラへ飛びうる攻撃の射線を遮る以上リアラを守るが故に【真竜の世界】の対象となれないが……ルルヤはそれについてリアラに【真竜の宝珠】を使った通信でこう答えた。
「私の身がリアラの為に傷つく事が出来ないのであれば、私の心が傷つく。私がリアラの為に死ねないのであれば、私の心が死ぬ。何、勝つさ。故に実際に死にはしない。だから気にするな」
と。それを、リアラは是とした。言葉では語りつくせない絆と共に。故に二人は共に戦う。その防御と機動の竜術は、【逆襲物語ネイキッド・ブレイド】を愛する人々の応援で、【巨躯】となってからの最高潮を更新し続けている。
だがそんな全開の機動力を以てしても尚完全回避をさせないのは、グレートシャマシュラーの強さと限界を『交雑』自身が共に弁えているからに他ならぬ。
『交雑』は欲能で会得した様々な超能力により未来予知と人間の反射神経の限界を遥かに越えた領域での動作で操縦をしている。だが、それは【眼光】により相手の魔力や意思を読み、【宝珠】で思考速度を加速するリアラやルルヤも同じ事。
そしてそれは無数の欲能の嵐そのものである『全能』もだが、一人『交雑』にだけは一拍の遅れが存在する。即ち、リアラもルルヤも『全能』も自分の巨大化した肉体を直に動かしているが、『交雑』のみは機体を操縦している。肉体から機械への一瞬の伝達時間は、この極限領域では自分の肉体でないが故に痛覚や衝撃に惑わされる事は無いという利点もあるが不利要素だ。
故に無数の火器を、ルルヤを狙って、ルルヤの未来位置を狙って、それに反応してのルルヤの回避機動を狙ってと、全方位を事実上塗り潰すように分散させて放たなければならない。それは必然面積単位の火力の低下をもたらす。絶対零度領域とテラフレイムを同時に打ち込む事による一人合体攻撃・矛盾領域等を使う余裕は無い。そして、それでも尚テラフレイムや〈木のマルドラブル〉のプラズマブレイクサンダー等はそもそも『全能』クラスの怪物でもなければ単発で十分必殺の威力を有するが、複数の星王機神の合体であるグレートシャマシュラーは当然合体した機体の各種武装は合体した機体のその部分から放たれる。
つまりリアラから知識を得ているルルヤからすれば、当たってもある程度耐えられる攻撃と当たれば危険な攻撃がそれぞれ相手が塗り潰す全方位においてどこからどこまでを担当しているのかを見分けられる。そうなれば当たってもある程度耐えられる攻撃の方向へ逃げる事で、事実上相手の火力を一番低い武器のレベルに限定できる。
故にルルヤは耐えながら、反撃の手を織り上げる。
ZGDOOOONN!
同時にリアラの【息吹】の嵐が量産型取神行を蹴散らした。今やサイズが違うとはいえ一体一体が取神行である事に代わりはない。それをこうも蹴散らかすとは、明らかなパワーアップだ。皆の応援による【真竜の地脈】の効果もあるだろうが、それに加え魔法力の威力への変換の規模が明らかにより強大に変化していた。
「地球世界の宇宙の力を使うか!」
「愛する妹のアイディアでもあるし、崖っぷちも二重三重の意味で歩未も僕も承知の上さ! 元より正義の味方と復讐者、二つの崖の間の淵をそれでも歩くと決めたんだ、僕は!」
その理由を瞬時に『全能』は見切り口撃を加え、リアラはそれを跳ね返す。そう、この強化はリアラの【真竜の息吹】に対する発想の転換。それもリアラではなく妹の歩未が思い付き伝えた、緑樹との合体技である光の鏃に込められた術式。
そもそも、リアラは陽の【息吹】を事実上光属性として扱ってきていた。光を操る事で様々な応用を使いこなしていたが、それは光と熱という太陽の力の前者によるものであり、そして何より、それは〈泡の世界の内側をめぐる光の塊〉である混珠の太陽の範囲内の力だ。
リアラの魂である正透の生まれたこの地球のある世界の太陽、煮え滾る核融合の炎の力ではない。
歩未は、その地球がある世界の太陽の力も使えるのではないかと試した。
そしてそれに成功した。核の力を弄ぶのではなく、太陽の力で戦う地球の物語の正義のヒーローの必殺技を象る形とする事で周囲への被害負担を極限した、敵の体内に太陽の熱をぶちこむという形で!
それは物語の力で戦う戦士としては極めて際どい境地である事は、発案者の歩未もリアラも承知の上であった。リアラは無意識にそれを警戒していたからこそ、この極限の状況までその方向に目覚める事は無かった。
だが今、それを遂に解禁する。それが崖っぷちである事を承知の上で。その崖っぷちと対峙する事が今自分達の物語に必要だと感じながら、それでも尚踏み留まり警戒しながら、重なる善と悪、守護と殺害、罪と罰。その境界線を探る。
共産主義時代のソ連のジョークであるアネクドートで、資本主義者は崖っぷちにいると批判する共産主義者が我々は資本主義者より一歩先へ進んでいると言うが、それはつまり共産主義者は崖から落ちているのでは? というものがある。逆に言えば一歩進んで崖に落ちた奴を他人事と思うべきではない。それを見る奴もまた崖にいる事に代わりはない。足元が崩れたら死ぬのだ。
リアラは思う。自分達もこの物語も同じだ。崖っぷちを認識しなければならない。落ちないように……それは誰でも同じ様に、心がけねばならない事だけど。混珠の人間も、地球の人間も……この混珠と地球の物語を何処かで読む誰かにも、忘れてほしくない事だけど。
極限の集中と思考加速の中で奇妙な境地に至りながら、リアラは状況の変化を認識分析し続ける。
量産型取神行が、たった今まで自我を持っていた者達が、火花を噴く人形となって空中で崩れ落ち爆発していく。その内幾つかは、歩未と緑樹の攻撃によるものだ。彼女達にそれをさせてしまった。彼女達が望んだとはいえ。しかしそれは、紛れもなく戦況に一定の効果を齎した……その分リアラの攻撃が数発量産型取神行以外を狙う余裕を得た。『全能』を掠めるように牽制しながら空中を旋回、『交雑』と戦うルルヤの後ろから、その攻撃を助け『交雑』の防御を共に抉じ開けにかかる!
「【GEOAAAAAAAFAAAAAANN!!】」
分厚い翼で重力を打ち宙に抗い飛翔するルルヤの【巨躯】が【咆哮】し【息吹】を放つ。東京湾に水柱をあげながら黒い【息吹】がグレートシャマシュラーのバリアに激突する中、ルルヤは【骨幹】の効果で【巨躯】の姿を一部変化させた。
【息吹】と共に練り上げられ、鉄合金の極限どころかその限界をすら越え行く硬度の金属骨格がめりめりと形成され、その体を更に武装させる。頭に、剣か槍の穂先か、鋭い一本角。右手首から先は三日月を思わせる鎌となり、左手首から先は巨大鉄球となる。ハイパーマンアルファが戦った怪獣兵器、処刑改獣ヘロデラスを思わせるゴテゴテの攻撃的異形。だがそれよりもそれは更に洗練されていた。
ZDGAM! ZDGAM!
両腕から発射音! 腕と繋がる鎖を引いて鎌と鉄球と化した両手首射出!
ラトゥルハの機械化されていた肉体と組み合わせて得た発想。だがそれは発想元よりも更に能力を巧妙に組み合わせていた。鎌と鉄球が黒く燃え上がる。ルルヤの重力の【息吹】の付与。鎌は三日月、鉄球は満月。月を象ったそれは月の【息吹】の効率を跳ね上げ、読者達の思いと【巨躯】の体重と飛翔の速度を乗せ絶大破壊力をもってグレートシャマシュラーを攻撃!
DOBAAAAAAAAAANN!
「ぬううっ!! !!」
短距離テレポートで鎌をかわしたグレートシャマシュラーだったが、テレポート完了の隙を絶妙に突いて鉄球が激突!
【息吹】とバリアーが競り合って相殺するが、勢いのついた鉄球は止まらず相殺して消えたバリアーの奥の機体に直撃、胸部装甲がひしゃげ、その部分に合体していた〈火のネルガリオン〉の武装が使用不能となる!
「小癪なっ!」
大威力兵器を一つ、一時的に失った。だが、一時的にだ。〈日のシャマシュラー〉が、そしてその発展系であるグレートシャマシュラーが最強の一角とされる所以は次元接続システムによる無限のエネルギーと、それによる無限の自己再生だ。この程度の損傷は短期間で回復する。
「激震砕拳ッ!」
『交雑』は即座に機体に食い込んだ棘付鉄球と鎖に〈土のニヌルタン〉で構成された腕を叩きつけてその能力を発動。振動波を叩き込む。共振を解析し、狙いすました波動を打ち込み……
「ちいっ!!」
DOBAAAAAANN!!
共振現象による破壊を起こす狙いだったが、鉄を含んだ合金を理論上最高値の頑丈さとなるよう最適化して複雑にミルフィーユ状に重ね、【真竜の鱗棘】や混珠のその他魔法金属まで複雑に鍛造しカーボンナノチューブ構造まで入ったそれは極めて複雑な重積層構造体、共振周波数を取得し完全破壊する前に先にかわした鎌が打ち振れて追撃で〈土のニヌルタン〉で構成された腕に叩き込まれ絡み付く!
「この程度、何でもないわぁっ!!」
〈土のニヌルタン〉で構成された腕を破壊されながらも強引に鎌と鉄球も破壊!
「ならば追撃だっ!!」
「それならお返しだっ!!」
頭部に生やした角刃を更に射出しつつ突貫するルルヤ! 〈金のイシュタール〉の超展性金属触手でそれを絡めとり投げ返す『交雑』!
(それは、読んでいた!)
だがそれは相手の手を一手潰す為の牽制。ルルヤの狙い通りだ。
投げ返されてきた角刃を口で咥えてそのまま白兵距離の間合いに激突! 口に咥えた刃から物語への応援による【真竜の地脈】で威力を増大させた【息吹】の付与を刃そのものを使い捨てに砕く程爆発的に増大させ、曲芸じみた斬撃!
PIGAAAAAAA!!
グレートシャマシュラーの頭が切飛ばされた。無表情なアイカメラが消灯する。
「【GEOAAAAFAAANN!!】」
「止まれ、ケダモノがっ!!」
だがグレートシャマシュラーの腕が動く。飛びかける頭を捕まえ、兜を被る様に強引に首を据え直す。次元接続システムが作動し、首が繋がる。
故に【咆哮】と共に飛びかかるルルヤの【巨躯】を迎撃する、グレートシャマシュラーから放たれる氷結と雷。そして再構築され城壁めいて激突しエネルギー奔流で焼きに掛かるバリアーを、ルルヤも【月影天盾】の全身への付与で耐える……!
「ッ……!!」
DOON!!
動きを止めさせたルルヤに振り上げた〈月のシンナンナル〉で構成された健在な方の腕の〈月の爪〉が爆発四散! リアラが量産型取神行を撃墜する時に残して軌道を曲げた攻撃による支援! 核融合までもその効果範囲に収めつつも光を操る力も健在、レーザーによる攻撃を行う腕をそのレーザーの制御を奪い取り吹き飛ばす!
「【OOOOONN!!】」
ZDDDM!
その機を活かし氷を踏み潰し雷を握り砕きながら着水してのルルヤの【巨躯】の尾撃! 重厚なグレートシャマシュラーの腰がひしゃげ皹入り、機体を構成する〈水のエンキナー〉の部分にダメージ!
(このまま押し通す……いや!)
「そぉれぇがぁっ! どぉおおしたぁああああっ!!」
だが既に〈火のネルガリオン〉の部分が回復している! テラフレイム!
「【GAAAAANN!?】」
若干修復途中で照準が甘かったが、それでも絶大な威力を持つそれは、回避したが取り残され遅れたルルヤの尾を途中から吹き飛ばし引き千切る! ルルヤとて【血潮】で傷は癒えていくが……
「【千日手だな……!】」
幻肢痛めいた尾の痛みに耐えるルルヤ。分かっていた事だが凄まじい再生速度だ。リアラは策があると言う。だが、そのリアラも『全能』に苦戦を強いられている。
「一つ良い事を教えてやろう。お前は私がスカウトした量産型取神行を全滅させる事が私の戦力を削る事になると思っていたのかもしれないが……それは間違いだ」
TYDDDDDDDDDDDDDD!
「あああああああああああああっ!?!?」
「正透!?」「お兄ちゃんっ!!」
光。全て埋め尽くす光。
身も蓋もなく例えれば弾幕シューティングゲームを絶対クリア不可能にする自機の当たり判定よりも隙間が狭い弾幕とでも言うべき、『全能』から放たれる無量大数めいた光弾がリアラの【巨躯】を打ち倒した。
仮に【巨躯】を解除しても尚避けようもなく、そうなれば人の体では耐えきれず消し飛ばされるだろう弾幕。【真竜の世界】は辛うじて維持されているが、リアラは吹き飛ばされ叩きつけられ崩れ落ちのたうち回り、緑樹と歩未が悲鳴を上げる。
「あれは単なる嫌がらせで、別段お前が嫌がらせが聞かない非情の鉄面皮であるというのならば、最早不要だ。同等の攻撃は幾らでも出来る」
『全能』は嘲りつつ不動。悠然と両腕を掲げ、全身から一発一発が量産型取神行単体が有する全エネルギー量にも匹敵する威力を持つ光弾の嵐を放ち、冷ややかに宣告する。
「後はお前が死んで、この物語をバッドエンドで打ち切るだけだな」
「ッ……!!」
リアラは戦いの呼吸を止めない。非情の鉄面皮。そうであったら苦労はしない。だがそうでないとも言い切れない。あれは敵だ、と戦えてしまう人間だ。それでも、己がそうである事を受け止める。緑樹と歩未に手を汚させた事も。彼女達が自分で選んだ事であり、それがルルヤを助ける一手になった、その両面の事実をどちらも受け止める。戦いは果てしなく走り続けている。掴みきれなくなれば勝機を手中から失う。何処までいく? どうなる? 果てしない物語の果てしなき流れの果てまで流されそうな感覚を覚えながらそれでも考えを巡らせ物語を掴み続ける。
「リアラ!……勝ち筋は、まだ掴んでいるな!?」
それに加え、リアラの心に、ルルヤの声が活力を与えた。ハッ、と、黄金色の目が見開かれる。
「ッ、はい……!」
誓い立ち上がる。ざあと滝めいて【巨躯】から海水と血が流れ落ちた。それ程の大傷もルルヤより得意な【血潮】の効果で既に塞がっているが、『増大の欲能』に殴り飛ばされ粉々になりかけ海に突っ込んだ時位に死が一瞬近づいたかもしれない。
臨死したせいか、一瞬、また混珠の魂達と呼応した。向こうの戦いが見えた。
《王神鎧》の攻撃で起きる大爆発。吹き飛ばされる船と人。
ギデドスが《王神鎧》によじ登り、そのコックピットを『切断の欲能』を込めた魔法剣で切り裂く。
中にいる生体コンロトーラーと化した『機操の欲能』を倒そうと剣を振り上げるギデドスを、背後から『永遠』〈紅なるもの〉が魔剣『災禍を呼ぶ者』で貫いた。
ルマが悲痛の絶叫を上げる。兄ギデドスは竜術を以てしても致命傷だ。だが自分が背後から刺される事も覚悟の上で、『機操』は装甲を開けてしまえば最早他の者にも倒せると、自分の腹越しに切腹めいて背後の〈紅なるもの〉を貫いたのだ。
ルマに視線を向けた後〈紅なるもの〉諸共落下するギデドス。ルマが兄に代わり【真竜の翼鰭】で飛び上がる、『機操』を討ち、《王神鎧》を奪還するが……!
ギリ、と、吐血と歯を噛み鳴らすリアラ。世界二つ分の全てが圧し掛かる重圧で、奥歯を噛み砕きそうになる。
「無駄だよ。何度6面ダイスを振ろうと、7の出目は出ない」
だが、そう挑発する『全能』に、最早リアラは心を譲らない。反論しながら、リアラは勝負に出る。
「出るさ。ダイスを両断し3と4の出目が両方上を向いた状態にすればいい」
見えてきた、と、リアラは判断する。量産型取神行の撃墜、M10クレインクインPと『星なるかな知恵の天道』の撃墜。グレートシャマシュラーの自己再生システムは原作通り機体とパイロットには及ぶが、原作に存在しなかったパイロットが直接操縦する無人機や機動攻撃端末には及ばなかった。グレートシャマシュラーの自己再生と攻撃をリアラの【真竜の眼光】で見る事ができた。そして、現状の『全能』の攻撃方法も。そして一連の攻防をルルヤが体験し体得した。
「屁理屈を」
少なくとも最初にルルヤに請け負った通り『交雑』を倒す手筈は整えられた筈だ。リアラの言葉に反発する『全能』に対しては……まだ分からない。対抗する手は整えたが、だがそれは現状において対抗できる程度の手だ。倒すには、まだ足りないが……犠牲は積み上がっていく。戦いながら突っ切るしかない。
「頓知と言ってもらいたいね。出せばいいのさ……それを遊戯に使えば唯の反則だけど、人の心を傷つける言葉を挫く為に使えば叡知になると僕は信じる」
思考を回しながら、言葉も続ける。欲能が自我の歪みの度合いに、魔法力が心の強さに直結している以上言葉での戦いにも負ける訳にはいかないからだ。言葉での戦いに負ければ、それで敗北も決まってしまう。
「大体、君達と私達、何が違う。何処が違う。私は異世界転生という物語で地球人類を救っているんだよ? 『交雑』は自分の物語で自分を救おうとしているんだよ? その為に殺す。それが正しいと信じている。何が違う。何処が違う。ああ、はっきりと言うよ。神永正透。お前は物語を愛している。つまり、現実を嫌っている。命を嫌っている。理不尽で不条理で残酷で儚く有限なこの世界を地球を嫌っている。……この手の物語で地球を救う少年少女なんてのは、結局の所、ただただ自分の目指す目の前しか見ないバカか、この儚く醜い世界を一瞬の輝きこそが美しいと盲信し現状維持を肯定する肉屋を支持する家畜かだ。お前はどちらにもなれない。お前に世界は救えんよ、お前は私に勝てないよ!」
ああ、そうだ、と、それをリアラは内心一部肯定する。僕は命を嫌っている。人界の理を嫌い、物語を肯定している。けれど同時に、誰かの神様にならなきゃ生きていけない訳でも誰かに神様になってほしい訳でもない。物語が人を救うのではなく物語を愛する事で人は自分を救う事が出来るんだと、僕達という物語を通じて皆に述べ伝えているだけだと、それに抗う。それが難しい事なのは分かっている。自分が中途半端な事も。けど、世界を救う少年少女を貶める言葉は、物語を愛する者として認められない。たとえ自分が王道の少年少女主人公のような真っ直ぐではないとしても……
(【ルルヤさん、緑樹さん、歩未。それでも、勝ちにいく為に。頼む事がある】)
【真竜の宝珠】で皆を繋ぐ。それでも、尚。助けられる人を助けたいと。
応援ありがとうございます!
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