神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜 あやめ

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【第2部】第1章 高校生と新生活

第56話 学校帰りと商店街

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「はぁ、帰りに商店街通るのって、ヤバイよねー」

 高校からの帰り道。

 商店街に漂う、美味しそうな匂いにつられて、華が物欲しそうに言葉を放つ。

 華達が現在通う高校は、今まで通ってきた中学校とは、全く逆方向に位置する。自宅マンションを中心に考えると、中学校は自宅から右手に徒歩15分程の距離にあるが、高校は左手に徒歩20分程。

 そして、高校への通学路には、途中商店街を通らなくてはならないため、お腹が空いた頃の学生には、なかなかにハードな帰宅経路でもあった。


「……お腹、空いたねー」

「いま食べたら太るぞ」

「っ、分かってるよ!」

 商店街を進みながら、華と蓮はいつも通りの会話をする。

 二人でこうして帰るのも、かれこれ小学校の頃からなので、それを考えると、長いことこの習慣を続けていることになる。

 中学で部活でも始めていたら、また違ったのかもしれないが、二人とも帰宅部で、そのためか、なぜか不思議と友達と帰ることもなく、むしろここまでくると、一緒に帰らないのも不自然にすら感じてくるくらいだ。


「そういえば華は、部活とか考えてる?」

「あーどうしようかな。葉月はまたバレー部入るみたいだけど……蓮はなにか考えてる?」

「うーん。俺は、中学で一緒だった先輩から、バスケ部誘われてるんだよね」

「へー。いいじゃん、バスケ! 中学でも、たまにスケットで入ることあったし」

「……まーそうだけど、華はどうすんの?」

「うーん、私はまた帰宅部でもいいかなー」

「そう…」

「? なに、なんか乗り気じゃないみたいな? あ!私に気を使ってんなら、全然気にしなくていいからね!」

「……」

「別に一人でも帰れるし、やりたいことあるならした方がいいよ!」

「……それなら、まぁ」

 華がニッコリ笑ってそう言うと、蓮は小さく相槌をうち、視線を逸らす。

「あ!そう言えば、この前葉月から聞いたんだけど! 蓮、私のこと女捨ててるって触れ回ってるって本当!?」

 すると、少し前に葉月から聞いた言葉を思い出し、華が甲高い声を上げた。

「別に俺は、事実を正確に伝えてるだけ…」

「じ、事実じゃないでしょ! 私のどこが女捨ててるの!?」

「だってお前、兄貴に甘えてばっかりじゃん。料理もあんまりできないし」

「できるよ! カレーとか、肉じゃがとか、ハンバーグとか!」

「そういう、女子が作れて当たり前みたいなやつじゃなくて、煮物とか煮魚とか、そんな感じの家庭料理のこと」

「っ……それは、今から覚えます!てか、蓮だって飛鳥兄ぃに甘えてるじゃん! この間は、シャツのボタンつけてもらってたし! ボタンくらい自分でつけなさいよね!」

「っ、俺裁縫とか苦手なんだよ!?それに華に頼むより、兄貴の方が上手いし!」

「はぁ?!なにそれ!!」

腑に落ちないのか、華は蓮に向けて怒りの声をあげる。

「はぁ。ていうか、ホントダメだな俺たち。兄貴のためにも、もっとしっかりしないといけないのに…」

「……あはは、だよねー。早く大人にならなくちゃって思ってるのに、つい…」

 二人は、自分たちの発言を思い返し、その甘さを改めて痛感する。

 あの兄が彼女も作らず、いつも自分たちと一緒にいてくれるのは、自分たちが兄にとって、まだ頼りない存在だからなのだろうと二人は思う。

 だからこそ、兄に心配をかけぬように、少しでも大人に近付こうと頑張っているはずなのに、なかなかにこの甘え癖は抜けないものだ。

「てか、料理の話したら、マジでお腹すいてきたー」

「飛鳥兄ぃの煮魚、美味しいもんねー」

「あー確かに」


『やぁ、飛鳥ちゃん~今日も相変わらず美人だな~』

「「!!?」」

 だがその時──

 前方に見えた一軒の魚屋から、男性の声が聞こえた。

 そして、その声が発した言葉の中には、二人にも聞き覚えのある『名前』がしっかりと混じっていて……
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