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第2章 絶世の美女
第59話 エレナとミサ
しおりを挟む(な、なんだ、この人メチャクチャ美人じゃん!?)
応接室の中にいた女性が、あまりに綺麗だったからか、狭山は一瞬にして目を奪われた。
この人がエレナの母親なのか、社長からは母親の年齢は41歳と聞いていたはずなのに、その女性の姿は実年齢より10歳は若く見えた。
「おい、狭山! 名刺、挨拶!!」
「え!? あ、はい!」
すると、ボサッとしていた狭山の尻を叩く勢いで、坂井が狭山を叱咤する。
「すみません、紺野さん。こいつまだ新人で、至らないところもあると思いますが…」
ペコペコと謝る坂井の横で、ワタワタと名刺を準備しながら、狭山は再びさっきの「気を付けろ」という言葉を思い出した。
(っ、もしかしてこの人、美人だけど、すごく性格きつい……とか?)
まずい!!
怒らせたら厄介な相手なのかもしれない!!
だが、そう思った矢先──
「いえ、気になさらないでください…」
(え?)
その女性は座っていたイスから一人立ち上がると、ニコリと綺麗な笑顔をむけて、二人に微笑みかけてきた。
「うちのエレナも至らないところばかりですから…」
そういうと、女性はニコリと笑う。
(あれ? メチャメチャ、いい人そう…)
怒られるどころか、見とれてしまうほど綺麗な笑顔をむけられ、狭山はあっけにとられた。
すごくいい人そう!!
しかも、笑顔が眩しすぎる!!
そんなことを思っていると、再び坂井から「名刺!」と脇腹をつかれた。
「あ、すみません。あの私、狭山誠ともうします。担当を持つのは初めてですが、坂井に教わりながら、しっかりサポートさせていただきますので宜しくお願いします」
そういってお辞儀をし名刺を差し出すとその女性も、丁寧にお辞儀を返してきた。
「狭山さんですね。初めまして、エレナの母の『紺野ミサ』です。こちらこそ、エレナのこと宜しくお願いします」
ミサと名乗った女性が深く頭を下げると、軽くウェーブのかかった長いブロンドの髪が肩からさらさらと流れた。
少し赤みの入った、細くしなやかな金色の髪。
だが、狭山はその髪を見て、ふとある「人物」のことが頭によぎった。
「ぁ、あの…エレナちゃんの髪は、地毛ですか?」
「はい。そうですけど……それがなにか?」
「あ、いえ…あまりに綺麗な髪だったんで、お母さんの遺伝なんですね?」
「はい。よく言われます。私がハーフなので、娘もこの髪色で…」
「どおりで、びっくりしました。エレナちゃんもですが、お母さんもとてもお綺麗な方だったんで、もしかして、お母さんも──モデルをされていたことがあるんですか?」
「……」
それは、ほんの些細な問いかけだった。
だが、その瞬間──ミサが一瞬だけ、氷のように冷たい視線を狭山に向けた。
それは、美しいからこそだろう。
その視線はあまりにも鋭くて、見つめられた瞬間、体が強ばった。
「──はい、学生時代に少しだけ、でも、すぐに辞めてしまいました」
だが、それはほんの一瞬のできごとだった。
まるで、錯覚だったのかと自分を疑いたくなるほど、ミサはさっきと違う、にこやかな笑顔を狭山に向けていた。
(………き、気のせい…か?)
一瞬過ぎった嫌な予感を、狭山は必死に振り払う。
だが、彼女のその容姿をみて、狭山は再びある疑問を抱いた。
そう、彼女のこの姿は、あの少年とあまりにもよく似ているのだ。
髪の色、瞳の色、顔立ち──
もしかしたら、横に座る娘のエレナ以上に、似ているかもしれない…
(いやいや……そんなはずない。だって、神木くんたちの母親は…確か、亡くなってるって──)
それは、クリスマスに一緒に食事をした際に、あの少年「神木 飛鳥」から聞いた、確かな話だった。
それに、確かに見た目は似ているが、その笑みはどこか違っていた。
飛鳥の笑みは、とても暖かな優しいものに感じるのに、ミサの笑みは、まるで作り物のように…
ひどく冷たいものに感じたから──…
◇◇◇
(坂井さん、あのあと理由聞いたけど、答えてくれなかったな)
2ヶ月前の記憶を遡り、狭山はエレナの家を見つめ、小さくため息をついた。
この2か月、エレナと一緒に仕事をこなしてきたが、今まで接してきた感じ、エレナに何か問題があるようには見えなかった。
なら、きっと問題があるとすれば──
「あら、狭山さん…」
「!」
家の前で考え事をしていると、突然、狭山を呼ぶ声がした。
ふと、視線を向ければ、そこにはあの息をつくほど美しい容姿をした、エレナの母親『ミサ』が立っていた。
スーツ姿のミサは、その長くしなやかな脚を惜しげもなく晒し、コツコツとヒールの音を響かせて、狭山に近づいてくる。
「今日も、ご苦労様です…」
首を少しだけ傾げて、綺麗な笑顔をつくる彼女を見て、狭山は再び坂井のあの言葉を思い出した。
"あの母親には、気をつけろよ "
一抹の不安と、疑惑を抱きながらも、狭山もまた、それを気取られぬようにと、彼女にいつも通りの笑顔をむけるのだった。
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