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第2章 絶世の美女
第58話 狭山さんと紺野さん
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日が暮れた午後6時。住宅街に建ち並ぶ、一軒家の前にある一台の車が停まった。
「それじゃ、エレナちゃん。明日もまた、今日と同じ時間に迎えにくるから」
現在モデル事務所に勤める狭山は車からおり、助手席に回ると、扉を開け、中にいる少女に声をかける。
金色の髪に茶色の瞳をした可愛らしい少女。
名を、紺野エレナ──
エレナは、狭山にエスコートされるまま車から降りると、いつものようにお礼の言葉をなげかけた。
「狭山さん、今日もありがとうございました」
深々と頭を下げ、再び視線をあげると、家の様子を確認し、エレナは鞄から鍵を取り出す。
「お母さん、まだみたいだけど大丈夫?」
「大丈夫です。もうすぐ、帰ってくると思いますから…!」
家の中を見れば、あかりは灯されておらず、シンと静まりかえっていた。
狭山が2か月前、突然担当を受け持つことになったエレナの家庭は、母一人娘一人の母子家庭だった。
通常スタジオまでは、保護者が送迎をすることになっている。だが、母親が忙しいからか、今回は特例として事務所の社員が送迎することになった。
しかし、女一人で子供を育てるのはなにかと大変なのだろう。
エレナの母は、一応5時には仕事が終わるはずなのだが、たまに残業を強いられるのか、モデルの仕事が終わり、エレナを自宅まで連れて帰ってきても、母親が帰宅していないことがたまにあった。
「あの、狭山さん…」
すると、エレナが小さく声を発した。
「ん? なに、エレナちゃん」
「……ぁ、ぃえ……明日もまた……宜しくお願いします」
何か言いたげな視線を向けられ、狭山が柔らかく声をかける。
だが、どうやらその言葉は飲み込んでしまったようで、エレナはいつも通りの言葉をかけると、玄関前の階段を上り、鍵を開けはじめた。
その家は、母娘二人で暮らすには、なかなかに、大きく立派な家だった。
築20年くらいだろうか、少し古びた洋館のようなその家は、普通なら4人家族くらいのファミリー向けの家。
最近、引っ越してきたと聞いたので、賃貸なのだろうが、リビングやキッチンの他に、最低でも3部屋はあるのではないだろうか?
二人で暮らすには、あまりに広すぎる家。だからか狭山は、なぜあえてこの大きな家を選んだのか、甚だ疑問だった。
ガチャ──
玄関が開くと、エレナは車の前で家に入るのを見届けようとしている狭山にペコリの会釈した。
するとその後、扉が閉まると同時に、エレナの姿は狭山の視界から見えなくなった。
(今、4年生だったよな。エレナちゃん…)
エレナは、この春から4年生になったそうだ。だが、その年にしては、とても礼儀正しくしっかりした子だった。
社長から突然話を持ちかけられて、どんな厄介事が待ち構えているのかとおもっていたが、エレナはモデルの仕事もレッスンもしっかりと忠実にこなすし、遅刻やドタキャンなどもなく、今のところなんの問題もなかった。
だが──
『あの母親には、気を付けろよ?』
不意に、同じくエレナ担当の坂井から言われた言葉を思い出し、狭山は眉を顰めた。
それは、2か月前──
◇◇◇
「狭山! 今から紺野さん来るから、お前も一緒に来い」
社長からエレナの担当に抜擢されて、二日後の朝。狭山は、同じエレナの担当の坂井から突然声をかけられた。
その日は日曜で、午後からは撮影で忙しくなる。その前に狭山のことを紹介するからと、狭山は応接室に一緒にくるよう、坂井から言われたのだ。
「マジすか、坂井さん! そーいうことは、いきなり言わないでくださいよ、心の準備が…」
「お前、そんな豆腐メンタルだったか? 仕方ねーだろ。こっちも色々あるんだよ、ほらいくぞ!」
「っ……は、はい」
「こら、シャキッとしろ! 助っ人にはいっといて、俺の仕事更に増やすなよ!」
「わ、わかってますよ!!」
事務所の広い廊下を進み、二階にある応接室の前までくる。
すると、どうやら既に「紺野さん」は中にいるようで、狭山は扉の前で、軽く深呼吸をする。
だが…
「あのさ、狭山」
「はい…?」
「1つだけ忠告しとくけど──あの母親には気を付けろよ」
「──え?」
ガチャ──
坂井から突然放たれた「忠告」の言葉。だが、狭山がその理由を聞く間もなく、目の前の扉は開かれた。
(ちょ、ちょっとぉぉぉぉ!!? 今の何!? 何その意味深発言!? やっぱヤバイの!? やばい感じだよねコレ! 厄介者くる感じだよね絶対!? てか、坂井さんこのタイミングって、アンタ鬼ですか!!?)
「紺野さん、お待たせしました~!」
最悪にも開かれた扉の前で、滝のような汗を流す狭山を無視し、坂井は笑顔で中にいる人物に声をかける。
すると、中にいた人物も狭山達に気づいたようだ。応接室の入り口に、そっと視線を向けてきた。
「紺野さん、朝から呼び出してすみません。今日からエレナちゃんのマネジメントとメンタルケアを担当する"狭山"です。今後は二人でエレナちゃんのサポートをしていきますので、宜しくお願いします」
中で紹介を始めた坂井の言葉にハッとして、狭山は慌てて応接室の中に入ると、その中にある長机に、30代くらいの女性と、前に事務所の来客コーナーにいた、あの日の少女……紺野エレナが座っていた。
だが…
(わ──……)
狭山はその瞬間、エレナの横に座る女性に、一瞬にして目を奪われた。
綺麗な金色の髪と、透き通るような肌と、空色のブルーの瞳──
それはまるで、絵本の中にでてくるお姫様、いや、王妃様のような
そんな「千年に一度の美女」といわれてもおかしくないような、美しい女性が、そこにいたからだ──
「それじゃ、エレナちゃん。明日もまた、今日と同じ時間に迎えにくるから」
現在モデル事務所に勤める狭山は車からおり、助手席に回ると、扉を開け、中にいる少女に声をかける。
金色の髪に茶色の瞳をした可愛らしい少女。
名を、紺野エレナ──
エレナは、狭山にエスコートされるまま車から降りると、いつものようにお礼の言葉をなげかけた。
「狭山さん、今日もありがとうございました」
深々と頭を下げ、再び視線をあげると、家の様子を確認し、エレナは鞄から鍵を取り出す。
「お母さん、まだみたいだけど大丈夫?」
「大丈夫です。もうすぐ、帰ってくると思いますから…!」
家の中を見れば、あかりは灯されておらず、シンと静まりかえっていた。
狭山が2か月前、突然担当を受け持つことになったエレナの家庭は、母一人娘一人の母子家庭だった。
通常スタジオまでは、保護者が送迎をすることになっている。だが、母親が忙しいからか、今回は特例として事務所の社員が送迎することになった。
しかし、女一人で子供を育てるのはなにかと大変なのだろう。
エレナの母は、一応5時には仕事が終わるはずなのだが、たまに残業を強いられるのか、モデルの仕事が終わり、エレナを自宅まで連れて帰ってきても、母親が帰宅していないことがたまにあった。
「あの、狭山さん…」
すると、エレナが小さく声を発した。
「ん? なに、エレナちゃん」
「……ぁ、ぃえ……明日もまた……宜しくお願いします」
何か言いたげな視線を向けられ、狭山が柔らかく声をかける。
だが、どうやらその言葉は飲み込んでしまったようで、エレナはいつも通りの言葉をかけると、玄関前の階段を上り、鍵を開けはじめた。
その家は、母娘二人で暮らすには、なかなかに、大きく立派な家だった。
築20年くらいだろうか、少し古びた洋館のようなその家は、普通なら4人家族くらいのファミリー向けの家。
最近、引っ越してきたと聞いたので、賃貸なのだろうが、リビングやキッチンの他に、最低でも3部屋はあるのではないだろうか?
二人で暮らすには、あまりに広すぎる家。だからか狭山は、なぜあえてこの大きな家を選んだのか、甚だ疑問だった。
ガチャ──
玄関が開くと、エレナは車の前で家に入るのを見届けようとしている狭山にペコリの会釈した。
するとその後、扉が閉まると同時に、エレナの姿は狭山の視界から見えなくなった。
(今、4年生だったよな。エレナちゃん…)
エレナは、この春から4年生になったそうだ。だが、その年にしては、とても礼儀正しくしっかりした子だった。
社長から突然話を持ちかけられて、どんな厄介事が待ち構えているのかとおもっていたが、エレナはモデルの仕事もレッスンもしっかりと忠実にこなすし、遅刻やドタキャンなどもなく、今のところなんの問題もなかった。
だが──
『あの母親には、気を付けろよ?』
不意に、同じくエレナ担当の坂井から言われた言葉を思い出し、狭山は眉を顰めた。
それは、2か月前──
◇◇◇
「狭山! 今から紺野さん来るから、お前も一緒に来い」
社長からエレナの担当に抜擢されて、二日後の朝。狭山は、同じエレナの担当の坂井から突然声をかけられた。
その日は日曜で、午後からは撮影で忙しくなる。その前に狭山のことを紹介するからと、狭山は応接室に一緒にくるよう、坂井から言われたのだ。
「マジすか、坂井さん! そーいうことは、いきなり言わないでくださいよ、心の準備が…」
「お前、そんな豆腐メンタルだったか? 仕方ねーだろ。こっちも色々あるんだよ、ほらいくぞ!」
「っ……は、はい」
「こら、シャキッとしろ! 助っ人にはいっといて、俺の仕事更に増やすなよ!」
「わ、わかってますよ!!」
事務所の広い廊下を進み、二階にある応接室の前までくる。
すると、どうやら既に「紺野さん」は中にいるようで、狭山は扉の前で、軽く深呼吸をする。
だが…
「あのさ、狭山」
「はい…?」
「1つだけ忠告しとくけど──あの母親には気を付けろよ」
「──え?」
ガチャ──
坂井から突然放たれた「忠告」の言葉。だが、狭山がその理由を聞く間もなく、目の前の扉は開かれた。
(ちょ、ちょっとぉぉぉぉ!!? 今の何!? 何その意味深発言!? やっぱヤバイの!? やばい感じだよねコレ! 厄介者くる感じだよね絶対!? てか、坂井さんこのタイミングって、アンタ鬼ですか!!?)
「紺野さん、お待たせしました~!」
最悪にも開かれた扉の前で、滝のような汗を流す狭山を無視し、坂井は笑顔で中にいる人物に声をかける。
すると、中にいた人物も狭山達に気づいたようだ。応接室の入り口に、そっと視線を向けてきた。
「紺野さん、朝から呼び出してすみません。今日からエレナちゃんのマネジメントとメンタルケアを担当する"狭山"です。今後は二人でエレナちゃんのサポートをしていきますので、宜しくお願いします」
中で紹介を始めた坂井の言葉にハッとして、狭山は慌てて応接室の中に入ると、その中にある長机に、30代くらいの女性と、前に事務所の来客コーナーにいた、あの日の少女……紺野エレナが座っていた。
だが…
(わ──……)
狭山はその瞬間、エレナの横に座る女性に、一瞬にして目を奪われた。
綺麗な金色の髪と、透き通るような肌と、空色のブルーの瞳──
それはまるで、絵本の中にでてくるお姫様、いや、王妃様のような
そんな「千年に一度の美女」といわれてもおかしくないような、美しい女性が、そこにいたからだ──
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