神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜 あやめ

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第2章 絶世の美女

第61話 ストーカーと迷子の女

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 いきなり、紹介しろなどと言われ、飛鳥は目を丸くする。

「紹介? てか、なんで俺?」

「だって神木くんモテるし! 女の子の連絡先たくさん知ってそう!」

「……」

 期待に目を輝かせる大河をみて、飛鳥はおもむろに眉を顰めると、それを見た隆臣がため息混じりにこたえる。

「大河、それはムリだ。飛鳥は昔付き合ってた女がになってから、女の子と一切連絡先交換してないからな」

「え!? ストーカー!?」

 なにやら物騒な言葉をきき、大河が驚きと同時に飛鳥をみやると、昔のヤバイ体験を思い出したのか、飛鳥は逃げるように視線を逸らす。

「あー……うん。は、大変お世話になりました」

「全くですね。うちの(警察官)も大変困っておりました」

「警察沙汰!? どんだけすごいストーカー!?」

 バツが悪そうに飛鳥が言葉を放つと、隆臣は追い打ちをかけるように、当時のことを話し始める。

「一度、刺されそうになったのを、俺が助けた」

「なにそれ!? ガチじゃん!」

「珍しく付き合ったと思ったら、これからだな」

「あはは……それはほらと、言いますか?」

「笑って誤魔化すな」

 飛鳥が苦笑いを浮かべると、隆臣は再び深くため息をついた。

 昔からモテるやつだったが、昔から飛鳥はあまり女運がよくない。

「はぁ……どうせ俺は、彼氏には向かないタイプだよ」

「……」

 すると、まるで諦めたように、どこか伏せ目がちに呟いた飛鳥の言葉に、隆臣は、再び昔のことを思い出した。

(まぁ、そうだろうな……)

 昔から飛鳥は、家族意外の「他人」には、ほとんど見向きもしないような奴だった。

 一方的な好意を向けられ続けてきたせいか、はたまた他に理由があるのか?

 飛鳥を好きになる女の子は、たくさんいても、飛鳥が『特定の誰か』を好きになることはなかった。

 きっと飛鳥の愛情の矛先は、あの頃から既に「家族」に向けられていたのだろう。

 だが、そんな飛鳥が、ある一時期だけ、があった。

 それこそ「俺、彼女できた…」なんて、あまりにも無表情に伝えてきたものだから、当時は「いつもの冗談か?」とすら思ったほどだった。

 だが、今思えば、家族以外の「他人」を無理にでも好きになろうとしていたのか、飛鳥は飛鳥なりにを「改善」させようとしていたのだろう。

 だが、たとえ彼女ができても、飛鳥が優先するのは常に「家族」だった。

 どんなに引き止められても、どんなに一緒にいたいと言われても、いつもの笑顔でヒラリとかわして、必ず決まった時間には家に帰る。

 その上、家では彼女の話をすることも一切なかったらしく、飛鳥に彼女がいた時期があったなんて、華と蓮は未だに知らない。

 だが、そんな飛鳥の行いは、彼女たちの束縛心と嫉妬心を高め、最後に付き合った女の子は、それが重症化してストーカーにまで発展した。

 結局飛鳥は「他人」に特別な感情を抱くことは、最後までできなかったのだろう。

 自分は「他人を愛せない人間」だと更に自覚することになったのか、それから飛鳥は、彼女を作ることすらしなくなった。


「大体あれは、お前も悪いぞ。常に家族を優先してたら、不安にもなる」

「そこは理解してもらってたつもりなんだけどね? 俺にとってはだし!」

 忠告の言葉を投げかけるも、飛鳥は特に悪びれる様子もなくそう言い放つと、再びコーヒーのカップに口をつける。

「まー、アレはお前も悪いが、付き合う女も悪かったな。気を付けろよ。お前、見た目はいいんだから」

「わかってるよ。それ父さんにも言われたし」

「侑斗さんか?」

「うん。俺、見た目も中身もいいから、女の子が本気になりやすいんだって……だから『軽い気持ちで付き合うな』とか『好きになりすぎる女は束縛とか独占欲も強くなるから気を付けろ』とか……まぁ、口酸っぱく説教されたよ、小一時間ほど」

「そりゃ、息子が刺されかけたら説教もしたくなるだろ? しかし経験者語るって感じだな? 侑斗さん彼女に悩まされた口か?」

「あー……彼女っていうか──」

 瞬間、カップを手にした飛鳥が天井を仰いだ。

だが……

「──いや、今の話

「は?」

「へーそれで神木くん、彼女作らないんですね! 意外に女性関係には苦労してるんだ~」

「まーね」

「あーでも俺はやっぱり彼女ほしいな~どっかいないかなー優しそうで笑顔が可愛い女の子!」

「……」

  だが、そんな隆臣の話をあっさり切り捨てると、割り混んできた大河によって、話は再び先程の話に切り替わる。

(なんだ、今の──)

 場の空気が和らぐも、一瞬だけ顔つきが変わった飛鳥に、隆臣は無言のまま飛鳥を見つめた。

 そういえば、隆臣が飛鳥と出会った小五の頃には、もう既に飛鳥は自分より家族優先させるやつだった。

 あの頃は、父子家庭で双子の面倒をみないといけないからだと思っていたが、どうして飛鳥はこんなにも

家族に「依存」しているのだろうか?



「ぁ……」

 すると、頭を悩ませる隆臣の前で、なにかを思い出したのか、飛鳥が急に声をあげた。

「どうした?」

「あ……いや。ちょっと前にに道案内してあげたんだけど」

「また、お前はそうやって誰彼構わず、優しさ振りまいたのか? マジでやめろ」

「なんで、人助けして怒られなきゃいけないの?!」

「で、その子がどうしたんだ?」

「え、あぁ……その女が、今 武市君がいってたみたいな「優しそうな感じの女 」だったかなって思ってさ……」

 不意に思い出した女の姿。

 二月末の寒い季節。財布を落としたのに気づかず立ち去ろうとした、栗色の髪の細身の女。

 長い髪に、穏やかな表情に、どこかふわりとした優しげな雰囲気。

 それは、今大河がいっていた「理想のタイプ」と極似している気がした。


「……でも、俺 道を教えただけだから名前は知らないんだけどね?」

「えー、残念」

「でも、うちの大学受験するとかいってたから、受かってたら今年のにいるんじゃない?」

「おお! それはなんか運命の出会いがきそうな予感では!? 学部どこですか?」

「それはしらないよ。後は自分でなんとかして」

「……」

 たんたんと女の子の情報を伝える飛鳥に、隆臣は不思議そうに飛鳥を見つめた。

「……飛鳥、その子に会ったのいつだ?」

「え?」

 真面目な顔で問いかけられ、その予期せぬ質問に、今度は飛鳥は首を傾げる。

「2月頃……だけど?」

「へー」

「なに?」

「いや、なんでもない」

「?」

 まるで「意味がわからない」とでも言うように、飛鳥がきょとんと目を丸くすると、隆臣はそのまま視線を落とし、グラスに半分だけ残っていたアイスコーヒーに視線をむけた。

(……一度、道案内しただけで、ねぇ?)

 飛鳥はあれから、女の子にあまり興味を示さなくなった。

 だからか、そんな飛鳥が、に対して、珍しく興味を示しているようにも見えて、隆臣は小さな疑問を抱く。


(よほど、印象に残る……女の子だったのか?)


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