神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜 あやめ

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第3章 お兄ちゃんの高校時代

第64話 蓮くんと榊くん

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 午前中の授業が終わり、昼食の時間が訪れた頃、蓮の前の席に座る少年が、にこやかに声をかけた。

「蓮もバカだなー。入学早々、遅刻するなんて」

 紫がかった黒髪をした爽やかなこの少年の名は、さかき 航太こうたくん。中学の頃に知り合い仲良くなった、蓮の友人の一人だ。

「あれは、華がモタモタしてたせいだって。それにギリギリ遅刻はしてない」
「先生が来るのが遅かっただけだろ。あ、そういえば、お前、部活どうすんの?」
「あー……今度、見学に行くつもり」
「おー、なら、高校では一緒にバスケできるかもな!」

 航太と蓮の間には、持参したお弁当が一つずつ並んでいた。蓮は航太の話に耳を傾けながら、今朝方、兄が眠気と戦いながら作っていた弁当の包みをほどく。

 桜聖高校は、学食などがあるわけではないため、昼食は基本弁当を持参するか、購買部でパンなどを購入することになっていた。
 その為、昼食時には、ほとんどの生徒がお弁当を持参しており、机の上には可愛らしいものからシンプルなものまで様々なお弁当の包みが並び、仲の良いもの同士それぞれグループを作り会話を弾ませていた。

「ねぇ、さっきの生徒会長、ちょっとカッコ良くなかった?」
「あーたしかに!イケメンだったよね~」

 すると、蓮と航太のすぐ隣の席で、女の子特有の話に花を咲かせている女子生徒たちの声が聞こえてきた。

「あ、でも、3年前の副会長が、一番イケメンだったって噂あるよ?」
「え、そうなの?」
「うん。うちのお姉ちゃんが言ってたんだー。なんかね、金髪碧眼で王子様みたいな人だったらしいよ。すっごい美人だったって」
「えー見てみたーい」

「……」

 すると、その"金髪碧眼で王子様"の話を聞いた瞬間、蓮と航太は目を合わせた。

「なぁ、蓮……お前のって、同じ高校だったっけ?」
「いやいやいや……そんなはずない」
「え、でも、今の」
「副会長してるとかいってなかったから!それに、仮に生徒会に入ってたとしても、副じゃないだろ!!確実に会長顔だろ、アレ!?それに、うちの兄貴はそういう面倒なのは、絶対にやらないタイプだから!」

 女子の会話を聞き、ふと金髪碧眼のイケメンに思い当たる人物がいたようで、蓮と航太は、まさかまさかと困惑する。

 すると──

「れーん!」

 そんな二人の思考を遮り、校内ではほとんど話をしない華が、珍しく教室の入口から手を振りながら駆け寄ってきた。

「あれ、。蓮と同じクラスだったんだ!」
「あぁ、神木(華)はC組だっけ?」
「うん!」
「どうした、華。珍しい」

 華が航太と話をする中、蓮が何事かと問いかける。

 華のクラスは1年C組。いくら同じ階にあるとはいえ、特に用事がない限りは、華が蓮の教室にわざわざくることはなかった。

 そんな華の珍しい行動に蓮が首を傾げていると

「お願いします!!」
「!?」

 突然華が、パンと手を合わせた。

「蓮さま~!ど~かど~か、私にお弁当を恵んでくれないでしょうか!」
「はぁ?」

 何かと思えば……目の前で必死に手を合わせお願いをしてくる華をみて、蓮はひどく呆れかえった。

「はぁ?お前、弁当忘れたの?」
「あはは……ごめーん」
「ごめん、じゃないだろ。朝あんなに時間かかって支度してたくせに」
「だって、飛鳥兄ぃが『制服脱げ』なんて言うから」
「え……!?」
「ウソだろ!?朝から何やってたんだよ、お前ら!!」

 兄が妹の制服を脱がそうとする背徳的なシーンを想像して、航太が顔を赤らめ、蓮が青ざめる。

 だが、あの兄のことだ。きっと何かワケがあったに違いない。

そう思うのだが、兄が華の制服を脱がすに至った経緯が全く分からず、蓮はただただ困惑する。

 すると、当初の目的を思い出したのか、華がこれまた可愛らしくお願いをしてきた。

「ねぇー、蓮、ダメ?」
「別に分けてやるのは構わないけど…でも、一つの弁当二人で食べんの? 購買部いけって、パンとかなんかあるだろ?」
「そーだけど……」

「華ー」
「?」

 瞬間。教室の外から、突如華を呼ぶ声がきこえた。

 一瞬、聞き間違いかとすら思った。なぜならその声は、いつもは自宅で聞いている声であり、高校で聞こえるべき声ではなかったから

 だが、その後ゆっくりと華と蓮が教室の入口に目を向けると、そこには、いつもの綺麗な顔を少しだけ傾けながら、にこやかに笑う人物が目に入った。

 金色の髪に
 青い瞳に
 人を魅了する天使のような笑顔

 それは、紛れもなく―――

「華ー、お前、弁当忘れてたよ~♪」

 兄の飛鳥だった!

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