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第4章 栗色の髪の女
第67話 再会と暴露
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「あれ……?」
飛鳥が声をあげると、その女もキョトンとした顔をして、こちらに視線を向けてきた。
すると、どうやら女も気づいたらしい。
「あ! 先日、道を教えてくださった、お姉さん! この前は、ありがとうございました」
「いや、いいよ。そんなに大したことしてないし」
そう、彼女は2か月前、迷子になっていたところを助けてあげた、あの時の女の子。だが飛鳥は、その女の言葉にある違和感を覚えた。
(ん? お姉さん?)
そう、彼女は今「お姉さん」と言ったのである。
(あれ? なんか俺最近、女に間違えられること増えてない?)
ギリギリ高3までは、よく間違えられていたため、まぁ良しとする。
だが、飛鳥は別にもやし体型ではないし、筋肉だってそれなりについているし、最近は骨格もしっかりしてきたため、多分男性らしくなってきたと思っていたのだが……
「あのさ、よく見て。お姉さんじゃないから」
「え?」
すると、飛鳥が笑顔をひきつらせながらそう言うと、女は不思議そうに首を傾げた。
「あ、もしかして、お嬢さんと言った方がよかったでしょうか? すみません。てっきり年上の方だと……」
「いや違う、それも違う!」
もはや「男」という発想に結び付かないらしい。すっとんきょうな言葉を発した女に飛鳥は深くため息をつく。
「あのさ、お姉さんでも、お嬢さんでもなく、"お兄さん"なんだけど」
「……」
少し不機嫌そう飛鳥がそう答えると、その後女は暫く硬直したのち、サーッと血の気が引かせていく。
「え、お……兄さん?」
「うん」
「はぃ、う、ぁ……え…っ」
「なに、その反応」
マジマジと飛鳥を見上げた女性は、まるで恐ろしいものでも見るように顔を蒼白させた。
どうやら、その身体つきを見て、やっと目の前のお姉さんが、男性であることに気づいたらしい。
顔を青くした女は、その後、深々と頭を下げてきた。
「す、すみませんでした! その、とても綺麗な方だったので、まさか男の人だとはおもわなくて……せ、先入観って怖いですね」
「先入観以前の問題じゃないかな」
「あの、本当にすみません!私、なんてしつれいなことを……っ」
「別に、そんなに謝らなくてもいいよ。怒ってないから。それより受かったの?大学」
「え? ぁ、はい。おかげさまで」
「学部は? どこ受けたの?」
「え? 学部、ですか?……えと、教育学部です、けど……」
「へー……」
教育学部ということは、どうやら自分と同じ学部らしい。飛鳥はそんなことを考えながら再び問いかける。
「教師、目指してるの?」
「あ、いえ。私が目指してるのは、司書です」
「司書?」
「はい。図書室の先生です。私、本が好きで……」
そう言った女は、また穏やかに笑って本棚を見上げた。
その姿を見つめながら、飛鳥は、先日、会ったときに会話が噛み合わなかったは、たまたまだったのかと考える。
(距離が近かったのも、俺を女と勘違いしてたからか……)
などと考えていると、再び先程の店員が戻ってきた。
「お客様、申し訳ありません。出版社に問い合わせましたら、今重版中で入荷に時間がかかるみたいで」
「そうなんですね」
「重版待ちになりますが、ご注文されますか?」
「……いえ、大丈夫です。また今度よらせていただきますね」
「はい、ありがとうございました」
すると店員は、申し訳なさそうに頭を下げたあと、またカウンターへと戻っていった。飛鳥はそんな店員の姿を横目で流しながら、また女に話しかける。
「なんの本、探してたの?」
「『ランスの丘』って言う推理小説です。実は、上巻を読み終わって下巻に移ろうとしたら、実はその間に"中巻"があったみたいで」
(この子、かなりそそっかしいな)
まさか中巻があるのに気づかず、下巻を買うとは。この前は、財布も落としてたし。
「続きは気になるんですけど、仕方ないですよね」
「続きか……確かにこの本、犯人が自殺しちゃうじゃなかったかな」
「へー……」
だが、何気なしに発した言葉に、女が驚くような声を発した。
「ちょ、なに、いきなりネタバレしてるんですか!? 推理小説のラストを暴露するなんて、いくらなんでもひどすぎません!?」
「え?」
そう言われ、はっと我に返った飛鳥は、バツがわるそうに視線をそらした。確かに推理小説のネタバレするなんて、ある意味とんでもない嫌がらせだ。
「ぁ、ごめん……悪かったよ。だからって、そんなに怒らなくてもいいだろ。ちょっと口滑らせただけだよ」
「あ……そうですね、すみません。わざとじゃないのに責めるようなこと言って」
「いいよ、俺が悪いし。なんなら俺、その本持ってるから貸してあげようか?」
ネタバレしてしまったため、流石に悪いと思ったのか、お詫びとばかりに飛鳥がその代案を伝えた。
だが──
「いえ、結構です」
「…………」
その後、おもったよりハッキリと否定の言葉が返ってきて、飛鳥は複雑な心境になる。
「そこまでしていただかなくても結構です。今日はこっちの本を買って帰りま」
「その本、最後バッドエンドで終わるよ♪」
「!?」
すると、まるでイタズラをする子供のように、飛鳥は再びニコリと笑って、女が新たに手に取った本の内容を暴露した。
「……え? なんで今、また……その、あの……え???」
「~♪」
再度、本の内容を暴露され、女が、ふるふると肩を震す。すると、その反応があまりにも愉快だったらしい。
「ごめん、怒った?」
と、小首を傾げて、飛鳥が再び意地悪そうにそう言えば、どうやら、その言葉には、女も悪意しか感じなかったらしい。
「いえ、ビックリしただけです。いい人だと思ったら、まさかこんなに性格の悪い人だったなんて」
「へー……君、見かけによらず毒はく人なんだねー。なんなら犯人も暴露してあげよっか?」
にこにこと穏やかに笑う二人の間には、妙に冷たい空気が流れた。
そして、そんな二人の様子を遠目で見ていた本屋の店員たちが、なにやら心配そうに見つめていたとか?
飛鳥が声をあげると、その女もキョトンとした顔をして、こちらに視線を向けてきた。
すると、どうやら女も気づいたらしい。
「あ! 先日、道を教えてくださった、お姉さん! この前は、ありがとうございました」
「いや、いいよ。そんなに大したことしてないし」
そう、彼女は2か月前、迷子になっていたところを助けてあげた、あの時の女の子。だが飛鳥は、その女の言葉にある違和感を覚えた。
(ん? お姉さん?)
そう、彼女は今「お姉さん」と言ったのである。
(あれ? なんか俺最近、女に間違えられること増えてない?)
ギリギリ高3までは、よく間違えられていたため、まぁ良しとする。
だが、飛鳥は別にもやし体型ではないし、筋肉だってそれなりについているし、最近は骨格もしっかりしてきたため、多分男性らしくなってきたと思っていたのだが……
「あのさ、よく見て。お姉さんじゃないから」
「え?」
すると、飛鳥が笑顔をひきつらせながらそう言うと、女は不思議そうに首を傾げた。
「あ、もしかして、お嬢さんと言った方がよかったでしょうか? すみません。てっきり年上の方だと……」
「いや違う、それも違う!」
もはや「男」という発想に結び付かないらしい。すっとんきょうな言葉を発した女に飛鳥は深くため息をつく。
「あのさ、お姉さんでも、お嬢さんでもなく、"お兄さん"なんだけど」
「……」
少し不機嫌そう飛鳥がそう答えると、その後女は暫く硬直したのち、サーッと血の気が引かせていく。
「え、お……兄さん?」
「うん」
「はぃ、う、ぁ……え…っ」
「なに、その反応」
マジマジと飛鳥を見上げた女性は、まるで恐ろしいものでも見るように顔を蒼白させた。
どうやら、その身体つきを見て、やっと目の前のお姉さんが、男性であることに気づいたらしい。
顔を青くした女は、その後、深々と頭を下げてきた。
「す、すみませんでした! その、とても綺麗な方だったので、まさか男の人だとはおもわなくて……せ、先入観って怖いですね」
「先入観以前の問題じゃないかな」
「あの、本当にすみません!私、なんてしつれいなことを……っ」
「別に、そんなに謝らなくてもいいよ。怒ってないから。それより受かったの?大学」
「え? ぁ、はい。おかげさまで」
「学部は? どこ受けたの?」
「え? 学部、ですか?……えと、教育学部です、けど……」
「へー……」
教育学部ということは、どうやら自分と同じ学部らしい。飛鳥はそんなことを考えながら再び問いかける。
「教師、目指してるの?」
「あ、いえ。私が目指してるのは、司書です」
「司書?」
「はい。図書室の先生です。私、本が好きで……」
そう言った女は、また穏やかに笑って本棚を見上げた。
その姿を見つめながら、飛鳥は、先日、会ったときに会話が噛み合わなかったは、たまたまだったのかと考える。
(距離が近かったのも、俺を女と勘違いしてたからか……)
などと考えていると、再び先程の店員が戻ってきた。
「お客様、申し訳ありません。出版社に問い合わせましたら、今重版中で入荷に時間がかかるみたいで」
「そうなんですね」
「重版待ちになりますが、ご注文されますか?」
「……いえ、大丈夫です。また今度よらせていただきますね」
「はい、ありがとうございました」
すると店員は、申し訳なさそうに頭を下げたあと、またカウンターへと戻っていった。飛鳥はそんな店員の姿を横目で流しながら、また女に話しかける。
「なんの本、探してたの?」
「『ランスの丘』って言う推理小説です。実は、上巻を読み終わって下巻に移ろうとしたら、実はその間に"中巻"があったみたいで」
(この子、かなりそそっかしいな)
まさか中巻があるのに気づかず、下巻を買うとは。この前は、財布も落としてたし。
「続きは気になるんですけど、仕方ないですよね」
「続きか……確かにこの本、犯人が自殺しちゃうじゃなかったかな」
「へー……」
だが、何気なしに発した言葉に、女が驚くような声を発した。
「ちょ、なに、いきなりネタバレしてるんですか!? 推理小説のラストを暴露するなんて、いくらなんでもひどすぎません!?」
「え?」
そう言われ、はっと我に返った飛鳥は、バツがわるそうに視線をそらした。確かに推理小説のネタバレするなんて、ある意味とんでもない嫌がらせだ。
「ぁ、ごめん……悪かったよ。だからって、そんなに怒らなくてもいいだろ。ちょっと口滑らせただけだよ」
「あ……そうですね、すみません。わざとじゃないのに責めるようなこと言って」
「いいよ、俺が悪いし。なんなら俺、その本持ってるから貸してあげようか?」
ネタバレしてしまったため、流石に悪いと思ったのか、お詫びとばかりに飛鳥がその代案を伝えた。
だが──
「いえ、結構です」
「…………」
その後、おもったよりハッキリと否定の言葉が返ってきて、飛鳥は複雑な心境になる。
「そこまでしていただかなくても結構です。今日はこっちの本を買って帰りま」
「その本、最後バッドエンドで終わるよ♪」
「!?」
すると、まるでイタズラをする子供のように、飛鳥は再びニコリと笑って、女が新たに手に取った本の内容を暴露した。
「……え? なんで今、また……その、あの……え???」
「~♪」
再度、本の内容を暴露され、女が、ふるふると肩を震す。すると、その反応があまりにも愉快だったらしい。
「ごめん、怒った?」
と、小首を傾げて、飛鳥が再び意地悪そうにそう言えば、どうやら、その言葉には、女も悪意しか感じなかったらしい。
「いえ、ビックリしただけです。いい人だと思ったら、まさかこんなに性格の悪い人だったなんて」
「へー……君、見かけによらず毒はく人なんだねー。なんなら犯人も暴露してあげよっか?」
にこにこと穏やかに笑う二人の間には、妙に冷たい空気が流れた。
そして、そんな二人の様子を遠目で見ていた本屋の店員たちが、なにやら心配そうに見つめていたとか?
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