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第14章 家族の思い出
第197話 神木くんと嘘
しおりを挟む「神木くん! 君、彼女ほっぽって何してんだよ!?」
現れたのは、あかりの隣に住む住人、大野さん!
しかも、大野は、飛鳥とあかりが付き合っていると思っており、なおかつ、あかりに片想いの独身男性!
だからか、大野はズカズカと女の子たちの間に割り込み、強引に飛鳥の肩を掴むと、ものすごい剣幕で捲し立ててきた。
「やっぱり君、本気じゃなかったんだな! 彼女がいるのに、夏祭りに他の女の子と遊んでるなんて!?」
「え、と……っ」
大野の襲来に、流石の飛鳥も顔を青くする。
なぜ、このタイミングで!?
だが、今度は、その話を聞いた女子大生4人も、信じられないとばかりに、飛鳥に詰め寄り始めた。
「うそ!? 神木くん、彼女出来たの?!」
「そんなの聞いてないよー! 誰!? 大学の人!?」
「ちょ、待って、彼女は──」
だが、一瞬『いない』と言いかけた言葉を、飛鳥は咄嗟に飲み込んだ。
しまった!!
「いる」とも言えないが、「いない」とも言えない!!
まさに、物理的にも精神的にも、八方塞がりだった。下手に『いる』なんて言えば、明日には、その噂が、大学中に広まるだろうし、『いない』といえば、彼女(あかり)を置いて、他の女の子と夏祭りに来た最低野郎のレッテルを貼られた上、このちょっとストーカー気質な大野のことだ。明日から、あかりへの猛アタックが始まるのだろう。
これは、ある意味。
未だかつてないくらいの危機的状況に陥った!
「大体さ、この女の子達なんなんだよ!? まさか、五股かけてるわけじゃないよね!? それに、あか──んぐっ!?」
「ちょっと大野さん! こっち来て!?」
すると、大野から、あかりの名前を告られそうになった瞬間、飛鳥は咄嗟に口を塞いだ。
『あかり』なんて、珍しい名前ではないが、ゴロゴロいる名前でもないわけで、そんな名前を同じ学部の女子に聞かれたら、確実に「神木くんの彼女の『あかり』って女を探せー!」と、なりかねない。
そんなことにでもなったら、彼女でもない、あかりに非常に申し訳ない。
飛鳥は、大野の口を塞いだまま、女の子たちの元から離れると、その後、珍しく声を荒らげた。
「あのさ、大野さん! 言っちゃなんだけど、俺、めちゃくちゃモテるんだよ!」
「………」
その言葉に、大野は絶句する。
うん。そりゃ、モテるだろう。こんなに綺麗な顔をしてあるのだから。だが……
「はぁ!? だからなんだよ!! 俺はモテるから五股かけても許されるとでもいいたいわけ!?」
「誰が、五股かけてるなんて言った!?」
「かけてるだろ!? しかも、あかりちゃん、夏祭り行きたがってたのに、そんなあかりちゃん置いて、他所の女と一緒にいるなんて!?」
「あのさ! 勘違いしてるようだけど、あの子達は、同じ大学のただの知り合い! たまたま会っただけだし、彼女でもないよ!」
「え? そうなの?」
「そう! それに、あかりと付き合ってるのは大学では内緒にしてるから、名前だしたりしないで……!」
「…………」
だが、その『内緒にしてる』と言う言葉のせいか、大野は、更に飛鳥を睨みつけ
「……なんで、内緒にする必要があるの? 付き合ってるんだろ?」
「あ……いや、ほら、俺に彼女が出来たら、絶対みんな探し出そうとするから、大事だからこそ、あかりを、そういう揉め事に巻き込みたくないなー……なんて?」
苦し紛れの「言い訳」
飛鳥は苦笑いで、そう答えたが、大野は未だに納得してないようだった。
だが、そこに……
「ねぇ、神木くんの彼女って、同じ学部かな?」
「年上? 年下?」
「そういえば、前、女の子と二人で歩いてたって噂あったよね?」
「うそー! 私、妹さんだと思ってたのに、もしかして、マジで彼女だったの!?」
と、背後から女子たちの声が聞こえてきて、大野も納得したらしい。
「……うん。分かった。信じよう」
(よかった!)
その言葉に、飛鳥はホッとする。これで女の子たちに「いない」といっても問題はないだろう。
「しかし、君、相変わらずスゴいね。まぁ、その顔だしね」
「あはは。それより、あかり、夏祭り行きたがってたの?」
「え、聞いてないの!? 夏祭り行きたいけど、一緒に行く相手がいないって!」
(あー……なるほど)
その話を聞いて、飛鳥は顔をひきつらせた。
つまりあかりは、自分と付き合っている設定でありながら、大野に「一緒にいく相手がいないから、夏祭りにはいけない」と言ったらしい。
だから、こんなアリもしない疑惑をかけられたのか。
(あのバカ、なに墓穴ほってんの……っ)
自分が必死になって、あかりを守ってる最中、肝心のあかりが、この調子とは?
これでは、いつ大野に「嘘」がバレてもおかしくない。
(もしかして、あかり。もう大野さんが、諦めたとか思ってるんじゃ)
うん、なんか、そんな気がしてきた。
アイツ、どこか抜けてるし。
警戒心、無さすぎるし。
「おい大野~、いくぞー」
すると、大野の友人達だろう。少し離れた場所から呼びかける声がして、大野は改めて飛鳥を見つめた。
「言っとくけど、あかりちゃんを悲しませるようなことしたら、絶対許さないからな! その時は、俺マジでかっさらうから!!」
「……あのさ。あかりはお兄さんのこと、なんとも思ってないから、とっとと諦めろって、前にも言ったよね?」
「大丈夫。彼氏が五股かけてると聞いたら、大抵の女の子は目が覚める!」
「だから、かけてないって! あんた、ホント人の話聞かないよね!?」
結局、信じたのか信じてないのか、よく分からないまま、大野は飛鳥の元からさり、そして、大野と入れ替わりで駆け寄ってきた女の子たちに先程の誤解を解くと、飛鳥はその後、逃げるように、その場を後にした。
「はぁ……」
深くため息がでる。
疲れた。
なんか、めちゃくちゃ疲れた。
(てか……なんで俺が、あかりのために、ここまでしなきゃいけないの?)
今になって、あの日、大野にあかりの恋人だと偽ったことを、飛鳥は深く深く反省するのだった。
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