神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜 あやめ

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第15章 オーディション

第211話 兄妹と兄妹弟

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「お前ら、何やってんの?」

「「!!?」」

 酷く不機嫌そうな声が降ってきて、双子はダラダラと嫌な汗をかき始めた。

 ヤバイ! 

 いや、元々ヤバいとは思ってたけど、これは、尋常じゃなくヤバイ!

 かなり、怒ってる!
 だって、いつもの笑顔がない!

 真顔だよ、真顔!!
 これは、ガチで怒ってるアレだ!!

「お、おかえり、飛鳥兄ぃ……あ、あの、お客さんが来てると聞いたので、お茶でもお出ししようかと」

「ふーん……」

 苦し紛れの言い訳を、あっさり流され、華と蓮はまるで蛇に睨まれた蛙のごとく縮こまった。

 すると──

「蓮。俺、さっきなんて言ったっけ?」

「へ!? あ、あの! 部屋には……近づくなと」

「うん、それで?」

「それで……っ」

 あー、怖えええぇぇ!!

 いっそ、一思いに怒鳴り散らしてくれたらいいのに、いつも冷静かつ、精神的に痛めつけてくるんだよ、この人!!

「は……華にも伝えとけ、と…」

「伝えてないの?」

「つ、伝えた!! 伝えたけど、華が!」

「ちょっと蓮! 私のせいにしないでよ! あんただって『分かった』っていったでしょ!?」

 じっと見つめると飛鳥を尻目に、双子の喧嘩が始まった。

 飛鳥は、そんな2人を見つめて、深くため息をつくと

「とりあえず、終わったら連絡するから、お前ら、暫く家から出とけ」

「え?」

 どうやら、追い出す気らしい。
 双子は、兄の言葉に押し黙った。

「あと、時間かかると思うから、昼は外で食べて……それと、買い物もまだ済ませてないから、ついでに醤油とタマゴも買ってきて」

 すると、飛鳥はポケットから財布を取り出すと、お金を華に手渡す。

「2分ね?」

「「え?」」

「2分以内に家を出る。わかった?」

「…………」

「返事!」

「「は、はい!!!」」

 二人同時に高らかに返事をすると、華と蓮は、慌てて家から出ていった。

 そして、双子が無事に家から出たことを確認すると、飛鳥はホッと胸をなでおろす。

(……とりあえず、これで大丈夫かな?)




 ◇

 ◇

 ◇



 その後、飛鳥は再び自分の部屋の中に入った。

 中では、ベッドの上に座り不安そうに俯いているエレナと、そんなエレナの横に座り、心配そうに見つめる、あかりの姿。

 ことの事態は何となく察したが、さて、これからどうするべきか?

 飛鳥は、小さく不安を抱きつつも、再度デスク前のイスに腰掛ける。

「待たせて、ごめんね」

「いえ。それより、よかったんですか? 妹さんたち追い出して」

「いいよ、別に。ついでに買い出しも頼めたし。それより、エレナ」

「!」

 すると、唐突に名前を呼ばれ、エレナが驚きと同時に飛鳥の顔を見上げた。

 無理もない。なぜなら今──

(よ……呼び捨てっ)

(相変わらず……っ)

 あかりとて、前に大学で唐突に呼び捨てにされたため、今に始まったことではないのだが、やはり、いきなりの呼び捨ては心臓に悪い。

 だが、飛鳥は特段気にもとめず、話かけてきた。

「一つ確認しておきたいんだけど」

「は、はい……」

「さっきの話を聞いた限りだと、受けなきゃいけないオーディション逃げ出して、今ここにいるみたいだけど──君はもう、モデルやりたくないの?」

「……っ」

 その質問に、エレナはキュッと唇を噛み締めた。

「あ、あの……私、オーディションは、受けなきゃいけないって、分かってるんだけど……でも、全然、笑えなくて……こんな顔で出ても、きっと……っ」

「そうじゃなくて、俺が聞きたいのは、やりたいけど出来ないのか、やりたくないのにやらされてるのか、どっちなのかってこと」

「……っ」

 飛鳥の問いかけに、エレナは言葉を詰まらせる。

 ──どっちなのか?

 その問いかけに、エレナのその隣にいたあかりも、ただ無言のままエレナを見つめた。

 そして、しばらく室内が静まり返ると、エレナはスカートの裾を握りしめ

「や、やりたくない……でも……でも、やらないとお母さんに、おこられるから……っ」

「…………」

 ぽつりぽつりと呟くエレナの瞳には、また涙が浮かんだ。

 それでも、必死にこらえながら、肩を震わすその姿は、今にも消えてしまいそうなほど弱々しくて

「……怒られるって、どんな風に?」

「……ど、怒鳴られたり…っ…物が壊れたり……あとは、部屋に閉じ込められて……家から出してもらえなかったり…っ」

「…………」

 絞り出すように発せられた、その声に、自分の幼い日の出来事が重なった。

 できなければ、ひどく怒鳴られて、食器や物が壊れるたびに、部屋の隅で泣きながら治まるのを待っていた。

 精神は少しずつ病んで「出して」と、扉を叩く気力すら無くなって、ただただ、閉じ込められた部屋の中で「あの人」に怯えながら過ごした日々──

 俺が、今思い出しても、耐えがたかったあの日々を

 この子は、エレナは一体、何年、一人で耐えてきたのだろう。


「そう……あの人、まだそんな事してるんだ」

「え?」

 飛鳥がポツリと呟くと、エレナが目を見開いた。静かな室内に響いた声は、ひどくひんやりとしていた。

「お兄さん、私のお母さんのこと……知ってるの?」

 その言葉に、飛鳥は黙ったままエレナを見つめた。

 このまま、言葉を飲み込みそうになる。

 本当に、告げていいか迷う。


 でも、きっと


 あの人が、どんな人間かを伝えるためには



『自分たちの関係』を伝えるのが




 一番、的確な方法だから──





「知ってるよ」

「え?」

「だって、あの人は──母親でもあるから」

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