神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜 あやめ

文字の大きさ
295 / 554
第2部 最終章 始と終のリベレーション

第274話 拒絶と成長

しおりを挟む
「私は……」

 エレナを見つめたまま、華は言葉をつまらせた。

 この家に、兄の『妹』が、もう一人増える。正直に言えば少し複雑で、すぐに返事はできなかった。

(私に従うってことは、蓮は、エレナちゃんを"受け入れてもいい"ってことだよね?)

 そして、弟の言葉をしっかりと飲み込むと、華はそう判断した。

 これは、蓮の優しさだ。蓮が『受け入れる』といってしまったら、そのあと華は、NOと言えなくなるから。

 だから、華の味方するために、華に従うといってきた。

(私が『嫌だ』と言えば、蓮は、私の意見に賛同してくれる)

 自分が一人で、孤立することがないように──

(どうしよう……っ)

 改めて、エレナを見つめると、華は自分の気持ちと向き合った。

 兄と異母兄妹弟である自分たちと、異父兄妹であるエレナちゃんが、一緒に暮らす。

 それは、多分『普通』の環境ではなくて、受け入れたら、きっと、今までと何かが変わってしまう。

 ずっと、居心地がいいと思っていた、この空間が変わってしまう。

 それは、嫌だと思った。

 だって、変りたくない。
 ずっと、そう思ってきたから。

 だけど……

「──ごめんなさい!」

「!?」

 だが、その瞬間、エレナが声をあげた。
 静かな部屋の中で、全員の視線が一気にエレナに集中する。

「あの……ごめんなさい。私、やっぱり施設に行きます……っ」

「エレナ、何言って」

「飛鳥さん、ごめんね! でも、やっぱり私がいると迷惑だよ。それに私、何も出来ないの。料理とか洗濯とか、家のこと全部お母さんがしてくれてて……だから、ここでお世話になっても、役に立てることなんて、なにもなくて。だから、」

「エレナ」

「……っ」

 涙目で話すエレナを、飛鳥がとっさに静止する。
 するとエレナは、また黙り込んだ。

 そして、それを見て、華は再び考える。

 とても強い子だと思った。

 母親に首を絞められて、すごく慕っていたあかりさんも傷つけられそうになった。兄に助けられて、なんとか事なきは得たけど、お母さんは、入院することになって、今すごく辛いはずだ。

 それなのに、自分たちのことを考えて、施設にいくなんて言っている。

(きっと、今、エレナちゃんがすがれるのは、お兄ちゃんだけだよね?)

 この子を受け入れたら、お兄ちゃんをとられてしまうかもしれない。

 一番から、どんどん遠のいてしまうかもしれない。
 それでも……

「ねぇ、エレナちゃん!」

「?」

「うちのお兄ちゃん、女の子みたいでしょ?」

「え?」

 すると、いきなり飛び出した華の突拍子もない話に、エレナはもちろん、その場にいた飛鳥、蓮、隆臣も困惑した。

 今、兄が女ぽいという話をする必要があるだろうか?いや、ないだろう。だが、場の空気が凍りつく中、華は場違いに話し続ける。

「子供の時はね~、一緒に歩いてたら、よく『綺麗なお姉ちゃんだねー』って言われて、それで『お兄ちゃんです』って答えたら、みんな驚いててね。他にもね、高校の時、女装したときは」

「いや、あの、いきなり、なに!?」

 華の話に、話題の中心である飛鳥は更に困惑する。すると華は、昔話に懐かしくなりながらも、改めてエレナを見つめた。

 拒絶するのは簡単だ。
 否定するのも簡単だ。

 だけど、今、一番大切にしなきゃいけないのは、エレナちゃんにとって、どうするのが一番いいか。

 今ここで、この子を見捨てたら、私は絶対に後悔する。

 なら、いつまでも、かわりたくないなんて言ってられない。

 大人になるには、成長するためには『新しいもの』を、受け入れていかなきゃいけない。

 たとえ、それで、今のなにかか変わっても、変化を恐れれていたら、ずっとずっと知れないままだ。

 受けいれた、その先にあるかもしれない、今以上に、楽しい未来にも───

「あのね、エレナちゃん。私、お姉ちゃんみたいなお兄ちゃんと弟はいるけど、本当は──も欲しかったんだ!」

「……!」

 華がそう言えば、その瞬間、エレナが大きく目を見開いた。

「だからね。うちで良かったら、一緒に暮らそう。うち男ばっかりだし、少しむさくるしいかもしれないけど……きっと、楽しいと思うよ!」

 華が笑いかければ、兄とは違うエレナの茶色い瞳から、ポロポロと涙が零れ落ちた。

 今まで堪えていたものが一気に流れ出したような。
 そんなエレナの涙をみて、飛鳥が安心したように微笑む。

 すると、その4人の姿を、ずっと傍で静観していた隆臣も安心したように、小さく息をついた。

(収まる所に、収まったみたいだな)

 華も蓮も、エレナちゃんも、そして飛鳥も、不安だった思いを全て吐き出せて、それにより、また一つ絆が深まったようにも見えた。

「それより兄貴」

 すると、また蓮が口を挟む。

「預かるのはいいけど、父さんには相談しなくていいの?」

「あぁ……それなんだけど、父さんには、来週帰国するまでは黙ってようかなって」

「え? なんで?」

「実は、この前、父さんがいきなり帰ってきたの、俺があの人を見かけて、それで心配して帰ってきたんだよ。だから、今回のことを話したら、また飛んでかえってくると思う」

「!?」

 なるほど!
 確かに、見かけただけで帰国したなら、怪我したなんていったら100%帰ってくる!!

「今、帰国前で、あっちの仕事がかなり忙しいみたいだから、会社に迷惑かける訳にもいかないしね」

「そうだよね! それは、ダメ。来週話そう……!」

 3人の気持ちが一致する。
 すると、また話はエレナに戻る。

「そうだ、エレナ。お前の部屋、俺と同じでもいい? 一応、俺の部屋が一番広いし」

「あ、はい。私はどこでも」

「はぁ!? ちょっと待って! 何言ってんの!?」

 だが、それを聞いて華が反論する。

「小学生とはいえ、エレナちゃん女の子だよ!?」

「兄貴、それはある意味犯罪」

「犯罪って……兄妹なんだし、年も離れてるのに、何言ってんの? それに、俺の部屋ならエレナも、来たことあるよ」

「「え!?」」

 来たことがある!?
 衝撃の事実に双子は、再び仰天する。

「嘘でしょ!? いつ!?」

「前に、あかりが来てた時、実はエレナもいたんだよ」

「「はぁぁ!?」」
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

処理中です...