神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜 あやめ

文字の大きさ
439 / 554
第10章 お兄ちゃんの失恋

第417話 ため息と本気

しおりを挟む

「あ、飛鳥! お前、酒のペース、早くなってないか!?」

 落ち込んでいるかと思いきや、突然、愚痴り出した飛鳥を見て、隆臣が慌てて声を上げた。

 なぜなら、愚痴りだした途端、飲むペースが、格段に上がったからだ!!

 だが、隆臣が停めるのも聞かず、それでも飛鳥は、飲み続け

「はぁ? さっき、たくさん飲めって言ったの誰?」

「いや、明日講義があるから、あまり飲まないっていったの、誰!」

 飛鳥を心配し、隆臣が更に反論をするが、飛鳥は、そんな隆臣には目もくれず、グラスに入ったお酒をグビっと飲み干した。

 なんてことだ!
 これは、思ってたのと違った!?

 てっきり、落ちこみまくって、食事も喉を通らないレベルだとおもっていたら

 めっちゃ食うし!
 めっちゃ飲むし!!

 しかし、それ以上に、気になったのは、あかりさんのこと!

 まさか、あのあかりさんが──

「ほ、本当なのか? あかりさんが、飛鳥のことが好きって……っ」

 予期せぬ事実を知り、隆臣はゴクリと息を飲んだ。

 昨日は、なんの進展もなく終わったのかと思っていた。だが、飛鳥はフラれたといいながらも、あかりさんの気持ちを自覚していた。

 だが、それが本当だとするなら、飛鳥とあかりさんは、両思いになるわけで……

「すみませーん。ソルティ・ドッグ、一つくださーい!」

「て、聞けよ!?」

 だが、その後、個室の外に顔を覗かせ、ニコニコと追加の酒を注文した飛鳥に、隆臣は、またもや、つっこんだ。

「お前、そんなに飲んで、大丈夫か!?」

「そんなにって、まだ二杯目だよ」

「いや、お前二杯でも酔うだろ!? しばらくしたら、スイッチ切れて、子鹿になるだろ!!」

「だから、その子鹿ってなんなの? てか、なんの話だっけ? あー、あかりが俺を好きかって話だよね。好きだよ、あの様子は、絶対」

「ぜ、絶対って……っ」

 そこまで言い切れる?
 いや、言いきれるほどの確信があるのか?

 まぁ、飛鳥は顔がいいし、今まで、モテまくってきたし、いやいや、でも、あかりさんは、飛鳥の顔にはなびかないよな!?

 ていうか、フラれたんだよな!?
 それなのに好きって、どういうこと!?

「ほ、本当なのか? お前、ふられたショックで、やばい妄想してるんじゃ」

「なにそれ。完全にヤバいやつじゃん。本当だよ」

「そ、そうか。でも、好きなら、なんで……っ」

 頭がこんがらがり、隆臣が更に問いつめれば、飛鳥は、再び真面目な顔をして考え込んだ。

 正直にいえば、昨日から、ずっとそればかり考えていた。

 なぜ、あかりは、自分を拒むのか?

 もちろん、さっき言ったことに、嘘偽りはない。愛情で縛り付けて、あかりを苦しめたいなんて、一切思わないし、嫌がってるなら、離れるべきなのもわかってる。

 だけど、正しい答えはでていても、いつまでたっても、それを納得できないのは、あの時のあかりの表情が、消えないからだ。

『やめてください……それ以上は……言わ…ないで……っ』

 自分の告白を、必死に聞きたくないと泣いていた、あの時の弱々しい姿が──…

(はぁ……なんなんだよ、本当)

 どうにも理解に苦しみ、飛鳥は、くしゃりと前髪をかきあげた。

 サラサラの長い髪は、それにより肩から滑り落ち、飛鳥の色気をさらに引き立てる。

 その悩ましい姿は、一枚の絵になりそうなほど。

 だが、それからひたすら悩み抜いたあと──

「……もう、やめよ」

「え?」

 飛鳥が不意にそう言って、隆臣が反応する。

「え? やめる?」

「うん。もう、ごちゃごちゃ考えるのは、やめる」

 すると、ストンとスイッチが切り替わったみたいに、飛鳥が冷静に声を発した。

 悩みに悩み抜いて、もう考えることを放棄したのか?

 だが、顔を上げた飛鳥は、どこか曇りのない表情をしていた。

「あ……飛鳥?」

「ねぇ、隆ちゃん。両思いなら、

「は?」

 そのハッキリとした口調に、隆臣は首を傾げる。

(何、言ってるんだ?)

 飛鳥の言葉の意味がわからない。

 だが、返事にこまっている隆臣を見つめ、飛鳥は、にっこりと微笑むと

「だから、あかりが俺を好きだっていうなら、もう遠慮なくってことだよね?」

「!?」

 遠慮なく、口説く!?
 
 まさかの言葉に、隆臣は戦慄する。
 てか、さっきと言ってることが違くない!?
 
「いやいやいや、お前、フラれたんだろ!? てか、さっきは」

「うん、わかってるよ。あかりが俺に、一切気がないっていうなら、潔く諦めてる。だけど、今の状況は、全く理解できないんだよね。両思いなのに、何がダメなのか。なら、もう遠慮なく口説いて、とことん追い詰めてみようかなって。あかりの本心を聞きだすまで──」

 そう言った飛鳥は、まるで悪魔のように微笑んだ。

 その姿は、いつも以上に、美しく妖艶で、ドキリというよりは、ゾクリとした。

(あ、あかりさん……大丈夫だろうか?)

 そして、そんな飛鳥をみて、隆臣は口元を引きつらせた。

 どうやら、あかりの対応は、このめんどくさい友人をにさせてしまったらしい。

 そして、こんなにも愛情深い男に好かれてしまった、あかりの身を酷く案じたのだった。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

処理中です...