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第10章 お兄ちゃんの失恋
第418話 寝起きと大学
しおりを挟む「ふぁ~。おはよー」
次の日──珍しく最後に起床した飛鳥は、あくびをしながらリビングにやってきた。
昨夜、隆臣に呼び出され、一緒に居酒屋に行った飛鳥は、二人で雑談を交わしながら酒を飲んだ。
だが、その後、飛鳥は予想通り、酔いがまわってしまい、隆臣に抱えられての帰宅となったのだが、その時の隆臣の話を聞いて、双子は、ずっと考えていた。
なぜなら、隆臣が──
『起こしちゃいけないやつを、起こしたかもしれん』
などと、意味深なことを言い残したからだ!!
ていうか、起こしたって何をだ!?
双子の頭の中は、軽くパニック。
おかげで、昨夜はあまり寝付けなかった。
とはいえ、今日は、二日酔いで起きれないだろうと、双子は兄を起こすことなく、華が朝食の準備をし、蓮がコーヒーを入れていた。
そして……
「おはよう、飛鳥兄ぃ」
「おはよー、兄貴」
と、二人同時に挨拶をしつつ、双子は兄の様子をうかがう。
だが、飛鳥は何食わぬ様子で、キッチンにやってきたかと思えば、冷蔵庫から、ミネラルウォーターを取りだした。
二日酔いなら、水も飲みたくなるだろう。
長い髪を下ろしたまま、少し気だるげな雰囲気の兄は、今日も抜群に色っぽい。
だが、今はそんな事、どーでもいい。
気になるのは、やはり、あかりさんのことだ!!
「あ、飛鳥兄ぃ、昨日は、どうだった?」
「昨日?」
華が問いかければ、コップにミネラルウォーターを注ぎながら、飛鳥が華に目を向ける。
ちょっと間の抜けた返事をした兄。
まさか、酔って全部忘れたわけではあるまいな?
そんな気持ちも一瞬よぎったが、それは杞憂に終わった。
「つーか、お前ら、俺があかりにフラれたこと、隆ちゃんに話しただろ」
「「げ!?」」
覚えてた! 完全に覚えてた!!
しかも、自分たちが隆臣に頼み込んだことにも気づいてる!!
「し、仕方ないじゃん! 心配だったんだから!」
「そうだよ! 兄貴、ずっと悩んでるみたいだったし!」
双子が慌てながら、そう言えば、飛鳥は水を飲みながら、昨夜のことを思い起こす。
はっきりいって、半分は記憶がない。どうやって帰ってきたのかすら、よく覚えてないレベル。
だが、あかりのことについて、隆臣と交わした言葉は、しっかり覚えていた。
そして、これから、自分が、どうしたいのか?
その答えも──
「そっか……心配かけて、ごめん」
すると飛鳥は、水を飲み干し、それをシンクに置くと
「でも、大丈夫だよ。ちゃんと気持ちの整理はついたから」
「「え?」」
そう言って、双子の頭をポンと撫でた飛鳥は、いつも以上に、穏やかな顔をしていた。
*
*
*
「あかりー、おはよー」
「おはよう。安藤さん」
月曜の朝──あかりが、大学にいくと、同じ学部の安藤に声をかけられた。
安藤は、あかりが、この桜聖大に入学した際、初めて声をかけてくれた女性だ。
明るくて気さくな安藤は、誰とでも仲良くなれるタイプなのか、とても友人が多く、そして同じ講義をとっているのもあり、あかりも話す機会が多かった。
「バイトは、どんな感じ?」
すると、ロータリーを進みながら、安藤が話しかけてきた。
春になってしばらく、サークル勧誘で賑わっていた大学校内も、少しは落ち着きを見せていた。
だが、それでもまだ勧誘に勤しむ生徒も多く、あかりは、聞き取りづらい中、必死に会話をする。
「…えと、どんな?」
「だから、バイト。始めたんでしょ!」
「あ、うん、週末だけだけど!」
正直、ちゃんと会話が出来ないのが、心苦しい。
だが、片耳が聞こえないことを話すのは、とてもタイミングが難しいのだ。
話すなら、サラッと!
そして、重くならないように伝えたい!
だが、話したあと、一織のように、普通に接してくれる人もいれば、知ったとたんに、距離を置く人だっている。
安藤さんは、どんな反応をするだろうか?
だからこそ迷い、結局、言えないまま、ズルズルと一年が経ってしまった。
「あかりー」
「……!」
すると、また名前を呼ばれた。
「あ、ごめん!」
また聴き逃したのかと、あかりは安藤に謝った。距離をつめ、先の言葉を必死に聞こうとする。だが、安藤は
「あ、いや、今のは私じゃないよ」
「え?」
私じゃない??
その言葉に、あかりは首を傾げた。
(あれ? もしかして、別の人の声だった?)
”あかり”と呼ぶのは、この大学には、二人しかいない。だから、安藤が、また自分を呼んだのかと思った。
だが、これだけ人がいるのだ。別のあかりさんを、誰かが呼んだだけかもしれない。
「そっか、ごめんね。てっきり、私のことかと」
「いやいや、あかりのことなんじゃない? 呼ばれてるよ」
「え?」
呼ばれてる……??
更なる返答に、あかりは困惑する。
そして、足を止め、背後を見つめた安藤を見て、あかりもつられて、そちらを見つめた。
すると、そこには、にっこりと見惚れてしまいそうな笑顔を浮かべる、金髪碧眼の人物がいた。
「おはよう、あかり♪」
そう言って、あかりを見つめた人物は、大学一の人気者──神木 飛鳥だった。
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