神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜 あやめ

文字の大きさ
440 / 554
第10章 お兄ちゃんの失恋

第418話 寝起きと大学

しおりを挟む

「ふぁ~。おはよー」

 次の日──珍しく最後に起床した飛鳥は、あくびをしながらリビングにやってきた。

 昨夜、隆臣に呼び出され、一緒に居酒屋に行った飛鳥は、二人で雑談を交わしながら酒を飲んだ。

 だが、その後、飛鳥は予想通り、酔いがまわってしまい、隆臣に抱えられての帰宅となったのだが、その時の隆臣の話を聞いて、双子は、ずっと考えていた。

 なぜなら、隆臣が──

『起こしちゃいけないやつを、起こしたかもしれん』

 などと、意味深なことを言い残したからだ!!
 ていうか、起こしたって何をだ!?

 双子の頭の中は、軽くパニック。
 おかげで、昨夜はあまり寝付けなかった。

 とはいえ、今日は、二日酔いで起きれないだろうと、双子は兄を起こすことなく、華が朝食の準備をし、蓮がコーヒーを入れていた。

 そして……

「おはよう、飛鳥兄ぃ」
「おはよー、兄貴」

 と、二人同時に挨拶をしつつ、双子は兄の様子をうかがう。
 だが、飛鳥は何食わぬ様子で、キッチンにやってきたかと思えば、冷蔵庫から、ミネラルウォーターを取りだした。

 二日酔いなら、水も飲みたくなるだろう。

 長い髪を下ろしたまま、少し気だるげな雰囲気の兄は、今日も抜群に色っぽい。

 だが、今はそんな事、どーでもいい。
 気になるのは、やはり、あかりさんのことだ!!

「あ、飛鳥兄ぃ、昨日は、どうだった?」

「昨日?」

 華が問いかければ、コップにミネラルウォーターを注ぎながら、飛鳥が華に目を向ける。

 ちょっと間の抜けた返事をした兄。

 まさか、酔って全部忘れたわけではあるまいな?
 そんな気持ちも一瞬よぎったが、それは杞憂に終わった。

「つーか、お前ら、俺があかりにフラれたこと、隆ちゃんに話しただろ」

「「げ!?」」

 覚えてた! 完全に覚えてた!!
 しかも、自分たちが隆臣に頼み込んだことにも気づいてる!!

「し、仕方ないじゃん! 心配だったんだから!」

「そうだよ! 兄貴、ずっと悩んでるみたいだったし!」

 双子が慌てながら、そう言えば、飛鳥は水を飲みながら、昨夜のことを思い起こす。

 はっきりいって、は記憶がない。どうやって帰ってきたのかすら、よく覚えてないレベル。

 だが、あかりのことについて、隆臣と交わした言葉は、しっかり覚えていた。

 そして、これから、自分が、どうしたいのか?
 そのも──

「そっか……心配かけて、ごめん」

 すると飛鳥は、水を飲み干し、それをシンクに置くと

「でも、大丈夫だよ。ちゃんと気持ちの整理はついたから」

「「え?」」

 そう言って、双子の頭をポンと撫でた飛鳥は、いつも以上に、穏やかな顔をしていた。



 *

 *

 *



「あかりー、おはよー」
「おはよう。安藤あんどうさん」

 月曜の朝──あかりが、大学にいくと、同じ学部の安藤に声をかけられた。

 安藤は、あかりが、この桜聖大に入学した際、初めて声をかけてくれた女性だ。

 明るくて気さくな安藤は、誰とでも仲良くなれるタイプなのか、とても友人が多く、そして同じ講義をとっているのもあり、あかりも話す機会が多かった。

「バイトは、どんな感じ?」

 すると、ロータリーを進みながら、安藤が話しかけてきた。

 春になってしばらく、サークル勧誘で賑わっていた大学校内も、少しは落ち着きを見せていた。
 だが、それでもまだ勧誘に勤しむ生徒も多く、あかりは、聞き取りづらい中、必死に会話をする。

「…えと、どんな?」

「だから、バイト。始めたんでしょ!」

「あ、うん、週末だけだけど!」

 正直、ちゃんと会話が出来ないのが、心苦しい。

 だが、片耳が聞こえないことを話すのは、とてもタイミングが難しいのだ。

 話すなら、サラッと!
 そして、重くならないように伝えたい!

 だが、話したあと、一織いおりのように、普通に接してくれる人もいれば、知ったとたんに、距離を置く人だっている。

 安藤さんは、どんな反応をするだろうか?

 だからこそ迷い、結局、言えないまま、ズルズルと一年が経ってしまった。

「あかりー」

「……!」

 すると、また名前を呼ばれた。

「あ、ごめん!」

 また聴き逃したのかと、あかりは安藤に謝った。距離をつめ、先の言葉を必死に聞こうとする。だが、安藤は

「あ、いや、今のは私じゃないよ」

「え?」

 私じゃない??
 その言葉に、あかりは首を傾げた。

(あれ? もしかして、別の人の声だった?)

 ”あかり”と呼ぶのは、この大学には、しかいない。だから、安藤が、また自分を呼んだのかと思った。

 だが、これだけ人がいるのだ。あかりさんを、誰かが呼んだだけかもしれない。

「そっか、ごめんね。てっきり、私のことかと」

「いやいや、あかりのことなんじゃない? 呼ばれてるよ」

「え?」

 呼ばれてる……??

 更なる返答に、あかりは困惑する。

 そして、足を止め、背後を見つめた安藤を見て、あかりもつられて、そちらを見つめた。

 すると、そこには、にっこりと見惚れてしまいそうな笑顔を浮かべる、金髪碧眼の人物がいた。

「おはよう、あかり♪」

 そう言って、あかりを見つめた人物は、大学一の人気者──神木 飛鳥だった。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

処理中です...