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第3章 誕生日の夜
第21話 プレゼントと本
しおりを挟む華が差し出してきたそれは、10センチ四方のキューブ型の箱だった。差し出されたそれを、素直に受けとると、あしらわれた青いリボンを解き、包みをあけ、プレゼントの中を確認する。
すると中には、深いコバルトブルーのバレッタと、ゴムやピンなどのヘアアクセサリーが数点はいっていた。
「なに? 髪留め?」
「そ、そう……だって飛鳥兄ぃ、いつも私の勝手に使うから、もしかしたら女の子のお店に入るのが恥ずかしくて買えないのかなと、思って……」
(…なんか、すごい詮索のされ方してる)
もちろん、飛鳥にそんな深い事情はない。だが、不安そうにこちらを見つめる華をみて、先ほど『怒らない?』と念を押してきたのはこのためかと、飛鳥は妙に納得してしまった。
確かに男性に、女のものの髪留めなんてプレゼントしたら、怒られるかも?と思ってもおかしくない。
だが、そのコバルトブルーのバレッタは、自身の金色の髪にはえそうな、とても綺麗な色をしていた。きっと、兄の髪に似合いそうな色を、たくさんあるヘアアクセの中から探してきてくれたのだろう。
そう思って、飛鳥は目を細めると
「……ありがとう。大事にするよ」
といって、華を見つめ優しく微笑みかける。
「……う、うん…///」
そして、その「ありがとう」の言葉聞いて、華はホッとしたのが、なんだか急に懐かしい気持ちになった。
幼いころは、よく蓮と二人して、兄にプレゼントをしていた。クレヨンで描いた絵とか、折り紙で作ったお花とか、そしてその度兄は、いつも笑って「ありがとう」と言ってくれるのだ。
どんなに不格好なものも、どんなに下手なものの、決して無下にはせず、小学生に時にプレゼントした貯金箱だって、未だに机の上に飾ってある。
(……今でも、喜んでくれるんだ)
昔から変わらない兄の対応に、華は胸がいっぱいのなるのを感じると、嬉しそう顔を綻ばせた。
だが、その傍らで、蓮がつまらなそうに呟く。
「へーエロ本じゃなかったんだ…なんか普通」
「なっ……?!」
水を差すような蓮の言葉に、華の沸点は一気に上昇する。
「っ、ちょっと蓮! 普通でなにが悪いのよ! 大体、そう言う蓮はどうなの!」
華が顔を真っ赤にしてそう言うと、どうやら、蓮もプレゼントを用意していたのだろう。蓮はポケットからごそごそと何かを取り出すと、その後「はい」といって、手紙のような小さな包みを、差し出してきた。
「え?なに?」
差し出された、その封筒を目にして、飛鳥が首をかしげる。
「うそでしょ、蓮。もしかして、今までの感謝の気持ちを綴ってきました。みたいな?」
そして、華が不振に満ちた表情を浮かべる。
「違うよ。まー開けてみて」
「……あぁ(なんだろう?)」
中身の想像がつかぬまま、飛鳥はその手紙を受け取ると、家族が見守る中、その手紙の封を切る。
すると、そこから出てきたのは──5000円分の図書カード!!
「えぇ!? なんで、図書カード!!?」
封筒の中に綺麗に包まれていた図書カードをみて、華が叫ぶ。
「なに、この斜め上なプレゼント!?」
「だって、兄貴本好きだから、よく読んでるじゃん。始めは本プレゼントしようかと思ってたんだけど、カブったら嫌だし。だったら、図書カードにして、好きな本買ってもらえばいいかなって?」
「えー誕生日だよ! しかも、二十歳だよ!図書カードって全然形に残らないじゃん!! もう少し、記念になるもの思いつかなかったの!?」
「なんで華は、いちいち記念とか形にこだわるんだよ? これだから女は…」
「あー! 今の発言、女の子敵にまわしたからね!」
「うわ、めんどくさ…」
記念日というものに関心がない蓮の発言に、不服そうに顔を歪める華と、そんな華をあしらい蓮は、また再びコーヒーを飲む。
飛鳥は、目の前で喧嘩をする二人に呆れたような視線をむけると、その後また視線を落とし、小さく笑みを浮かべた。
飛鳥にとっては、二人が一生懸命考えてプレゼントしてくれたものなら、なんだって嬉しいのだが…
「あー!本と言えば、飛鳥!」
「!」
すると、今度はキッチンから父の声が聞こえた。飛鳥は何事か?父の方へと視線を向ける
「……なに?」
「飛鳥、父さんのあの部屋なんなの?! 部屋の一部が、お前のダンボールで埋め尽くされてたんだけど!?」
どうやら父は、書斎の片隅に積み重なったダンボールのことを言っているらしかった。
父の6畳の洋室に、数箱積み重なり部屋を占領している段ボール。それは、飛鳥が読み終えた、文庫本や文芸書の山だった。
「埋め尽くしてはないよ、一時的に保管させてもらってるだけ」
「保管所!!?」
父の部屋を、倉庫代わりに使う息子。
いくらいないとはいえ、酷くないか?
侑斗は顔をひきつらせる。すると、今度は蓮が思い出したように、声を上げた。
「そういえば、父さん、まだ暫く仕事海外? あの部屋使わないなら俺、つかってもいい?」
「え?」
侑斗はその話を聞いて、ふむと考える。
神木家の間取りは、3LDK。よく、みんなが集まっているリビングダイニングを除けば、残る部屋は3部屋。
その3つのうち、6畳の部屋を父と華が一人ずつ使い、残った一番大きな10畳の部屋を、飛鳥と蓮が共同で使っているのだが…
「俺ももうすぐ高校生だし、いつまでも兄貴と共同っていうのもなんだし」
「あーまぁ、確かにそうだな……」
蓮だって、春には高校生になるのだ。いつまでも兄と一緒の部屋というのは、流石に可哀想だろう。
「別に構わないけど……でも、俺帰ってきたら、どこに寝ればいいの?」
だが、3部屋ある部屋を全て子供たちが使ってしまっては「父の部屋」がなくなるわけで、侑斗は、帰省後の事を考え、子供たちに問いかける。
すると、飛鳥、華、蓮の三人は、一瞬顔を見合わせると……
「私の部屋は、絶対ダメだからね!」
「一番広いし、兄貴の部屋でいいんじゃない?」
「それはヤダ。リビング使えばいいと思う」
「ちょっと!? お父さん追いやられてる!!? どんどん隅に追いやられてるよ!!?」
自分を部屋は嫌だと、ことごとく、子供達からNGをくらう父。今に始まったことではないのだが、神木家の子供達の父に対する対応は、日増しに「塩化」しているのだった。
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