神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜

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第5章 救世主と事件

第29話 侵害と救世主

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「アンタだろ? 桜聖大の神木くんて」

「!?」

見ず知らずの男に、突然名だしされ、飛鳥は瞠目する。

(なんでコイツ……俺の名前──)

 額にじわりと嫌な汗をかく。

 無理もない。飛鳥はこの男に名乗った覚えもなければ、あった記憶すらない。

 すると男は、またヘラヘラと腑抜け笑顔を浮かべながら、飛鳥に話しかけてきた。

「実はさ~、桜聖大にスゲーイケメンがいるって、うちの大学で噂になってさー。しかも、金髪碧眼だって言うから、すぐ分かったよ。アンタもしかして、モデルとかしてんの? その見た目なら、マジモテるっしょ?」

「……」

「実は俺、罰ゲームで君の写メとってこいって言われちゃってさー。悪いけど、見逃してくんない?」

 どうやら男は、近隣の大学に通う学生のようだった。
 だが、罰ゲームだかなんだかしらないが、なぜそれで、自分が写真を撮られなくてはならないのか……

 飛鳥は、その言葉に、より一層の不快感を高めると、男に射るような視線をむけた。

「それさ、俺には関係ないよね。消せ、今すぐ」

「おー怖、大人しそうな人だと思ったのに、アンタ見かけによらず口悪いんだね~……さっきは、あんなに綺麗な顔して笑ってたのに~」

「……」

 スマホの中の飛鳥と見比べながら、男が笑う。その嘲笑うような態度や言動に、ただただ不快感だけがつのる。
 
 こういう容姿をしていると、変な奴にからまれのは、ある意味日常茶飯事だ。

 だが、大抵の輩は、軽くあしらうか睨みつけでもすれば、去っていくのだが、どうやらこの男は、睨み付けたくらいでは、ものともしないらしい。
 まぁ、本人の目の前で堂々と写真を撮るやつなのだ。そのくらいの肝は、据わっているかもしれない。

 だが、このまま引き下がれば、後々厄介なことになりそうな気もして、飛鳥は寄りかかっていたガードレールから離れ立ち上がるとると、その対処法をぐるぐると考える。

(さて、どうするか……)

なんとしても、写真は消去させておきたい。


「あー、みーちゃったー♪」

「!?」

 だが、その時った。対峙する二人の少し離れた場所から、突如明るい声が聞こえた。
 その声に、飛鳥と男が同時に視線を向けると、左方から声をかけてきたのは、人なっこそうな顔をした茶髪の男だった。。

「イケメン困らせて喜んでるダメ男、発見~!」

「はぁ!? なんだよ、お前!」

 その茶髪の男は、飛鳥の前に立つ黒髪の男の前に歩みよると、自分のスマホを見せつけるように、男の前に差し出した。

「見て見て~! 動画バッチし~! これ晒したら、アンタ明日から有名人かもね~?」
 
 手にしたスマホには、証拠とも言わんばかりに、先ほどの飛鳥との一連のやり取りが、しっかりと映っていた。

「っ……てめ、ふざけてんのか!?」
 
「ふざけてんのどっち? それ肖像権の侵害じゃん。困ってるし嫌がってるのに、見逃してとかアホまるだし!」

「るせっ……! 消せよそれ!!」
 
「えー。じゃぁ、まずそっちからでしょー! はい。貸して、俺が消すから!」

「あ、ちょ……っ!」

 茶髪の男は、難なく男からスマホを取り上げると、馴れた手つきでスマホを操作し、先程撮られた飛鳥の画像を削除する。

「バックアップはとってないみたいだし大丈夫かなー。はい。じゃ、俺のも消すから、ちゃんとみててね~」

「……っ、最悪っ」
 
「次からは、人に迷惑かからない罰ゲーム考えた方がいいよ。下手すれば罰金だよ~?」

「っ、うるせー!」

 茶髪の男は目の前でしっかりと動画を削除すると、その後黒髪の男は負け犬のようなセリフを吐き、慌てて走り去っていった。

 そのあっという間の出来事に、飛鳥は一瞬唖然としたが、とりあえず礼を言おうと、その男に声をかける。

「……あの」

「……か、かか…」

「え?」

 だが、その茶髪の男はスマホを手にしたまま、肩をふるふると震わせはじめた。

飛鳥と一切目を合わせず俯く男の姿。

 それを見て微かに眉を顰めるも、再び声をかけようと、飛鳥は男の顔を覗き込む。

「あの……」

「──神木くん!!」

「へ?」

だが、瞬間名前を呼ばれると、その茶髪の男は、飛鳥の手を取り両手でギュッと握りしめてきた。

「俺……ずっと、神木くんに会いたかったんです‼」

「んん?!」

 目を輝かせてそういった男に、飛鳥は口元を引き攣らせて瞠目する。

(あれ?もしかして……)

茶髪の男コイツも、ヤバいやつだった?







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