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第一部 第一章 別れと出会い
神様に出会っちゃいました
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─リくん、ユーリくん
声が聞こえる…
とても優しくて、温かい声
「んっ…んぅ~?」
僕を呼んでるのはだれ?
目をあけていくと、目の前には白い髪、白い目の綺麗なお兄さんのお顔があった。
「やあ、おはよう。ユーリくん」
お兄さんがすごくいい笑顔で挨拶をしてきた。
んぁ…ちゃんとごあいさつ…しなきゃ…
僕はまだポヤポヤする頭で挨拶をかえした。
「んゅぅ…。おあよ…ざいま…しゅ…」
「うん、おはよう。きちんと挨拶できて偉いね」
そう言って、お兄さんは「んぅ~」と目をこすっていた僕の頭を撫でてくれた。
ぬぅぅ…、いいなでなで~…ダメだ…目がとじちゃう…
「………すぅ…」
「あぁユーリくん、寝ないでおくれ。少し私とお話をしないかい?」
「…おぁなし…?」
「うん、お話。だから早く起きて、その可愛いおめめを開いておくれ」
そう聞こえた後に、ほっぺが優しく横に伸ばされたり、ぐるぐると円を描くように撫でられる感触がした。
むぅ…ほっぺが暴れてる……
ほっぺが動かされている感触でだんだんと意識がはっきりしていった。
…んぅ~?…ここはソファのうえ…?でも頭に柔らかい何かが…?
無意識のうちに頭にあった枕?をもにもにと揉んだ。
「…っん!ちょっ、ユ、ユーリくん!ふふ、くすぐったいんだけど!」
…って、あれ?…これ…枕じゃなくてお膝!?
「…にゅぅ、ほにいはん、はれぇ?(お兄さん、誰?)」
急に僕があたふたとしだしたのに気付いたお兄さんは「ふふ。良かった、起きてくれて」と言って微笑むと僕をむにむにしていた手を止めた。僕はその隙に起き上がると、ソファに座り直した。
このお兄さんは誰なんだろう…それにここはどこ…?
僕は隣のお兄さんを見上げようとして、ハッとした。
『目を合わせるとのろわれるらしいよ』
『早くこの醜いバケモノを私の前から消してちょうだい』
『ぐっ…!ごめっ…なさ…っ!ふぅぅっ…!ごめなさっ……ごめっ……い…。』
─髪と目を見せたら、また叩かれちゃうかも!
僕は目をつぶり、できるだけ髪が見えないように手で隠しながら、お兄さんに質問した。
「あのっ…お兄さんは誰ですかっ?」
「…大丈夫。隠さなくても大丈夫なんだよ、ユーリくん。
まぁ、お茶でも飲みながらお話をしようじゃないか」
そう言ってお兄さんがパンッと手を叩くと、何もなかった空間に一人用のテーブルと椅子、お茶とお菓子が出てきた。
…えぇーー!?何これすごい!魔法なのかなぁ?
びっくりしている間にお兄さんは椅子に座ると、自分の膝をポンポンとしながら、おいでと手招いた。
お兄さんのお膝に座っていいってことなのかな…?でも、僕が近寄ったら…怒って叩くんじゃ…
ぐるぐる考えちゃって僕が動けないでいると、お兄さんが来て僕をふわっと抱き上げた。
「わぁ!」
そしてそのままお兄さんは椅子に座り、僕を膝の上にのせた。僕とお兄さんが向かい合っている感じだ。
(えっ、あっ!ど、どうしよう…降りなきゃ!髪と目を見られちゃう!怖い怖い怖い…)
僕はできるだけ髪を隠し、下を向きながらお兄さんの膝からおりようとした。
「あっ、あのっ!おり、おります!ごめんなさい。ごめんな─」
「…ユーリくんは何に対してそんなに謝っているんだい?」
「えっ……?」
僕がごめんなさいをする理由…?
「…ぼ、僕の髪と目の色は、悪いことするバケモノと同じ色で、人間にはないはずの醜い色だから…。…それに…」
─僕が自分の髪と目の色を隠そうとする一番の理由は…
「それに…僕の目を見ると…の、のろわれちゃうって…!
それで…かあさまも死んじゃったって!…ぼくがのろったせいだって!…ふっうぅ……うわぁぁん!」
そうなんだ…。僕は絶対に母さまをのろってない!って思いたかったけど、メイドさんたちがお話していた『母さまが僕の目をフードで隠した理由』を聞いて、「そうだったんだ…」って思っちゃったんだ!僕が母さまを傷つけていたんだって!
「…ぐすっ……だ、だから隠さなきゃって!…他の人も母さまと同じようにっ…ぼ、僕がころさないようにって…!」
僕は必死でお話しした。これ以上誰も傷つけたくないこと。そして、ちゃんと髪と目を隠すから、痛いことをしないでほしいこと。
「そっか…ユーリくんが伝えたいことはよく分かったよ」
そう言ってお兄さんは手を上げた。
─叩かれる…!?
僕はパッと頭を守った。
けど、きたのは痛みじゃなくて、温かいものだった。
「ごめんね、ユーリくん。私は君に一番最初に言わなきゃいけない大切なことを言い忘れていたよ」
お兄さんがぎゅっと僕を抱きしめてくれていた。
「私はユーリくんの夜空のように綺麗な黒髪とルビーのようにキラキラと輝く目が大好きだよ!それに、君には人をのろう力なんてないよ。お母さんが君にフードをかぶるように言ったのは君を守るためだったんだ。お母さんはユーリくんが大好きで大切だった。この私が保証しよう」
─僕の髪と目が大好き…?
「だっ、だって!僕の髪と目はバケモノと同じだからっ!みんな嫌いだってっ…!」
「人はみんな、同じものを好きになるとは限らないんだよ。
ユーリくんが今まで出会った人たちは君の色が嫌いだったのかもしれない…。でも、君の色が好きな人もいるんだってことを分かってほしい。じゃないと、君の色が大好きな私やお母さんが否定されたようで傷ついてしまうよ」
「…ぐすっ……で、でも。メイドさんたちがっ、僕の目にはのろいの力があるって…!」
「むぅ…。ユーリくんは、私の話よりそんなメイドたちの話を信じるのかい…?」
お兄さんは少しむくれたように話すと、また僕のほっぺをむにむにと揉んだ。
「…ら、らって。ほんほうにほろいららるはもひれらいひ!(だ、だって。本当にのろいがあるかもしれないし!)」
「─この私、ユースティティアの名において、断言しよう。
君にあるのは、人をのろう力じゃなくて、人を幸せにできる力だよ。お母さんだって、フードを外した君の目をしっかり見て好きと言ってくれていたんじゃないのかい?」
…そうだった。母さまはちゃんと目を見て、髪を触って大好きって言ってくれた。…本当に?僕にはのろう力はないの…?
…ってあれ?ゆーすてぃてぃあ……?どこかで聞いたことがあるような?
『いい?ユーリ。お食事の前にはこうして手を合わせて、お祈りをするのよ』
『おいのい?』
『ふふふ。お・い・の・りよ。
これは、神様に「今日も豊かな実りをありがとうございます」って感謝をお届けするためにするのよ』
『かみたまにあいがとー?ユーイもすゆ!』
『じゃあ母さまと一緒にお祈りしましょう。この世界を見守ってくれている神様、ユースティティア様に』
─あれ?前に母さまから聞いた神様のお名前と一緒…?
「…神様と同じお名前…?」
「ん?あぁ、そういえば自己紹介がまだだったね」
ゆーすてぃてぃあさんは髪を少し整えると、「ごほん!」とせきをして自己紹介をはじめた。
「─私の名はユースティティア。君たちの世界を見守る神様だよ。
そして、ここは僕が君とお話するためにつくった空間だよ」
「…え?」
神様って…絵本とかにでてくる、あの神様……?
…えっ?えっ、ええぇぇぇーー!!
「か、神様っ!?ほ、ほほほんものですかっ!?」
「あはは!本物に決まってるじゃないか。その証拠に、僕がつくったこの空間では何でも自由に出せるんだよー」
お兄さんは「ホラ」と言って、何もなかった空間から家具やぬいぐるみを出した。
「ふぁぁ!すごい、すごい!」
神様がいろいろなものを出したりしてくれるのを見て、僕の悲しい気持ちがだんだん薄くなって、パチパチといっぱい拍手をして大興奮しちゃった!
そして、ハッ!と大事なことに気付いた。
…僕、神様のお膝に座っちゃってるっ!?
「う…あっ…、神様ごめんなさい!お膝、すぐおります!」
僕はすぐに膝から降りようとしたけど、神様は「どうかおりないでくれ!私の癒し!」と言って離してくれなかった。だから、結局このままお話をすることになったんだ。
「ごほん。話を戻すね。
改めて、私は君の住んでいる世界を創造し管理をしている神、ユースティティアという。
今回はユーリくんにお話があって、意識だけをこの空間に呼んだんだ。だから、本当のユーリくんの身体は眠っているだけだから安心して。お話が終わったらすぐに戻れるよ」
「僕、階段から落ちて死んじゃったのかと思った…。あれ?そういえば神様からお話しって…?」
「そうだったね。今から話すのは君にとって重大なことなんだ。だから、少し難しい話になるかもしれないけど、しっかり聞いてほしい」
「はい」
神様は今まではほわほわと優しい笑顔でお話ししていたけど、今はキリッと真剣なお顔になった。
神様は僕にのろいの力がないって言ってたし、僕の目も好きだと言ってくれたから、ちゃんと神様の目をしっかり見てお話を聞く。
神様はふぅっと息を吐くと、僕の頭をゆっくり撫でながら話を始めた。
「まず、君に伝えなければいけないのは、君の未来についてなんだ」
「みらい?」
「うん。君のこれから先のお話なんだけど…」
神様はそこで言葉を止めた、僕を撫でる手も少しぎこちなくなった気がする。
「…ユーリくん。君はこのままだと、誰にも愛されず、16歳で亡くなる運命なんだ」
…え?……えぇーーー!?
…僕、16歳で死んじゃうの!?しかも、誰にも愛されないってことは、死ぬまでずっと一人ぼっちってこと…?
それに、前に母さまが「大人として認められるのは19歳からよ」って言ってたから…
「あぇ…?じゃあ僕、大人になれないの…?…もう…誰も大好きって言ってくれないの…?」
さっき止まったはずの涙がまたでてきた。そんな僕に神様は慌てた様子で、
「ユーリくん、落ち着いてくれ。
私が言ったのは、今のままだとそういう未来が待ってるってことなんだ。逆を言うと、今から頑張れば未来も変えることができるってことなんだ!」
「ぐすっ…未来を変える…?」
「そう。私が君をここに呼んだのは、この残酷な君の未来を変えてほしいからなんだ。さっき未来の話をした時に『誰にも愛されず』って言ったのを覚えているかい?」
「うん…」
「今のままだと、君はこの先ずっと一人ぼっちになるんだ。だけど今から頑張れば、君を愛してずっと傍にいてくれる人や、君の運命を変えるために力を貸してくれる人たちができるかもしれない」
神様は「これから頑張れば、いっぱい愛してくれる人を見つけられる」って言ってくれたけど…
「…だって、みんな僕のことが嫌いだってっ…!」
そうだよ。父さまさえも愛してくれない僕を好きだって言ってくれる人なんて─
「…ユーリくん、今まで会った人たちは、君のことが嫌いな人ばかりだったかもしらない。でも、もっと周りをよく見てみて。
馬車で眠ってしまった君をベッドに寝かせてくれた人、起きて泣いていた君を心配してくれた人がいたんじゃないかな?」
起きた…とき?…そう…だった。あの人は僕を心配してくれていた。それなのに僕は…。
「でも僕はその人の手を叩いちゃったんです!だから、こんな悪い子じゃ、誰も、誰も好きになってくれない!」
「そっか。ユーリくんは、自分が悪い子だから、誰かに好きになってもらう自信がないんだね?」
コクリと頷くと、神様は僕をギュッと抱きしめ、背中をポンポンしてくれた。
「大丈夫。それなら、神様が良い子になるためのアドバイスをしてあげよう!」
「アドバイス?」
「うん」
そうして、神様が教えてくれたアドバイスは3つあった。
・『おはよう』などの挨拶や、『ありがとう、ごめんなさい』などの言葉は相手にしっかり伝えること
・困ってる人をできる限り助けること
・何ごとにも一生懸命になること
「まず一つ目のアドバイスについて。さっきのユーリくんみたいに、誰かを傷付けてしまったのなら、『ごめんなさい』ときちんと謝ればいい。言葉にして伝えてもらえるだけで、相手は嬉しいものだよ」
そういえばお母さまも、僕が花を摘んでいったら『ありがとう』って言ってくれてた…。その言葉を聞いて、なんだか胸の辺りがポカポカして嬉しくなったんだ。
「はい!いっぱい気持ちを伝えます!」
「うん、その意気だ!では、2つ目のアドバイスについて。もしユーリくんが困ってるときに手を差し伸べてくれる人がいたらユーリくんはどう思う?」
「僕は…嬉しくなる!いっぱいありがとうって伝えて、大好きになるかもっ…!」
「だろう?
(ボソッ)まぁ、中には見返りを求めたり、裏がある人間もいるけど…」
「んゅ?神様、何か言いました?」
「あぁ、いや何でもないよ」
んー、神様の超絶美形スマイルに騙されている感じがするけど…
「神様、僕これからいろんな人を助けて、ちゃんと助けた人たちに優しくもします!」
「うん。でもまぁ、ユーリくんは元から優しい子だから、その点については大丈夫だよ。
じゃあ最後、3つ目のアドバイスについて。頑張っている人の周りには自然と人が集まるものなんだよ。それに、応援したくもなるしね」
「そうなんですね…。
僕、決めました!未来を変えるためにいっしょーけんめい頑張ります!」
「うん!それでこそ私の愛し子だ!じゃあそんな頑張り屋のユーリくんに神様からプレゼントとして役立つ魔法やスキル、加護をいっぱいつけてあげよう!」
「ふぇぇぇ!プ、プレゼントですかっ!?」
「そうだよ。君がこれから運命を変えるために頑張れるよう、神様からのプレゼントだ」
「やったーー!凄く嬉しいです!!」
僕は興奮して、手をグーにして神様の膝の上ではしゃいだ。
「あっははは!そんなに喜んでくれるとは、こっちも嬉しくなってしまうね!じゃあ、さっそく洗礼をやっちゃおうか」
…ん?洗礼?
僕は知らない言葉を聞いて、わぁぁ!と興奮していた手をだんだんと下ろしていった。
「神様、洗礼ってなんですか?」
「あぁ、ユーリくんの母さまは、10歳で受ける洗礼のことを伝える前に亡くなってしまったんだったね…。
洗礼っていうのは、みんなが10歳になると神殿で受ける儀式のことだよ。この洗礼を受けることで、自分がどんな魔法・スキル・加護を持っているのかが分かるんだ。そして、洗礼を受けた日から魔法を使うことができるんだよ」
「まっ、魔法が使えるんですか?僕、母さまが魔法で水を出しているのを見たことがあります!僕もあれができるようになるんですねっ!?
あ…。でも、神様。僕、10歳じゃないんですけど、洗礼を受けてもいいのでしょうか?」
「いいも何も、スキルや魔法をみんなが使えるようにしているのは私だし。10歳を境にしているのだって、魔力を馴染ませやすいからだし。それに、なんていったって、私は君の世界を見守る『神様』だからね」
そう言った神様の周りがキラキラと輝きはじめた。
神様の周り、キラキラしてる…魔法?これも魔法なのかな?
神様の周りのキラキラに気を取られていると、僕の頭のてっぺんに手をかざすと何か呟いた。
すると、体が内側からポカポカしていき、僕もキラキラと光だした。
「わぁ、僕光ってる!」
キラキラが治まると神様は頭の上に置いていた手をおろして、「洗礼、終わったよ」と爽やかに言った。
「えっもう終わったのですか?」
「うん、結果が聞きたいかい?」
「はい、すごく楽しみです!」
「ふふふ。じゃあ鑑定結果の見方を教えるね。
心の中で《ステータスオープン》と言ってごらん」
「はい!」と言って僕は心の中で呟く。…どうか誰かの役に立てる能力がありますように!
(《ステータスオープン》)
すると、目の前にブオンと透明な膜みたいなのが現れた。
「わあっ!びっくりした!」
「ふふふ。これが君のステータスボードだよ。さあ、君が持ってる力を見てみようか」
神様に言われ、目の前に現れたステータスボードをしっかり見てみる。
名前:ユーリ・リーヴェ
年齢:5歳
適正魔法:水・風・地・光・闇・無
スキル:癒しの光、賢者の書、異世界商店、テイマー
加護:ユースティティア神の加護
「か、かみさまぁ…」
「え!?ユーリくん、何でそんなに悲しそうな顔をしてるんだい?」
「僕、まだ字が読めません…」
そうだった…。僕、絵本もちゃんと読めなかったんだった…。
「あぁ、ごめんよ。じゃあ私が変わりに読ませてもらうね。
君の適正魔法は『水・風・地・光・闇・無』だね。スキルは『癒しの光、賢者の書、異世界商店、テイマー』。加護は『ユースティティア神の加護』プレゼントとしてつけた、私の加護だね」
「おぉーー!……お?」
僕、最初は魔法やスキルがいっぱい!って喜んじゃったけど、そういえば魔法やスキルのこと何も知らなかったから、僕のステータスはいいのかどうか分かんなかった…。だけど、とりあえずこれだけは聞かなくちゃ!
「神様、僕いっぱい魔法使えますか?」
「うん、使えるよ。お母さんと同じく水もだせるよ」
「やったーーー!」
「よかったね、ユーリくん。これからいっぱい勉強して、魔法を使いこなせるといいね。
さて、とりあえず私からは、簡単にスキルと加護について説明しておくね」
「はい、お願いします!」
「まず、スキルについてだけど─」
神様から教えてもらったスキルの内容はこんな感じだった。
・癒しの光…傷を癒し、呪いや穢れを浄化する
・賢者の書…異世界の知識を見ることができる
・異世界商店…異世界商店に物を売ることで異世界商店のみで使えるお金に換えることができる。そのお金で異世界商店にあるものを買うことができる
・テイマー…人間以外の生き物との会話を可能にする。また、テイムして仲間にすることができる。
「─とまぁ、こんなところかな」
「いせかい?はちょっとわからないけど、すごいスキルがいっぱいで嬉しいです!」
「喜んでもらえてよかった。
…このスキルはね、君のご先祖様からこの先頑張る君へのプレゼントなんだよ。…まぁ詳しい話は君がもう少し大人になってからだね」
そう言って、ふっと優しく、でもどこか寂しそうに微笑んだ。
そっか、ご先祖様も僕にプレゼントを渡してくれたんだ!
僕はちゃんと心の中でご先祖様に「ありがとうございます」ってお礼を言った。
「最後に私の加護のことなんだけどね、この加護があると家で君の大切な人が傷つきにくくなったり、お家で野菜とか果物が育ちやすくなったり、結界がはれたりって感じかな」
「加護、すごいっ…!」
「ふふ、ありがとう。君ならこの加護を悪用せずに正しく使ってくれると思って奮発してみたよ」
「ふわぁぁ!ありがとうございます!僕、こんなにプレゼントもらえて嬉しいです!」
神様からこんなにいっぱいプレゼントをもらった僕は、頑張るぞーっていう気持ちで元気いっぱいに答えた。
「あぁ、やっぱり綺麗な魂ですごく心地がいいな…。ずっとここにいてほしい…。あんな醜い欲望を持ってる人間たちのところに行かせたくないな…」
神様は何か小さく呟くと、さっきよりも強く僕を抱きしめた。
ぐぅっ…、く、苦しい…
「ぬぅ…神様ちょっと苦しいです」
そう言うと、神様は少し慌てた様子で手を離してくれた。
「あぁ、ごめんね。ついつい醜い欲を持った人間のこと…あー、余計なことを考えてしまったよ」
そう言って神様は「はぁぁー」と大きなため息をついた。
んー、神様にも何か悩みがあるのかも?
そう思った僕は、神様の頭に手を置いて、よしよしと撫でた。
神様が少しでも元気になりますように!
何回かよしよしして、神様元気になったかな?と顔を見てみたら、びっくりした様子で僕の顔をじっと見ていた。
…はっ!さっき神様に撫でられて嬉しかったから、神様にも同じことやって喜んでもらおうと思ったけど…。神様になでなでなんかしたら、ダメだったんじゃ…!?
「うぇっ…。か、神様…。ごめんなさい!」
僕は急いで頭から手を離し、膝からもおりて頭を下げた。
どうしよう…こ、こういうところが悪い子なのかも。だから、僕はみんなに嫌われるのかも…
僕はまた涙がでてきそうになった。
すると、神様はふわっと僕を抱き上げ、僕をぎゅっと抱きしめた。
「ありがとう。君はとても良い子だね」
違うよ神様。本当に良い子だったら、みんなが嫌うはずないんだ。
でも、そう言ってしまうと神様が悲しんでしまう気がして、代わりに神様をぎゅっと抱きしめ返した。
少しの間抱き合ってから、
「そろそろ君を元の世界に返さないとね」
少し寂しそうに神様は言った。なんか僕も寂しくなり、つい言ってしまった。
「神様…また会うことはできますか?」
「うーん、そうだね…。
ならユーリくんの家に私の力で神殿を建てとくから、そこでお祈りしたら、お話が出来るように設定しておくっていうのはどうかな?」
「そしたら、神様といつでもお話できますか?」
「うん。まぁ、いつでも繋がるって訳じゃないけど、出来るだけユーリくんの呼びかけには答えるつもりだよ」
神様とずっとお別れしなくていいんだ!
「ああそれと、
あまり今回の洗礼の儀のことは言わないように」
「んぅ?なんでですか?」
「人の中には、強すぎる力を持つものを囲いこんで自分の欲を叶える道具として使ったり、逆にその力に怯え殺そうとするものさえいるんだ。
だから、君が信じられる人以外にはむやみやたらに自分の力を話してはいけないよ」
神様は今まで見たことがないくらい真剣な顔をして言った。
「はい。わかりました」
「それと、もうひとつ君に渡すものがある」
そう言うと、神様は僕の左胸─心臓の辺りに手を置いて何か呟く。
すると、神様の手に魔法陣が浮かび、それがスーっとぼくの左胸に吸い込まれていった。
「これは…?」
「この陣は君の運命の日までのタイムリミットを示すものだよ。この左胸に現れた紋章が消えた時、君の運命が変わっているはずだから」
「僕、この紋章が消えるように頑張ります!」
ぐっと拳を握った僕を、神様はぎゅっと抱きしめた。
「ユーリくん。…今の君は、理不尽な暴力によって心に深い傷を負っている状態なんだ。そのせいで、人が怖いと感じているかもしれない。でも、人と関わるのを諦めないで、人に甘えることを覚えてほしい。それが必ず運命を変える手助けになるから。どうか生きてくれ…我が愛し子」
「かみ…さ…ま?」
神様はすごく真面目な声でそう言うと、抱っこ状態だった僕をおろした。
「さぁ、お別れの時間だ」
神様のその言葉と同時に僕の足元から魔法陣が浮かびあがった。
「ユーリくん。お話できて楽しかったよ。あっちでも元気でね」
「神様、ありがとうございました!またお話できるのを楽しみにしてます!」
「うん、またね。ユーリくん」
「はい!」
そうして僕は魔方陣の光に包まれて静かに目を閉じた。
声が聞こえる…
とても優しくて、温かい声
「んっ…んぅ~?」
僕を呼んでるのはだれ?
目をあけていくと、目の前には白い髪、白い目の綺麗なお兄さんのお顔があった。
「やあ、おはよう。ユーリくん」
お兄さんがすごくいい笑顔で挨拶をしてきた。
んぁ…ちゃんとごあいさつ…しなきゃ…
僕はまだポヤポヤする頭で挨拶をかえした。
「んゅぅ…。おあよ…ざいま…しゅ…」
「うん、おはよう。きちんと挨拶できて偉いね」
そう言って、お兄さんは「んぅ~」と目をこすっていた僕の頭を撫でてくれた。
ぬぅぅ…、いいなでなで~…ダメだ…目がとじちゃう…
「………すぅ…」
「あぁユーリくん、寝ないでおくれ。少し私とお話をしないかい?」
「…おぁなし…?」
「うん、お話。だから早く起きて、その可愛いおめめを開いておくれ」
そう聞こえた後に、ほっぺが優しく横に伸ばされたり、ぐるぐると円を描くように撫でられる感触がした。
むぅ…ほっぺが暴れてる……
ほっぺが動かされている感触でだんだんと意識がはっきりしていった。
…んぅ~?…ここはソファのうえ…?でも頭に柔らかい何かが…?
無意識のうちに頭にあった枕?をもにもにと揉んだ。
「…っん!ちょっ、ユ、ユーリくん!ふふ、くすぐったいんだけど!」
…って、あれ?…これ…枕じゃなくてお膝!?
「…にゅぅ、ほにいはん、はれぇ?(お兄さん、誰?)」
急に僕があたふたとしだしたのに気付いたお兄さんは「ふふ。良かった、起きてくれて」と言って微笑むと僕をむにむにしていた手を止めた。僕はその隙に起き上がると、ソファに座り直した。
このお兄さんは誰なんだろう…それにここはどこ…?
僕は隣のお兄さんを見上げようとして、ハッとした。
『目を合わせるとのろわれるらしいよ』
『早くこの醜いバケモノを私の前から消してちょうだい』
『ぐっ…!ごめっ…なさ…っ!ふぅぅっ…!ごめなさっ……ごめっ……い…。』
─髪と目を見せたら、また叩かれちゃうかも!
僕は目をつぶり、できるだけ髪が見えないように手で隠しながら、お兄さんに質問した。
「あのっ…お兄さんは誰ですかっ?」
「…大丈夫。隠さなくても大丈夫なんだよ、ユーリくん。
まぁ、お茶でも飲みながらお話をしようじゃないか」
そう言ってお兄さんがパンッと手を叩くと、何もなかった空間に一人用のテーブルと椅子、お茶とお菓子が出てきた。
…えぇーー!?何これすごい!魔法なのかなぁ?
びっくりしている間にお兄さんは椅子に座ると、自分の膝をポンポンとしながら、おいでと手招いた。
お兄さんのお膝に座っていいってことなのかな…?でも、僕が近寄ったら…怒って叩くんじゃ…
ぐるぐる考えちゃって僕が動けないでいると、お兄さんが来て僕をふわっと抱き上げた。
「わぁ!」
そしてそのままお兄さんは椅子に座り、僕を膝の上にのせた。僕とお兄さんが向かい合っている感じだ。
(えっ、あっ!ど、どうしよう…降りなきゃ!髪と目を見られちゃう!怖い怖い怖い…)
僕はできるだけ髪を隠し、下を向きながらお兄さんの膝からおりようとした。
「あっ、あのっ!おり、おります!ごめんなさい。ごめんな─」
「…ユーリくんは何に対してそんなに謝っているんだい?」
「えっ……?」
僕がごめんなさいをする理由…?
「…ぼ、僕の髪と目の色は、悪いことするバケモノと同じ色で、人間にはないはずの醜い色だから…。…それに…」
─僕が自分の髪と目の色を隠そうとする一番の理由は…
「それに…僕の目を見ると…の、のろわれちゃうって…!
それで…かあさまも死んじゃったって!…ぼくがのろったせいだって!…ふっうぅ……うわぁぁん!」
そうなんだ…。僕は絶対に母さまをのろってない!って思いたかったけど、メイドさんたちがお話していた『母さまが僕の目をフードで隠した理由』を聞いて、「そうだったんだ…」って思っちゃったんだ!僕が母さまを傷つけていたんだって!
「…ぐすっ……だ、だから隠さなきゃって!…他の人も母さまと同じようにっ…ぼ、僕がころさないようにって…!」
僕は必死でお話しした。これ以上誰も傷つけたくないこと。そして、ちゃんと髪と目を隠すから、痛いことをしないでほしいこと。
「そっか…ユーリくんが伝えたいことはよく分かったよ」
そう言ってお兄さんは手を上げた。
─叩かれる…!?
僕はパッと頭を守った。
けど、きたのは痛みじゃなくて、温かいものだった。
「ごめんね、ユーリくん。私は君に一番最初に言わなきゃいけない大切なことを言い忘れていたよ」
お兄さんがぎゅっと僕を抱きしめてくれていた。
「私はユーリくんの夜空のように綺麗な黒髪とルビーのようにキラキラと輝く目が大好きだよ!それに、君には人をのろう力なんてないよ。お母さんが君にフードをかぶるように言ったのは君を守るためだったんだ。お母さんはユーリくんが大好きで大切だった。この私が保証しよう」
─僕の髪と目が大好き…?
「だっ、だって!僕の髪と目はバケモノと同じだからっ!みんな嫌いだってっ…!」
「人はみんな、同じものを好きになるとは限らないんだよ。
ユーリくんが今まで出会った人たちは君の色が嫌いだったのかもしれない…。でも、君の色が好きな人もいるんだってことを分かってほしい。じゃないと、君の色が大好きな私やお母さんが否定されたようで傷ついてしまうよ」
「…ぐすっ……で、でも。メイドさんたちがっ、僕の目にはのろいの力があるって…!」
「むぅ…。ユーリくんは、私の話よりそんなメイドたちの話を信じるのかい…?」
お兄さんは少しむくれたように話すと、また僕のほっぺをむにむにと揉んだ。
「…ら、らって。ほんほうにほろいららるはもひれらいひ!(だ、だって。本当にのろいがあるかもしれないし!)」
「─この私、ユースティティアの名において、断言しよう。
君にあるのは、人をのろう力じゃなくて、人を幸せにできる力だよ。お母さんだって、フードを外した君の目をしっかり見て好きと言ってくれていたんじゃないのかい?」
…そうだった。母さまはちゃんと目を見て、髪を触って大好きって言ってくれた。…本当に?僕にはのろう力はないの…?
…ってあれ?ゆーすてぃてぃあ……?どこかで聞いたことがあるような?
『いい?ユーリ。お食事の前にはこうして手を合わせて、お祈りをするのよ』
『おいのい?』
『ふふふ。お・い・の・りよ。
これは、神様に「今日も豊かな実りをありがとうございます」って感謝をお届けするためにするのよ』
『かみたまにあいがとー?ユーイもすゆ!』
『じゃあ母さまと一緒にお祈りしましょう。この世界を見守ってくれている神様、ユースティティア様に』
─あれ?前に母さまから聞いた神様のお名前と一緒…?
「…神様と同じお名前…?」
「ん?あぁ、そういえば自己紹介がまだだったね」
ゆーすてぃてぃあさんは髪を少し整えると、「ごほん!」とせきをして自己紹介をはじめた。
「─私の名はユースティティア。君たちの世界を見守る神様だよ。
そして、ここは僕が君とお話するためにつくった空間だよ」
「…え?」
神様って…絵本とかにでてくる、あの神様……?
…えっ?えっ、ええぇぇぇーー!!
「か、神様っ!?ほ、ほほほんものですかっ!?」
「あはは!本物に決まってるじゃないか。その証拠に、僕がつくったこの空間では何でも自由に出せるんだよー」
お兄さんは「ホラ」と言って、何もなかった空間から家具やぬいぐるみを出した。
「ふぁぁ!すごい、すごい!」
神様がいろいろなものを出したりしてくれるのを見て、僕の悲しい気持ちがだんだん薄くなって、パチパチといっぱい拍手をして大興奮しちゃった!
そして、ハッ!と大事なことに気付いた。
…僕、神様のお膝に座っちゃってるっ!?
「う…あっ…、神様ごめんなさい!お膝、すぐおります!」
僕はすぐに膝から降りようとしたけど、神様は「どうかおりないでくれ!私の癒し!」と言って離してくれなかった。だから、結局このままお話をすることになったんだ。
「ごほん。話を戻すね。
改めて、私は君の住んでいる世界を創造し管理をしている神、ユースティティアという。
今回はユーリくんにお話があって、意識だけをこの空間に呼んだんだ。だから、本当のユーリくんの身体は眠っているだけだから安心して。お話が終わったらすぐに戻れるよ」
「僕、階段から落ちて死んじゃったのかと思った…。あれ?そういえば神様からお話しって…?」
「そうだったね。今から話すのは君にとって重大なことなんだ。だから、少し難しい話になるかもしれないけど、しっかり聞いてほしい」
「はい」
神様は今まではほわほわと優しい笑顔でお話ししていたけど、今はキリッと真剣なお顔になった。
神様は僕にのろいの力がないって言ってたし、僕の目も好きだと言ってくれたから、ちゃんと神様の目をしっかり見てお話を聞く。
神様はふぅっと息を吐くと、僕の頭をゆっくり撫でながら話を始めた。
「まず、君に伝えなければいけないのは、君の未来についてなんだ」
「みらい?」
「うん。君のこれから先のお話なんだけど…」
神様はそこで言葉を止めた、僕を撫でる手も少しぎこちなくなった気がする。
「…ユーリくん。君はこのままだと、誰にも愛されず、16歳で亡くなる運命なんだ」
…え?……えぇーーー!?
…僕、16歳で死んじゃうの!?しかも、誰にも愛されないってことは、死ぬまでずっと一人ぼっちってこと…?
それに、前に母さまが「大人として認められるのは19歳からよ」って言ってたから…
「あぇ…?じゃあ僕、大人になれないの…?…もう…誰も大好きって言ってくれないの…?」
さっき止まったはずの涙がまたでてきた。そんな僕に神様は慌てた様子で、
「ユーリくん、落ち着いてくれ。
私が言ったのは、今のままだとそういう未来が待ってるってことなんだ。逆を言うと、今から頑張れば未来も変えることができるってことなんだ!」
「ぐすっ…未来を変える…?」
「そう。私が君をここに呼んだのは、この残酷な君の未来を変えてほしいからなんだ。さっき未来の話をした時に『誰にも愛されず』って言ったのを覚えているかい?」
「うん…」
「今のままだと、君はこの先ずっと一人ぼっちになるんだ。だけど今から頑張れば、君を愛してずっと傍にいてくれる人や、君の運命を変えるために力を貸してくれる人たちができるかもしれない」
神様は「これから頑張れば、いっぱい愛してくれる人を見つけられる」って言ってくれたけど…
「…だって、みんな僕のことが嫌いだってっ…!」
そうだよ。父さまさえも愛してくれない僕を好きだって言ってくれる人なんて─
「…ユーリくん、今まで会った人たちは、君のことが嫌いな人ばかりだったかもしらない。でも、もっと周りをよく見てみて。
馬車で眠ってしまった君をベッドに寝かせてくれた人、起きて泣いていた君を心配してくれた人がいたんじゃないかな?」
起きた…とき?…そう…だった。あの人は僕を心配してくれていた。それなのに僕は…。
「でも僕はその人の手を叩いちゃったんです!だから、こんな悪い子じゃ、誰も、誰も好きになってくれない!」
「そっか。ユーリくんは、自分が悪い子だから、誰かに好きになってもらう自信がないんだね?」
コクリと頷くと、神様は僕をギュッと抱きしめ、背中をポンポンしてくれた。
「大丈夫。それなら、神様が良い子になるためのアドバイスをしてあげよう!」
「アドバイス?」
「うん」
そうして、神様が教えてくれたアドバイスは3つあった。
・『おはよう』などの挨拶や、『ありがとう、ごめんなさい』などの言葉は相手にしっかり伝えること
・困ってる人をできる限り助けること
・何ごとにも一生懸命になること
「まず一つ目のアドバイスについて。さっきのユーリくんみたいに、誰かを傷付けてしまったのなら、『ごめんなさい』ときちんと謝ればいい。言葉にして伝えてもらえるだけで、相手は嬉しいものだよ」
そういえばお母さまも、僕が花を摘んでいったら『ありがとう』って言ってくれてた…。その言葉を聞いて、なんだか胸の辺りがポカポカして嬉しくなったんだ。
「はい!いっぱい気持ちを伝えます!」
「うん、その意気だ!では、2つ目のアドバイスについて。もしユーリくんが困ってるときに手を差し伸べてくれる人がいたらユーリくんはどう思う?」
「僕は…嬉しくなる!いっぱいありがとうって伝えて、大好きになるかもっ…!」
「だろう?
(ボソッ)まぁ、中には見返りを求めたり、裏がある人間もいるけど…」
「んゅ?神様、何か言いました?」
「あぁ、いや何でもないよ」
んー、神様の超絶美形スマイルに騙されている感じがするけど…
「神様、僕これからいろんな人を助けて、ちゃんと助けた人たちに優しくもします!」
「うん。でもまぁ、ユーリくんは元から優しい子だから、その点については大丈夫だよ。
じゃあ最後、3つ目のアドバイスについて。頑張っている人の周りには自然と人が集まるものなんだよ。それに、応援したくもなるしね」
「そうなんですね…。
僕、決めました!未来を変えるためにいっしょーけんめい頑張ります!」
「うん!それでこそ私の愛し子だ!じゃあそんな頑張り屋のユーリくんに神様からプレゼントとして役立つ魔法やスキル、加護をいっぱいつけてあげよう!」
「ふぇぇぇ!プ、プレゼントですかっ!?」
「そうだよ。君がこれから運命を変えるために頑張れるよう、神様からのプレゼントだ」
「やったーー!凄く嬉しいです!!」
僕は興奮して、手をグーにして神様の膝の上ではしゃいだ。
「あっははは!そんなに喜んでくれるとは、こっちも嬉しくなってしまうね!じゃあ、さっそく洗礼をやっちゃおうか」
…ん?洗礼?
僕は知らない言葉を聞いて、わぁぁ!と興奮していた手をだんだんと下ろしていった。
「神様、洗礼ってなんですか?」
「あぁ、ユーリくんの母さまは、10歳で受ける洗礼のことを伝える前に亡くなってしまったんだったね…。
洗礼っていうのは、みんなが10歳になると神殿で受ける儀式のことだよ。この洗礼を受けることで、自分がどんな魔法・スキル・加護を持っているのかが分かるんだ。そして、洗礼を受けた日から魔法を使うことができるんだよ」
「まっ、魔法が使えるんですか?僕、母さまが魔法で水を出しているのを見たことがあります!僕もあれができるようになるんですねっ!?
あ…。でも、神様。僕、10歳じゃないんですけど、洗礼を受けてもいいのでしょうか?」
「いいも何も、スキルや魔法をみんなが使えるようにしているのは私だし。10歳を境にしているのだって、魔力を馴染ませやすいからだし。それに、なんていったって、私は君の世界を見守る『神様』だからね」
そう言った神様の周りがキラキラと輝きはじめた。
神様の周り、キラキラしてる…魔法?これも魔法なのかな?
神様の周りのキラキラに気を取られていると、僕の頭のてっぺんに手をかざすと何か呟いた。
すると、体が内側からポカポカしていき、僕もキラキラと光だした。
「わぁ、僕光ってる!」
キラキラが治まると神様は頭の上に置いていた手をおろして、「洗礼、終わったよ」と爽やかに言った。
「えっもう終わったのですか?」
「うん、結果が聞きたいかい?」
「はい、すごく楽しみです!」
「ふふふ。じゃあ鑑定結果の見方を教えるね。
心の中で《ステータスオープン》と言ってごらん」
「はい!」と言って僕は心の中で呟く。…どうか誰かの役に立てる能力がありますように!
(《ステータスオープン》)
すると、目の前にブオンと透明な膜みたいなのが現れた。
「わあっ!びっくりした!」
「ふふふ。これが君のステータスボードだよ。さあ、君が持ってる力を見てみようか」
神様に言われ、目の前に現れたステータスボードをしっかり見てみる。
名前:ユーリ・リーヴェ
年齢:5歳
適正魔法:水・風・地・光・闇・無
スキル:癒しの光、賢者の書、異世界商店、テイマー
加護:ユースティティア神の加護
「か、かみさまぁ…」
「え!?ユーリくん、何でそんなに悲しそうな顔をしてるんだい?」
「僕、まだ字が読めません…」
そうだった…。僕、絵本もちゃんと読めなかったんだった…。
「あぁ、ごめんよ。じゃあ私が変わりに読ませてもらうね。
君の適正魔法は『水・風・地・光・闇・無』だね。スキルは『癒しの光、賢者の書、異世界商店、テイマー』。加護は『ユースティティア神の加護』プレゼントとしてつけた、私の加護だね」
「おぉーー!……お?」
僕、最初は魔法やスキルがいっぱい!って喜んじゃったけど、そういえば魔法やスキルのこと何も知らなかったから、僕のステータスはいいのかどうか分かんなかった…。だけど、とりあえずこれだけは聞かなくちゃ!
「神様、僕いっぱい魔法使えますか?」
「うん、使えるよ。お母さんと同じく水もだせるよ」
「やったーーー!」
「よかったね、ユーリくん。これからいっぱい勉強して、魔法を使いこなせるといいね。
さて、とりあえず私からは、簡単にスキルと加護について説明しておくね」
「はい、お願いします!」
「まず、スキルについてだけど─」
神様から教えてもらったスキルの内容はこんな感じだった。
・癒しの光…傷を癒し、呪いや穢れを浄化する
・賢者の書…異世界の知識を見ることができる
・異世界商店…異世界商店に物を売ることで異世界商店のみで使えるお金に換えることができる。そのお金で異世界商店にあるものを買うことができる
・テイマー…人間以外の生き物との会話を可能にする。また、テイムして仲間にすることができる。
「─とまぁ、こんなところかな」
「いせかい?はちょっとわからないけど、すごいスキルがいっぱいで嬉しいです!」
「喜んでもらえてよかった。
…このスキルはね、君のご先祖様からこの先頑張る君へのプレゼントなんだよ。…まぁ詳しい話は君がもう少し大人になってからだね」
そう言って、ふっと優しく、でもどこか寂しそうに微笑んだ。
そっか、ご先祖様も僕にプレゼントを渡してくれたんだ!
僕はちゃんと心の中でご先祖様に「ありがとうございます」ってお礼を言った。
「最後に私の加護のことなんだけどね、この加護があると家で君の大切な人が傷つきにくくなったり、お家で野菜とか果物が育ちやすくなったり、結界がはれたりって感じかな」
「加護、すごいっ…!」
「ふふ、ありがとう。君ならこの加護を悪用せずに正しく使ってくれると思って奮発してみたよ」
「ふわぁぁ!ありがとうございます!僕、こんなにプレゼントもらえて嬉しいです!」
神様からこんなにいっぱいプレゼントをもらった僕は、頑張るぞーっていう気持ちで元気いっぱいに答えた。
「あぁ、やっぱり綺麗な魂ですごく心地がいいな…。ずっとここにいてほしい…。あんな醜い欲望を持ってる人間たちのところに行かせたくないな…」
神様は何か小さく呟くと、さっきよりも強く僕を抱きしめた。
ぐぅっ…、く、苦しい…
「ぬぅ…神様ちょっと苦しいです」
そう言うと、神様は少し慌てた様子で手を離してくれた。
「あぁ、ごめんね。ついつい醜い欲を持った人間のこと…あー、余計なことを考えてしまったよ」
そう言って神様は「はぁぁー」と大きなため息をついた。
んー、神様にも何か悩みがあるのかも?
そう思った僕は、神様の頭に手を置いて、よしよしと撫でた。
神様が少しでも元気になりますように!
何回かよしよしして、神様元気になったかな?と顔を見てみたら、びっくりした様子で僕の顔をじっと見ていた。
…はっ!さっき神様に撫でられて嬉しかったから、神様にも同じことやって喜んでもらおうと思ったけど…。神様になでなでなんかしたら、ダメだったんじゃ…!?
「うぇっ…。か、神様…。ごめんなさい!」
僕は急いで頭から手を離し、膝からもおりて頭を下げた。
どうしよう…こ、こういうところが悪い子なのかも。だから、僕はみんなに嫌われるのかも…
僕はまた涙がでてきそうになった。
すると、神様はふわっと僕を抱き上げ、僕をぎゅっと抱きしめた。
「ありがとう。君はとても良い子だね」
違うよ神様。本当に良い子だったら、みんなが嫌うはずないんだ。
でも、そう言ってしまうと神様が悲しんでしまう気がして、代わりに神様をぎゅっと抱きしめ返した。
少しの間抱き合ってから、
「そろそろ君を元の世界に返さないとね」
少し寂しそうに神様は言った。なんか僕も寂しくなり、つい言ってしまった。
「神様…また会うことはできますか?」
「うーん、そうだね…。
ならユーリくんの家に私の力で神殿を建てとくから、そこでお祈りしたら、お話が出来るように設定しておくっていうのはどうかな?」
「そしたら、神様といつでもお話できますか?」
「うん。まぁ、いつでも繋がるって訳じゃないけど、出来るだけユーリくんの呼びかけには答えるつもりだよ」
神様とずっとお別れしなくていいんだ!
「ああそれと、
あまり今回の洗礼の儀のことは言わないように」
「んぅ?なんでですか?」
「人の中には、強すぎる力を持つものを囲いこんで自分の欲を叶える道具として使ったり、逆にその力に怯え殺そうとするものさえいるんだ。
だから、君が信じられる人以外にはむやみやたらに自分の力を話してはいけないよ」
神様は今まで見たことがないくらい真剣な顔をして言った。
「はい。わかりました」
「それと、もうひとつ君に渡すものがある」
そう言うと、神様は僕の左胸─心臓の辺りに手を置いて何か呟く。
すると、神様の手に魔法陣が浮かび、それがスーっとぼくの左胸に吸い込まれていった。
「これは…?」
「この陣は君の運命の日までのタイムリミットを示すものだよ。この左胸に現れた紋章が消えた時、君の運命が変わっているはずだから」
「僕、この紋章が消えるように頑張ります!」
ぐっと拳を握った僕を、神様はぎゅっと抱きしめた。
「ユーリくん。…今の君は、理不尽な暴力によって心に深い傷を負っている状態なんだ。そのせいで、人が怖いと感じているかもしれない。でも、人と関わるのを諦めないで、人に甘えることを覚えてほしい。それが必ず運命を変える手助けになるから。どうか生きてくれ…我が愛し子」
「かみ…さ…ま?」
神様はすごく真面目な声でそう言うと、抱っこ状態だった僕をおろした。
「さぁ、お別れの時間だ」
神様のその言葉と同時に僕の足元から魔法陣が浮かびあがった。
「ユーリくん。お話できて楽しかったよ。あっちでも元気でね」
「神様、ありがとうございました!またお話できるのを楽しみにしてます!」
「うん、またね。ユーリくん」
「はい!」
そうして僕は魔方陣の光に包まれて静かに目を閉じた。
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