株式会社デモニックヒーローズ

とーふ(代理カナタ)

文字の大きさ
49 / 51

第48話『光差す場所へ』

しおりを挟む
向かうべき場所は分かっていた。

前よりもずっと明るい何もない世界で。俺はただ、その光差す場所へと向かって歩き、そして……視界が光に包まれた。

「やぁ、遅かったね。タツヤ」

「そうか? 俺としてはかなり急いだつもりだったんだがな」

「どうせどっかで寄り道でもしてたんだろ」

「んな訳無いだろ。お前じゃないんだから」

「いやいや。タツヤも前科はかなりありますよ。途中魚を食べようと突然言い始めて、山奥に向かって行こうとした事があったでしょう」

「あの時は山に魔王の幹部が居たんだから結果オーライだろ?」

「結果論なんだよなぁー。冒険の足を引っ張るなよ。タツヤ」

「それを言うならチャーリー。お前だって娼館の子に恋した! って大騒ぎして旅立つのを拒否した事があっただろ。あれは足を引っ張って無かったのか?」

「おいおい忘れたのか。結局あの子は魔王軍の淫魔だっただろ。俺のお陰で倒せたんだぜ?」

「完全にハニートラップにハマる直前でしたけどね。私が気づいてなければ今頃どうなっていたか」

「いやいや。淫魔相手でも俺の方がベッドで強かったからな? 無限の体力舐めんなよ」

「その技能は戦闘で活かせ。戦闘で」

「まったく。タツヤもチャーリーも。私を見習って貰いたいですね」

「よく言うぜ。お前だって珍しい魔法を見つけた。魔法の道具を見つけたってだけで完全に魔王と関係ないダンジョンを奥まで俺たちに潜らせただろうが」

「これが平和な未来を導く鍵になるんですよ」

「ほー。そいつは凄い。是非とも果物の種を取り出す魔法で平和な未来を作ってもらいたいもんだ」

「この魔法の素晴らしさが分からないとは! これだから頭まで筋肉で出来てる戦士は。やれやれ。どれだけ高度な魔法かも理解出来ないのですか?」

「高度かどうかじゃなくて、それでどうやって明るい未来が出来んのかって言ってんだよ」

「この魔法により、スイカを食べる時も種を飲み込まずに済みます」

「……割と明るい未来が見えるな?」

「タツヤ騙されるな。んなモン口に入れて出せばいいんだぞ」

「いや、しかしその手間を無くしてくれるのならいい魔法と言えるのではなかろうか」

「確かにね」

「アーサー! お前もか!」

「まぁ、僕は種があっても無くても楽しめるからどっちでも良いと思うけど……でも、選ぶ権利があるっていうのは良い事だと思うよ。ね? タツヤ」

「あぁ、そうだな」

俺は世界に光が満ちてゆくのを感じながら、右手を握りしめた。

「未来は自分の手で選ぶ。それが大事って事だな。アーサー」

「あぁ、そうさ。だから、君が帰ってくるのを待っているよ」

「……」

俺は消えていく三人の気配をそのままに、目を閉じて、静かに深呼吸を繰り返す。

そして、一歩一歩声のする方へと歩いていくのだった。



光の中に包まれて、おそらくは現実世界に抜け出した俺だったが、どうやら状況はクライマックスもクライマックスの様だ。

ここは高校の教室で、俺は黒い液体で体を汚しながら、床に転がっており、すぐ背後にはおそらくヒナヤクさんと思われる黒い大きな何かが蠢いていた。

高さは天井に触れるかどうかという所で、大分デカい。

「タツヤさん!」

そして、そんなヒナヤクさんと対峙する様にアーサー達三人が武器を構えながら油断せずに立っていた。

ウィスタリアさんたちはここに居ないが、おそらくどこか別の場所から繋がっていたのだろう。

「タツヤ!」

チャーリーの叫ぶ声と同時に飛んできたナイフを空中で掴み、俺は黒い物体から伸びる手の様な物を切り裂いてアーサーのすぐ隣に跳んだ。

「すまん。心配かけた」

「いや、構わないさ」

「タツヤさん! ご無事ですか!? 私が、この事態を解決に導いたんですよ?」

アーサーと拳をぶつけ合っていた所、すぐ後ろから元気よくメリア様が話しかけてきて、俺は少しげんなりとする。

雰囲気壊れちゃうから、落ち着いて欲しい。

「アーサー。ラナ様たちは?」

「既に会社の世界へ移動済みだ。ここには僕たちしか居ないよ」

「そうか。それは良かった。じゃあ後はあの人を倒すだけだな。アーサー。チャーリー。ハリー!」

「私、私の事忘れてますよ」

「……」

「タツヤさーん! 聞こえてますかー! ターツーヤーさーん!!」

「分かってます。分かってます。聞こえてますよ。メリア様! はい。これで良いんでしょ?」

「っ! 私の事! 思い出して……!」

「いや、別に思い出してないです」

「え? いや、だって今、名前」

「……初めから。忘れてないですよ。メリア様の事は」

「あー。そういう事だったんですねぇ。って、え!? えぇ!!? それってどういう!」

「後にしろ! メリア! 来るぞ!」

『タツヤ! 私の!』

俺はメリア様を抱き上げながら、黒い手から逃れ、教室の中を跳ぶ。

床を壁を天井を。あらゆる場所を足場にして動き回り、とにかく手から逃れ続けた。

「アーサー! どうやって仕留めればいい!」

「それに関しては手配済みだ!」

「手配済み……?」

妙な言い回しの言葉に俺は疑問を浮かべたが、その答えはすぐに現れた。

そうどこに隠れていたのか。

いや、初めからそこに居たのかもしれない。

その女性は、教室の中央に立っていて……そして右手の人差し指と中指だけを立てた状態で横に振るった。

瞬間、黒い物体は思わず耳を塞ぎたくなる様な悲鳴を上げ、のたうち回った。

「へぇ。一度では消えませんか。中々しぶといですね」

「っ」

「……ヒナヤクさん」

そして、その声にメリア様が酷く辛そうな声を出した。

俺は腕の中に居る目を閉じて、祈る様に両手を握り合わせているメリア様を見て、息を吐く。

「メリア様」

「……! は、はい!」

「メリア様はヒナヤクさんと、親しくされていたのですか?」

「あ、いえ。凄く親しいという訳では無いのですが、何度か話す機会があり……それで」

「……」

「あ、でも! タツヤさんを苦しめたい訳ではなく、私は」

「アーサー!!」

「どうした!?」

「メリア様を頼む!」

光の剣でヒナヤクさんの手を弾いてるアーサーを呼び、俺はメリア様を投げ、アーサーがキャッチするのを見てから、黒い何かが剥がれ落ち、苦しそうに床に倒れこんでいるヒナヤクさんの前に立った。

「そちらの方。危ないですよ」

「はぁ……はぁ……た、つや?」

涙を流し、苦しそうな顔をしているヒナヤクさんから視線を外し、この世界の英雄であろう人に俺は振り返った。

「申し訳ございませんが、このくらいで終わりに出来ませんか?」

「タツヤ!?」

「……!」

「何を言っているんだ。ヒナヤクが君に何をしたか。知っているだろう!」

「あぁ、まぁ……な。でも被害を受けたのは俺だけだし」

それに、メリア様が悲しむ顔は見たくないんだ俺は。

「ま。私はこのまま皆さんがこの世界から消えてくれるのなら、いう事は何も無いですよ。その女の力は全て消しましたし。被害もない。後はそちらで決めてください」

女性はそう言うと、再び姿を消した。

どうやってるのか。気配すら追えない。

そして、俺は呆然と俺を見上げているヒナヤクさん……いや、母さんに言葉を掛けるのだった。

「話を、しよう。母さん」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...