異界冒険譚シリーズ【ミラ編】-少女たちの冒険譚-

とーふ(代理カナタ)

文字の大きさ
22 / 66

第6話『一つルールを作ろうか。ミラ』 3/3

しおりを挟む
「……つまり、道中金が無くなったらコイツを捕まえて売れば良いって事か」

一生懸命木を登っているミルシルクワームのお尻を指で突きながら、そんな事を言うシュンさんに私は怒りの声を上げた。

「何を言っているんですか! シュンさん! それに、そっちで頷いているオーロさんも! お二人は強いのですから、暴れる危険な魔物の討伐でお金を稼げば良いでしょう!? 何故こんなにも小さくてか弱くて、一生懸命生きている虫を虐めるのですか!?」

「いや、虐めてるつもりは無いんだが」

「自覚のない虐めが一番良くないんですよっ!? もっと弱い生き物を大事にしてください! 特にこうして森で暮らすミルシルクワームは希少なんですから。ねぇ!? 君もそう思うでしょう!?」

お尻を突かれて、必死に逃げるフォレストミルシルクワームに私は語りかけたが、どうやら逃亡で忙しいらしい。

そのまま一生懸命に逃げていた。

「しかし、コイツ。放っておいてもこのまま、鳥とかに喰われそうだが」

「そこは大丈夫です! 何故ならフォレストミルシルクワームは、その体内に多くの魔力を蓄える関係上、魔力で相手を判断する魔物たちにとって、強大な存在に見えるんですよ。だから、襲われにくいんです。そして大きな魔物に対しては、体の大きさが小さい事で襲われにくいという事ですね」

「ほー。良く出来てるんだな」

「そういう事です。生命の神秘ですね!」

私はシュンさんの言葉に頷きながら、フォレストミルシルクワームに別れを告げて、森の奥へと進み続けた。

そして、次なる不思議を見つけて駆けだしてゆく。

「お、おぉー!? あれは!! まさかフォレストミュービー! フォレストミュービーじゃないですか!」

「なんだ。そいつは」

「知らないんですか!? 有名じゃないですか! 生命の進化論に出てくる代表的な生き物。フォレストミュービーですよ!」

「いや、だからそれを俺たちは知らないんだと」

「あぁ……なんて事」

私はショックを受けながら、およよと体をふらつかせ、木に手を付いた。

何とも悲しい話である。

しかし、知らないという事は悪ではない。知らなければ知れば良いのだ。

「良いですか? フォレストミュービーとはですね。かつてレイクミュービーという名で呼ばれていた魔物なんですよ。特徴的なのはその翼でして、この魔物は鳥でありながら飛ぶ事をしない魔物なんです。そしてその緑の翼はかつて青い翼をしておりまして、魔物が魔力の影響を強く受けている事を証明した種でもあるんですよ!」

私はフォレストミュービーの群れに駆け寄りながら、シュンさん達に語り掛ける。

途中、縄張りを荒らされていると勘違いしたのか、ミュービーたちに襲われる事もあったが、何とか無事シュンさん達に助けられるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...