異界冒険譚シリーズ【ミラ編】-少女たちの冒険譚-

とーふ(代理カナタ)

文字の大きさ
34 / 66

第10話『これはリヴィアナ様の最後が記された書。言うなればリヴィアナ様自身です』(オーロ視点) 3/3

しおりを挟む
リヴィアナの封印書庫での用事も終わり、ミラも泣き止んだ事で俺たちは、次なる目的地を目指すべく旅立とうとした。

のだが、ミラはもう少しだけと言いながら、俺がさっき読んでいた本を集中して読んでいる。

「そんなに気になるのなら、持っていけば良いんじゃないか? 二千とか五千とかあるんだろう? 一冊くらい問題ないだろう?」

「駄目ですよ。これはリヴィアナ様の最後が記された書。言うなればリヴィアナ様自身です。ここから連れて行くなんて可哀想です」

「そういうモンかね」

まぁ俺には分からない感情だ。

一応とばかりにシュンを見るが、当然と言うべきか。シュンも同じ様に分からんという様なポーズをしていた。

「やはり、子供は苦手だな」

「そうだな」

「むむ! そこ! 別にこれは子供じみた感傷とかでは無いですからね!」

「ほー。そうなのか」

「はい! この本はここにあるべきなんです。むしろここに無くてはいけない本です」

俺は妙に強気なミラの態度に首を傾げるが、当然ながらシュンも理解していない。

「リヴィアナ様が何故ここを作ったのか。それを考えれば分かります。オーロさん。この本には何が書かれていましたか?」

「あー。っと、確か、昔やった茶会が楽しかったとか、友達が出来て嬉しかったとか、死にたくないとか、そういう話だった様な?」

「そう。この書はリヴィアナ様の想いが詰まった書なんです。リヴィアナ様は生まれた時から非常に頭がよく、孤独であったと記録には残されています。その為、友人も出来ず、ただ国の為に生きてきたと。しかし、聖女セシル様に出会ってから、リヴィアナ様の人生は大きく変わるのです。自分の夢を見つけられました。そしてエリカ様やアリス様と共に、いつまでも続く未来を夢に見ていたのです。しかし、人間にはいずれ限界がきます。アリス様、エリカ様と順番に命を落としてゆき、セシル様を一人残されてしまう事に対する苦悩が、この本には記されていました。お優しい方だったのだと思います。だから、この本には、セシル様と過ごした日々、楽しかった時間、例え終わりを迎えたとしても、この時間は失われないのだと、そうセシル様へ伝えている本なんです。どうか悲しまないでと。そう訴えているんです。だからきっと、この本は入り口に最も近い場所にあるのだと思います。この封印書庫全てがセシル様へ残した物だから……」

『オーロさんは無神経なのですから、発言には気を付けなくては駄目ですよ』

懐かしい顔を思い出しながら、グズグズと泣くミラに俺は謝った。

何年経っても成長せんな。

そしてミラは大事そうにその本を元あった場所に置くと、両手を握り、祈るのだった。

まるで千年も昔に命を落としたリヴィアナの安らぎを求める様に。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

合成師

あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。 そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。

処理中です...