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第13話『お二人は『魔王』という存在を聞いた事はありますか?』 1/3
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流石に真っすぐヘイムブル領へ向かうのは危険だと判断して、寄り道をしながら進んでいた私たちだったが、ふと気になる事があり、私は二人に聞いてみる事にした。
「お二人は歴史上から消されてしまった存在というのはご存知でしょうか?」
「歴史から消された存在……?」
「……いや」
なんだろう。二人の気配が少しだけ怖くなった様な?
いや、気のせいか。
まばたきしていたら、いつもの雰囲気に戻っていたし。
「ちなみにどんな奴なんだ? ミラ」
「え? あ、はい。そうですね。お二人は『魔王』という存在を聞いた事はありますか?」
「魔王?」
「いや、知らん」
「そうでしょう。そうでしょう。この魔王こそ、歴史から消されてしまった伝説上の存在なのです」
「ほー」
私はコホンと咳払いをしてから、改めて語り始めた。
「実はですね。この魔王なる存在は聖女オリヴィア様が全盛期の時代に現れた、それはそれは恐ろしい存在なのです」
「聖女オリヴィア?」
「あー。そうですね。聖女オリヴィア様もあまり有名では無い方でしたね。うーん。何が悪かったんでしょうか。やはりタイミングですかね。先代の聖女様がアメリア様で、次代の聖女様がイザベラ様という、素晴らしい方々ばかりなので、オリヴィア様はあまり目立たないんですよね。あ、ちなみに! その時代に初めて『勇者』という方も生まれたんですよ! 勇者ルーク様という方です。ですが、この方、後々その勇者という称号を剥奪されているんですよね。いったい何があったのか」
「ろくでもない奴だったんじゃないか? 何か偉業を成してから、俺は勇者だぜって暴れたとかさ」
「オリヴィア様の手記を見る限り、そういう方では無いように思うのですが……」
「なら当時の世界にとってよっぽどその勇者ルークが都合の悪い存在だったかだな。適当な罪とかでっち上げて、称号を剥奪したんだろうぜ」
オーロさんの言葉に私はなるほどと言いながら、それでも不思議だなと頭を捻らせた。
だって、勇者ルークに関する記述はその殆どが勇敢さを称える物であり、彼が何かをしたような事は書かれていない。
聖女イザベラ様だって、勇者ルークの事を素晴らしい人格者だって書いているくらいだし。
んー。この辺りの時代も謎が多いんだよなぁ。
「後は、勇者ルーク自体がその名を捨てたか。だな」
「名前を、捨てた?」
「そうだ。ヤマトでは数年に一度、全国民を集めて行う奉刀祭という祭りがあるんだがな。そこで俺たちは互いの技術を競い、斬り合い最強を決める。そして参加した者の中から上位十二人がヤマト国守護刀十二刀衆となって、国を支えるのだが、その時、その名誉を受けない者もいる。それは同じ家の者が既に選ばれていたりとか、もう先が短い等もあるが、その中に、国の為、名もなき侍として征く為に、名を捨てる者がいる。その勇者ルークも同じ様な事をしたのでは無いだろうか」
「国の為、世界の為か。まぁ分からなくはない話だ」
「お二人は歴史上から消されてしまった存在というのはご存知でしょうか?」
「歴史から消された存在……?」
「……いや」
なんだろう。二人の気配が少しだけ怖くなった様な?
いや、気のせいか。
まばたきしていたら、いつもの雰囲気に戻っていたし。
「ちなみにどんな奴なんだ? ミラ」
「え? あ、はい。そうですね。お二人は『魔王』という存在を聞いた事はありますか?」
「魔王?」
「いや、知らん」
「そうでしょう。そうでしょう。この魔王こそ、歴史から消されてしまった伝説上の存在なのです」
「ほー」
私はコホンと咳払いをしてから、改めて語り始めた。
「実はですね。この魔王なる存在は聖女オリヴィア様が全盛期の時代に現れた、それはそれは恐ろしい存在なのです」
「聖女オリヴィア?」
「あー。そうですね。聖女オリヴィア様もあまり有名では無い方でしたね。うーん。何が悪かったんでしょうか。やはりタイミングですかね。先代の聖女様がアメリア様で、次代の聖女様がイザベラ様という、素晴らしい方々ばかりなので、オリヴィア様はあまり目立たないんですよね。あ、ちなみに! その時代に初めて『勇者』という方も生まれたんですよ! 勇者ルーク様という方です。ですが、この方、後々その勇者という称号を剥奪されているんですよね。いったい何があったのか」
「ろくでもない奴だったんじゃないか? 何か偉業を成してから、俺は勇者だぜって暴れたとかさ」
「オリヴィア様の手記を見る限り、そういう方では無いように思うのですが……」
「なら当時の世界にとってよっぽどその勇者ルークが都合の悪い存在だったかだな。適当な罪とかでっち上げて、称号を剥奪したんだろうぜ」
オーロさんの言葉に私はなるほどと言いながら、それでも不思議だなと頭を捻らせた。
だって、勇者ルークに関する記述はその殆どが勇敢さを称える物であり、彼が何かをしたような事は書かれていない。
聖女イザベラ様だって、勇者ルークの事を素晴らしい人格者だって書いているくらいだし。
んー。この辺りの時代も謎が多いんだよなぁ。
「後は、勇者ルーク自体がその名を捨てたか。だな」
「名前を、捨てた?」
「そうだ。ヤマトでは数年に一度、全国民を集めて行う奉刀祭という祭りがあるんだがな。そこで俺たちは互いの技術を競い、斬り合い最強を決める。そして参加した者の中から上位十二人がヤマト国守護刀十二刀衆となって、国を支えるのだが、その時、その名誉を受けない者もいる。それは同じ家の者が既に選ばれていたりとか、もう先が短い等もあるが、その中に、国の為、名もなき侍として征く為に、名を捨てる者がいる。その勇者ルークも同じ様な事をしたのでは無いだろうか」
「国の為、世界の為か。まぁ分からなくはない話だ」
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