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第58話『これまでとこれから』②
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しかし、そんな僕の気持ちは、僕より先に孤児院を出ていた子の言葉であっけなく破壊されてしまった。
「そう。しょうがない事だって分かってるんだけどね」
「まぁ、シーラ様のお気持ちは誰にもどうしようも無いからね」
それは、深夜に孤児院の大人同士でコソコソと話していた物だ。
シーラサマは、世界中に孤児院を作って子供を慈しみ、育てているが、その中でたった一人だけ、わざわざシーラサマがその子の家に住んでまで、育てている子が居るというのだ。
特別扱いされている子が居るというのだ。
僕は自分の中に閉じ込めた感情が、封じ込めた筈の願いが、ガンガンと内側から扉を壊して出てくるのを感じた。
その感情は、何だろうか。
怒りか、憎しみか。
もしくは世界への絶望か。
その感情の正体も分からぬまま僕は孤児院を飛び出して、シーラサマの魔力を追った。
いつかシーラサマと一緒に行動出来る様にと覚えた転移の魔法を使って、シーラサマが今居る場所に飛び、そして、窓からその光景を見て、唇を噛みしめる。
あぁ。
あぁ……!
そうか。
そういう事か。
僕はこの感情が怒りにせよ、憎しみにせよ。何も変わらないという事がよく分かった。
レナと呼ばれた少女には親が居た。
彼女を慈しみ、育ててくれる母親が。
そして、レナを守り、見守る姉の様な存在が居た。
シーラサマだ。
初めから愛情を持っていた癖に。
その上、僕からシーラサマを奪っていく女。
「レナ」
憎い。
これが憎しみかと良く分かった。
今までこの理不尽な世界に向いていた憎しみが、あの女一人に集まっていくのを感じる。
「レナ」
「レナ、レナ」
「レナレナレナレナレナ」
「何で、アイツだけ特別なの?」
「どうしてレナだけシーラサマと一緒に居ても良いの?」
「僕は何がダメなの?」
「アイツは全部を持ってるのに、どうしてシーラサマまで持っていくの?」
シーラサマと一緒に食べるご飯は美味しかっただろう。
僕はたまにしか一緒に食べられないのに。
シーラサマと一緒にお風呂へ入るのは楽しかっただろう。
僕は年に何度も会える訳じゃないし、お風呂だって片手で数えられるくらいしか一緒に入れなかったのに。
シーラサマと一緒に眠るのは安心できるだろう。
僕はいつだって、一人で寒い夜を超えているのに。
あぁ。
あの女は全てを持っている。
そんな現実が、私の中にある感情をかき回して、怒りを憎しみに変える。
でも、それは爆発することなく、僕の中で静かに燃える炎となった。
分かっていたからだ。
ここで爆発した所で意味なんて無いって事を。
やるなら、シーラサマを騙して、利用しているアイツを蹴落としてからにしなきゃだめだ。
シーラサマは悪に容赦しない。
だから僕自身が悪になってはいけないのだ。
悪いのはあの女なのだから。
そう。
僕はあの女の悪事を暴いて、それで、シーラサマを守るんだ。
そして、これまでの全部を取り返す。
「……そうすれば、シーラサマは僕の傍にずっと居てくれるよね? ずっと。ずっと」
ふふ。と僕は一人きりの部屋で笑った。
これまでの全部がどうでもよくなるくらい、これからの日々はきっと幸せで満ち足りた世界になるはずだから。
そんな未来を想像して笑うのだ。
「まずは、お友達になろう。レナちゃんのお友達に。そして、君の秘密を全部見つけるよ」
バッグからレナちゃんの写真を取り出して空中に投げると、それをナイフで撃ち抜いて、壁に叩きつける。
「あぁ、楽しみだなぁ」
「そう。しょうがない事だって分かってるんだけどね」
「まぁ、シーラ様のお気持ちは誰にもどうしようも無いからね」
それは、深夜に孤児院の大人同士でコソコソと話していた物だ。
シーラサマは、世界中に孤児院を作って子供を慈しみ、育てているが、その中でたった一人だけ、わざわざシーラサマがその子の家に住んでまで、育てている子が居るというのだ。
特別扱いされている子が居るというのだ。
僕は自分の中に閉じ込めた感情が、封じ込めた筈の願いが、ガンガンと内側から扉を壊して出てくるのを感じた。
その感情は、何だろうか。
怒りか、憎しみか。
もしくは世界への絶望か。
その感情の正体も分からぬまま僕は孤児院を飛び出して、シーラサマの魔力を追った。
いつかシーラサマと一緒に行動出来る様にと覚えた転移の魔法を使って、シーラサマが今居る場所に飛び、そして、窓からその光景を見て、唇を噛みしめる。
あぁ。
あぁ……!
そうか。
そういう事か。
僕はこの感情が怒りにせよ、憎しみにせよ。何も変わらないという事がよく分かった。
レナと呼ばれた少女には親が居た。
彼女を慈しみ、育ててくれる母親が。
そして、レナを守り、見守る姉の様な存在が居た。
シーラサマだ。
初めから愛情を持っていた癖に。
その上、僕からシーラサマを奪っていく女。
「レナ」
憎い。
これが憎しみかと良く分かった。
今までこの理不尽な世界に向いていた憎しみが、あの女一人に集まっていくのを感じる。
「レナ」
「レナ、レナ」
「レナレナレナレナレナ」
「何で、アイツだけ特別なの?」
「どうしてレナだけシーラサマと一緒に居ても良いの?」
「僕は何がダメなの?」
「アイツは全部を持ってるのに、どうしてシーラサマまで持っていくの?」
シーラサマと一緒に食べるご飯は美味しかっただろう。
僕はたまにしか一緒に食べられないのに。
シーラサマと一緒にお風呂へ入るのは楽しかっただろう。
僕は年に何度も会える訳じゃないし、お風呂だって片手で数えられるくらいしか一緒に入れなかったのに。
シーラサマと一緒に眠るのは安心できるだろう。
僕はいつだって、一人で寒い夜を超えているのに。
あぁ。
あの女は全てを持っている。
そんな現実が、私の中にある感情をかき回して、怒りを憎しみに変える。
でも、それは爆発することなく、僕の中で静かに燃える炎となった。
分かっていたからだ。
ここで爆発した所で意味なんて無いって事を。
やるなら、シーラサマを騙して、利用しているアイツを蹴落としてからにしなきゃだめだ。
シーラサマは悪に容赦しない。
だから僕自身が悪になってはいけないのだ。
悪いのはあの女なのだから。
そう。
僕はあの女の悪事を暴いて、それで、シーラサマを守るんだ。
そして、これまでの全部を取り返す。
「……そうすれば、シーラサマは僕の傍にずっと居てくれるよね? ずっと。ずっと」
ふふ。と僕は一人きりの部屋で笑った。
これまでの全部がどうでもよくなるくらい、これからの日々はきっと幸せで満ち足りた世界になるはずだから。
そんな未来を想像して笑うのだ。
「まずは、お友達になろう。レナちゃんのお友達に。そして、君の秘密を全部見つけるよ」
バッグからレナちゃんの写真を取り出して空中に投げると、それをナイフで撃ち抜いて、壁に叩きつける。
「あぁ、楽しみだなぁ」
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