聖女の証

とーふ(代理カナタ)

文字の大きさ
3 / 198

第1話『私たちが暮らすこの世界にはいくつかの神話があります』③

しおりを挟む
「お姉ちゃんと、お風呂! お風呂!」

「楽しそうですね、リリィ」

「うん! 毎日この瞬間が一番好きなんだ! 今日もお話。聞かせてくれる?」

「そうですね。では、今日は光の神話について話しましょうか」

「わー!」

手を叩くリリィに笑いかけながら、私はゆっくりと語り継がれる神話を話す。

「私たちが暮らすこの世界にはいくつかの神話があります。有名なものだと二つですね」

「一つは暗闇が支配する世界に光の護りをもたらした勇者アルマ様のお話」

「そしてもう一つは人々が闇に住まう者たちと戦う為に精霊の加護という武器を与えて下さった聖女シャーラペトラ様のお話です」

「そして今日話すのは、光の勇者アルマ様のお話になります」

ワクワクという風な顔をしながら話を聞くリリィの横で、窓から見える星空を眺めながら私は続きを語る。

「これは今からずっと昔のお話です。その頃は今よりも世界が暗く、人々の顔も暗く沈んでおりました」

「人々は未だ見えぬ明日に怯え、暗闇より襲い来る魔なる物から隠れる様に生きておりました」

「昨日まで共に笑っていた仲間が、次の日には永遠の眠りにつく様な恐ろしい世界。それが私たちのご先祖様が生きていた世界でした」

「しかし、そんな世界でも人々は諦めず、一日でも長く、一人でも多く生き残ろうと世界の闇と戦っていました」

「そんなある日、厚く暗い雲の隙間から一条の光が地上に差し込んだのです」

「その光は一人の女性を照らしていました」

「そして彼女はその聖なる光の中で、一人の赤子を生みました。その少年こそ、後の世に世界を救済されるアルマ様だったのです」

「アルマ様は人々にはない不思議な力を持っていました。その力によって、魔なる物は人々に危害を加える事が出来なくなり、人々は安心して生きていける家を手に入れる事が出来たのでした」

「この時アルマ様が使用していた聖剣は、今もなお大聖堂の奥深くで人々を護っているのです」

「おしまい」

そして、私はリリィの手を取り、その右手に刻まれた『聖なる刻印』の赤い十字を指でなぞる。

「そしてこのお話に出てきたアルマ様の証が、この刻印に刻まれた横の線になります。これは、人々を護るための盾を意味していると言われていますね」

「うん。それでこの縦の線がシャーラペトラ様が人に託した精霊の加護。つまりは人間の武器を示してるんだよね?」

「よく覚えていますね。リリィ」

「とーぜん! お姉ちゃんのお話は全部ちゃんと覚えてるんだから」

「ふふ。良い子良い子。これからもお勉強をちゃんと頑張って下さいね」

「うん!!」

私はリリィの頬を撫でながら、自分に刻んだ刻印と完全に同一の刻印を見つめた。

そして、お風呂から出てすぐにリリィの刻印を視えぬよう隠すのだった。

誰も見つける事が出来ぬようにと。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

【完結】追放された転生聖女は、無手ですべてを粉砕する

ゆきむらちひろ
ファンタジー
「祈るより、殴る方が早いので」 ひとりの脳筋聖女が、本人にまったくその気がないまま、緻密に練られたシリアスな陰謀を片っ端から台無しにしていく痛快無比なアクションコメディ。 ■あらすじ 聖女セレスティアは、その類稀なる聖なる力(物理)ゆえに王都から追放された。 実は彼女には前世の記憶があって、平和な日本で暮らしていたしがないOLだった。 そして今世にて、神に祈りを捧げる乙女として王国に奉仕する聖女に転生。 だがなぜかその身に宿ったのは治癒の奇跡ではなく、岩をも砕く超人的な筋力だった。 儀式はすっぽかす。祈りの言葉は覚えられない。挙句の果てには、神殿に押し入った魔物を祈祷ではなくラリアットで撃退する始末。 そんな彼女に愛想を尽かした王国は、新たに現れた完璧な治癒能力を持つ聖女リリアナを迎え入れ、セレスティアを「偽りの聖女」として追放する。 「まあ、田舎でスローライフも悪くないか」 追放された本人はいたって能天気。行く先も分からぬまま彼女は新天地を求めて旅に出る。 しかし、彼女の行く手には、王国転覆を狙う宰相が仕組んだシリアスな陰謀の影が渦巻いていた。 「お嬢さん、命が惜しければこの密書を……」 「話が長い! 要点は!? ……もういい、面倒だから全員まとめてかかってこい!」 刺客の脅しも、古代遺跡の難解な謎も、国家を揺るがす秘密の会合も、セレスティアはすべてを「考えるのが面倒くさい」の一言で片付け、その剛腕で粉砕していく。 果たしてセレスティアはスローライフを手にすることができるのか……。 ※「小説家になろう」、「カクヨム」、「アルファポリス」に同内容のものを投稿しています。 ※この作品以外にもいろいろと小説を投稿しています。よろしければそちらもご覧ください。

リーマンショックで社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません

ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。 文化が違う? 慣れてます。 命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。 NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。 いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。 スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。 今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。 「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」 ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。 そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。

処理中です...