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第80話『あぁ、そうなんですね。私も今知りました。とても素敵ですね!』
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ドライアードさんの訴えから始まった同人誌事件は、一旦の終わりを迎えた。
正直何も解決はしていないのだけれど、本人たち同士で言い争いを始めているし、その言い争いもとてつもなく長い時間が掛かりそうなので、このまま放置だ。
多分、数百年単位でこの問題を話してゆくのだろう。
という訳で、まだ陰魔さん達と話をしているお姉ちゃんが合流次第、次なる場所を目指して旅に出る事にしたのだが……そこに思わぬ人が現れた。
そう。ケンタウルスのアシナーガヒコさんである。
彼は三体の巨人が戦う姿を見て、この世の終わりかと思い様子を見に来たとの事だった。
「いや。リリィに何も無くて良かったよ。君に何かあったら私のヤッコゥ! が元気をなくくしてしまうからね」
「ご心配ありがとうございます」
私はアシナーガヒコさんに頭を下げながら、リアムさん達にもアシナーガヒコさんを紹介した。
「皆さん。こちらケンタウルスのアシナーガヒコさんです。以前聖国の近くで釣りをしていた時に知り合いました。そして、アシナーガヒコさんこちら、私と一緒に旅をして下さっている皆さんです。端から、リアムさん、キャロンさん、カーネリアン君、フィンさんです」
「よろしく頼むよ。聖人の諸君。君たちが闇を封じているお陰で私も自由にヤッコゥ! する事が出来ているからね」
「……まぁ、よろしく頼む」
「えと。ごめんなさい。さっきから何かヤッコゥ。ヤッコゥ言ってるのは、なに?」
「ヤッコゥ! と言えば、ヤッコゥ! に決まっているじゃないか。私のこの立派なヤッコゥ! の事だよ!」
「はぁ……?」
「ふむ。分からぬか。人間は不便なものだな。ヤッコゥ! とは私のこの立派な下半身の事だ! フゥー! ヤッコゥ!!」
「あぁ、そうなんですね。私も今知りました。とても素敵ですね!」
「そうかそうか。触ってみるかい?」
「良いんですか?」
「勿論だとも! 背に乗っても構わないぞ!」
「リリィ!」
「え?」
「こっちに来なさい。リリィ」
「えと。はい」
アシナーガヒコさんと楽しく話をしていたら、わなわなと震えていたキャロンさんに呼ばれ、私はキャロンさんの傍に行く事にした。
そして、そのままこっちに居なさいと背中に隠される。
なんだろう?
「とんだ変質者も居たもんだ。リリィ。そのままキャロンの後ろに隠れてろ。コイツは危険だ。フィンと同じくらいな」
「なんで俺なんだよ! 俺はここまでじゃねぇよ! そもそも旅の途中じゃ誰にも手を出してないだろうが!」
「どうだかな」
「おいおい。勘弁してくれ」
「という訳だ。こっちにはもう女好きが居るからな。そのままお帰り願おうか」
「ふむ。何か誤解があるようだな?」
「誤解だと?」
ピリッとリアムさんとアシナーガヒコさんの間で緊張が走る。
なんで、こんな風になってるんだろう?
状況にまるで付いて行けず、私はオロオロとしていたのだが、そんな私を助ける様に遠くからお姉ちゃんの声が聞こえた。
そして私はお姉ちゃんが走ってきている方に視線を向けながら声を掛ける。
「お姉ちゃん!!」
「姫様!!」
「ん? 姫様?」
私は私の声と同時に聞こえた言葉に思わずアシナーガヒコさんを見た。
そして、どうやらアシナーガヒコさんの声に気づいたのは私だけでなく、走ってきたお姉ちゃんもビックリした様な顔でアシナーガヒコさんを見ているのだった。
『アシナーガヒコさん!?』
「姫様……! ご無事だったのですか!?」
『えと、無事かと言われると、何とも言えないのですが。魂は今でも空の果てに居ますよ』
「なんと! 魂は既に運ばれているというのに、地上へこうして存在しているとは……! 奇跡という他ありませんな」
『いえ。奇跡ではありませんよ。リリィや、リアムさん、フィンさん、カー君、キャロンさんの想いが、私を呼んでくれたのです。ですから、ここに』
「そうですか……! くぅっ、よかった……! どの様な形であれ、貴女様と再びこうして話が出来る。これほどの喜びはありません」
『もう。アシナーガヒコさんは大袈裟ですねぇ』
「しかし! こうして姫様と出会えた以上、このままという訳にはいきません! 是非、姫様には我が魂の故郷を案内させていただきたい!!」
『え? でも』
「大丈夫。無論、妹君も仲間の方も一緒ですよ! 今すぐ仲間を呼んでまいります! 少々お待ちを!!」
お姉ちゃんにそう言うと、アシナーガヒコさんはすごい勢いで森の方へ走っていってしまい、私たちはそのまま立ち尽くす事になってしまった。
そして、アシナーガヒコさんが帰って来るまでの間、お姉ちゃんがアシナーガヒコさんの言っていたヤッコゥ! というのが馬の下半身であるという事を説明し、何故かリアムさん達はそういう事かと安堵している様子だった。
なんだろう。
最初からずっとそう言っているのに、勘違いとはどういう事なのだろうか。謎だ。
それから、少し時間が経って、アシナーガヒコさんは何人かの仲間と思われる人を連れて帰ってきた……のだけれど、どうも妙な事になっていた。
「姫様。大変申し訳ございません」
『いえ。私は特に困っていませんが……アシナーガヒコさんは大丈夫ですか?』
「この程度の事は! 何ら問題にはなりません! えぇい! 貴様! 離れんか!」
そう言って、アシナーガヒコさんは体ごとぶつかってくる白い角の生えた馬……確か、ユニコーンと喧嘩をしていた。
どうやらここに帰ってくるまでの間に出会ってしまったらしい。
そして、お姉ちゃんをどちらが乗せるか喧嘩をしているという話だ。
「えと。お姉ちゃんを交互に乗せるという形では駄目なんでしょうか?」
『難しいと思います。ユニコーンは一度自分の背に乗った相手が他のユニコーンや、別のモノに乗る事を酷く嫌がりますから』
私はお姉ちゃんの説明を聞いて、なるほどと頷いた。
ならばと、私はユニコーンさんに近づいて、近くで頭をペコリと下げた。
昔、お姉ちゃんに聞いた話を思い出したのだ。
ユニコーンは汚れなき乙女であれば、その背に乗せてくれると。
私がその汚れなき乙女という奴なのかは分からないし、お姉ちゃんを背に乗せたいというユニコーンさんに私では物足りないかもしれないけど、アシナーガヒコさんは、お姉ちゃんと一緒に故郷へ行くことを切望していたのだ。
多分、ずっと、ずっと願っていたのだ。
その願いを叶えてあげたい。
「あの。ユニコーンさん。触れても、良いですか?」
ユニコーンさんは私をジッと見ると体の匂いを嗅いで、小さく頷いてくれた。
そして私はその白い肌にそっと触れる。
壊れ物を扱う様に。慎重に。
そのお陰か、ユニコーンさんは怒りを少しずつ静めてくれている様だった。
「あの。ユニコーンさん。図々しいお願いなのですが、お姉ちゃんの代わりに、私では駄目でしょうか?」
「……」
「アシナーガヒコさんはお姉ちゃんに故郷を見せたいと、ずっと思っていて、それで、その願いがようやく叶いそうなんです。だから……っ!」
ユニコーンさんは息を吐くと、私をジッと見つめて、頷いてくれた。
そして地面にしゃがんでくれる。
「良いんですか?」
「……」
ユニコーンさんは私の問いに小さく頷いてくれ、私は慎重にその背に乗せて貰った。
しかし、次の瞬間ユニコーンさんは勢いよく立ち上がった為、私はバランスを崩してユニコーンさんに抱き着いてしまった。
「あっ! ご、ごめんなさい!」
私は機嫌を悪くしてしまったかもしれないと、ユニコーンさんに謝るが、特に怒ってはいないようだった。
むしろ、喜んでいる?
なら、良いのかな。
「では、これからお願いしますね」
私はユニコーンさんの背を撫でながら、草原までの旅をお願いするのだった。
正直何も解決はしていないのだけれど、本人たち同士で言い争いを始めているし、その言い争いもとてつもなく長い時間が掛かりそうなので、このまま放置だ。
多分、数百年単位でこの問題を話してゆくのだろう。
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彼は三体の巨人が戦う姿を見て、この世の終わりかと思い様子を見に来たとの事だった。
「いや。リリィに何も無くて良かったよ。君に何かあったら私のヤッコゥ! が元気をなくくしてしまうからね」
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私はアシナーガヒコさんに頭を下げながら、リアムさん達にもアシナーガヒコさんを紹介した。
「皆さん。こちらケンタウルスのアシナーガヒコさんです。以前聖国の近くで釣りをしていた時に知り合いました。そして、アシナーガヒコさんこちら、私と一緒に旅をして下さっている皆さんです。端から、リアムさん、キャロンさん、カーネリアン君、フィンさんです」
「よろしく頼むよ。聖人の諸君。君たちが闇を封じているお陰で私も自由にヤッコゥ! する事が出来ているからね」
「……まぁ、よろしく頼む」
「えと。ごめんなさい。さっきから何かヤッコゥ。ヤッコゥ言ってるのは、なに?」
「ヤッコゥ! と言えば、ヤッコゥ! に決まっているじゃないか。私のこの立派なヤッコゥ! の事だよ!」
「はぁ……?」
「ふむ。分からぬか。人間は不便なものだな。ヤッコゥ! とは私のこの立派な下半身の事だ! フゥー! ヤッコゥ!!」
「あぁ、そうなんですね。私も今知りました。とても素敵ですね!」
「そうかそうか。触ってみるかい?」
「良いんですか?」
「勿論だとも! 背に乗っても構わないぞ!」
「リリィ!」
「え?」
「こっちに来なさい。リリィ」
「えと。はい」
アシナーガヒコさんと楽しく話をしていたら、わなわなと震えていたキャロンさんに呼ばれ、私はキャロンさんの傍に行く事にした。
そして、そのままこっちに居なさいと背中に隠される。
なんだろう?
「とんだ変質者も居たもんだ。リリィ。そのままキャロンの後ろに隠れてろ。コイツは危険だ。フィンと同じくらいな」
「なんで俺なんだよ! 俺はここまでじゃねぇよ! そもそも旅の途中じゃ誰にも手を出してないだろうが!」
「どうだかな」
「おいおい。勘弁してくれ」
「という訳だ。こっちにはもう女好きが居るからな。そのままお帰り願おうか」
「ふむ。何か誤解があるようだな?」
「誤解だと?」
ピリッとリアムさんとアシナーガヒコさんの間で緊張が走る。
なんで、こんな風になってるんだろう?
状況にまるで付いて行けず、私はオロオロとしていたのだが、そんな私を助ける様に遠くからお姉ちゃんの声が聞こえた。
そして私はお姉ちゃんが走ってきている方に視線を向けながら声を掛ける。
「お姉ちゃん!!」
「姫様!!」
「ん? 姫様?」
私は私の声と同時に聞こえた言葉に思わずアシナーガヒコさんを見た。
そして、どうやらアシナーガヒコさんの声に気づいたのは私だけでなく、走ってきたお姉ちゃんもビックリした様な顔でアシナーガヒコさんを見ているのだった。
『アシナーガヒコさん!?』
「姫様……! ご無事だったのですか!?」
『えと、無事かと言われると、何とも言えないのですが。魂は今でも空の果てに居ますよ』
「なんと! 魂は既に運ばれているというのに、地上へこうして存在しているとは……! 奇跡という他ありませんな」
『いえ。奇跡ではありませんよ。リリィや、リアムさん、フィンさん、カー君、キャロンさんの想いが、私を呼んでくれたのです。ですから、ここに』
「そうですか……! くぅっ、よかった……! どの様な形であれ、貴女様と再びこうして話が出来る。これほどの喜びはありません」
『もう。アシナーガヒコさんは大袈裟ですねぇ』
「しかし! こうして姫様と出会えた以上、このままという訳にはいきません! 是非、姫様には我が魂の故郷を案内させていただきたい!!」
『え? でも』
「大丈夫。無論、妹君も仲間の方も一緒ですよ! 今すぐ仲間を呼んでまいります! 少々お待ちを!!」
お姉ちゃんにそう言うと、アシナーガヒコさんはすごい勢いで森の方へ走っていってしまい、私たちはそのまま立ち尽くす事になってしまった。
そして、アシナーガヒコさんが帰って来るまでの間、お姉ちゃんがアシナーガヒコさんの言っていたヤッコゥ! というのが馬の下半身であるという事を説明し、何故かリアムさん達はそういう事かと安堵している様子だった。
なんだろう。
最初からずっとそう言っているのに、勘違いとはどういう事なのだろうか。謎だ。
それから、少し時間が経って、アシナーガヒコさんは何人かの仲間と思われる人を連れて帰ってきた……のだけれど、どうも妙な事になっていた。
「姫様。大変申し訳ございません」
『いえ。私は特に困っていませんが……アシナーガヒコさんは大丈夫ですか?』
「この程度の事は! 何ら問題にはなりません! えぇい! 貴様! 離れんか!」
そう言って、アシナーガヒコさんは体ごとぶつかってくる白い角の生えた馬……確か、ユニコーンと喧嘩をしていた。
どうやらここに帰ってくるまでの間に出会ってしまったらしい。
そして、お姉ちゃんをどちらが乗せるか喧嘩をしているという話だ。
「えと。お姉ちゃんを交互に乗せるという形では駄目なんでしょうか?」
『難しいと思います。ユニコーンは一度自分の背に乗った相手が他のユニコーンや、別のモノに乗る事を酷く嫌がりますから』
私はお姉ちゃんの説明を聞いて、なるほどと頷いた。
ならばと、私はユニコーンさんに近づいて、近くで頭をペコリと下げた。
昔、お姉ちゃんに聞いた話を思い出したのだ。
ユニコーンは汚れなき乙女であれば、その背に乗せてくれると。
私がその汚れなき乙女という奴なのかは分からないし、お姉ちゃんを背に乗せたいというユニコーンさんに私では物足りないかもしれないけど、アシナーガヒコさんは、お姉ちゃんと一緒に故郷へ行くことを切望していたのだ。
多分、ずっと、ずっと願っていたのだ。
その願いを叶えてあげたい。
「あの。ユニコーンさん。触れても、良いですか?」
ユニコーンさんは私をジッと見ると体の匂いを嗅いで、小さく頷いてくれた。
そして私はその白い肌にそっと触れる。
壊れ物を扱う様に。慎重に。
そのお陰か、ユニコーンさんは怒りを少しずつ静めてくれている様だった。
「あの。ユニコーンさん。図々しいお願いなのですが、お姉ちゃんの代わりに、私では駄目でしょうか?」
「……」
「アシナーガヒコさんはお姉ちゃんに故郷を見せたいと、ずっと思っていて、それで、その願いがようやく叶いそうなんです。だから……っ!」
ユニコーンさんは息を吐くと、私をジッと見つめて、頷いてくれた。
そして地面にしゃがんでくれる。
「良いんですか?」
「……」
ユニコーンさんは私の問いに小さく頷いてくれ、私は慎重にその背に乗せて貰った。
しかし、次の瞬間ユニコーンさんは勢いよく立ち上がった為、私はバランスを崩してユニコーンさんに抱き着いてしまった。
「あっ! ご、ごめんなさい!」
私は機嫌を悪くしてしまったかもしれないと、ユニコーンさんに謝るが、特に怒ってはいないようだった。
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